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神の宿り木~再生 2~
狼族の町サラサ
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熊族の町トワロの市場で、果物やジャム、ドライフルーツを買い込み、カズキの運転する馬車に詰め込んだ。
日持ちしない果物は後日、帰りにでも買うことに決め、一晩、熊族のお屋敷で泊まった。
そして翌日、狼族の町サラサに向かった。
ここはアリミネ火山と隣のロバロク山の丁度真ん中に有り、森を抜けると風景も一変する。
熊族周辺は果樹園が多くあったが、狼族のエリアに入ると畑や栽培しているのだろう花畑が増えてきた。
地面が、土が違うのかもしれない。
確か…使用している川は、ロバロク山から流れてきている水を使うため、温かくないと言っていた気がする。
だから作物を育てるのには丁度良いのかもしれない。
…ここはここでまた、違う野菜が有るのかと思うと楽しみで仕方なかった。
狼族の町の中に入ると、平屋の瓦屋根の家が並びだし、その奥に有る、教えてもらった領主の屋敷に向かっていると、町を歩く狼族の人々は懐かしい服装をしていた。
昔、ジンの元にいた時、着ていた着物…。
夢で見た時は気が付かなかったが、着物から尻尾が出ていた…。
…尻尾の所は穴が開いているのだろうか…。
町を歩いているのは、狼族と犬族がほとんどだ。
時折、有翼族も見かけるが、熊族の市場と違って落ち着いた雰囲気をかもし出している。
領主の屋敷にたどり着くと、こちらにも連絡が行っていたみたいで、丁重に出迎えられた。
屋敷の中に入り、夢で見た庭園が目の前に広がっていた。
「…変わらず、美しい庭だな…」
リーンは思わずそう呟いていた。
…凛とした静寂を…身が引き締まるような張り詰めた空気…それでいて、少し穏やかな気持ちになれる不思議な空間…。
「どうぞこちらへ」
そう促され部屋の中に入ると、白狼が座って待っていた。
「サラサの領主、シロガネです。…この日をずっとお待ちしておりました」
そう言われ、リーンは苦笑いして、部屋の中のシロガネの前に座った。
「リーンです。…ただ、記憶が有るだけなので、別人と理解していただきたい」
「ええ、分かっております」
そう言ってシロガネは、古い本とケースに入った準魔法石を差し出して来た。
「こちらは当時の領主の番の方が、書き残したものです」
…番と言うと、シロのことか?
確か、領主はクロナ…だったはず…。
…双子の子白狼、可愛かったよな…。
リーンは本を受け取り、ペラりと捲ると『子育て日記。シロ』と、書かれていた。
そしてその横に『気になるだろうから、これをキースに書き残す』とも、書かれていた。
…シロ。
双子達が懐いてくれて、キラとアヤメも一緒に遊んで楽しかった事を思い出す。
キースの記憶だが、自分の事のように思えるのだから、過去の私自身でも有るのだろう…。
準魔法石の入ったケースは返して、日記だけ受け取った。
「この町の市場で、収穫された野菜を見ることは出来ますか?」
カズキがシロガネに聞いた。
「こちらの市場は、朝から昼間までです。丁度片付けを初めているくらいかと…」
そうなんだ…。
ちょっとガッカリしていると、カズキが続けて言った。
「実は昨日、熊族の市場へ行ったのですが、すごく目立って騒ぎになりそうだったものですから…。こちらでしか無いモノを、見せて頂いて、試食したいと思いまして…」
シロガネはクスッと笑って言った。
「お聞きしています。お二人を連れて歩いて、目立たない方がおかしいです。昼食に、この地の作物を使った料理を準備しておりますので、後でその野菜もお見せしますね」
そう言ってシロガネは微笑んだ。
…そんなに目立っていたか?
普通にいろんな果物を食べてただけだけど…。
カズキがチラリとこちらを見る。
「…目立って無いと思ってます?獣人族ばかりの中に人族が居ると言うだけで目立つのに、金髪のキラキラのルーク様と漆黒のリーンが対のように寄り添って居れば目立ちます!」
カズキは呆れた様に言う。
「どれだけリョウタとショウタが交代で、獣人達が立ち止まらないように流していたか…」
…気が付かなかった…。
「…いつもの事だしな…」
ルークは常に目立つ立場だから、慣れているのか…。
カズキ達にとっては、ルークに気兼ね無く楽しんでもらえれば、それで良いのかもしれない…。
「…今だけですよ。帰ったら仕事が待ってますからね」
そう言ってカズキは肩をすくめた。
日持ちしない果物は後日、帰りにでも買うことに決め、一晩、熊族のお屋敷で泊まった。
そして翌日、狼族の町サラサに向かった。
ここはアリミネ火山と隣のロバロク山の丁度真ん中に有り、森を抜けると風景も一変する。
熊族周辺は果樹園が多くあったが、狼族のエリアに入ると畑や栽培しているのだろう花畑が増えてきた。
地面が、土が違うのかもしれない。
確か…使用している川は、ロバロク山から流れてきている水を使うため、温かくないと言っていた気がする。
だから作物を育てるのには丁度良いのかもしれない。
…ここはここでまた、違う野菜が有るのかと思うと楽しみで仕方なかった。
狼族の町の中に入ると、平屋の瓦屋根の家が並びだし、その奥に有る、教えてもらった領主の屋敷に向かっていると、町を歩く狼族の人々は懐かしい服装をしていた。
昔、ジンの元にいた時、着ていた着物…。
夢で見た時は気が付かなかったが、着物から尻尾が出ていた…。
…尻尾の所は穴が開いているのだろうか…。
町を歩いているのは、狼族と犬族がほとんどだ。
時折、有翼族も見かけるが、熊族の市場と違って落ち着いた雰囲気をかもし出している。
領主の屋敷にたどり着くと、こちらにも連絡が行っていたみたいで、丁重に出迎えられた。
屋敷の中に入り、夢で見た庭園が目の前に広がっていた。
「…変わらず、美しい庭だな…」
リーンは思わずそう呟いていた。
…凛とした静寂を…身が引き締まるような張り詰めた空気…それでいて、少し穏やかな気持ちになれる不思議な空間…。
「どうぞこちらへ」
そう促され部屋の中に入ると、白狼が座って待っていた。
「サラサの領主、シロガネです。…この日をずっとお待ちしておりました」
そう言われ、リーンは苦笑いして、部屋の中のシロガネの前に座った。
「リーンです。…ただ、記憶が有るだけなので、別人と理解していただきたい」
「ええ、分かっております」
そう言ってシロガネは、古い本とケースに入った準魔法石を差し出して来た。
「こちらは当時の領主の番の方が、書き残したものです」
…番と言うと、シロのことか?
確か、領主はクロナ…だったはず…。
…双子の子白狼、可愛かったよな…。
リーンは本を受け取り、ペラりと捲ると『子育て日記。シロ』と、書かれていた。
そしてその横に『気になるだろうから、これをキースに書き残す』とも、書かれていた。
…シロ。
双子達が懐いてくれて、キラとアヤメも一緒に遊んで楽しかった事を思い出す。
キースの記憶だが、自分の事のように思えるのだから、過去の私自身でも有るのだろう…。
準魔法石の入ったケースは返して、日記だけ受け取った。
「この町の市場で、収穫された野菜を見ることは出来ますか?」
カズキがシロガネに聞いた。
「こちらの市場は、朝から昼間までです。丁度片付けを初めているくらいかと…」
そうなんだ…。
ちょっとガッカリしていると、カズキが続けて言った。
「実は昨日、熊族の市場へ行ったのですが、すごく目立って騒ぎになりそうだったものですから…。こちらでしか無いモノを、見せて頂いて、試食したいと思いまして…」
シロガネはクスッと笑って言った。
「お聞きしています。お二人を連れて歩いて、目立たない方がおかしいです。昼食に、この地の作物を使った料理を準備しておりますので、後でその野菜もお見せしますね」
そう言ってシロガネは微笑んだ。
…そんなに目立っていたか?
普通にいろんな果物を食べてただけだけど…。
カズキがチラリとこちらを見る。
「…目立って無いと思ってます?獣人族ばかりの中に人族が居ると言うだけで目立つのに、金髪のキラキラのルーク様と漆黒のリーンが対のように寄り添って居れば目立ちます!」
カズキは呆れた様に言う。
「どれだけリョウタとショウタが交代で、獣人達が立ち止まらないように流していたか…」
…気が付かなかった…。
「…いつもの事だしな…」
ルークは常に目立つ立場だから、慣れているのか…。
カズキ達にとっては、ルークに気兼ね無く楽しんでもらえれば、それで良いのかもしれない…。
「…今だけですよ。帰ったら仕事が待ってますからね」
そう言ってカズキは肩をすくめた。
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