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3章 二学期(1)。
114.名前のコンプレックス
しおりを挟むこいつの…………名前の、読み方?
「いくと、だろ?」
「だ…だよね?僕、いくとでいいんだよね……?」
…………え、何……………………
「なんかあった……?」
郁人は、特に躊躇うこともなく……教えてくれた。
他の3人も、立ち止まって喋るのをやめて聞いている。
「あの……実は、さっき………保健室で李世さんに会って……………」
保健室で…………
「あ、6時間目授業来なかったのって、李世と話してたの?」
「う……うん!ごめんね、言っておけば良かった」
澪達は知っていたらしい。
「それで……名前を聞かれて、漢字だけ教えたんだよね」
なんで漢字を教えたんだろ………
普通に声で伝えればいいのに。
(って……ツッコむところでもないか)
「そしたら…………」
ーーー
「何これ……なんて読むの………?さくらぎ、…ふみ…?」
「……え?」
「ふみとさんですか?」
「………」
真冬さんは「あやと」って読んだ。
「い……いくと、いくとです……!」
「あー…音読みですか」
え…………
(僕の名前って、もしかして……初見で読めないの…………?)
ーーー
……ということらしい。
「俺は……普通にいくと、って呼んでたけど………」
ていうか、そんなことあんまり気にしてなかった………
「僕もいくとだった……」
「俺もー、ていうか俺達は幼稚園の時の名札が平仮名だったしな……」
でもそう考えると、「未来斗」も読みにくい。
(みらい……と、まあ、未来斗は分かる人多いのかな………)
流石に、斗があるのにみらいっては読まないか。
「俺も……初めお前から自己紹介してきたし、普通にいくとって覚えた……」
「皆はそうなんだ………なら、良いんだけどさ……」
…………まあ、確かに漢字だけ教えられたら、ふみとかあやって読んじゃうかも。
「あ……でもそれなら僕も、男だって思われたら、みおじゃなくてれい、かりょうって呼ばれる」
「澪はそういうのありそう………俺は優馬だから、そういうのはなかったけど!」ニコ!
「男って思ってくれる人たちがいてよかったね」
「……え、そこ?」
でもそう考えると………名前って、大事なんだな………………
「僕は将来名付け親になるなら読みやすい名前をつけたいなー」
「だね……僕もそうする」
ーーー
(未来斗side)
「ただいまー!」
帰宅した。
「あ、おにひゃんおかえり」
「ただいま明日香……え、アイスあるの?!」
妹は部活に行かずに即帰宅するから、帰りが早い。
ソファに横になりながらアイスを咥えて、だらだらと漫画を読んでいる明日香がいた。
「あるよー、冷凍庫の中」
すぐに冷凍庫の中を漁って、棒のアイスを見つけた。
「せめて制服着替えてからにしなよ………」
「上にパーカー着てるから大丈夫!」
そういうもんじゃないって叩かれた。
「あ、そういえばお兄ちゃん」
「ん?」
アイスを食べている時に、明日香が何気ない顔で言った。
「お兄ちゃんと海斗さんってさ…………」
海斗の話……?
そういえば明日香は田舎に行った時に海斗と会ったっけ。
「うん」
「すごく仲良いよね」
「うん」
「田舎にお泊まりした時もべたべただったし」
「うん」
「いつも一緒だし………」
「うん」
「付き合ってんの?」
「うん」
……………………うん?
「あ、やっぱり?」
「ちちちちがう!!!今のは違ーーーッ!!」
アイスに夢中で全く話を聞いてなかったのが仇になった。
「良かったー彼氏いない歴=年齢なお兄ちゃんにもようやく……」
「うん明日香、俺に同性の恋人がいる前提で話進めるのやめてくんない……?」
その後なんとか誤解は解けた。
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