先読み~あなたが一緒じゃなければ眠れない~⦅完結⦆

ゆう

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日常

改装

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 カイトさんが、卒業後の僕の仕事先を提示してくれて、調理場や食堂の改装することになり、五日が過ぎていた。
 それまでに、寮の調理場にいる料理人さんや栄養士さんに相談して、五日分三食のメニューを考えた。
 後は皆の食べる量と、予算の事もある。
 なので目安だけで、徐々に変更していけば良い。
 それに、困ったら相談に来れば良いと言ってくれたので、少しホッとして、三年間、お世話になった調理場の人達のありがたみを染々と感じた。


 今日は昼過ぎに、この間の屋敷へ向かうため、カイトさんが迎えに来てくれた。
 僕は箱詰めにした荷物をカイトさんの魔動車に乗るだけ乗せ、一緒に屋敷へ向かった。
 僕の部屋の改装が終わっていない為、まだ屋敷では住めないので、少しづつ荷物だけ引っ越しだ。
 とりあえず荷物は、食堂の横に有る、談話室の角にでも置いておけば良いとの事。
 この間、談話室は見てないや…。
 確か、玄関ホールの右側に有った部屋の事だよね…。

 今日の段取りとしては、床や壁を直したので見せてもらい、気になるところを手直ししてくれるそうだ。
 それと、カーテンを外し、街の布屋でカーテンを作ってもらうのを頼みにいく予定だ。
 僕のイメージする色や柄を選んで良いとの事なので、楽しみだ。
 後は包丁、まな板、フライパン、フライ返しなど、調理場で使用する基本的な道具の買い物だ。
 ほとんど全滅状態で、あれを頑張って磨く元気はない…。
 カイトさんに「それも必要経費だから気にするな」と、言われ、思いきって新調することになった。
 これから大事に使っていけば良い…。
 

 屋敷に着き、荷物を談話室に入ってすぐの左手の角に運ぶ。
 談話室はカーテンが閉まっていて、灯りを付けても少し薄暗く、色々なサイズのテーブルとソファーがあちこちに置いてあるのが見える。
 住人がこの部屋に集まって、雑談しながら好きな場所で過ごすらしい…。
 まぁ、思ったよりも綺麗に整っている。
 うす暗くて、汚れが目立たないだけかもしれないが…。
 アヤトがそう思って口にすると、カイトは苦笑いして教えてくれた。
 最初にアヤトが来たときは、実は見せられる状態ではなかったらしい。
 お酒のビンやコップ、つまみの入っていた袋、食べさしの食べ物や、焼き鳥の串や、こぼれたお酒などがテーブルの上に散乱し、床にも食べ溢し、誰のか分からない服などなが散らばっていたそうだ。
 …うん。
 そんな光景を見たら嫌になるかも…。
 まともな食事を食べたかったら片付けろと言って、やっと昨日、片付け終わったそうだ。
 だから比較的に綺麗に見えるのだと…。
 そんな話をしながら荷物を運び終わると、食堂の方から背の高い筋肉質の男の人が姿を見せた。
「紹介する。大工をやってるカズだ。部屋を改装してくれている」
「アヤトです。よろしくお願いします」
「カズだ。よろしく。…とりあえず見てくれないか。話を聞いて、俺なりに直してみたんだが、気になったら言ってくれ」
 アヤトはカズの後を付いて行って、食堂へ入って目を見張った。
 
 床は明るい木目調に変わり、壁も明るい白っぽい壁に変わっていた。
 気になった穴も塞がっている…。
 カーテンも外されていて、外の光が食堂内に、注ぎ込んでいて、最初に見た状態とは全く違って、とても明るくなっていた。
 あっ、窓際に観葉植物を置きたいかも…。
 そして、もともと有った調理場の方への入り口の横の壁に、縦長のアーチ状の穴が空き、直接、調理場に出入り出来るようになっていた。
 ここに、調理場の中が見えないように、のれんをかけておくと良いかも…。
 アーチ状の穴から調理場の中に入ると、今まで無かった壁が物置小屋の延長上に出来ていた。
 入ってすぐは固定の壁になっているが、スライド式の壁が付いて、開閉自由に出来るようになっている。
 スライド式の壁を開けて、中に入ると、こちらも床が明るい木目調に変わり、小さなテーブルと椅子が二脚と、奥の物置部屋に置いてあった棚が廊下側の壁際に並べられていた。
 休憩所のような雰囲気になっている。
 そして奥の物置部屋だった場所に入ると、こちらも床は明るい木目調になっていて、シングルベットが一つと、机、椅子、本棚が一つ置いてあった。
 それでも今の学生寮の部屋より広い…。
 奥の窓にはカーテンが無いので、ここの分も、後でサイズを測って頼まないと…。
 それによく見れば、壁紙も張り替えられている。
 落ち着きの有る、ベージュ色だ。
 ココを僕の部屋にすると決まって、たった五日でここまで作業してくれたんだ。
 アヤトは感動して胸が熱くなった。

 アヤトは調理場の方に戻り、魔動コンロとオーブンが新品になっているのに驚き、水場も綺麗に磨かれ、冷蔵庫も新しく魔石を取り替えてくれて、稼働していた。
 冷蔵庫を開けてみると、ひんやりと涼しく、中も綺麗に掃除されている。
 調理場の裏口の方に行くと、入り口を塞いでいたカラ箱は撤去され、扉を開けて外に出ると、壁際に小さな屋根付きの小屋が出来ていた。
 …すごい…。
 外に出ても雨で濡れないように、屋根の長さが長くなっているのは、カズの配慮だろう…。
 アヤトは一通り見て回り、カズとカイトが待つ食堂に行き、興奮気味に言った。
「スゴい!!僕の想像以上に設備が改装さている!!」
 カズは嬉しそうに微笑み、もと物置部屋だったアヤトの部屋の説明をしてくれた。
 新しく付けたスライド式の壁は、普段は閉めておいて、小部屋から誰かと話ながら作業するときに、開けて使うと良いと。
 小部屋側から鍵をかけれるようになっていて、もともと有った扉から出入りする所が一応、アヤトの部屋と言うことだそうだ。
 もしかして、カイトが狭いと言っていたので、広くしてくれたのかも…。
 アヤトは嬉しくて思わず涙ぐんでしまった。
 僕が来ることになって、数日前の状況から、ここまで部屋や設備を整えてくれるとは思わなかった。
 もう、数日すれば僕はココでの生活が始まるのだと、実感がわいてきていた。
 期待に添えるよう、それに合うだけの仕事をしないと…。
 
 カズにお礼を言って、部屋に使わない物を置いておく物置かクローゼットが出来ないか聞いてみると、簡単な作りで良いのなら、奥の部屋に入ってすぐの扉の横に作ってくれると言うので、お願いした。
 後は暮らしながら少しづつ増やしていけば良い…。


 その後、部屋の窓の大きさを計り、外したカーテンを持って、街の布屋へと向かった。
 そこで布を選び、部屋のカーテンと食堂のカーテンを注文し、テーブルクロスと出来上がりののれん⚫⚫⚫が有ったので、それも購入した。
 それから金物屋に行き、一通り調理用具を買い、せっかくなので何か作ることになった。

 急遽なので、夕食は各自買ってくるか、食べてくるだろうから、夜食になりそうなもの…。  
 アヤトは少し考えて、閃いた。
 お酒を飲むみたいなので、簡単に摘まめるような…定番の唐揚げ…かな。
 アヤトはカイトにそう言って、お肉屋へ行き、鳥のモモ肉を大量に買い、調味料や油、唐揚げを作るのに必要な物を買い集めた。
 ちなみに僕が買い物をしている間に、鳥のモモ肉は魔石で冷やせる保冷のケースにいれて、お店の人がカイトと一緒に魔動車に運んでいった。
 
 帰ったら、試しに少しだけ作ってみて、カイトさん達に味見してもらい、どれくらい作った方が良いか聞いてみよう。
 買った鳥のモモ肉が多ければ、下準備だけして冷凍して置けば、食べたい時に揚げれば良い…。
 せっかく冷凍、冷蔵庫を起動しているのだから…。
 アヤトは屋敷に帰ってからの、唐揚げ作りの段取りを考え始めた。



 
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