記憶喪失後すぐ思い出したけど、もう好きに生きます!

minaumi

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1章

2話

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ど、ど、ど、どうしよう、僕、どこの誰なのか全く記憶ないんだけど!
え、誰か分からなかったら追い出されるかな?だって、あの人、僕が目覚めた時泣いてたよね?泣くほど大事な人ってことだよね?記憶ないのバレたら怖いよ……。でも、このまま噓吐けない気がする。だって、あの人なんか出来る人のにおいがプンプン漂っているし。

僕は勇気を振り絞って忙しそうにしている青年に、恐る恐る声を掛けた。

「あのぉ……変なことを聞くと思うけど、僕の名前分かる?」

彼は一瞬手を止めて僕の方を見たが何事もなかったかのように答えた。

「ヴェール・シュトロハイム様です。」

ヴェール……か。聞き覚えがないし、口馴染みがないなぁと思いつつ、何度もその名を口に滑らせた。

その光景を見ていた彼が「だから、何も仰らなかったのですね」とボソッと悲しげに呟いたことを気にも留めていなかった。

「えっと、あ、貴方は……?」

「……私は、ヴェール様の執事、ノワールと申します。」

作業の手を止めると、胸元に手を当てて優雅にお辞儀をした。

ノワール……確か黒を意味する言葉の一つだったよね。

濡羽色の髪に漆黒の瞳、名は体を表すってことかな。

「何か御用がございましたら、遠慮なくお申し付けください。それと、私は貴方の執事なので敬語は不要でございます。」

「あっ、わかりま……分かった。これからよろしく、ノワール」

彼はその言葉を聞いた後、優雅に一礼すると少し気になるのですが……と前置きして、聞いてきた。

「ヴェール様、どこまで記憶がおありですか?」

「ふぇっ!」

「何で記憶ないって分かるの!?」

情けない言葉を出しながらきょろきょろと目を泳がせる。

「えっと、あのー……僕も分からない」
一連の流れを見ていたノワールは嘆息した。
 
その後、ノワールと何が思い出せないのか確認したところ、物の名前や使い方は覚えていた。勉学についての記憶もあったが、自分のことや友好関係など人に関する物の全ての記憶がなくなっていた。

 彼から聞いた話では、どうやら僕は“事故”に巻き込まれて二年間昏睡状態だったらしく、医者に再度診てもらったところ「一過性のものに過ぎない」という診断を受けた。

それと、ここは僕の家ではないらしく詳しくは教えてもらえなかったが、とある人の館らしい。その人曰く、「家にいるよりもこちらの方が療養できる」とのことらしい。

うーん、一日の情報量じゃない気がするし、一日中ベッドの上なのも疲れるしそもそも体力が無さ過ぎてすぐに寝てしまう!

目覚める度にノワールがいるのは少しびっくりするけどね。

それに、まだこの館の主人やその人との関係性とか聞けてない!でも、今の僕の状態じゃ何もわからないんだろうなぁって。
日記にたくさんのメモが書いてあるのと真っ白な紙にインクを垂らすのとじゃ全然違うしね。

疑問が尽きなくてノワールを質問攻めにしたら、「今はしっかりと寝てください」って怒られてしまった……。

だから今はひたすら寝て過ごすことにする。
使用人がノワールだけらしく、全部のことをひとりでやってるらしいんだけど、なんか僕と一緒にいる時間が多い気がするんだよね。
使用人が一人しかいないのおかしいよね?幾らノワールが優秀だからと言って……。

色々と考えてたら眠くなってきていたのかそのまま夢の中へと落ちていった。

※※

3歳くらいの男の子が蹲って泣いている。

「どうして、ぼくだけつかえないの……?」

泣きじゃくる男の子をぎゅっと抱き締め「大丈夫、大丈夫だから」と僕は呟く。
その瞬間、男の子の情報が走馬灯のように流れきた。

その男の子は、魔術師の家系にも関わらず一人だけ魔法が使えなかった。

誰も言わなかったしそれについて触れなかった。幼いながらに魔法を使う両親や兄を見て男の子は幼いながらに「おかしい」と思い始め、ある日陰口を聞いてしまう。
「魔術師の家系なのに魔法使えないのがおかしい」と。
それ以来、彼は心を閉ざし一人閉じ籠るようになった。

幼い頃の高熱により使えなくなっていたのを彼は知らなかった。

彼の寂しいという気持ちが伝わってきて一筋の涙が溢れた。

「ずっとひとりで寂しかったよね、もう大丈夫だよ」

何の根拠も無いけどそう言わなきゃいけない気がして頭を撫でながらぎゅっと抱きしめた。

泣いてた男の子は腕から抜け出すと、涙を袖でごしごし拭いてはにかんだ。

「おにいちゃん、この“じゅばく”からときはなってくれてありがとう。でも、もう、むりしなくていいからね。」

彼は、僕の頬を小さい両手で挟んで目を見つめる。

「すべておわったよ、だからもうじゆうだよ!それと、もうころさないでね。おにいちゃんもぼくもみんなかなしいから。それと“やみ”にはちゅーいして。」

彼がそう言った時、その奥にうっすらと銀髪の少女が立っているのが見えた。

少女が心なしか微笑んだように見えた。

何故か、その言葉に救われた気がして涙が止まらなかった。








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