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名前を呼んで…。(番外編) その後のヒナキとユグの話

何か違う…。

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 ヒナキが風呂から上がり着替えると、またお腹が鳴って、食べたり無いのだと感じ、食器を持ってクルーラの食堂に向かった。
 クルーラの宿件食堂では、頼んでおけば、いつでも食事を運んでくれるし食事も出来る。
 ヒナキはクルーラの住民に囲まれながら『魔素の解放』後の状況報告聞き、食事を食べた。
 ヒイロは丸一日眠っていたらしく、改めて思うと、昼前に家に帰って、目覚めたのが次の日の昼なのだ。
 …ユグに後で来ると言ったのに、一日経ってた…。
 ヒナキは苦笑いしながら、今日中に様子を見に行こうと誓った。


 クルーラが通常通りの生活に戻り、一息ついたヒナキは『森の聖域』に向かった。
 と言っても、日は傾き始め、もう夕方だ。
 あの後、戻ってきた住人や近隣の村の伝令役が来て、『森の聖域』の様子はどうとか、『魔素』はもう大丈夫なのかとか、質問責めにあい、遅くなってしまったのだ。
 今回の『魔素の解放』は終わったが、この後また復活するとか分かるわけが無いって!
 疲れはてたヒナキはユグの顔を見て、くらくなる前にはクルーラに戻ろうと思い向かっていた。
 脇道を抜け、世界樹が見える場所まで来ると、公園で木霊や土霊達と一緒にブランコに乗っているユグの姿が見えた。
 ヒナキはホッと一息ついて、ユグ達の方に向かって行った。

 ユグはすぐにヒナキに気がつき、ブランコから降りて駆け寄ってくる。
 成長して感覚がまだ、おぼつかないと言っていたが、真っ直ぐにヒナキに向かってきて、そのまま抱きついてきて、その勢いに、ヒナキはフラりとバランスを崩し後ずさる。
 小さき頃のままの勢いでヒナキに抱きついて来て、下手すれば頭から地面にぶつかっていたぞ!
「ユグ」
 ヒナキが声をかけるが、ユグはヒナキから離れようとはしない。
「ユグ、少し力を緩めてくれ…苦しい…」
 …小さい頃とは違って、今のユグには力があるのだ。
 加減をまだ知らないユグに、こうやって教えていくしかない。
 ユグがゆっくりと腕の力を緩める。
 ヒナキがホッとするとユグと視線が合い、おでこをコツンとくっ付けられ、二人の視線が絡まる。
 何も言わないまま、じっとそうしていると、横から視線を感じ、チラリと横目で見ると、物珍しそうに木霊や土霊がじっとこっちを見ていた。
 なにやっているんだ?!僕は?!
 正気に返ったヒナキはユグからそっと離れる。
 ユグはムッとして、そのままヒナキの手首をつかみ、世界樹の方に向かって歩き出した。
 僕は…どうしてしまった…?!
 
 世界樹…ユグの本体の側まで来ると、ヒナキは世界樹に押し付けられ、ユグと再び額を付き合わせた。
「ユグ…。どうしたんだ?」
「…。」
 ユグは何も言わず、ヒナキの身体の上に自分の身体を重ねてくる。
 だから何で?!
 急に心臓がドキドキと脈打ち始める。
「…こうしてた…」
「…。」
 こうしてたって…何?!
 ヒナキは混乱していた。
 いきなりのユグの行動と、自分の動悸…。
 そしてユグは服の上から、ヒナキの身体をペタペタと触り始める。
 どうした?!
 何が起こっている?!
「…何か…違う…」
 だから何が?!
 ユグが、今度は服の下に手を入れて、ヒナキの身体を触ってくる。
 待て待て!
 何をしている?!
「ユグ?!」
 ヒナキは身体を触り始めたユグの肩を掴むと、ユグは視線をヒナキに向ける。
「…魔力が…一つに…なってた…」
 …なんの事だ?
「…一緒に…いたい…」
 ユグは言葉を操るのが、まだ確かではない…。
 …魔力が一つって…。
 リーンとルークの事か?!
 …まさか…あの二人のイチャイチャを見ていたのか?
 それで、一緒に居たいって…。
 ヒナキは一つ思い立った。
 世界樹からリーンが戻ってきて、数日間、リーンとルークは一緒にリーンの家で暮らしていた。
 …あの二人は子供を成したくらいの、つがいなのだから、ヒナキの知識の有る行為をしていてもおかしくはない…。
 そう思ったら、ヒナキの頬に赤みがさした。
 もしかして、それを見ていたのか?
 だから興味を持って、それを僕で試そうとしたのか?
 だったら伝えなくてはいけない。
「ユグ。あれは好きな者同士でする、繁殖行為だ」
 そう、僕には知識は有る。
 つがいにとっては神聖なもの。
 だけど実際、どう言うものかは知らない…。
 それに…。
「…僕の身体は成熟していないから、どちらにしろ無理だ」
 もしそれをユグが望んだとしても、身体は大人になりきっていない子供のまま…。
「…もっと…大きくなれば…いいの?」
 そう言う問題ではないが…。
「…やめろよ『魔素の解放』を興して成長するのは…」
 念を押しておかないと、ユグは周囲の状況を知らないから、派手にやりそうだ。
「…。」
 …そのつもりだったな…。
 とは言え、ユグが僕を好きでいてくれるのは嬉しい…。
 …んっ?
 ユグが僕を好き…?
 リーンとルークみたいに…?
 ますますヒナキの顔に赤みがさした。
 …なんだ?コレ…。
 辺りが暗くなり始め、ヒナキは我に返ってユグを押し退ける。
「…暗くなるから…帰る」
 ヒナキはユグの前から駆け出し、顔を真っ赤にしてクルーラへ向かった。
 



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