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5章 冬休み。
175.東京で
しおりを挟む(海斗side)
12月も末になってきた。
「海斗、調子はどう?」
「…!兄さん!帰ってきてたんだ……」
兄が帰ってきて嬉しくて、一旦勉強を中断させた。
「まずまずって感じかな……今は特に困ってないかも」
「そっか、わかんないとこがあったらなんでも聞いていいからね」
兄さんが作ってくれたらしいホットココアを飲みながら話していた。
「そういえば海斗はコーヒー飲める?」
「うん、当たり前じゃんそれくらい」
俺は大人だからな………っ
「そっかぁ………それならいいんだ、父さんが『コーヒーを飲めないと商談は出来ない』とか言ってて」
………まあ俺、父さんに昔好きになるまで飲ませられて無理矢理好きになったんだけど。
「未来斗はな、こっそり砂糖入れて飲んでたよ、もうバレバレで………、………あ」
あの人の話をするのが癖になってる。
「……、」
「大丈夫大丈夫、父さん今いないから」
「……!そうなの?」
「父さんが帰ってきたらすぐ勉強始めてね」って言われて、とりあえずシャーペンを持っておく。
「じゃあ……沢山話してもいい?」
「うん、勿論!」
夢中で皆との思い出話をした。
ほとんど未来斗の事ばっかだったけど。
「本当に楽しいんだ…!受験が終わったら皆と遊びに行きたい……」
勿論受かったらだけど。
「……ねぇ、海斗」
「うん?」
楽しくてつい感情が豊かになっていた俺を見て、兄さんが微笑む。
「楽しかったんだって本当に伝わってくるよ、すごく、感情表現が上手くなってる」
無自覚だった。
「ほんと……?」
「ほんとほんと、前までは眉しか動かなかったのに」
常に無表情で困ったら眉が下がって嬉しかったら眉が上がる。
そんな感じだったのに、
「俺………変われてるのかな、……そうなら嬉しい!」
きっと、あの1年間は無駄じゃなかった。
「………あ、帰ってきた」
玄関から扉が閉まる音がした。
急いで勉強を再開して、兄さんも教えているように振る舞う。
階段をあがる音がして、しばらくして俺の部屋の扉が開いた。
「………はい」
「海斗、ちょっと来なさい」
………なんだろう。
なんとなく、嫌な予感がした。
ーーー
兄さんとリビングに降りると、ダイニングソファに綺麗な女の人が座っていた。
「……?」
俺と目が合うとその人は上品な感じで微笑んで、会釈する。
「こんにちは……、えっと………」
誰なのか父に聞こうとした、
「あの話はもうしただろう」
「…?えっと、あの話って………」
すごく綺麗な黒髪を腰まで伸ばした清楚な女の人。
その人が立ち上がって、俺の前に来た。
……ほんの少しだけ、俺の方が背は高い。
「桜庭友里恵と申します」
……綺麗な声。
「…、宝条海斗です。あの……この方は」
父が言う前に、桜庭さんが言った。
「お会いするのは初めてですものね。
私は、貴方の婚約者です。」
……………
「……え……………」
この人が……俺の、
…………思い出した。
『東京に戻ったらまず婚約者を紹介する』
そうだった…………
「あ……」
「…!海斗、大丈夫?」
思わず目眩がして、けどそれを桜庭さんの前でしてしまったら失礼な気がした。
「すみません……座らせて下さい」
ーーー
ソファに座ると、自然と桜庭さんも隣に座らせられた。
「ッ……」
やっぱり、くらくらする。
桜庭さんや女性が苦手なわけじゃない、でも………
(どうしよう………怖い)
結婚……この人と……?
信じられない。
「桜庭さんは~…のご令嬢で現在高校1年生。婚約まではあと2年かかるが……とりあえず挨拶はしておいた方がいいだろう」
父さんの俺への話がかすかに耳に入ってくる。
「改めまして大阪府立雛河大学附属高等学校1年桜庭友里恵です。本日は大手企業~…のご令息様と婚約させていただきとても光栄にー…………」
うまく会話ができない俺の代わりに兄さんが会話してくれていた。
「大阪からいらしたんですね、ひなだこ(略)と言えばあの………」
「はい、まだまだ至らぬ点はありますがどうかよろしくお願いします」
………すごく上品で人の良さそうな人。
「父さん……あの」
とりあえず、父と廊下で話すことにした。
ーーー
「あの……やっぱり俺「したくないなんて言わないよな?」……え」
読まれてた。
「大体お前がおかしな事を言うから悪いんだ。男子校にいれるのは間違いだったな」
………あ、
(そう…いう?)
俺が未来斗の事が好きだってわかって、わざとこんな事した。
「ただ従ってるだけで良かったのに」
………
「………ごめんなさい」
余計なものを入れてしまった。
ーーー
(思えば楽だったな……ただ従って勉強してた時は)
父の言われた通りにしてた。
ずっと、ずっと。
そういうものかと思ってたから。
(でも、あの学校に行って、沢山知って……それからだっけ、父さんが変わったの)
なんて考えていたら、
「海斗様……ご気分優れないのですか?」
隣に座っていた桜庭さんが話しかけてきた。
……ちなみに今は俺の部屋。
とりあえず話してみろって2人で部屋に行かされた。
(部屋に初対面の女の人………)
年下とはいえ、怖い。
「ごめんなさい、慣れなくて……婚約なんてすると思ってなかったから」
「いえいえ、大丈夫ですよ。私も貴方と結婚する気はありませんから。」
とりあえず謝っておいた方がい………
(い?)
「え……今、なんて」
「私も貴方と婚約するおつもりはありません、別に心に決めた方がおりますから。」
………
………!?
「ほんと!!?」
一気に周りが明るくなった気がした。
「はい、本当ですわ。」
桜庭さんは冷静に返してくる。
「好きな方がいますの。もう転校してしまいましたが後輩。……貴方もいるのでしょう?」
……!
「うん……いる、います………」
「それなら話が早くていいですわ。とりあえず婚約破棄の作戦を立てたので話してもいいですか?」
………良かった。
(本当……よかった………)
ーーー
…………で。
「これを次会う日……その日は私はこの家に泊まることになっています。次会う日、この作戦でいきましょう」
「いや……待って、これだと俺が」
「構いませんわ!」
「俺が構うんだけど?!!」
本当にこんなので大丈夫………なのかな。
ーーー
おまけ…2人の新キャラの紹介です。
花咲優妃(はなさき ゆうひ)
中学3年生、163cm
銀目黒髪。いつも笑い方が怖い。
もうあんまり出ない。
これに合わせてうたも目の色を銀にするか考え中です。
桜庭友里恵(さくらば ゆりえ)
高校1年生。160cm。
茶目黒髪。すごい企業のご令嬢。
好きな子がいる。
ちなみに通ってる学校は前に優馬の過去話で出てきた学校です。
海斗の家もなかなかすごい大企業。
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