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3章 二学期(1)。
111.後輩の慰め
しおりを挟む(分かってるよ…………本当は殺せない、そんな勇気ない)
分かっているけど、出来たらと願ってしまう。
本当に僕は、臆病な人間だ。
ーーー
(李世side)
「せんせー、ボクと真冬まぶたが重い病気になったので寝かせてくださ…………」
サボりに保健室に行ったら、
「…………あれ、黄緑の先輩」
よく未来斗先輩と一緒にいる人がいた。
「……!」
先輩はボクを見るなりギョっとして、
不思議に思ったボクが先輩の手元を見ると、
「え、なんでナイフなんて持ってるんですか?!」
一気にまぶたが軽くなった。
ーーー
6時間目のチャイムが鳴る。
「ふむふむ、それは辛いですねーー」
真冬とベッドに座って保健室の冷蔵庫に入っていたプリンを食べながら、話を聞いた。
「それ俺のプリン」
「2つあるなんてボク達の為に用意してくれたんですね?しかもコーヒーとチョコ味ってそれもうボク達の好物わかってるじゃないですか~!」
半ば強引に奪ったプリンを隣でもくもくと食べている真冬を一瞬見て、今度は先生の椅子に行儀よく座る先輩に目をうつした。
ちなみに、椅子も先生から無理矢理奪ったもの。
「あの……先輩は、本当に澪先輩の事好きなんですか?」
「えっ……?」
たまに見てて思うけど、
「ボク……、先輩が嫉妬に狂った姿なんて見たことないです、まあ、単にあんまり会わないからってのもありますけど」
そんなに好きならもっと…………狂えるはず、なのに。
「…………好き、だよ」
「それならいいんですけど………無理はしないでくださいね」
そう言うと、真冬が一旦食べるのをやめて……こそっと耳打ちしてきた。
「……うん、たしかに。…先輩、あんまり溜め込みすぎると、いつか爆発して、周りが見えなくなっちゃいますよ」
真冬から言われた事をそのまま伝えた。
「無理に溜め込み過ぎないこと、言いたいことは誰でもいいから言うこと、言えないならボクが聞きますから!」
人の悩みを聞くのは得意です……!
にこーっと笑って、食べ終えたプリンを真冬のと一緒に先生に「捨ててください」と言って渡した。
「…………うん……ありがとう…………って、わぁ……!」
「よしよしですよー、先輩…っ!」
座ったままの先輩の後ろに手をまわして、そのまま撫でてあげた。
背の高い先輩を小柄で背の低いボクが立たれたまま撫でるのは、背伸びしなきゃいけないから嫌だけど、
「ちょ、ちょっと………何このじょうきょ「あ、先輩髪もふもふですね」うわわゎわ……!」
照れてる先輩…………ちょっと可愛い。
(なんかまた撫でられたけど………まあ、さっきほど不快じゃない)
しばらくして、
「…………うん……でも、ありがとね。」
「いえいえ……!ボクはいつだって、先輩の悩み、聞きますからね」
あ……ちょっとだけ、泣いてる。
「ごめん……、こんなに近くで、長く人の温もりを感じたの久々で………」
先輩は低い優しい声でそう言って、目尻に滲んだ涙を拭った。
(…………ていうか、この先輩の名前……なんだっけ)
やっべ忘れた………
ーーー
(真冬side)
李世が、目の前で黄緑の先輩を慰めてあげてる。
(…………あんな人でも、泣くんだ)
…………………………
(………泣くなんて、弱い人間がすることだ。)
僕だったら泣いたりしない。
弱い人間になんてなりたくない。
もう……………二度と。
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