絵本作家は砂糖菓子の夢を見る

宮野愛理

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第十一話

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 ふ、と意識が浮上して佐藤は夢から覚めたことを知る。
 遮光カーテンで区切られた部屋は仕事場と寝室の共用で、ベッドから少し離れたところにある間接照明がほのかに光っていた。いつもの光景だ。手探りでスマートフォンを起動させると昼に近い時間だった。
 グゥと腹が鳴ったことに現実感を覚える。
 フレイウェルではリチェルの絵本化決定パーティーをし、そこであれこれと料理も食べた。しかしそれは夢の世界の食事であって、肉体には全く還元されていない。昨夜の食事は松本と楽しんだが、少し早い時間帯だったから間隔が空いてしまったんだろう。
 遮光カーテンを開ける気にならず、室内灯を点けてから部屋を出る。続き間のダイニングも電気を点けて、電気ケトルに水を入れた。

(さて、何を食べよう)

 カップ麺は松本から「控えめに」と言われているし、そもそも寝起きで食べる気にはならない。食料庫から携行食のパッケージを取り出してひとまずこれで良いかと算段をつけた。
 沸いたお湯で、これまた松本が置いていった紅茶を淹れてひと息吐く。携行食はいつもと変わらない味で、相変わらず口の中の水分が失われる。半分だけ食べて残りはまた箱に戻しておいた。
 クリスマスや誕生日会をしたのは幼い頃だったけれど、そんなイベントの翌日みたいな気持ちになっている。
 佐藤は現時点では天涯孤独だが、高校までは普通の生活をしていた。その中で一番馬が合ったのが松本で、しかし他にも友人はいたしそれなりに楽しく過ごしていた。
 ネックだったとすれば男女どちらにも恋愛感情が抱けなかったこと。なんとなく、それがおかしいことのような気がして高校卒業と同時に松本以外とは疎遠となった。

『まぁそういう人間だっているし、開き直って良いんじゃない? 俺は別に恋人の話がしたくて、佐藤と一緒にいるんじゃないし』

 周りが彼女が出来た、出来ない、振られた、告白したなんて話題で盛り上がっていた中で、松本にだけこっそり伝えた自分の性的指向。それで良いのかと開き直るまでは出来なかったが、随分と気持ちが楽になったことを覚えている。
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