先読み~あなたが一緒じゃなければ眠れない~⦅完結⦆

ゆう

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日常

屋敷の中

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 アヤトは必要な掃除用具を紙に書き、なんとなく思い付いた食堂のイメージをカイトに伝えた。
 明るい壁と床、そしてカーテン。
 できたらシンプルなテーブルクロス。
 調理場と食堂を行き来出来るようにと、調理場裏の勝手口から外に出れるように…。
 調理場に有る、裏口のドアの前に空箱が山積みになっていて、外に出れないので空箱の撤去…。
 外に小さな小屋を建てて、燃えないゴミと燃えるゴミなどを置く場所を…。
「…。」
 今までゴミはどうしていたんだ?
 後で聞いてみよう…。
 とりあえず冷蔵庫に有った、よく分からない物体や、ぐしゃぐしゃになった袋など、処分したいゴミはゴミ袋にいれていった。
 そして換気をするため窓を開けようとして、窓が開かなかった…。
 どれだけ開けてないんだ?!
 それもカイトに伝えて、直してもらうことに…。
 アヤトはタメ息を付きつつ、気になることを教えてもらいながら作業して話をしていると、お昼になってしまい、アヤトのお腹がグーッと鳴った。
 もうお昼なんだ…。
「昼を食べに行くか…」
 カイトにそう言われ、調理場で手を洗って、再び魔動車に乗った。
 …そうだよね。
 あの調理場では、材料が有っても、食事を作る気にはならない…。
 

「いつも食事はどうしていたの?」
 アヤトはカイトが運転する魔動車の中で、気になることを聞いた。
 食堂があの状況からは、誰かが作っていた形跡はない。
 たまに使っていたくらいだろう…。
「適当に…。いつも仕事帰りに弁当を買ったり、屋台で買って食べたり…」
 いつもの事だと普通に言うカイトに、アヤトはカイトをマジマジと見てしまう。
 いつも…って…。
「毎日?!」
 アヤトは驚いた。
「…まぁ…そうだな」
「…。」
 カイトは苦笑いして言う。
「屋敷には食事を作れるヤツが住んでなくて…。たまに温めたり、肉を焼いたりするくらいだ」
 だから魔動コンロの回りが油でギトギトになっていたのは、ソノせいか…。
「…。」
 アヤトは頭を抱えた。
 それでは栄養は片寄るし、お金もかかる…。
 もしかして、あまり野菜を食べて無いとか…。
 …そういえば、食材は何も無かった。
 かろうじて、調味料だけが、カウンターに並んでいたような…。
 屋台や弁当の味になれてしまって、味覚が多少違うかも知れないが、なるべく美味しいと言ってもらえるように、期待に応えれるよう頑張ろう…。
 

 近くの街の屋台で昼食を食べ、掃除用具を買い、調理道具を見て回った。
 魔石で動く調理用具なので、時々魔石を交換しなくてはいけない。
 なるべく耐久性が有り、自分の使いやすい大きさを見て回った。
 良い値段、するよね…。
 良さげな物を見て回ったが、とっても手が出るような値段ではない。
 調理場に有る物で、使えるものは使わないと…。
 そして市場を見て回り、野菜、魚、果物、肉、調味料などの店がどこに有るか見て回った。
 買い物をしても良かったけれど、調理場の魔石コンロや冷蔵庫、オーブンがどれだけ使えるのか不安だったので、次回に見送ることにした。
 
 
 屋敷に戻りながら、屋敷で暮らしている人達の事を聞いた。
 働き盛りの男達が通常十人いて、カイトの様に長期不在になる者が、何人かいるそうだ。
 そしてここに、兄の婚約者であったサクラさんの部屋も有ったのには驚いた。
「そうだな、屋敷を案内してなかった…」
 カイトはそう言って苦笑いした。
 食堂の事をなんとかしようと思っていただけで…。
 きっと、僕の仕事先を優先してくれたからだろう…。
 まあ、他の設備の掃除は、食堂の事が有るから、期待しない方が良いだろう…。


 屋敷に戻り、屋敷の中を案内してもらう。
 屋敷の一階、食堂が有った廊下の反対側の奥には、大浴場が有り、手前に手洗い場、洗濯場と有る。
 …まあ、予想よりは綺麗に使っているかも…。
 普段お風呂は大浴場だけど、みんなはシャワーで済ませているそうだ。
 浴槽を掃除するのがめんどくさく、一応、当番で洗い場は簡単には掃除しているらしいが…。
 お手洗いや洗濯場などの水場も、思ったより綺麗だった。
 聞くと、三ヶ月前までは掃除の好きな人がいて、気が向くとあちらこちらと掃除してくれていたらしい。
 けれど、恋人と暮らすからと、出ていったらしく、それから誰も掃除をしていないらしい…。
 三ヶ月でこの状態なら、まだ比較的に綺麗に使っている方だ…。
 
 一階の食堂とは反対側の通路には、二人部屋が五部屋並び、常時住んでいる住人が使っている。
 階段を上がり、二人部屋の上は、サクラさんの部屋と、ハズキさんの部屋、カイトさんの部屋、物置部屋が有り、カイトさんの部屋を見せてもらうと、風呂、手洗い場、ミニキッチンが付いた、広めの部屋だった。
 こちらの掃除は月に一度、サクラさんの所の使用人さんが来て、サクラさんの部屋を掃除するので、ついでに別料金でお願いしているそうだ。
 サクラさんがいつ来ても良いように、ある程度掃除しているらしい…。
 食堂側の二階は同じように部屋が三つと物置部屋が有り、一部屋を三人で使ったり、一人で使ったりと色々らしい…。
 後は洗濯場の上辺りに、物置部屋とお手洗いがあった。
 人数が多いので、手洗い場は二階にも必要だろう…。
 そう言えば、僕の部屋はどこになるのだろう、と思い聞いてみると、二階の広い空き部屋を使えばよいとの事…。
 カイトさんと同じくらいの部屋は広すぎでしょう…。
 学生寮の一人部屋になれてしまってるから、広すぎると、かえって落ち着かない…。
 各階に有る物置部屋でさえ、学生寮と同じくらい…それよりも広いくらいの部屋なのだ…。
 アヤトは少し考え、自分が落ち着いて暮らせそうな部屋を思い付いた。
「…調理場の横に有る物置部屋。あそこを使っても良い?」
「…そんな所で良いのか?」
 カイトは驚いてアヤトを見る。
「…狭いぞ」
「あれくらいで良い。学生寮に比べても広いくらいだよ」
「…アヤトが良いのなら…」
 カイトは頭を掻きながら何か考えているようだ。
 調理場の横の物置部屋は、食材を置いてあった場所のようだが、今は棚が有るだけで何も無い。
 棚を外して、ベットと机を置いても、スペース的に余裕は有る。
 アヤトがそんな風に思っていると、カイトが言った。
「…内装を手直ししてもらう。…それと、シャワーを浴びるときは、勝手に俺の部屋を使え。共同の大浴場は苦手でだろ…」
「…うん。ありがとう…」
 馴れてしまえば大丈夫だとは思うが、多くの人と一緒にお風呂に入るのは苦手だ。
 貧相な痩せた身体を見られるのが嫌だと言うのもある。

 アヤトは、一階の調理場に戻ってきて、冷蔵庫、オーブンなどの調理器具が動くか確認を取り、調理場の配置を大まかに、カイトに説明した。
「そうだな…。カズが帰ってきたら、食堂と調理場の改装を相談してみる」
 カイトはそう言って、あらかた決まると、今日は学生寮へと送ってくれた。
 外出届けしか出していないし、退寮する日にちの届けも申請しなくてはいけない。
 引っ越しをしなくてはいけないと分かっていてので、荷物はある程度梱包されてはいる。
 それに、帰りの魔動車の中でカイトから言われたのだ。
 今、急ぐのは食堂だけだが、出来たら屋敷の管理をして欲しいと…。
 屋敷の管理…。
 荷物運びや、買い物へ行くときの運転、荷物持ちなどは、屋敷で暇そうにしている者達を使えば良いと…。
 人見知りだから、おいおいに…。
 まだ会っていないので、どんな人達が住んでいるのかは分からない。
 様子を見ながら、声をかけれそうな人にお願いしよう…。
 とは言え、まずは食堂。
 寮を出るまでの短い時間だが、やることはたくさん有る。
 学生寮の調理場の人に相談にのってもらいながら、働き盛りの男の人には、どんな料理が良いか考えなくては…。
 
 卒業後の予定が決まったアヤトは、内心ホッとして、学生寮からの引っ越しが楽しみになった。
 
 


 
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