ゆうみお

あまみや。旧

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3章 二学期(1)。

118.本気

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ちょっと長めです。




(未来斗side)




「よしっ、圧倒して勝てた!!」


結果は7ー2。
7点のうち5点は俺が決めましたドヤ




「次の相手は澪だな!楽しみ!」
モブ「澪って……あの、小さいやつ?」
「そうそう!澪は弱そうに見えるけど、瞬発力は人一倍…まあ、人並み…?だからな!」





てなわけで。






ーーー




「すごい!!パンダがたくさん!!!」


澪のクラスのクラスTシャツはど真ん中にかわいいパンダの絵が描いてある。


パンダが好きなのかな………とりあえず可愛い!!!



「てか……やっぱり澪って、身長小さいな」
「サッカーの人達が皆大きいだけだから……!!」



170cm越えの人達ばっかで、澪が小学生に見える。



「…………あ」




うちのクラスの応援席に海斗がいる…………

向こうのクラスにも優馬と郁人がいるし、






………………これは……………………






(澪に危害を与えないように、全力で活躍しよう)




海斗に良いところを見せたいけど、あの2人から恨みを買うのだけは嫌だ。







「みおォォォッ!!!!かっとばせーー!!!!」
「優馬、これサッカー」






ーーー





試合が始まって、さっそく点を取ることができた。


海斗と目が合って自慢げに笑うと、呆れた顔で笑い返してくれた。




(去年よりずっと……楽しい)




去年はまだ、海斗がこっちにいなかったし………





大好きな人に活躍を見てもらうのって、こんなに楽しいんだ………。







「海斗!次も決めるから!」ニコパ--ッ
「おう…無理はするなよ?」






この人に対するこの気持ちがなんなのかはわからないけど、






(いつか、知れたらいいな………)








なんて、あの頃は考えてた。







気付いた時にはもう、遅かったのに。










ーーー





『ただいまの試合ーー、3年3組対3年4組、結果は7ー3で3年3組の勝利です』




「やったーー!海斗ー!」
「おめでと、すっごい活躍してたな」



周りに犬みたいだと言われて、少し含み笑いしてしまう。





ーーー




「明日は雨だから、サッカーは卓球になるかもね」




しばらくしてお昼休みになって………いつもの5人で渡り廊下の階段に座ってお弁当やらパンやらを食べていた。




郁人がスマホを片手に、明日の天気を教えてくれた。





「卓球…!やった……!」
「未来斗はなんでも楽しめるな………そういえば、3組のリレーの出場者って誰?」



「俺とモブ男とモブ下!それとモブ太郎とモブのすけとーー「あ、分かったもう大丈夫」」 




とりあえず、俺は出ますドヤ






「うちのクラスは郁人と俺と、あとその他モブだから、負けないからな!」
「おう!俺も負けない!」




雨が降るのは午前中で、小雨だからきっと地面もあまり濡れない。




雨が降ったら体育館で大縄だけど……その天候ならリレーは出来ると思う。





…………と、そんな感じで、








ーーー



次の日。






「おはよーっ!皆!」
「おはよ、今日も元気だね………」



筋肉痛なのか足を抑えながら澪が苦笑いでこっちを見ていた。



「まあ、若いしな!それに今日はリレーもあるし…!楽しみすぎる……」




なんて体育館で話していると、






「先輩、おはよーございます!」
「……」





後輩達も来た。



「……!それ…!」




昨日までとは違う、



頭に…………!







「ああ、このくま耳ですか?スポ大のノリみたいな感じで…………2の2は全員つけてますよ!」





リアルじゃない、もふもふしそうな方のくま耳が頭についていた。




「真冬!それ似合ってる!」
「……」ニコ




真冬は、気に入ったのかな………機嫌良さそう。





「未来斗先輩達もつけます?」
「大丈夫ー」






ーーー




予定通り、雨が降っていた。



「卓球…!卓球ーー!」



卓球部の人達が台を用意しているのを手伝いながら、楽しみでずっとご機嫌でいた。




「またあれが見られるんだと思うと楽しみなような恐ろしさもあるような……」
「あははっ!海斗にかっこいいとこ見せなきゃな!」





…………確か次戦うのは2年4組。


卓球部が多いクラスって聞いたけど……そんなの関係ない!多分!






ーーー




俺が戦った相手は、卓球部のエースだった。





「っ……!ま、負けた………」






まあ流石に………駄目か………… 



手加減はいらないと言ったから、容赦なくスマッシュを打たれて止められて、11‐5で負けてしまった。




「おつかれ、まあ流石にエースじゃな………、でもすごいよ!5点もとれるなんて!」
「うんー…、スマッシュ止められるなんて聞いてない……」




タオルで汗を拭いて、海斗の隣の席に座る。




「でも次はリレーだし、そこで勝てばうちのクラスも3位以内は夢じゃないって!」
「そっか、じゃあ頑張らなきゃだな…!」



海斗も昨日の予選で負けてるから、もう試合はない。



でも……リレーで加点される点数はすごく大きくて、1位になれば、総合の優勝も夢じゃない……!






「リレーまで時間あるし、澪達の応援行こっか!」
「うん…!」







ーーー




バスケ。





「今回は邪魔すんなよ!」
「 わ、分かってるよ……」



優馬と郁人はすごくピリピリしてる。
やっぱり、犬猿の仲って感じ…………



澪が応援席に座って呆れた様子で、




「2人ともがんばれー」




と言うと、

 



「「うん!がんばる!」」





…………同じような笑顔だった。








ーーー




『~で、3年4組の勝ちです』

 

「「わーい!」」




あの後……優馬と郁人はいきなり協力し始めて、しかもありえないくらい息ぴったりだった。


そしてかなりの点差で………勝った。




「「褒めて褒めてー!」」
「いつまで息ぴったりなの……?!」





 「この調子で頑張って……、僕はもう補欠しかないけど…………」
「はぁ……澪がサッカーしてるとこ、1回しか見れなかったな……」 



優馬がため息をつくと、澪が少し苦笑いした。






ーーー





その後も2人は調子が良くて…………






「優馬、はい…!」
「おっけーまかせろ!」






次の試合でも、どんどん点を稼いだ。





「頑張れーっ!」
「がんばれー」
「が、頑張れ…!」






ーーー


点も稼げて、もう勝ちも見えてきた頃………



「早苗、パス!」
「おうっ!っ………………、





ぅ"あ……ッ!!」





クラスメイトにボールをパスされたとき、




優馬が………体制を崩した。






「っ……痛………」






その場に転んで、急いで体制をなおそうとしたけど…………足を捻ったのか、足首を抑えて苦しそうにしている。




「……!優馬、だい…『試合終了です』……!」




タイミングよく試合は終わった。





ーーー




「ごめん……次は出れないかも」
「補欠もいないし………困ったな……」


クラスメイトと椅子に座った優馬が話していて、周りも少しざわついてる。



「どうすんだよ……、お前が一番強いのに………」
「そんな事言われても………」
「俺入る?」



優馬とクラスメイトの声が重なった。


「「は?」」




「俺入りたい!」


バスケがしたくて、何となく手を挙げた。




「いや、お前クラス違うだろ…………」
「気にしなくていいのに……、クラス……一緒で今ここにいるのって…………」




海斗、澪、俺、その他モブ…(クラスはちがう)






...







「いないな……」
「僕がいるけど??」





「双葉は……でき…る、のか……?」
「あの身長で男子バスケなんて出来るか…?ふっ飛ばしそう……」
「流石にむごいだろ………、小学生入るようなもんだし……」
「……」イラッ



澪の何かがキレた。




「やってやるよ!!!」





…………そういう訳で、







ーーー


準決勝戦が始まった。




「モブ田、はいっ」


郁人が近くのクラスメイトにパスをして、そのクラスメイトがしばらくドリブルをしながら走って………




「ふ、双葉……できるか?できるか、大丈夫?!」
「できるよ…!早く渡して……!!」



優しめにパスしたボールを澪が両手で受け取って、




「っ……えい」 




ゴールに向かって精一杯手を伸ばした…………けど、
  
 



「っ……!」



高さとコントロールが甘くて、ゴールのふちに当たって跳ねてしまった。




「はい……!」




でも、そこにいた郁人が素早くボールを奪って、








ーーーーーガコンッ








ゴールが決まった。







「桜木、ナイス!」
「ありがと……、怪我とかない?澪」
「う、うん……ごめん」




澪は少しだけ眉を下げて、下を向いた。

それに気付いた郁人が、




「大丈夫、僕がサポートするから。」






そう言って…………ぽん、と頭を撫でた。






「………………」






ーーー



「なあ……どうする?双葉、さっきから全く点決めてないんだけど………」
「なんで誰も応援に来てねえんだよ………流石にあいつじゃ」

「澪はゴールを決めるよりはボールを持ってくる方が得意かも」





ひそひそ話の中に入ったのは郁人。



澪は優馬と同じポジションにいるから、ゴールを決める役になっていたけど……澪の特技は素早いところだし、……と説明していく郁人。




澪がゴール下で少し不安そうな顔で聞いていた。





「ボールを奪ったらすぐに澪にパスして、そして澪がゴール下まで持ってきて……それを僕が入れるよ」




上手い作戦が出来たらしい。
すぐに立ち位置が変わった。







「…ッ、よしもらった!」



相手側のボールを奪ったクラスメイトが、すぐに澪の場所を探す。




それに気付いた敵が澪をマークした。





「ッ……!」



170cm以上の背丈の男が目の前にいて、澪はなかなか苦戦していた。




敵がにやりと微笑んだのもつかの間…………






「モブ谷!下から!!」





郁人の素早い判断と声掛けで………なんとか、



「そうか…!受け取れ!双葉!!」




敵は両手を挙げてマークしていたから、下はがら空き。

それを狙って……下からワンバウンドでボールを渡した。




澪は両手で抱きしめるようにしっかり受け取って、






そこから…………一気に走り出した。







ボールをバウンドさせながら、敵を上手くかわして……郁人がいるところまで一生懸命走ってくる。







そして………………






「郁人…………!」







ボールを、精一杯の力で…………投げた。










「…………はいっ、……任せて!」







そのボールを郁人がしっかりと受け取って、







(できるか、分かんないけど…………)








郁人がゴール下まで勢いをつけて走った。






「…まさか………」






ゴール下でほんの一瞬足を止めて、勢いよくその場でジャンプをした。



 
そして……………………、









ーーーガコンッ!!!









「…………!入った……!!」









上からゴールの中に落としたボールは………ネットをすり抜けて、下に落ちた。








その次の瞬間………………辺りから、一斉に歓声がわきあがる。







「す………………すげぇーーー!!!!」
「なんだ今の?!!かっこよすぎね!?」
「あいつダンク決めたぞ……!!バスケ部じゃないよな?!!」
 






体育館中に…………興奮気味な大きな声が響いた。





「桜木…!お前そんなにでかくないのになんでそんな……!」



クラスメイト達も集まってきて、未だに騒ぎは鳴り止まない。




確かに、170ちょっとしかない郁人があのシュートをいれるのは難しい。




そう考えると………本当に、すごいことだと思う。









……………………でも、










ーーー





「おしかったなー、あと2点………」





試合自体は、負けてしまった。





本当に僅差で、おしかったけど。





澪がクラスメイト達に必死に頭を下げていた。



「いいよいいよ!双葉のパスのおかげですごいの見れたし」
「モブ木……、その……本当に皆、ごめん………」




キリがなさそうだったので、





「澪君誘拐しまーす、俺と保健室に行こーねー」



そう言ってひょこひょこ歩きの優馬が、澪の頭に顎を乗せた。






ーーー




優馬達に先に3階のテラスに行って食べてて、と言われたので美術準備室のテラスで2人の分の昼食も持って3人で食べていると、





「……あ、先輩方…!」






なんとなく来る予感はしてた……………





李世はさりげなく俺の隣に座って、




「さっきの試合、桜木先輩がすごいって皆言ってましたよー!どんなことしたんですか?!」
「えっと……ダンク、って言っていいのかな………、それっぽいのを、……ね………」
「ダンクですか!よくわからないけどすごいですね!」



くま耳をぴょこぴょこ動かして、またいつものように愛想を振りまく。




「ところで……真冬は?」
「また保健室です。さっき寝ちゃって………」





そういえば、バレーでボールが顔に当たって倒れたんだった。




(……あれ)



「それ昨日じゃなかった?」
「またやられました」



大変だな。






………ていうか、離れて…いいんだ……。









ーーー



(澪side)



優馬と保健室に来た。



保健の先生はいなかったから、とりあえず待つ事にしたけど……………




「……あ、誰か寝てる」



ベッドのカーテンが閉まっていることに気が付いた。






……………興味本位で近付いて、サンダルの色を確認する。



2年生の色。






「………!」





窓の外からの風で、カーテンが少しめくれた。




「あ………」






そこから一瞬だけ見えた、綺麗な白髪と白い肌。





「澪?知り合い?」
「ま、真冬だ……!」




すぐに分かった。






眠っている様子だったからこれ以上は迷惑かと思って戻ろうとすると、







優馬が……………悪魔みたいな、笑みを浮かべた。















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