眠っていた魔力紙を折紙みたいに折ったら、新しい魔法の使い方が出来たので、役立てます。

ゆう

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森の聖域クルーラ

迷子の子供 ~リーン~

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 『森の聖域』に住むリーンは、獣人の街グオルクから『森の聖域』クルーラに向かって、歩き慣れた森の中の一本道をを歩いていた。
 グオルクに住む娘や孫達と遊び、ホクホクとしながらの、久しぶりの帰還だ。

 ふと、急に変な違和感を感じて、リーンが足を止めると、空間の歪みを感じた。
「…歪み?」
 リーンは長年この地に住んでいるので、『森の聖域』周辺に居れば、異変は勝手に感知してしまう。 
 魔法を使って、規則正しく空間を開いた感じではない…。
 それもイビツな空間の歪み…。
 ほんの数秒感知して、ソレは直ぐに消えてしまった。
「…。」
 何が起こった…?
 あの感じだと、近くなのか?
 そう思っていると、風霊がリーンの回りをグルグルと回りだした。
 風霊が、呼びに来たのだ。
 何かを伝えるために…。
「行くよ」
 リーンは風霊に誘われるまま、クルーラとは逆の方向に向かって、足早に歩き出した。


 どれだけ森の中を歩いたのだろう…。
 傾き掛けていた日差しが緩やかに沈んでいく…。
 風霊達が誘うのは、足場の悪い道なき森の中…。
 早くしないと日が沈んでしまう…。
 次から次へと姿を現す風霊達は、道を示すだけ…。
 さっきの歪みに関係しているのだろう…。
 ふと、遠くの方で何かが動く気配がした。
 リーンは風の魔法を使って何者かを探る。
 …人?
 こんな時間に、森の中にいるのは危険だ。
 リーンが足早に近付くと、子供が大地に寝転んで、空に向かって手を伸ばしていて、こちらに気が付き振り向いた。
 黒髪の痩せ細った幼い少年…。
「何でこんな所に子供が…」
 リーンは驚いて子供に近付いた。
 こんな所に一人…。
 誰かに置いていかれたのか?!
 地面に寝転ぶ子供の側に来ると、膝丈のズボンの下から赤く擦りむいた膝と、足に擦り傷をいくつも作っていた。
 もしかして、この状態で、森の中を歩いていたのか?!
 リーンは子供の側でしゃがみこむと、擦りむいた子供の膝に手をかざし、治療の魔法を使った。
 この程度なら、簡単に治せる。
 擦り傷は暖かい光に包まれて、みるみる傷はふさがった。
「動ける?」
 リーンが声をかけると、寝転んでいた子供が、ゆっくりと身体を起こし頷いた。
 リーンはホッとして名前を聞いた。
「私の名前はリーン。君の名前は?」
「…。」
 子供は少し考え、首を左右に振った。
 名前が分からない…?
 どう言う事だ…?
 子供が不安そうにブルリと震えたので、リーンは微笑んで子供の両脇を持ち上げ、立ち上がらせた。
 今はソレどころではない。
 早く『クルーラ』に帰らないと、門が閉じてしまう…。
「一緒においで」
 子供は不安そうにリーンを見上げた。
 風霊達が呼んだのは、この子を見つけたから…。
 保護して欲しいと…。
 子供が頷くと、リーンは微笑んで片腕に抱き上げた。
 急ごう…。
「『瞬脚移動しゅんきゃくいどう』」
 リーンはそう言って、元来た道を走り出した。
 急に動いたからか、子供がビックリして、リーンの肩にしがみつく。
 ごめんね。
 説明している時間がない…。
 リーンは、ものすごい速さで木々の間を駆け抜ける。
 しばらく走ると、しがみついていた子供の重みが増し、子供の力が抜けた。
 そっと子供の様子を見ると、眠ってしまったようだ。
 きっと森の中を歩き回り、疲れはてたのだろう…。
 

 リーンはなんとか、『クルーラ』の門が閉じる直前に、『クルーラ』の小屋に駆け込んだ。
 『クルーラ』の入り口の小屋は、日が沈むと同時に結界が張られ、出入り出来なくなる仕組みだ。
 慌てて駆け込んで来たリーンに、小屋の門番のチトセが驚く。
「お帰りなさい。リーン様」
「ただいま。チトセ」
 リーンは間に合ったと、ホッと息を付く。
「…そちらの子供は?」
 リーンが腕に抱えている子供を見てチトセが聞いてくる。
「森に居たんだ」
「森に?!もしかして?!」
 チトセは驚いて、緊張した様子で言う。
 やはりチトセも、そう思うよね。
「かもしれない…」
 チトセが大きなタメ息を付く。
「…リーン様が保護してくれて良かったです」
 チトセも昔、この子と同じように突然森に現れた『迷い人』だ。
 彼の場合は、狼族に保護され、今は『青の館』で暮らしている。
「ああ。風霊達が教えてくれた」
「今日は宿へ?」
「その方が良いだろう。この子の目が覚めたら連れてくるよ」
「分かりました」
 チトセがそう言って小屋の門の灯りを消す。
 リーンは子供を連れて、側に有る宿屋へ連れていった。


 翌日、リーンが宿屋を訪ねたが、子供はまだ眠ったまま…。
 目覚めたら消化の良い食べ物を、準備するようお願いして、リーンは宿屋を出た。
 そして、今後の事も有るので『クルーラ』の村長でもあるヒナキの元に向かった。

「ヒナキ」
 リーンがヒナキの店に入り、声をかけるが返事はない。
 まだ、寝てるのか、作業に集中して気が付いていないのか…。
 リーンは奥の部屋へと続く扉を開ける。
「ヒナキ!森で子供を保護した!『迷い人』かもしれない!」
 リーンがそう叫ぶと、眠たそうな白髪のヒナキが、顔を出した。
「…『迷い人』だと…?」
「ああ、風霊が教えてくれた。ソレと、空間の歪みを感知した」
「…!!」
 ヒナキはハッと眼を見張り、大きなタメ息を付いた。
「『迷い人』は…?」
「宿でまだ眠っている」
「…目覚めたら呼んでくれ。その間に、昔の本を探しておくよ」
「ああ、そうだね。…今度は何が起こるんだろ…」
「さあ~な」
 ヒナキはそう言って手を振り、奥の部屋へと戻っていった。

 『迷い人』が訪れるのは、何かしら意味が有った。
 魔素の多いこの地でも身体の異変が起こらないため、『森の守り人』の補佐になったり、『クルーラ』の結界を強化したり、『魔力紙マリョクシ』を作ったり…。
 『クルーラ』に馴染めなくて森を出て、人族の住む街に行ってしまった者もいるが…。
 あの子は、どうだろうか…。
 『クルーラ』に馴染んでくれるだろうか…。

 
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