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旅の始まり
有るけど無い魔力
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日がだいぶ傾き、夕方になって、フードを被って眠っていた人がピクリと動いた。
身体を寄りかからせていた木から、身体を離したので目が覚めたことに気付いたのだ。
ルークが近付くと、再びいばらが飛び出して来たので少し離れ、いばらが大地に少し戻っていき、直ぐにでも、再びバリケードを作れるよう身構えている。
目覚めたばかりで、警戒が解かれて無いのだ。
なので、少し離れた場所から話しかけた。
「警戒を解いて欲しい。あなたは白獣から馬車をまもった、協力者ではないのか?」
「…白獣…」
まだ、ぼんやりとしているのか、反応が鈍い。
「俺はルーク。街への移動中、君を見つけたから目覚めるまで待っていた。ここは危険だ」
必死に訴え掛けるが、伝わっているのか分からない。
背後では、ガーディとジェスが心配そうにこちらを見ている。
「…『守護の実』」
その人が、大きめの木の実を手に取り、そう言うと、ザザッと木が揺れ、木の実の中に何かが入っていく。
「なんだ。それは?魔具みたいだが…」
思わず興味深々に、その人の手元の木の実を見る。
「…これは『守護の実』…魔具みたいなものだけど…これは…」
その人が、寄りかかっていた木から立ち上がろうとして、ふらつき、木に手をついた。
その時、ふわりと被っていたフードが落ち、さらりとした漆黒の髪が風に揺れた。
まだ若い…華奢な青年だ。
自分たちより少し年下だろうか?
「大丈夫か?」
「ああ…」
彼は手にしていた木の実をポーチにしまう。
「こっちに来て食事をしないか?ずっと眠っていて、お腹が空いているのかも…。少し食べれば落ち着くと思うぞ」
近付いて、手を差しのべた。
見上げるその瞳が深い森の緑色をしていて、いつまでも見ていたい気がした。
彼は戸惑いながらその手を取ってくれたが、直ぐに手を離されてしまう。
どうかしたのか?
彼は申し訳なさそうに見上げてきた。
「…すまない。少し驚いて…」
「?」
ルークは何を言っているのか分からず彼を見た。
「魔力が急に流れて来たから…」
…何を言っているんだ?
「…俺、魔法は使えないぜ。魔力なんて…」
そう、魔力は無いし、魔法も使えない。
「制御出来てないのか?」
…何を言っている?
彼は、魔力が有ることを前提に話している…。
俺に…魔力は有るのか…?
ルークは目を見開いて、彼の離れた手を握り返した。
「俺に魔力が有るのか?!」
彼が苦しそうに顔を歪める。
「…手を離してくれ。…今の私には受け止めきれない…」
「す、すまない…」
慌ててルークは手を離した。
まて、…どう言うことだ!
彼に触れると魔力が流れる?
だったら俺以外は?
「ジェス、ガーディ。ちょっと来い」
「どうしたんです?」
少し離れた所で様子を伺っていた二人が近付いて来た。
「一人ずつ順番に彼の手を掴んでくれ」
二人は驚いて顔を見合せる。
「触れなくて良いから、…何が知りたい?」
彼が問う。
聞きたい事は一つ。
「俺は本当に魔力を持っているのか?」
二人がルークの顔を見る。
「ルーク様…」
…知りたい!
彼は静かに答えをくれた。
「魔力はある。ただ、魔法が使えないのなら、使い方を知らないか、使えないように魔法を掛けられているか、変換されて別の場所に流れているか、だと、思うけど…」
「…。」
三人は顔を見合せた。
…誰もが魔力は無いと言った。
だから、魔法を使わず戦える剣を使えるように鍛えた。
だが、彼は魔力があると言う。
真実なのか分からないが、もし、本当に魔力が有るのなら何故、使えない…。
彼なら分かるのだろうか…?
「俺達と一緒に来てくれないか」
ルークは思わず真剣な表情で言った。
「身体が回復していないのなら、それまでの間だけでもいい。衣食住は保証する。俺達の知らない魔法を教えてくれ!」
「…。」
突然の事で戸惑うだろうが、このチャンスを逃したくない。
「ソコは、森のように木々の有る所なのか?」
彼が不安そうに質問してきた。
「思いっきり山の中にだぜ。」
ルークはそれを保証する。
「街が見下ろせる山の中腹だな。時々、野生の動物も現れる…」
そう言ってルークは笑った。
それが条件なら、あそこは最高の場所だ。
「だったら、しばらくお世話になります。…でも、あなた達の知らない魔法と、言っても…」
彼は首を傾げて不安そうに見上げる。
その表情が幼くて儚げで、ズキリと何かが胸を打つ。
「さっきの木の実。初めて見た」
ジェスが興奮気味に話す。
「俺も初めてだ」
俺達の知らない魔法がまだ、たくさん有ることは知っている。
だから、それに出会ったとき習得していくのだと、皆で話し合った。
たとえ魔力が無く使えなくても…。
「カズキでも、木の屋根を作るくらいだぜ」
「それより、食事しませんか?作っててお腹空いて…」
ガーディが控えめに口を挟む。
「そうだな」
ルークが笑い、ガーディが食事を準備するためにテントへ向かって歩きだす。
彼がゆっくりと立ち上がり、ジェスが肩を貸して彼の身体を支えて歩きだした。
「そう言えば、名前は?」
彼に歩調を合わせながら、さっきの深い森の緑色の瞳を見たくて顔を覗き込んだ。
「私の名はリーン」
じっくりと見すぎたのか、視線を外される。
あんまりじろじろ見られるのは嫌だよな…。
肩をすくめ視線を外し、夜営のテントに向かって歩きだす。
でも、楽しみだ!
俺の魔力、知らない魔法…。
リーンにはどんな世界が見えているんだろう…。
身体を寄りかからせていた木から、身体を離したので目が覚めたことに気付いたのだ。
ルークが近付くと、再びいばらが飛び出して来たので少し離れ、いばらが大地に少し戻っていき、直ぐにでも、再びバリケードを作れるよう身構えている。
目覚めたばかりで、警戒が解かれて無いのだ。
なので、少し離れた場所から話しかけた。
「警戒を解いて欲しい。あなたは白獣から馬車をまもった、協力者ではないのか?」
「…白獣…」
まだ、ぼんやりとしているのか、反応が鈍い。
「俺はルーク。街への移動中、君を見つけたから目覚めるまで待っていた。ここは危険だ」
必死に訴え掛けるが、伝わっているのか分からない。
背後では、ガーディとジェスが心配そうにこちらを見ている。
「…『守護の実』」
その人が、大きめの木の実を手に取り、そう言うと、ザザッと木が揺れ、木の実の中に何かが入っていく。
「なんだ。それは?魔具みたいだが…」
思わず興味深々に、その人の手元の木の実を見る。
「…これは『守護の実』…魔具みたいなものだけど…これは…」
その人が、寄りかかっていた木から立ち上がろうとして、ふらつき、木に手をついた。
その時、ふわりと被っていたフードが落ち、さらりとした漆黒の髪が風に揺れた。
まだ若い…華奢な青年だ。
自分たちより少し年下だろうか?
「大丈夫か?」
「ああ…」
彼は手にしていた木の実をポーチにしまう。
「こっちに来て食事をしないか?ずっと眠っていて、お腹が空いているのかも…。少し食べれば落ち着くと思うぞ」
近付いて、手を差しのべた。
見上げるその瞳が深い森の緑色をしていて、いつまでも見ていたい気がした。
彼は戸惑いながらその手を取ってくれたが、直ぐに手を離されてしまう。
どうかしたのか?
彼は申し訳なさそうに見上げてきた。
「…すまない。少し驚いて…」
「?」
ルークは何を言っているのか分からず彼を見た。
「魔力が急に流れて来たから…」
…何を言っているんだ?
「…俺、魔法は使えないぜ。魔力なんて…」
そう、魔力は無いし、魔法も使えない。
「制御出来てないのか?」
…何を言っている?
彼は、魔力が有ることを前提に話している…。
俺に…魔力は有るのか…?
ルークは目を見開いて、彼の離れた手を握り返した。
「俺に魔力が有るのか?!」
彼が苦しそうに顔を歪める。
「…手を離してくれ。…今の私には受け止めきれない…」
「す、すまない…」
慌ててルークは手を離した。
まて、…どう言うことだ!
彼に触れると魔力が流れる?
だったら俺以外は?
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「どうしたんです?」
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二人は驚いて顔を見合せる。
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彼が問う。
聞きたい事は一つ。
「俺は本当に魔力を持っているのか?」
二人がルークの顔を見る。
「ルーク様…」
…知りたい!
彼は静かに答えをくれた。
「魔力はある。ただ、魔法が使えないのなら、使い方を知らないか、使えないように魔法を掛けられているか、変換されて別の場所に流れているか、だと、思うけど…」
「…。」
三人は顔を見合せた。
…誰もが魔力は無いと言った。
だから、魔法を使わず戦える剣を使えるように鍛えた。
だが、彼は魔力があると言う。
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彼なら分かるのだろうか…?
「俺達と一緒に来てくれないか」
ルークは思わず真剣な表情で言った。
「身体が回復していないのなら、それまでの間だけでもいい。衣食住は保証する。俺達の知らない魔法を教えてくれ!」
「…。」
突然の事で戸惑うだろうが、このチャンスを逃したくない。
「ソコは、森のように木々の有る所なのか?」
彼が不安そうに質問してきた。
「思いっきり山の中にだぜ。」
ルークはそれを保証する。
「街が見下ろせる山の中腹だな。時々、野生の動物も現れる…」
そう言ってルークは笑った。
それが条件なら、あそこは最高の場所だ。
「だったら、しばらくお世話になります。…でも、あなた達の知らない魔法と、言っても…」
彼は首を傾げて不安そうに見上げる。
その表情が幼くて儚げで、ズキリと何かが胸を打つ。
「さっきの木の実。初めて見た」
ジェスが興奮気味に話す。
「俺も初めてだ」
俺達の知らない魔法がまだ、たくさん有ることは知っている。
だから、それに出会ったとき習得していくのだと、皆で話し合った。
たとえ魔力が無く使えなくても…。
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「それより、食事しませんか?作っててお腹空いて…」
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「そうだな」
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彼がゆっくりと立ち上がり、ジェスが肩を貸して彼の身体を支えて歩きだした。
「そう言えば、名前は?」
彼に歩調を合わせながら、さっきの深い森の緑色の瞳を見たくて顔を覗き込んだ。
「私の名はリーン」
じっくりと見すぎたのか、視線を外される。
あんまりじろじろ見られるのは嫌だよな…。
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