3 / 11
第3話 莉愛
しおりを挟む
「ショッピングモールで偶然会ったって感じかな。
今日、私と会うことは旦那さんに言ったの?」
「ううん言ってないよ。旦那が彩華をグループLINEに招待して、通知が来た時に彩華のことを軽く話しただけでそれっきり」
悪い状況になっていることを把握した私はその後のことを話すべきか考えた。
その刹那、川中と寝てしまったことを言えば、生きている実感を感じることは出来るのだろうか?と魔が刺した。
よくドラマで復讐をしたり陥れたりすることを題材にしている作品がある。
そういった行為には一種の多幸感があるらしい。
じゃあ、私はいま目の前で不貞を打ち明けると多幸感に包まれるのだろうか?
でも、不貞の話をカフェで話すことは無く、
オチのない話をダラダラと続けてお開きの時間を迎えた。
別々で会計をしてカフェを出て、お互いに確かめ合うようにまた会おうねと約束を言い合って、
美月と離れた。
美月と別れた後も頭の中に誘惑が渦巻き、
葛藤したが答えは案外早く出た……
それ以降、美月と頻繁にLINEでトークするようになったがカフェで話した際に
彼氏がいないことを打ち明けていたので、
旦那との仲の良さをやたらとアピールするようになった。いわゆるマウント取りだ。
それならまだ苦笑いで済ませたが、
「彩華は美人だからってお高くとまってると婚期を逃すよ?」とか
「同学年だった男子達に彩華が独身だって言っとく!絶対何人かは釣れるよ」とか
「男友達が婚活していて良物件だからアタックしたほうが良い」とか
私の異性関係について土足で踏み込んで荒らしに来たのだ。
神経は苛立ち、それほどご自慢の旦那は妻に秘め事をしていると教えてあげたくなった。
美月に話したいことがあるから電話しよう?とメッセージを送ると、すぐにいいよ!と返信が来たので、LINEの音声通話のボタンを押した。
「もしもし、話したいことってなに?」
「……美月にはまだ伝えていないことがあって」
「んっ、なになに?彼氏出来たとか!?」
「実は美月の旦那さんと一緒にホテルに行ってしまった……ごめんなさい。」
「えっ?どういうこと??」
「最近、泊まりの出張をしたことがあったでしょ。その時、川中は私とホテルに泊まってた。
そもそも川中は、再会した時に私に気があったから、連絡先を聞いてきて積極的に会おうとしてきたし不倫する気満々だったよ。私と会う時は指輪を外してたし」
「いやいや、ありえないから……舐めてんの?
あんた高校の時からなに考えてるか分かんなかったよね?みんな言ってたよ?
身体が寂しいからって声かけてくれた既婚者の同級生と寝るってなに考えてんの?
それで、私が旦那と仲良いこと知って嫉妬して
わざわざ電話で言うとか陰湿すぎ、キモいわ」
畳みかけるような早口がきて、そこで通話は切られた。
内容がちゃんと伝わっているのか少し疑問に感じたがもう一度かける勇気は無い。
不貞行為を打ち明けたが、解放感や多幸感はなくて、なにも変わらず心は無色のままだった。
その後はいつも通りの毎日が続いたが、
今日は少しだけ変化がある一日が訪れる。
勤務している警備会社に近日、新人が入ってくると同僚のおじさんから話を聞いた。
新人が入ってくることでさえ珍しいのに、それに加えて若い女性だそう。
「彩華ちゃんと歳は近そうだから、友達が出来そうで良かったね!俺の心配事が一つ減ったよ笑」
おじさんはそう言って、私よりも嬉しそうにしていて少しだけ不思議な感じがした。
新人の人に親近感を湧いてもらう為に、初勤務は同年代の私が出勤している日にしようという話になって、私が新人の女性に仕事を教えることになり、そしてその日がやってきた。
「武田 リエと言います!これからよろしくお願いします!」
武田さんの挨拶は元気で、第一印象は割と良かったが、甘い香水の匂いが強く香っていた。
出勤のボタンを押してもらおうとしたが、
パソコンの勤怠管理システムにリエのアカウントが登録されていないことが判明し、
今日は私とリエの二人しかいないので私が作成する羽目になった。
リエの名前の漢字が分からなかったので本人に打ってもらうことにした。
すると彼女は<武田莉愛>と打っており名前は初見で読めるのか?考えていたらそれが顔に出ていたらしく
「これでリエって読みます。やっぱり名前が読めないですよね~よくリアって間違われます笑笑」
読み方に感心した所で、仕事が始まり一通りの仕事の流れを教え、返事も良かった。
でも、教えたことが耳から抜けているような感じがした。
夜勤は休憩や仮眠以外にも巡回が終われば自由に使える空き時間があった。
本当は勤務時間内だが、文句を言われる相手もいないのでいつも堂々と怠けていた。
空き時間を迎え、莉愛には好きにしてていいよと伝え、携帯をいじっていると突拍子もなく莉愛が話しかけてきた。
「村崎さんはなんでこの仕事をしようと思ったんですか?」
「う~ん。寮があるのが一番の理由かな。
武田さんもそうじゃないの?」
「えっ?寮があるんですか?初めて知りました笑 普通にマンションに住んでますよ」
私は逆に何が良くてこの仕事をしようと思ったのか聞きたくなったが先に質問が来た。
「村崎さんは夜勤のシフトで結構入ってるんですか?」
「うん。余計な人と会う必要がないから楽で気に入ってる。こうやって空き時間もあるし」
「そうなんですね。私は沢山の人と出会って話したいけどなぁ~」
私は再度、何故この仕事をしようと思ったのか聞きたくなったが莉愛が話を続けた。
「私、この仕事以外にも掛け持ちしてて、こっちの仕事はサブなんで週一出勤ぐらいになると思います!」
出勤日数が少ないってことは夜勤のシフトを取られる可能性が低くなったので、ほっとした。
その後は莉愛が会話のボールを投げ続けてくれたので何故この仕事をしようと思ったのか聞きそびれたが、
莉愛が話すことも聞くことも上手だったので久々に会話をしていて楽しかった。
莉愛は言っていた通り、その後も週に一回程度しか出勤しなかった。
そして今日は莉愛が出勤しており、今回も私と莉愛しか出勤しておらず、空き時間で二人しかいない事務所の中で莉愛が唐突に切り出した。
「私、今月でこの仕事辞めます!思っていたものと違いました笑」
あまりにもすぐに辞めるので、誰かに嫌がらせやセクハラをされたのか問い詰めたが、そうではないらしい。
「そっかぁ……また職場はおじさんしかいなくなるのは寂しいね笑」
「その台詞ちょっとおじさんっぽい笑」
「ちょっとやめてよ笑」
仕事を辞める具体的な理由を聞こうかと考えたが、すぐに会わなくなるので詮索は控えることにした。
「来月のシフトはもう出さないつもりなんで村崎さんと会うのは最後になるんですよ。
だから……LINE交換しませんか?笑」
「まあ、別にいいけど……」
そのままLINEの交換して友達に追加した。
休憩時間になり、莉愛のLINEアカウントを改めて見ると名前は[R.]で写真に見覚えがある。
高校の同窓会のグループLINEのメンバーを見ると莉愛のアカウントが並んでいた。
奇縁を感じた彩華は休憩後にすぐ莉愛に伝えた。
「ねぇねぇ、このグループLINEに入ってるのって武田さんだよね……ってことは同じ高校を卒業してるってこと?」
「……まさか同じ高校で同じ代なんですか?
ちょっと奇跡すぎません?凄い!笑」
そこから高校生時代の話題で盛り上がり意気投合した。
話してわかったことは、一度も同じクラスになった事は無く高校生時代に何かの接点があった訳では無かった。
「そういえばこの前、同窓会があったみたいだけど莉愛ちゃんは行ったの?」
「呼び捨てでいいよ!それから同い年だし
これからお互いに敬語はナシで!
同窓会は行ったし楽しかったよ?彩華ちゃんは行ってないの?」
「いや、私もちゃん付けはいいよ笑
私は後から知ってさ、結局行けなかったんだ。
でも、ああいう場所は好きじゃないから知ってても行かなかったけど」
二人で話しながら仕事をしているとあっという間に終業時間を迎え、
仕事で時間が早く過ぎる感覚を初めて味わった。
「明日お休みでしたよね?もっと色々話したいんで、今日仕事が終わったら私の家に遊びに来ませんか?笑」
莉愛は無邪気に投げかけたが、いきなり家に入るのは忍びないと思った。
「さすがに、いきなり家に行くのは大丈夫かな…寮に帰って家事もしないといけないし」
「そういえば、寮がどんな感じなのか気になる!邪魔はしないから……ねっ??」
興味津々でお願いしてきたので、渋々承諾して寮に上げることになった。
今日、私と会うことは旦那さんに言ったの?」
「ううん言ってないよ。旦那が彩華をグループLINEに招待して、通知が来た時に彩華のことを軽く話しただけでそれっきり」
悪い状況になっていることを把握した私はその後のことを話すべきか考えた。
その刹那、川中と寝てしまったことを言えば、生きている実感を感じることは出来るのだろうか?と魔が刺した。
よくドラマで復讐をしたり陥れたりすることを題材にしている作品がある。
そういった行為には一種の多幸感があるらしい。
じゃあ、私はいま目の前で不貞を打ち明けると多幸感に包まれるのだろうか?
でも、不貞の話をカフェで話すことは無く、
オチのない話をダラダラと続けてお開きの時間を迎えた。
別々で会計をしてカフェを出て、お互いに確かめ合うようにまた会おうねと約束を言い合って、
美月と離れた。
美月と別れた後も頭の中に誘惑が渦巻き、
葛藤したが答えは案外早く出た……
それ以降、美月と頻繁にLINEでトークするようになったがカフェで話した際に
彼氏がいないことを打ち明けていたので、
旦那との仲の良さをやたらとアピールするようになった。いわゆるマウント取りだ。
それならまだ苦笑いで済ませたが、
「彩華は美人だからってお高くとまってると婚期を逃すよ?」とか
「同学年だった男子達に彩華が独身だって言っとく!絶対何人かは釣れるよ」とか
「男友達が婚活していて良物件だからアタックしたほうが良い」とか
私の異性関係について土足で踏み込んで荒らしに来たのだ。
神経は苛立ち、それほどご自慢の旦那は妻に秘め事をしていると教えてあげたくなった。
美月に話したいことがあるから電話しよう?とメッセージを送ると、すぐにいいよ!と返信が来たので、LINEの音声通話のボタンを押した。
「もしもし、話したいことってなに?」
「……美月にはまだ伝えていないことがあって」
「んっ、なになに?彼氏出来たとか!?」
「実は美月の旦那さんと一緒にホテルに行ってしまった……ごめんなさい。」
「えっ?どういうこと??」
「最近、泊まりの出張をしたことがあったでしょ。その時、川中は私とホテルに泊まってた。
そもそも川中は、再会した時に私に気があったから、連絡先を聞いてきて積極的に会おうとしてきたし不倫する気満々だったよ。私と会う時は指輪を外してたし」
「いやいや、ありえないから……舐めてんの?
あんた高校の時からなに考えてるか分かんなかったよね?みんな言ってたよ?
身体が寂しいからって声かけてくれた既婚者の同級生と寝るってなに考えてんの?
それで、私が旦那と仲良いこと知って嫉妬して
わざわざ電話で言うとか陰湿すぎ、キモいわ」
畳みかけるような早口がきて、そこで通話は切られた。
内容がちゃんと伝わっているのか少し疑問に感じたがもう一度かける勇気は無い。
不貞行為を打ち明けたが、解放感や多幸感はなくて、なにも変わらず心は無色のままだった。
その後はいつも通りの毎日が続いたが、
今日は少しだけ変化がある一日が訪れる。
勤務している警備会社に近日、新人が入ってくると同僚のおじさんから話を聞いた。
新人が入ってくることでさえ珍しいのに、それに加えて若い女性だそう。
「彩華ちゃんと歳は近そうだから、友達が出来そうで良かったね!俺の心配事が一つ減ったよ笑」
おじさんはそう言って、私よりも嬉しそうにしていて少しだけ不思議な感じがした。
新人の人に親近感を湧いてもらう為に、初勤務は同年代の私が出勤している日にしようという話になって、私が新人の女性に仕事を教えることになり、そしてその日がやってきた。
「武田 リエと言います!これからよろしくお願いします!」
武田さんの挨拶は元気で、第一印象は割と良かったが、甘い香水の匂いが強く香っていた。
出勤のボタンを押してもらおうとしたが、
パソコンの勤怠管理システムにリエのアカウントが登録されていないことが判明し、
今日は私とリエの二人しかいないので私が作成する羽目になった。
リエの名前の漢字が分からなかったので本人に打ってもらうことにした。
すると彼女は<武田莉愛>と打っており名前は初見で読めるのか?考えていたらそれが顔に出ていたらしく
「これでリエって読みます。やっぱり名前が読めないですよね~よくリアって間違われます笑笑」
読み方に感心した所で、仕事が始まり一通りの仕事の流れを教え、返事も良かった。
でも、教えたことが耳から抜けているような感じがした。
夜勤は休憩や仮眠以外にも巡回が終われば自由に使える空き時間があった。
本当は勤務時間内だが、文句を言われる相手もいないのでいつも堂々と怠けていた。
空き時間を迎え、莉愛には好きにしてていいよと伝え、携帯をいじっていると突拍子もなく莉愛が話しかけてきた。
「村崎さんはなんでこの仕事をしようと思ったんですか?」
「う~ん。寮があるのが一番の理由かな。
武田さんもそうじゃないの?」
「えっ?寮があるんですか?初めて知りました笑 普通にマンションに住んでますよ」
私は逆に何が良くてこの仕事をしようと思ったのか聞きたくなったが先に質問が来た。
「村崎さんは夜勤のシフトで結構入ってるんですか?」
「うん。余計な人と会う必要がないから楽で気に入ってる。こうやって空き時間もあるし」
「そうなんですね。私は沢山の人と出会って話したいけどなぁ~」
私は再度、何故この仕事をしようと思ったのか聞きたくなったが莉愛が話を続けた。
「私、この仕事以外にも掛け持ちしてて、こっちの仕事はサブなんで週一出勤ぐらいになると思います!」
出勤日数が少ないってことは夜勤のシフトを取られる可能性が低くなったので、ほっとした。
その後は莉愛が会話のボールを投げ続けてくれたので何故この仕事をしようと思ったのか聞きそびれたが、
莉愛が話すことも聞くことも上手だったので久々に会話をしていて楽しかった。
莉愛は言っていた通り、その後も週に一回程度しか出勤しなかった。
そして今日は莉愛が出勤しており、今回も私と莉愛しか出勤しておらず、空き時間で二人しかいない事務所の中で莉愛が唐突に切り出した。
「私、今月でこの仕事辞めます!思っていたものと違いました笑」
あまりにもすぐに辞めるので、誰かに嫌がらせやセクハラをされたのか問い詰めたが、そうではないらしい。
「そっかぁ……また職場はおじさんしかいなくなるのは寂しいね笑」
「その台詞ちょっとおじさんっぽい笑」
「ちょっとやめてよ笑」
仕事を辞める具体的な理由を聞こうかと考えたが、すぐに会わなくなるので詮索は控えることにした。
「来月のシフトはもう出さないつもりなんで村崎さんと会うのは最後になるんですよ。
だから……LINE交換しませんか?笑」
「まあ、別にいいけど……」
そのままLINEの交換して友達に追加した。
休憩時間になり、莉愛のLINEアカウントを改めて見ると名前は[R.]で写真に見覚えがある。
高校の同窓会のグループLINEのメンバーを見ると莉愛のアカウントが並んでいた。
奇縁を感じた彩華は休憩後にすぐ莉愛に伝えた。
「ねぇねぇ、このグループLINEに入ってるのって武田さんだよね……ってことは同じ高校を卒業してるってこと?」
「……まさか同じ高校で同じ代なんですか?
ちょっと奇跡すぎません?凄い!笑」
そこから高校生時代の話題で盛り上がり意気投合した。
話してわかったことは、一度も同じクラスになった事は無く高校生時代に何かの接点があった訳では無かった。
「そういえばこの前、同窓会があったみたいだけど莉愛ちゃんは行ったの?」
「呼び捨てでいいよ!それから同い年だし
これからお互いに敬語はナシで!
同窓会は行ったし楽しかったよ?彩華ちゃんは行ってないの?」
「いや、私もちゃん付けはいいよ笑
私は後から知ってさ、結局行けなかったんだ。
でも、ああいう場所は好きじゃないから知ってても行かなかったけど」
二人で話しながら仕事をしているとあっという間に終業時間を迎え、
仕事で時間が早く過ぎる感覚を初めて味わった。
「明日お休みでしたよね?もっと色々話したいんで、今日仕事が終わったら私の家に遊びに来ませんか?笑」
莉愛は無邪気に投げかけたが、いきなり家に入るのは忍びないと思った。
「さすがに、いきなり家に行くのは大丈夫かな…寮に帰って家事もしないといけないし」
「そういえば、寮がどんな感じなのか気になる!邪魔はしないから……ねっ??」
興味津々でお願いしてきたので、渋々承諾して寮に上げることになった。
0
あなたにおすすめの小説
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
春に狂(くる)う
転生新語
恋愛
先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/
カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる