神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

文字の大きさ
242 / 462
神の宿り木~再生 2~

狼族の町サラサ

しおりを挟む
 熊族の町トワロの市場で、果物やジャム、ドライフルーツを買い込み、カズキの運転する馬車に詰め込んだ。
 日持ちしない果物は後日、帰りにでも買うことに決め、一晩、熊族のお屋敷で泊まった。
 そして翌日、狼族の町サラサに向かった。
 ここはアリミネ火山と隣のロバロク山の丁度真ん中に有り、森を抜けると風景も一変する。
 熊族周辺は果樹園が多くあったが、狼族のエリアに入ると畑や栽培しているのだろう花畑が増えてきた。
 地面が、土が違うのかもしれない。
 確か…使用している川は、ロバロク山から流れてきている水を使うため、温かくないと言っていた気がする。
 だから作物を育てるのには丁度良いのかもしれない。
 …ここはここでまた、違う野菜が有るのかと思うと楽しみで仕方なかった。
 狼族の町の中に入ると、平屋の瓦屋根の家が並びだし、その奥に有る、教えてもらった領主の屋敷に向かっていると、町を歩く狼族の人々は懐かしい服装をしていた。
 昔、ジンの元にいた時、着ていた着物…。
 夢で見た時は気が付かなかったが、着物から尻尾が出ていた…。
 …尻尾の所は穴が開いているのだろうか…。
 町を歩いているのは、狼族と犬族がほとんどだ。
 時折、有翼族も見かけるが、熊族の市場と違って落ち着いた雰囲気をかもし出している。
 領主の屋敷にたどり着くと、こちらにも連絡が行っていたみたいで、丁重に出迎えられた。
 屋敷の中に入り、夢で見た庭園が目の前に広がっていた。
「…変わらず、美しい庭だな…」
 リーンは思わずそう呟いていた。
 …凛とした静寂を…身が引き締まるような張り詰めた空気…それでいて、少し穏やかな気持ちになれる不思議な空間…。
「どうぞこちらへ」
 そう促され部屋の中に入ると、白狼が座って待っていた。
「サラサの領主、シロガネです。…この日をずっとお待ちしておりました」
 そう言われ、リーンは苦笑いして、部屋の中のシロガネの前に座った。
「リーンです。…ただ、記憶が有るだけなので、別人と理解していただきたい」
「ええ、分かっております」
 そう言ってシロガネは、古い本とケースに入った準魔法石を差し出して来た。
「こちらは当時の領主のつがいの方が、書き残したものです」
 …つがいと言うと、シロのことか?
 確か、領主はクロナ…だったはず…。
 …双子の子白狼、可愛かったよな…。
 リーンは本を受け取り、ペラりと捲ると『子育て日記。シロ』と、書かれていた。
 そしてその横に『気になるだろうから、これをキースに書き残す』とも、書かれていた。
 …シロ。
 双子達が懐いてくれて、キラとアヤメも一緒に遊んで楽しかった事を思い出す。
 キースの記憶だが、自分の事のように思えるのだから、過去の私自身でも有るのだろう…。
 準魔法石の入ったケースは返して、日記だけ受け取った。


「この町の市場で、収穫された野菜を見ることは出来ますか?」
 カズキがシロガネに聞いた。
「こちらの市場は、朝から昼間までです。丁度片付けを初めているくらいかと…」
 そうなんだ…。
 ちょっとガッカリしていると、カズキが続けて言った。
「実は昨日、熊族の市場へ行ったのですが、すごく目立って騒ぎになりそうだったものですから…。こちらでしか無いモノを、見せて頂いて、試食したいと思いまして…」
 シロガネはクスッと笑って言った。
「お聞きしています。お二人を連れて歩いて、目立たない方がおかしいです。昼食に、この地の作物を使った料理を準備しておりますので、後でその野菜もお見せしますね」
 そう言ってシロガネは微笑んだ。
 …そんなに目立っていたか?
 普通にいろんな果物を食べてただけだけど…。
 カズキがチラリとこちらを見る。
「…目立って無いと思ってます?獣人族ばかりの中に人族が居ると言うだけで目立つのに、金髪のキラキラのルーク様と漆黒のリーンが対のように寄り添って居れば目立ちます!」
 カズキは呆れた様に言う。
「どれだけリョウタとショウタが交代で、獣人達が立ち止まらないように流していたか…」
 …気が付かなかった…。
「…いつもの事だしな…」
 ルークは常に目立つ立場だから、慣れているのか…。
 カズキ達にとっては、ルークに気兼ね無く楽しんでもらえれば、それで良いのかもしれない…。
「…今だけですよ。帰ったら仕事が待ってますからね」
 そう言ってカズキは肩をすくめた。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター
BL
 ボスは悲しく一人閉じ込められていた俺を助け、たくさんの仲間達に出会わせてくれた俺の大切な人だ。 自分だけでなく、他者にまでその不幸を撒き散らすような体質を持つ厄病神な俺を、みんな側に置いてくれて仲間だと笑顔を向けてくれる。とても毎日が楽しい。ずっとずっとみんなと一緒にいたい。 ――だから俺はそれ以上を求めない。不幸は幸せが好きだから。この幸せが崩れてしまわないためにも。  そうやって俺は今日も仲間達――家族達の、そして大好きなボスの役に立てるように―― 「頑張るっす!! ……から置いてかないで下さいっす!! 寂しいっすよ!!」 「無理。邪魔」 「ガーン!」  とした日常の中で俺達は美少年君を助けた。 「……その子、生きてるっすか?」 「……ああ」 ◆◆◆ 溺愛攻め  × 明るいが不幸体質を持つが故に想いを受け入れることが怖く、役に立てなければ捨てられるかもと内心怯えている受け

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

僕に双子の義兄が出来まして

サク
BL
この度、この僕に双子の義兄が出来ました。もう、嬉し過ぎて自慢しちゃうよ。でも、自慢しちゃうと、僕の日常が壊れてしまう気がするほど、その二人は人気者なんだよ。だから黙って置くのが、吉と見た。 そんなある日、僕は二人の秘密を知ってしまった。ん?知っているのを知られてしまった?が正しいかも。 ごめんよ。あの時、僕は焦っていたんだ。でもね。僕の秘密もね、共有して、だんだん仲良くなったんだよ。 …仲良くなったと、そう信じている。それから、僕の日常は楽しく、幸せな日々へと変わったんだ。そんな僕の話だよ。 え?内容紹介が内容紹介になってないって?気にしない、気にしない。

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

【8話完結】強制力に負けて死に戻ったら、幼馴染の様子がおかしいのですが、バグですか?

キノア9g
BL
目が覚めたら、大好きだったRPGの世界に転生していた。 知識チートでなんとか死亡フラグを回避した……はずだったのに、あっさり死んで、気づけば一年前に逆戻り。 今度こそ生き残ってみせる。そう思っていたんだけど—— 「お前、ちょっと俺に執着しすぎじゃない……?」 幼馴染が、なんかおかしい。妙に優しいし、距離が近いし、俺の行動にやたら詳しい。 しかも、その笑顔の奥に見える“何か”が、最近ちょっと怖い。 これは、運命を変えようと足掻く俺と、俺だけを見つめ続ける幼馴染の、ちょっと(だいぶ?)危険な異世界BL。 全8話。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

処理中です...