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第1話 彩華
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人は例外なく死刑囚である。
生まれた瞬間から死に囚われて、
いつ来るかわからない執行日をただ待つだけだ。
執行日が訪れるのは余りにも遠く、自身が死刑囚であることを忘れて生きている人も多い。
死刑囚は何を糧にして生きるのだろうか。
一体、何に幸せを感じるのだろうか。
私のように自分自身が死刑囚であることを理解している人はこの世界にどのくらいいるのだろうか。
もし理解しているのなら、何故あのような考え無しの笑みを浮かべることができるのか。
村崎彩華は勤務中にそういったことを考えながら、時間が過ぎることを待っていた。
彩華は警備会社に非常勤で勤めており、日勤と夜勤の交代制である。
大抵は夜勤のシフトを希望して入っているが、今日は苦手な日勤であった。
日勤では倉庫の警備に配属されることが多く、
倉庫の向かいにはショッピングモールがあり、
一階のカフェテラスがいつも繁盛している。
いつも警備員として立っている場所からはカフェの様子がよく見えており
会話までは聞き取れないが、子どもをそっちのけで母親達が群れをなしてカフェを占領し
馬鹿な顔をして笑っているのが窺える。
だから日勤には極力、入りたくない。
その様子が嫌でも目に飛び込んできて目障りだからである。
その点、夜勤は主にホテルの巡回で仮眠もあり、職場の人間以外とほぼ会わずに済むのでとても気が楽だった。
先日、夜勤のシフトでよく一緒に仕事をするおじさんが思い出したかのように話しかけてきた。
「あれ?たしか彩華ちゃんの誕生日って今月だったよね……何歳になるんだっけ??」
「セクハラに片足突っ込んでいるぞ……」
と心の中でツッコミを入れたが、軽口でよく話す人だし、
悪気は無いことも分かっていたので軽く流した。
「今月で27歳になります。案外あっという間でした笑」
すると、おじさんは何かを察したように顔色が変わり、
さっきの軽口とは違い、頭の中で話すことを考えてから話そうとしている。
「ま、まだ若いじゃん!昔は嫁入り期限をクリスマスケーキに例えられたけどさ、今時は30歳を越えてからでも特に問題無いもんね。
美人なのに勿体ないよ~ファイト!」
婚活の話をしたつもりはなかったが、そもそも言い返すのが面倒だったので適当に流した。
そんなことをぼんやりと思い出していると、退勤時間を迎えた。
ようやく苦痛の日勤が終わり、疲れがどっと出る。
勤務中に親子連れが目の前を通り過ぎる時に小さな子どもが手を振ってくれる時がある。
親がいる手前、無視するわけにもいかず笑顔で手を振ってあげる。
虚無感に襲われて、これだけでも疲労を感じるが今回の子は少しだけ有益な情報をくれたので良しとしよう。
と言うのも、子どもに手を振る数分前に親子の会話のやりとりが耳に飛び込んできた。
母親が今日は何日でしょう?と子どもに聞いて、
きょうは16日!と子どもが返していたのが耳に入った。
今日は私の誕生日であり、子どもが教えてくれるまで私自身も忘れていた。
祝ってくれる相手はいないので、ショッピングモールで自分へのバースデーケーキを買うことにした。
食べたいケーキはあったが、ホールケーキのサイズしか無く、彩華は軽くため息をついてカットされたケーキを二個購入して店を出た。
「すいません。もしかして村崎さんですか?」
ショッピングモールを出ようとした時に男性に声をかけられた。
「……誰ですか?」と懐疑的に質問を返した。
「高校で同じクラスだった川中です!いやすぐに村崎さんってわかりましたよ~」
……川中!十数年ぶりの記憶がゆっくりと蘇ってきたがそこまで面識があった記憶はない。
ただクラスの中心的な存在で明るくて目立っていたので名前は覚えていた。
「まぁ本当は村崎さんとは中学の時から同じなんですけどね笑
相変わらず綺麗ですぐ気づきました。
高校の同窓会に来なかったですよね?特に男達は会えなくて残念だ~って話してましたよ。
なんで来れなかったんですか??笑」
同窓会があったなんて初耳だった。
もし知っていたとしても絶対に行かなかったけど。
「いや、いま初めて知りました笑 なにで召集したんですか?」
「グループLINEを作って集めてましたけど
村崎さんはLINEが分からなかったので多分、ご実家に郵便したかもしれないです」
「実家を出て帰っていないので本当に知りませんでした」
「そっかぁ~じゃあ今度プチ同窓会を開きましょう!ということでLINE教えてください!!」
急激な距離の縮め方に嫌悪感を感じ、この流れを断ち切りたかった彩華は咄嗟に嘘をついた。
「いや、スマホを忘れてしまったのでまた今度お会いした時に……」
「んっ?お尻のポケットにスマホが刺さってますよ?」
咄嗟で整合性が取れていない嘘をついてしまい墓穴を掘ってしまった。
そして連絡先を教えたくないという遠回しな言い方を貫通する神経の図太さに負けて連絡先を交換した。
逃げるようにショッピングモールを出た彩華は、自転車で寮に帰った。
彩華が警備会社に勤めた最大の理由は寮を貸してくれることにあった。
家出をした彼女には寝床が早急に必要だった。
六畳一間の空間に日焼けして黄ばんだ畳が敷かれており、お世辞にも綺麗とは言えないがそれでも十分であった。
「今年もこの部屋で誕生日を迎えるのか。あと何年ここで暮らすんだろう、ここで執行を待つのかな……」
〝私が寮に住み始めたのは家出をして約半年が過ぎた頃であった。
充分な荷造りが出来なかったので、最低限のお金と荷物を持って家出をした私はネットカフェに滞在するようになった。
節約の為に何度か野宿も考えたが春も終わり、暑い日が続き出したので現実的ではない。
ネットカフェの一室で求人サイトや求人誌を眺めていると、寮ありの求人がいくつか掲載されていた。
寮がある求人を全て応募すればすぐ受かるだろうと考えていたが、現実は不採用の通知が連続して来るだけだった。
金銭的な危機を感じ、空いてる日は日雇い派遣で稼ぎながら、何度も面接を受ける日々を送ることになっていった。
ネットカフェにはシャワーの設備があったのでとても助かっていた。
ただ、洗濯は持ってきた着替えも少なく、着替えを何着も買える程の余裕も無く洗濯する費用すら惜しく感じていたので
同じ服を数日着てから洗うようにしていた。
連泊していると、ネットカフェの常連客の顔ぶれが分かるようになる。
隣の部屋にいる中年の男性もここに滞在しているようだ。
最近は、シャワー室の前ですれ違うようになり
すれ違う時に男性特有の欲望の視線を感じた。
ある日、その隣の部屋にいる男性がドアをノックして話しかけてきた。
不審に思ったので、ドアの鍵は開けずに声だけで応答した。
「ここに泊まっているのはお金に困ってるんだろう?
五千円あげるからさ、一日履いた肌着の匂いを嗅がせて欲しい。それ以外はなにもしないから」
中年の男性は周りに聞こえないように小さな声で提案してきた。
以前から視線は感じていたので思っていたほど驚きは無く、
昔から男性がどうして欲しいのかを察することには長けている自覚がある。
そして金銭的にも助かるという理由もあった。
「じゃあパンツとシャツでいいですか?
嗅ぎたい時は隣の壁から五千円札を落としてください。
そしたら壁の上から渡しますので済んだら返してください」
すんなり話が進んだ事に驚いた男性はありがとう……と残し、そこから奇妙な関係が始まった。
「今日も良い匂いでした。
特に腋のところが、ものすごく汗臭くて最高です」
男性が渡してきた紙に書いてあった。
感想を書いた紙が返却された服にいつも挟まっている。
働いて夜に帰ってくると、五千円札が目の前をひらひらと舞うことが頻繁になった。
最初はラクしてそこそこ稼げると思っていたが、今回は全然匂いがしないとか、もっとこうして欲しいとか要望が増えてきて面倒に感じ始めていた。
一刻も早く寮ありの仕事に受からなければと焦りが募っていく。
そして今の職場に面接を受けて無事に合格し、
ネットカフェ生活の卒業を迎えた。
今にして思えば、私の身体の匂いに興奮していた男性に一体なにが良かったのかを聞いてみたかったが気持ち悪かったので結局、
男性にはなにも言わずネットカフェを離れた。〟
「あの男の人は今どうしてるのだろう。
今もネットカフェにいて、女性にお願いして
嗅がせてもらってるのかな?」
そんな昔のことを思い返していると、あっという間に二個のケーキを食べてしまっていた。
すると、普段は鳴らない携帯が振動した。
相手はさっき連絡先を交換した川中からで、
早速LINEを送って来た。
内容はプチ同窓会をしよう!という名のご飯の誘いだったが、面倒に感じた私は断った。
生まれた瞬間から死に囚われて、
いつ来るかわからない執行日をただ待つだけだ。
執行日が訪れるのは余りにも遠く、自身が死刑囚であることを忘れて生きている人も多い。
死刑囚は何を糧にして生きるのだろうか。
一体、何に幸せを感じるのだろうか。
私のように自分自身が死刑囚であることを理解している人はこの世界にどのくらいいるのだろうか。
もし理解しているのなら、何故あのような考え無しの笑みを浮かべることができるのか。
村崎彩華は勤務中にそういったことを考えながら、時間が過ぎることを待っていた。
彩華は警備会社に非常勤で勤めており、日勤と夜勤の交代制である。
大抵は夜勤のシフトを希望して入っているが、今日は苦手な日勤であった。
日勤では倉庫の警備に配属されることが多く、
倉庫の向かいにはショッピングモールがあり、
一階のカフェテラスがいつも繁盛している。
いつも警備員として立っている場所からはカフェの様子がよく見えており
会話までは聞き取れないが、子どもをそっちのけで母親達が群れをなしてカフェを占領し
馬鹿な顔をして笑っているのが窺える。
だから日勤には極力、入りたくない。
その様子が嫌でも目に飛び込んできて目障りだからである。
その点、夜勤は主にホテルの巡回で仮眠もあり、職場の人間以外とほぼ会わずに済むのでとても気が楽だった。
先日、夜勤のシフトでよく一緒に仕事をするおじさんが思い出したかのように話しかけてきた。
「あれ?たしか彩華ちゃんの誕生日って今月だったよね……何歳になるんだっけ??」
「セクハラに片足突っ込んでいるぞ……」
と心の中でツッコミを入れたが、軽口でよく話す人だし、
悪気は無いことも分かっていたので軽く流した。
「今月で27歳になります。案外あっという間でした笑」
すると、おじさんは何かを察したように顔色が変わり、
さっきの軽口とは違い、頭の中で話すことを考えてから話そうとしている。
「ま、まだ若いじゃん!昔は嫁入り期限をクリスマスケーキに例えられたけどさ、今時は30歳を越えてからでも特に問題無いもんね。
美人なのに勿体ないよ~ファイト!」
婚活の話をしたつもりはなかったが、そもそも言い返すのが面倒だったので適当に流した。
そんなことをぼんやりと思い出していると、退勤時間を迎えた。
ようやく苦痛の日勤が終わり、疲れがどっと出る。
勤務中に親子連れが目の前を通り過ぎる時に小さな子どもが手を振ってくれる時がある。
親がいる手前、無視するわけにもいかず笑顔で手を振ってあげる。
虚無感に襲われて、これだけでも疲労を感じるが今回の子は少しだけ有益な情報をくれたので良しとしよう。
と言うのも、子どもに手を振る数分前に親子の会話のやりとりが耳に飛び込んできた。
母親が今日は何日でしょう?と子どもに聞いて、
きょうは16日!と子どもが返していたのが耳に入った。
今日は私の誕生日であり、子どもが教えてくれるまで私自身も忘れていた。
祝ってくれる相手はいないので、ショッピングモールで自分へのバースデーケーキを買うことにした。
食べたいケーキはあったが、ホールケーキのサイズしか無く、彩華は軽くため息をついてカットされたケーキを二個購入して店を出た。
「すいません。もしかして村崎さんですか?」
ショッピングモールを出ようとした時に男性に声をかけられた。
「……誰ですか?」と懐疑的に質問を返した。
「高校で同じクラスだった川中です!いやすぐに村崎さんってわかりましたよ~」
……川中!十数年ぶりの記憶がゆっくりと蘇ってきたがそこまで面識があった記憶はない。
ただクラスの中心的な存在で明るくて目立っていたので名前は覚えていた。
「まぁ本当は村崎さんとは中学の時から同じなんですけどね笑
相変わらず綺麗ですぐ気づきました。
高校の同窓会に来なかったですよね?特に男達は会えなくて残念だ~って話してましたよ。
なんで来れなかったんですか??笑」
同窓会があったなんて初耳だった。
もし知っていたとしても絶対に行かなかったけど。
「いや、いま初めて知りました笑 なにで召集したんですか?」
「グループLINEを作って集めてましたけど
村崎さんはLINEが分からなかったので多分、ご実家に郵便したかもしれないです」
「実家を出て帰っていないので本当に知りませんでした」
「そっかぁ~じゃあ今度プチ同窓会を開きましょう!ということでLINE教えてください!!」
急激な距離の縮め方に嫌悪感を感じ、この流れを断ち切りたかった彩華は咄嗟に嘘をついた。
「いや、スマホを忘れてしまったのでまた今度お会いした時に……」
「んっ?お尻のポケットにスマホが刺さってますよ?」
咄嗟で整合性が取れていない嘘をついてしまい墓穴を掘ってしまった。
そして連絡先を教えたくないという遠回しな言い方を貫通する神経の図太さに負けて連絡先を交換した。
逃げるようにショッピングモールを出た彩華は、自転車で寮に帰った。
彩華が警備会社に勤めた最大の理由は寮を貸してくれることにあった。
家出をした彼女には寝床が早急に必要だった。
六畳一間の空間に日焼けして黄ばんだ畳が敷かれており、お世辞にも綺麗とは言えないがそれでも十分であった。
「今年もこの部屋で誕生日を迎えるのか。あと何年ここで暮らすんだろう、ここで執行を待つのかな……」
〝私が寮に住み始めたのは家出をして約半年が過ぎた頃であった。
充分な荷造りが出来なかったので、最低限のお金と荷物を持って家出をした私はネットカフェに滞在するようになった。
節約の為に何度か野宿も考えたが春も終わり、暑い日が続き出したので現実的ではない。
ネットカフェの一室で求人サイトや求人誌を眺めていると、寮ありの求人がいくつか掲載されていた。
寮がある求人を全て応募すればすぐ受かるだろうと考えていたが、現実は不採用の通知が連続して来るだけだった。
金銭的な危機を感じ、空いてる日は日雇い派遣で稼ぎながら、何度も面接を受ける日々を送ることになっていった。
ネットカフェにはシャワーの設備があったのでとても助かっていた。
ただ、洗濯は持ってきた着替えも少なく、着替えを何着も買える程の余裕も無く洗濯する費用すら惜しく感じていたので
同じ服を数日着てから洗うようにしていた。
連泊していると、ネットカフェの常連客の顔ぶれが分かるようになる。
隣の部屋にいる中年の男性もここに滞在しているようだ。
最近は、シャワー室の前ですれ違うようになり
すれ違う時に男性特有の欲望の視線を感じた。
ある日、その隣の部屋にいる男性がドアをノックして話しかけてきた。
不審に思ったので、ドアの鍵は開けずに声だけで応答した。
「ここに泊まっているのはお金に困ってるんだろう?
五千円あげるからさ、一日履いた肌着の匂いを嗅がせて欲しい。それ以外はなにもしないから」
中年の男性は周りに聞こえないように小さな声で提案してきた。
以前から視線は感じていたので思っていたほど驚きは無く、
昔から男性がどうして欲しいのかを察することには長けている自覚がある。
そして金銭的にも助かるという理由もあった。
「じゃあパンツとシャツでいいですか?
嗅ぎたい時は隣の壁から五千円札を落としてください。
そしたら壁の上から渡しますので済んだら返してください」
すんなり話が進んだ事に驚いた男性はありがとう……と残し、そこから奇妙な関係が始まった。
「今日も良い匂いでした。
特に腋のところが、ものすごく汗臭くて最高です」
男性が渡してきた紙に書いてあった。
感想を書いた紙が返却された服にいつも挟まっている。
働いて夜に帰ってくると、五千円札が目の前をひらひらと舞うことが頻繁になった。
最初はラクしてそこそこ稼げると思っていたが、今回は全然匂いがしないとか、もっとこうして欲しいとか要望が増えてきて面倒に感じ始めていた。
一刻も早く寮ありの仕事に受からなければと焦りが募っていく。
そして今の職場に面接を受けて無事に合格し、
ネットカフェ生活の卒業を迎えた。
今にして思えば、私の身体の匂いに興奮していた男性に一体なにが良かったのかを聞いてみたかったが気持ち悪かったので結局、
男性にはなにも言わずネットカフェを離れた。〟
「あの男の人は今どうしてるのだろう。
今もネットカフェにいて、女性にお願いして
嗅がせてもらってるのかな?」
そんな昔のことを思い返していると、あっという間に二個のケーキを食べてしまっていた。
すると、普段は鳴らない携帯が振動した。
相手はさっき連絡先を交換した川中からで、
早速LINEを送って来た。
内容はプチ同窓会をしよう!という名のご飯の誘いだったが、面倒に感じた私は断った。
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