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6章 三学期。
220.変化 ※
しおりを挟む「ぁ"……ッ、が!!」
地獄は終わらない。
シーツは赤く染って、意識は段々薄れていく。
「……さてとじゃあこんなもんかな、……腕、貰ってくね。」
もう限界なのに、今度はノコギリのようなものが出てきて、刃が肩に当てられた。
「もう許して」という声すら出ない。
全てが他人事に見えて、ひどく無気力だった。
(これ……切られたら、死ぬのかな)
なんて考えていたら、
「「……!」」
………外で、パトカーの音が聞こえた。
それは段々こっちに向かってきてるようで、
「……あれ?妹さんがいない」
見ると、横にいたはずの美優の姿が無い。
「夢中になってて気付かなかったなぁ………、……まぁ、仕方ないか」
男は諦めたように、刃物を床に落とす。
「……………時間も無いし持ち帰られなさそうだからここで勘弁してあげる。」
そう言って男はベッドに腰掛けた。
「どうせもう終わりだったし、……悔しいけどこれでいいや。
…あ、ねぇ!少しお話しようよ、警察が来るまでさ。」
こっちはもう喋る気力すらないのに。
通報したであろう美優を捕まえにも行かず、男は喋り出した。
「お兄さ……俺ね、弟がいるんだ。可愛いんだよ
まぁ最近会ってないけどね。」
すごく眠くて、何も聞こえなかった。
「弟が3才の時にうちに来たんだよ、………あ、でもあんまり覚えてな」
その時、呼び鈴が鳴った。
「………またね。」
………男は部屋を出て行った。
(………)
安心したのか、意識が急に途切れた。
ーーー
……………目が覚めたのは次の日の夕方。
「澪……?…!良かった……」
春樹兄さんがいた。
「………?」
「ここは病院だよ。……あぁ、ごめんね。まだ理解できないよね」
どうやら緊急で帰ってきたらしい。
「もう大丈夫でしょう。深かったですが致命傷ではありません。」
医者が来て、何か話している。
だんだん昨日のことを思い出してきた。
「………」
部屋に知らない男が入ってきて、散々怖い目にあった。
1つ思い出すと芋づる式に思い出してきて、
「あ……あ、あぁぁ…………」
「澪……、大丈夫、大丈夫だから」
また息が苦しくなった。
数分して落ち着いて右腕を確認すると、
「……………ッひ!!」
手首から肩まで、傷で埋め尽くされていた。
リスカ痕の上にさらに切り傷、中には縫っている場所もあって、それがまばらにあるのが気持ち悪くて仕方ない。
「え…なんでこんな、」
「………見ない方がいいよ」
自分の腕じゃないみたいだった。
「……兄さん、」
震えが止まらない。
もうぐちゃぐちゃだった。
「っ…ひぐ、…ぅ………」
涙が出て、全身が小刻みに震えた。
「もう、許してお願い」
「澪、落ち着いて」
苦しい、怖い、疲れた
「お願い、……もう、…もう、ゆるして、
お願いします、おねがいします」
またなにか恐ろしいことが起こる
もう死んでしまいたかった
「………澪」
その時だった。
「失礼します。」
病室の扉が開いた。
聞きなれた声と同時に女の子が病室に入ってくる。
(……!美優)
それは間違いなく美優だった。
腰まで伸びた長い髪を揺らして、
「美優………ごめん、まだ」
何かを止める兄さん、
美優は、
「具合はいかがですか?……澪。」
そう言って、微笑んだ。
どうしてか敬語で、
……………まるで、人が変わったように。
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