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アマーリエが最初に異変に気がついたのは、単なる幸運にすぎない。
授業中、ふと窓の外を見てみれば、そこでは一年生が魔法実践の授業を行なっている最中だった。
エリーは魔力を放出しようと奮闘しているが、なかなかうまくいっていない。
(頑張って、エリー様!)
思わず心の中で応援していると、オレンジ色の巻き毛の令嬢がエリーに近づき何かを耳打ちしているのが目に入る。
あれはキャロライン公爵令嬢。
何を言っているのかまでは聞こえてこないが、碌なことではないのは確かだ。
そうしてしばらくすると、エリーが何かを叫びーー魔力が膨れ上がるのを感じる。
どんどんと大きくなってゆく魔力にアマーリエは危機感を抱いた。
このままでは、まずい。
思わず立ち上がったアマーリエに、何事かと教師が眉を顰めたが、構うものか。
「先生、わたくし、急用を思い出しましたわーー失礼いたします!」
言うが早いが、アマーリエは教室を出て脱兎のごとくに駆けて校庭へと急ぐ。
着いた時にはすでにエリーの魔力は暴走し始めており、周囲の生徒たちの中には余波で負傷している者もいた。
エリーを中心に渦巻く魔力は白銀に輝き、術者本人の姿をすっぽりと覆い隠してしまっていた。凄まじい風が吹き抜け、その風が刃となって近づくものを誰彼構わず傷つけている。
「エリー様! エリー様!!」
アマーリエは力いっぱいエリーを呼んだが、返事がもらえる見込みは薄そうだ。聞こえているかどうかも定かではない。
阿鼻叫喚の最中、アマーリエは決意をした。
一歩一歩足を進め、暴風の魔力へと近づく。
「アマーリエ・オーヴェルニュ!? おやめなさい、貴女まで傷ついてしまう! 今、応援に他の教師を呼んできますからーー!」
その場にいた教師がそんなことを言うも、アマーリエは構わなかった。
「わたくしが行かなくては! エリー様は今、どうすればいいかわからないんだわ!」
アマーリエは自分の体が傷つくのも構わず、エリーの展開する魔力放出の渦の中に入っていく。
全身が切り裂かれ、血飛沫が飛ぶ。
公爵令嬢であるアマーリエは生まれてこの方、怪我とは無縁だ。
経験したことのない痛みにうめき声をあげてしまいそうになるが、グッと堪えた。
右手を渦の中に突っ込み、内側にいるであろうエリーに向かって伸ばす。
バチバチバチと音がして、無理に入っていくと、俯き立ち尽くすエリーの姿が視界に入った。
アマーリエはここぞとばかりに腹の底から声を出す。
「エリー様、落ち着きなさって! わたくしの言う通りにーー!!」
エリーの神秘的な銀色の目から、涙が一筋伝う。
「……アマーリエ様」
名前を呼ぶと同時に、アマーリエの手が力強く握られた。
同時にエリーの瞳が動揺して強く揺れる。
「アマーリエ様、体に傷が……! もしかして、あたしの魔力のせい……!?」
「エリー様、落ち着きなさって。これくらいの傷なんともありませんわ。それよりも魔力放出を止めないと。心を鎮めるのです」
「でも、あたしのせいでアマーリエ様が!」
「口調が乱れておりますわよ。『あたし』ではなく『私』ですわ」
こんな時でも毅然とした態度を崩さないアマーリエにエリーは一瞬面食らったが、すぐに頷いた。
アマーリエはもう一方の手も取ると、優しく言い聞かせる。
「目を瞑って雑念を振り払い、息を深く吸って、吐いて。そうして気持ちを落ち着かせるのです……大丈夫、エリー様にならできますわ」
言われた通りエリーは目を閉じて、大きく深呼吸をした。
繋がった手を通じて、エリーの感覚が伝わってくる。
何回か繰り返すうちに徐々に小さくなっていく魔力。
この調子ならば問題なく収束しそうだとアマーリエがホッと胸を撫で下ろしたその時。
ーーおさまりかけていたエリーの魔力が膨らみ、はじけた。
授業中、ふと窓の外を見てみれば、そこでは一年生が魔法実践の授業を行なっている最中だった。
エリーは魔力を放出しようと奮闘しているが、なかなかうまくいっていない。
(頑張って、エリー様!)
思わず心の中で応援していると、オレンジ色の巻き毛の令嬢がエリーに近づき何かを耳打ちしているのが目に入る。
あれはキャロライン公爵令嬢。
何を言っているのかまでは聞こえてこないが、碌なことではないのは確かだ。
そうしてしばらくすると、エリーが何かを叫びーー魔力が膨れ上がるのを感じる。
どんどんと大きくなってゆく魔力にアマーリエは危機感を抱いた。
このままでは、まずい。
思わず立ち上がったアマーリエに、何事かと教師が眉を顰めたが、構うものか。
「先生、わたくし、急用を思い出しましたわーー失礼いたします!」
言うが早いが、アマーリエは教室を出て脱兎のごとくに駆けて校庭へと急ぐ。
着いた時にはすでにエリーの魔力は暴走し始めており、周囲の生徒たちの中には余波で負傷している者もいた。
エリーを中心に渦巻く魔力は白銀に輝き、術者本人の姿をすっぽりと覆い隠してしまっていた。凄まじい風が吹き抜け、その風が刃となって近づくものを誰彼構わず傷つけている。
「エリー様! エリー様!!」
アマーリエは力いっぱいエリーを呼んだが、返事がもらえる見込みは薄そうだ。聞こえているかどうかも定かではない。
阿鼻叫喚の最中、アマーリエは決意をした。
一歩一歩足を進め、暴風の魔力へと近づく。
「アマーリエ・オーヴェルニュ!? おやめなさい、貴女まで傷ついてしまう! 今、応援に他の教師を呼んできますからーー!」
その場にいた教師がそんなことを言うも、アマーリエは構わなかった。
「わたくしが行かなくては! エリー様は今、どうすればいいかわからないんだわ!」
アマーリエは自分の体が傷つくのも構わず、エリーの展開する魔力放出の渦の中に入っていく。
全身が切り裂かれ、血飛沫が飛ぶ。
公爵令嬢であるアマーリエは生まれてこの方、怪我とは無縁だ。
経験したことのない痛みにうめき声をあげてしまいそうになるが、グッと堪えた。
右手を渦の中に突っ込み、内側にいるであろうエリーに向かって伸ばす。
バチバチバチと音がして、無理に入っていくと、俯き立ち尽くすエリーの姿が視界に入った。
アマーリエはここぞとばかりに腹の底から声を出す。
「エリー様、落ち着きなさって! わたくしの言う通りにーー!!」
エリーの神秘的な銀色の目から、涙が一筋伝う。
「……アマーリエ様」
名前を呼ぶと同時に、アマーリエの手が力強く握られた。
同時にエリーの瞳が動揺して強く揺れる。
「アマーリエ様、体に傷が……! もしかして、あたしの魔力のせい……!?」
「エリー様、落ち着きなさって。これくらいの傷なんともありませんわ。それよりも魔力放出を止めないと。心を鎮めるのです」
「でも、あたしのせいでアマーリエ様が!」
「口調が乱れておりますわよ。『あたし』ではなく『私』ですわ」
こんな時でも毅然とした態度を崩さないアマーリエにエリーは一瞬面食らったが、すぐに頷いた。
アマーリエはもう一方の手も取ると、優しく言い聞かせる。
「目を瞑って雑念を振り払い、息を深く吸って、吐いて。そうして気持ちを落ち着かせるのです……大丈夫、エリー様にならできますわ」
言われた通りエリーは目を閉じて、大きく深呼吸をした。
繋がった手を通じて、エリーの感覚が伝わってくる。
何回か繰り返すうちに徐々に小さくなっていく魔力。
この調子ならば問題なく収束しそうだとアマーリエがホッと胸を撫で下ろしたその時。
ーーおさまりかけていたエリーの魔力が膨らみ、はじけた。
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