神の宿り木～旅の途中～ルーク～ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

水中都市～フールシアの溺愛～ ＊リーンの過去編です＊

帰り際に…。

　目覚めると、人の姿に戻ったフールシアの腕の中にいた。
「…。」
　身体中、麻痺まひしたかのように痺しびれている。
　散々、無茶苦茶な抱かれ方をしたからだ。
　竜体でするなんて何考えてるんだ！
　体格を考えろ！
　受け入れるように、勝手に身体の中を変えた?!
　もう、ワケわからない！
　これ以上、こいつに付き合ってられない！
　リーンはゆっくりと身体を動かし、ベットを抜け出ると、身体の中からボトボトと、白濁が零こぼれ落ちる。
「…。」
　どんだけ注いでんだよ！
　リーンは洗い流したかったが、それよりも、ココを離れたかった。
　回復魔法が効いてきて、痺れは収まってきている。
　フールシアが着ていた服で粗方あらかた拭い、脱がされた自分の服を着て、水際に立った。
「『水使い』いないのか？」
　リーンの声に反応した、『水使い』が恐る恐る、顔を覗かせる。
　ココに水竜が居るって気付いてるよね…。
　怯えるのも仕方がない。
「地上に…私がいた集落に連れていって」
　『水使い』は奥にいる、水竜が気になるようで、チラリチラリと見ている。
「あんなやつの事は気にしなくていいから」
　『水使い』は、戸惑いながら、リーンの足に触れる。
「『水の壁』」
　リーンの回りに水が渦巻き、球体となって包む。
　リーンを守るように水が包み終ると、『水使い』と共に洞窟を出て、水上を滑るように移動した。
　外は明るく、日の光が真上から照らしていた。
　一日、経っているのか？
　しばらく移動すると、見覚えの有る集落が見えてきた。
　それほど、距離が離れていたわけではないようだ。
　湖の水際に降ろしてもらい、『水使い』にお礼を言うと、良く知った人影が近付いて来た。
　豹耳のヒイロだ。
「…ヒイロ」
「お帰り。別れの挨拶をしてきたか？」
「…。」
　ヒイロはため息をつき、微笑む。
「貯水槽の話しはついた。グオルクの方から、職人を何人かと、足りない工具などを手配することになった」
「対価は？」
　それが一番、心配だ。
「塩だよ。奥地では、なかなか手に入れられない」
　リーンはホッとして、塩分濃度の濃い湖から、塩を作る方法を教えてよかったと思う。
　この辺は、ヒイロに任せておけば間違いない。
「だったら帰ろう」
「そうだな。荷物取ってきて、住民に挨拶して、帰るか…」

　リーンは水上集落に置いてある荷物をもち、集会所にいる住民達にあいさつをして、ヒイロと共に、森に帰ろうとした。
　静かだった湖に、水柱が上がる。
　水飛沫が雨のように降りそそぎ、水際が一面濡れる。
　ソコから現れたのは、上半身裸のフールシアだった。
「…。」
「なぜ俺から逃げる！」
　必死の形相でリーンに詰め寄る。
　リーンはため息をついて、フールシアから離れる。
「何度も言うけど、私は海の領域では生きれない」　
「だから、ココで！」
「ココも海の領域。私を縛ることは、死ぬ事と同じ」
「…。」
　フールシアが諦めた感じがしないので、ハッキリと言う。
「…海の領域には、なるべく近付かないようにするよ」
「リーン！」
「…初めて私の名前を呼んだな…」
「…。」
　フールシアは動揺していた。
　そう、名前を呼ばれたことが無い…。
「それが答えだ。もの珍しかっただけだよ」
　そう言って、リーンは山の中へ向かった。
「…。」
　ヒイロは、呆然と立ち尽くすフールシアに、哀れみの目を向けて、助言する。
「あのさ、リーンは誰のモノにもならない。けれど、嫌われず、側にいれると言うか、守れると言うか、互いにちょうどいい境界線を見つけた方がいいぜ。そうすれば、リーンも『しょうがないな』と、諦めるから」　
　そう言って、ヒイロはリーンを追いかけて山の中に入っていった。

　残されたのは、どうしたら良かったのか分からず、無茶をしてリーンを怒らせた、集落の守護神フールシアだけだった。