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第4章 それぞれの思い
29 理由説明
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「……俺が決闘で勝てない。それは難しいとか可能性が低いとかじゃなく、絶対に無理っていうレベルの話だろうか?」
「うん。そういうレベルの話」
試合形式で手合わせした後、ツヴァイに今のままでは悪役令嬢に勝てないと断言したアストライアがその理由を静かに語り始めた。
「魔法が使えなくてもツヴァイの身体はバランス良く鍛えられているから対魔法のコツさえ掴めば魔法に頼りがちな普通の生徒相手なら勝てると思う。────けど、毎日訓練をして体術も魔法も隙なく鍛えているフレグランスの相手は現時点では無理」
学園第3位の力は伊達じゃない。と呟いたアストライアはまだツヴァイが見たことのないフレグランスの戦っている姿を思い出しているのか、ほんの少しの間、遠くを見つめ、それから再びツヴァイと視線を合わせた。
「わたしとの力量差の見極めも早かったし、ツヴァイが可能性の塊なのは間違いない。将来有望。三ヶ月ぐらいわたしが付きっ切りで鍛えればフレグランスに勝てると思う。でも、それだと一週間後ぐらいの決闘の日までには間に合わない。だから、少しズルをしたい」
「……ズル?」
……まさか闇討ちとか言い出さないよな。気持ちはありがたいがそういうのは無しだぞ。
と、ツヴァイはリアがフレグランスを説得しようとした際に、アストライアがフレグランスを攻撃しようとしていたという話を思い出し、少し警戒したが。
「ツヴァイは社の館で寝泊まりできるぐらいにシロキツネ様と仲が良い。そんな仲の良いツヴァイに頼まれればシロキツネ様は伝説にある、時の流れが遅い空間をぱぱっと作ってくれると思う。そして、その空間で特訓すれば決闘に間に合う」
アストライアの言うズルとはシロキツネ様の力を貸して貰おうという提案だった。過激な提案でなかったことにツヴァイはほっとしたが、その提案を実現することは難しいだろうとツヴァイは考え、首を横に振った。
「すまないアストライア。俺は別にシロキツネ様と仲が良いってわけじゃないんだ。シロキツネ様はちょっと俺に負い目を感じていたから昨日は客人としてもてなしてくれたけど、俺の決闘にまでわざわざ力を貸してくれるってことはないと思う」
「……あまり面白くない冗談」
「残念ながら冗談じゃない」
「……むぅ」
それは想定外。と、アストライアは自分の会心の提案が不発に終わってしまい、少し困ったような顔をした。
「……違う方法を考えてみる」
そして別の方法を考えると言ってアストライアはツヴァイから少し離れ、静かに空を見上げた。
「……」
……アストライアには特訓だけじゃなく色々と考えて貰って申し訳ないな。俺も何か……というか俺が打開策を思いつかないといけないな。
思索に耽るアストライアの後ろ姿を見て、ツヴァイが気合いを入れ直し、何とか決闘で勝つ方法はないものかと考えようとしたとき。
「……あの、ツヴァイさん。ちょっといいですか……?」
リアがコソコソと小さな声で話しかけてきたため、ツヴァイは作戦を考えることを一旦中止して、リアと視線を合わせた。
……もしかして、内緒話でもあるのか。
そして、リアの様子からアストライアに聞かれたくないことを話そうとしていると察したツヴァイが、どうした? と小声で返事をすると。
「ツヴァイさんが本気を……、あの力を出されないのは、どうしてなんですか?」
リアが碧の瞳をキラキラと輝かせながらよくわからないことを言い出した。
「……? えっと、リアの言うあの力ってどの力のことだろうか?」
「リアを助けてくれた時の力です。その刀が白く輝いて、何でも斬れちゃうんじゃないかって思えるほどに凄い切れ味で……あっ、だから訓練で使わないんですね……! 強すぎる力はモンスター以外には使うべきじゃないってツヴァイさんはそう思われているんですね……!」
「……?」
……リアを助けた時に、刀が白く光っていた?
いったい何のことだろうとツヴァイは全く覚えのない刀のスペシャルパワーに興奮するリアの隣で考えを巡らせる。
……リアを刀で助けた時ってゴブリンを斬った時のことだよな。あの時、刀身が白くなっていた……か? 構えている時は普通の色だった気がするけど、斬る瞬間だけ発光したんだろうか。斬る瞬間の刀の色なんて覚えていない、というかまともに見てないな。
そしてゴブリンとの戦いを思い出してみたものの、刀が白くなる現象を見た記憶がなかったツヴァイはもう少し詳しい話をリアに聞こうとしたが……。
「あ、でも、それだとあの力は決闘の時にも使えない……? ううん、力の調整ができれば……。……そもそもの話、あの力は秘密だったりするのかな。もしそうならリアの偽装魔法で刀身の色だけ変わらないようにする方法も……。それにそうすれば斬れる時と斬れない時を相手がわからないように使い分けられて試合や決闘でも……」
「……」
……うん、ちょっと熱くなってる感じだな、これ。
ツヴァイが思考に沈んでいる間にリアの方も色々考察をしているようだったのでツヴァイはリアが落ち着くまで少し待とうと思った。
しかし。
「……けど、相手はあのフレグランスさん。それだけじゃ足りない。それにツヴァイさんが本気を出せないのなら、前提条件からツヴァイさんの有利な状況に持って行くしかない。そうなると観客を入れた学園での通常の決闘じゃなく、少し不意打ちみたいな形になってしまうけど、いっそのこと……」
リアの呟きが徐々に熱量以外の不純物、悪い意味での使命感のようなものに埋め尽くされていくのを感じ。
「──リア」
ツヴァイが落ち着いた声音で、それこそ父親が自分の子供を軽くたしなめるようにリアの名を呼ぶと、リアは驚いたのか目を丸くして一瞬で冷静になり、すみません、と謝罪の言葉を口にした。
「……そう、ですよね。決闘なんですから正々堂々、同一の条件で戦うべきですよね。……けど、リアはツヴァイさんがこんな形でカームに縛られるのは嫌なんです。だからツヴァイさんには絶対に決闘で勝って欲しくて……」
「……」
そして、その言葉からリアが自分を巻き込んでしまったことに責任を感じている事を理解したツヴァイは、あえて軽い口調でリアに語りかけた。
「リア。あれは俺がフレグランスに勝手にムカついて勝手に口を出しただけのことだ。君が責任を感じる必要なんてない。それにさ、そもそも俺は負けないから安心してくれ。これは内緒なんだけど……、この刀、実はシロキツネ様から貰ったものなんだ」
「えっ……!? シロキツネ様から……!?」
「そうそう。だから、この刀は光るだけじゃなく、鳴るし唸るし、ボイスが20種類ぐらい搭載されていて……」
「ボイス……?」
「あ、違うなそれは全然強そうじゃない。えっと、とにかく、この刀には隠された機能がまだまだあるし、更に俺の本気の力が加われば、決闘で負けるなんてことは絶対にない。だからリアは俺のことを信じて見ていてくれ」
そして、ツヴァイが自信に溢れた表情を浮かべて自分の力で決闘に必ず勝つと言い切ると、リアは。
「────はい!」
ツヴァイに信頼しきった眼差しを向け、強く頷いた。
「……」
……元々負けるつもりはなかったけど、これで本当に負けられなくなったな。
そしてそんなリアの顔を見ながらツヴァイは静かに覚悟を決めた。
刀の機能なんて本当にあるのかもわからないし、現時点では勝つ算段も全くなかったが、子供に思い詰めた顔をさせてしまうぐらいならこのぐらいは嘘をつくさ。そんな風に考えながらツヴァイは会話をしていた。
だが、それだけではなかった。
……俺が決闘で勝って、嘘を真実にしてしまえばいい。これは、それだけのことだ。
寝ずの訓練だろうが地獄の特訓でもなんでもやって、今の時点では嘘だとしても絶対に真実にしてみせる。と決心したツヴァイは手に持つ日本刀を力強く握り締めた。
「うん。そういうレベルの話」
試合形式で手合わせした後、ツヴァイに今のままでは悪役令嬢に勝てないと断言したアストライアがその理由を静かに語り始めた。
「魔法が使えなくてもツヴァイの身体はバランス良く鍛えられているから対魔法のコツさえ掴めば魔法に頼りがちな普通の生徒相手なら勝てると思う。────けど、毎日訓練をして体術も魔法も隙なく鍛えているフレグランスの相手は現時点では無理」
学園第3位の力は伊達じゃない。と呟いたアストライアはまだツヴァイが見たことのないフレグランスの戦っている姿を思い出しているのか、ほんの少しの間、遠くを見つめ、それから再びツヴァイと視線を合わせた。
「わたしとの力量差の見極めも早かったし、ツヴァイが可能性の塊なのは間違いない。将来有望。三ヶ月ぐらいわたしが付きっ切りで鍛えればフレグランスに勝てると思う。でも、それだと一週間後ぐらいの決闘の日までには間に合わない。だから、少しズルをしたい」
「……ズル?」
……まさか闇討ちとか言い出さないよな。気持ちはありがたいがそういうのは無しだぞ。
と、ツヴァイはリアがフレグランスを説得しようとした際に、アストライアがフレグランスを攻撃しようとしていたという話を思い出し、少し警戒したが。
「ツヴァイは社の館で寝泊まりできるぐらいにシロキツネ様と仲が良い。そんな仲の良いツヴァイに頼まれればシロキツネ様は伝説にある、時の流れが遅い空間をぱぱっと作ってくれると思う。そして、その空間で特訓すれば決闘に間に合う」
アストライアの言うズルとはシロキツネ様の力を貸して貰おうという提案だった。過激な提案でなかったことにツヴァイはほっとしたが、その提案を実現することは難しいだろうとツヴァイは考え、首を横に振った。
「すまないアストライア。俺は別にシロキツネ様と仲が良いってわけじゃないんだ。シロキツネ様はちょっと俺に負い目を感じていたから昨日は客人としてもてなしてくれたけど、俺の決闘にまでわざわざ力を貸してくれるってことはないと思う」
「……あまり面白くない冗談」
「残念ながら冗談じゃない」
「……むぅ」
それは想定外。と、アストライアは自分の会心の提案が不発に終わってしまい、少し困ったような顔をした。
「……違う方法を考えてみる」
そして別の方法を考えると言ってアストライアはツヴァイから少し離れ、静かに空を見上げた。
「……」
……アストライアには特訓だけじゃなく色々と考えて貰って申し訳ないな。俺も何か……というか俺が打開策を思いつかないといけないな。
思索に耽るアストライアの後ろ姿を見て、ツヴァイが気合いを入れ直し、何とか決闘で勝つ方法はないものかと考えようとしたとき。
「……あの、ツヴァイさん。ちょっといいですか……?」
リアがコソコソと小さな声で話しかけてきたため、ツヴァイは作戦を考えることを一旦中止して、リアと視線を合わせた。
……もしかして、内緒話でもあるのか。
そして、リアの様子からアストライアに聞かれたくないことを話そうとしていると察したツヴァイが、どうした? と小声で返事をすると。
「ツヴァイさんが本気を……、あの力を出されないのは、どうしてなんですか?」
リアが碧の瞳をキラキラと輝かせながらよくわからないことを言い出した。
「……? えっと、リアの言うあの力ってどの力のことだろうか?」
「リアを助けてくれた時の力です。その刀が白く輝いて、何でも斬れちゃうんじゃないかって思えるほどに凄い切れ味で……あっ、だから訓練で使わないんですね……! 強すぎる力はモンスター以外には使うべきじゃないってツヴァイさんはそう思われているんですね……!」
「……?」
……リアを助けた時に、刀が白く光っていた?
いったい何のことだろうとツヴァイは全く覚えのない刀のスペシャルパワーに興奮するリアの隣で考えを巡らせる。
……リアを刀で助けた時ってゴブリンを斬った時のことだよな。あの時、刀身が白くなっていた……か? 構えている時は普通の色だった気がするけど、斬る瞬間だけ発光したんだろうか。斬る瞬間の刀の色なんて覚えていない、というかまともに見てないな。
そしてゴブリンとの戦いを思い出してみたものの、刀が白くなる現象を見た記憶がなかったツヴァイはもう少し詳しい話をリアに聞こうとしたが……。
「あ、でも、それだとあの力は決闘の時にも使えない……? ううん、力の調整ができれば……。……そもそもの話、あの力は秘密だったりするのかな。もしそうならリアの偽装魔法で刀身の色だけ変わらないようにする方法も……。それにそうすれば斬れる時と斬れない時を相手がわからないように使い分けられて試合や決闘でも……」
「……」
……うん、ちょっと熱くなってる感じだな、これ。
ツヴァイが思考に沈んでいる間にリアの方も色々考察をしているようだったのでツヴァイはリアが落ち着くまで少し待とうと思った。
しかし。
「……けど、相手はあのフレグランスさん。それだけじゃ足りない。それにツヴァイさんが本気を出せないのなら、前提条件からツヴァイさんの有利な状況に持って行くしかない。そうなると観客を入れた学園での通常の決闘じゃなく、少し不意打ちみたいな形になってしまうけど、いっそのこと……」
リアの呟きが徐々に熱量以外の不純物、悪い意味での使命感のようなものに埋め尽くされていくのを感じ。
「──リア」
ツヴァイが落ち着いた声音で、それこそ父親が自分の子供を軽くたしなめるようにリアの名を呼ぶと、リアは驚いたのか目を丸くして一瞬で冷静になり、すみません、と謝罪の言葉を口にした。
「……そう、ですよね。決闘なんですから正々堂々、同一の条件で戦うべきですよね。……けど、リアはツヴァイさんがこんな形でカームに縛られるのは嫌なんです。だからツヴァイさんには絶対に決闘で勝って欲しくて……」
「……」
そして、その言葉からリアが自分を巻き込んでしまったことに責任を感じている事を理解したツヴァイは、あえて軽い口調でリアに語りかけた。
「リア。あれは俺がフレグランスに勝手にムカついて勝手に口を出しただけのことだ。君が責任を感じる必要なんてない。それにさ、そもそも俺は負けないから安心してくれ。これは内緒なんだけど……、この刀、実はシロキツネ様から貰ったものなんだ」
「えっ……!? シロキツネ様から……!?」
「そうそう。だから、この刀は光るだけじゃなく、鳴るし唸るし、ボイスが20種類ぐらい搭載されていて……」
「ボイス……?」
「あ、違うなそれは全然強そうじゃない。えっと、とにかく、この刀には隠された機能がまだまだあるし、更に俺の本気の力が加われば、決闘で負けるなんてことは絶対にない。だからリアは俺のことを信じて見ていてくれ」
そして、ツヴァイが自信に溢れた表情を浮かべて自分の力で決闘に必ず勝つと言い切ると、リアは。
「────はい!」
ツヴァイに信頼しきった眼差しを向け、強く頷いた。
「……」
……元々負けるつもりはなかったけど、これで本当に負けられなくなったな。
そしてそんなリアの顔を見ながらツヴァイは静かに覚悟を決めた。
刀の機能なんて本当にあるのかもわからないし、現時点では勝つ算段も全くなかったが、子供に思い詰めた顔をさせてしまうぐらいならこのぐらいは嘘をつくさ。そんな風に考えながらツヴァイは会話をしていた。
だが、それだけではなかった。
……俺が決闘で勝って、嘘を真実にしてしまえばいい。これは、それだけのことだ。
寝ずの訓練だろうが地獄の特訓でもなんでもやって、今の時点では嘘だとしても絶対に真実にしてみせる。と決心したツヴァイは手に持つ日本刀を力強く握り締めた。
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