異世界転移と同時に赤ん坊を産んだ俺の話

宮野愛理

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この世界は皆噂好き

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 朝は俺の希望で米。

 今日はお粥に焼鮭、きんぴらごぼう、昆布の佃煮、そして温泉卵と浅漬けの、〝ザ・〟と言いたくなるような和定食。
 主食は白米の時もあるし、こうやってお粥の時もある。
 メイン料理にハムエッグやベーコンが出てくる時もある。
 海苔は未だに慣れることが出来ないが、梅干しのあの激しいピンクには慣れた。
 梅酒は普通の色なのに、塩漬けにした時だけ何故あの色になるのか……。

 自分で作ったらいつも決まったメニューばかりになるが、ここでは料理人が毎食作ってくれる。
 しかしチビと一緒に食べれるのは朝だけだ。
 王様業務が長引かなければ夜も一緒に食べられるが、それは月に一回あるかどうか。王様業は忙しいらしい。


「俺にも何か手伝えることがあれば良いんだけどな」
「その為の勉強を続けているのです。今日も頑張りましょう」
「……はい」

 この国に来てから判明したのは、俺は文字が読めないこと。
 村には〝本〟などなかったし、買い物だって口頭確認で済んでいたので気付かなかった。
 言葉は通じるのにな。
 文字が読めない、歴史がわからない、地理も殆どわからない。
 エルメーアが側仕えになってから、ついでに教師役もお願いしてコツコツと勉強を続けている。

 朝食を食べ終えたら九時から十一時まで、休憩を挟みつつ授業を受ける。
 その後は少し外に出て運動をしてから昼食。
 食い終わったらまた授業。……とは言え、午後は机に向かうのではない。
 まずウォーキング。フローリング敷きのピカピカと磨かれた床の上を延々と歩き続ける。よっぽど俺の姿勢や歩き方がおかしいらしい。
 そして格闘術。最初は剣や槍をと言われたが、刃物は持てても使えなかった。ついでに魔法も使えないから、襲われたら多分一発で死ぬ。
 なので「どれだけ逃げられるか」の瞬発力と持久力をメインにしながら習っている。
 後はダンス。これの必要性は未だに理解出来ていない。

 午後の授業を終えたら大体十五時から十六時くらいになるので、その後は自由時間になる。

 この歳で学生のような生活をするとは思わなかった。
 因みに週休二日制。――……完全に学校だな。


 そんな生活なので、俺の移動範囲は城の中でもかなり限られている。


 城内は大きく三つ。

 一つ目、外殿がいでん――チビ曰く〈仕事場〉で、俺のイメージは国会議事堂。
 二つ目、内殿ないでん――国王の私室で、本来チビはここで生活する。
 三つ目、離宮りきゅう――俺はこっちに住んでいる。ただし、離宮と名が付く場所は他にも複数ある。

 内殿から離宮へはそれぞれに道があり、基本的に離宮と離宮は繋がっていない。
 字面だけ見れば離宮イコール〝後宮〟や〝愛人用の別宅〟のようだが、それもその時々の王によって変わるらしい。
 奥さんと一緒に内殿に住んで離宮を別荘として使う王もいたし、離宮のほうが良いとそっちをメインに使う王もいたそうだ。

 俺が住んでいるのは内殿に一番近い離宮で、内殿や外殿にも歩いて行ける。
 でもチビが嫌がるので外殿には滅多に行かない。
 職場に親が来るのは気まずいだろうし、俺も偉そうに〝王様〟をしているチビを見るのは苦手だ。


 だから、まぁ……――結構な引きこもりだと思う。
 休みの日はチビやエルメーアと城下町に出掛けたりもしているけれど。
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