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女子校潜入任務(後編)
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部屋にレミリナが戻ってきたので、三人で軽食をつまみつつ雑談をして過ごす。正体は騎士、冒険者、オッサンだが、全員見た目は可愛い制服姿のJKである。俺は、リンゼとレミリナを眺めているだけでも幸せいっぱいだ。
しかし、楽しい時間は過ぎるのも早く、時計を見るともう8時を回っている。頃合いか。
「そろそろ行ってくるよ。レミリナはリンゼを守っていて。犯人を捕まえたらここに戻ってくるね」
「気をつけてください。くれぐれも無理をしないように」
「平気だって。昼間感じたプレッシャーからは、どう見てもゴブリンヴァラーより弱かったし」
「バランセなら大丈夫だとは思うけど、油断しないでね」
心配そうな顔のリンゼに、俺はハグしてから部屋を出た。
俺は外に出ると寮から離れるように歩いた。中庭に通りがかったところで、月明かりに照らされた人影が見えた。距離は15mくらいだろうか? 細身で長身な男が口元を緩ませて俺に歩み寄って来た。
隠密系のスキルで姿を隠さずに、堂々と俺の正面に立つとは油断しているな?
「お嬢さん、夜道の一人歩きは危ないですよ」
イヤらしい笑みを浮かべるオッサン。この悪意に満ちた嫌な感じ……、こいつが犯人で間違いないな。
さっさと制圧するか。俺は指先を男に向けてビームライフルを撃とうとした。すると『ゼロ』の予測で、こいつが蒸発するのが見えた。殺さない方向でって話だから、ビーライフルは無しだな。ではビームサーベル……やはり蒸発するか。ならバルカンは? 肉片になって飛び散るのが見える。バルカンより弱い兵装ってなんかあったっけ……? ダメだ思いつかない。
俺が思わず「どうしよう?」と口にすると、男は嬉しそうに顔を歪める。
「ひっひっ、お嬢さん……、心配しなくていいですよ。私は紳士なので、楽しませてもらえたら殺しはしませんから。私のモノは硬くて太くて長いので、きっと貴女を満足させられますよ」
硬くて、太くて、長いの!? そんなので突かれたらどうなっちゃうんだろ? 一瞬俺の下腹部がジンと熱くなったが、このオッサンの気持ち悪い表情を見てすぐに我に返った。うん、無理だ、無いわー。
それにしても、おめでたい奴だ。こっちは殺さず無力化する方法が思いつかないだけで、お前にヤられる心配など微塵もしていないのに。
腕を組んでどう対処するか考える俺に、じりじりと近寄ってくる男。すると背後から女の子の凛々しい声がした。
「あなたの悪事もそこまでです!」
声の方向を見ると、月を背景に生徒会長カナローネさんがカッコよく立っていた。
「この学園の生徒を辱めた罪。この私が許しません!」
カナローネさん剣を抜いて男に斬りかかる。男は短剣でそれを受け後ろに跳んだ。
「やれやれ、私に勝てると思っているのですか?」
「あなたこそ、この私に勝てるとでも?」
カナローネさんは凛々しく男を睨みつけると、細身の剣を両手で持って下段に構える。
「光の華に抱かれて眠れ。光華旋舞刃!」
おぉぉぉ! 何それカッコいい! さすがナーロッパの女学園の生徒会長! 実は手練れだったのか!
カナローネさんが剣を振りぬくと、光の斬撃がいくつも男に襲いかかる。男はそれを短剣で弾きながら回避行動をとるが、捌ききれずに何本か喰らっていた。
コレ、俺の出番いらんくないか? しかし、男の顔はまだ余裕がある。
「その若さでこれ程とは……。ならば私もスキルをお見せしましょうかねぇ。『陰隠』」
お、姿が消えたな。でも奴から滲み出ている嫌な感じは全く変わってないから、そこにいるのは丸わかりだ。俺的には全く無意味に思える。
ところが男はカナローネさんに真っ正面から近寄って行き、正眼で剣を構える彼女を蹴り飛ばした。
カナローネさんは受け身を取って立ち上がり、焦った顔で辺りを見渡している。
「そ、そんな……! 姿だけじゃなく気配までも完全に消えた!?」
今まで特に気にしていなかったけど、そもそも気配ってなんだ? 生物由来の息遣いとか体温とかか? あるいは殺気とか闘気みたいなものを感知できるんだろうか? 良く分からんが、俺には奴の悪意みたいなのがはっきり感じられるので、姿が見えているのとほぼ変わらないんだが……。これも『ニュータイプ』のおかげなのだろうか?
と、落ち着いている場合じゃないな。短剣を構えた男は、息を殺してカナローネさんの背後に回り、今にも彼女の背中に短剣を突き刺しそうだ。
俺はカナローネさんの背後から迫る男に、バーニアを併用してダッシュで近づいた。
そしてグーで殴ろうとしたところで、『ゼロ』の予測により男が挽肉になるのが見えた。えー、殴っただけで死ぬの? 弱すぎるだろこいつ。いや、俺のレベル93ってのが強すぎるのかもしれんな。
男とカナローネさんの間に立ったところで、頭の中でそれらがよぎって、俺の動きが止まる。そこへ男は短剣で俺の腹部を突いた。
ギィィン。金属を硬いものにぶつける音が響き、短剣の刃が折れた。
ふふん、効かぬわっ! 『ガノタ系魔法』で『PS装甲』を有効にしておいたからな。可愛い制服に穴があいてしまったのはイラつくが、俺の肌はかすり傷一つしていない。
「カナローネさん、大丈夫?」
「え、ええ。貴女こそ短剣が体に……?」
「平気、平気! それよりもこいつ押さえつけておくから、縛り上げてくれない?」
男は姿を消したまま俺に取り押さえられて、じたばたしている。 男が必死になって藻掻いている感じが伝わってくるが、俺の細腕はビクともしない。やはりレベル差なんだろうな……。
「あのさぁ、カナローネさんが縛りずらいだろうからスキルを解除してよ。でないと動けないように腕と足を折るよ?」
男はじたばたするのをやめて、姿を現した。
カナローネさんは、少しの間呆然としていたがすぐに気を取り直すと、マジックバッグからロープを取り出して男を縛り上げる。そうこうしているうちに、リンゼとレミリナが駆け付ける。
「バランセ! 大丈夫!?」
息を切らして駆け寄ってくるリンゼに、俺は笑顔でなんともないことを伝える。レミリナは、俺に取り押さえられている、ロープにグルグル巻きにされた男を見て目を丸くしていた。
「大きな音が聞こえたので来てみれば、既に犯人を捕まえていたとは! さすがは『銀の彗星』ですね」
その二つ名、ちょっと恥ずかしいんですけど。俺が頭をポリポリ描いていると、レミリナはマジックバッグから枷を取り出した。そして、俺に取り押さえられている男の両手と両足に取り付ける。
「これは魔力とスキルの使用を制限する魔道具の枷です。今からこの男は騎士団に連行します。バランセ、リンゼ、カナローネ、協力に感謝します。冒険者ギルドには依頼完了報告をしておくので、明日報酬を受け取りに行ってください」
遅れて駆け付けた警備員さんたちが男を担ぎ上げ、それと一緒にレミリナは去って行った。
「バランセ、切られたの?」
リンゼに言われて、下を見るとブレザーとシャツが切られており、ブラが見えていた。
「私の魔法で防いだから、服はこんなだけど肌は傷ついてないよ」
「ならいいけど……」
「新しい制服を渡しますね」
カナローネさんはマジックバッグからブレザーとシャツを取り出して、俺に差し出した。任務も完了したので、この制服を着ることはもうないとは思うが、せっかくなので貰っておくか。
「リンゼ、今からどうする? 任務も終わったし、ここから出て適当な宿に泊まる?」
すると、カナローネさんが割り込んできた。
「今夜はここの寮に泊まって行ってください! 明日の朝には冒険者ギルドに向かう馬車を手配しますので!」
なんかちょっと必死な感じがするのはなぜだ? 無理に断るのも悪い気がするので泊めてもらうか。
「ならお世話になります」
「では、私たちは失礼します」
俺とリンゼはカナローネさんに軽く頭を下げて、その場を離れた。
* * *
満月の明かりに照らされた庭園に、一人残された生徒会長カナローネ。その表情は恍惚としていた。
「あぁ……、あの凛々しいお姿……『銀の彗星』バランセさん。なんて素敵な方……」
カナローネは先ほどの騒動で乱れた服を直すこともなく、わが身を抱いて体をよじり、熱い吐息を洩らしていた。
* * *
俺とリンゼは、待機していた寮の一室に戻ってきた。
「ねー、リンゼー」
「ダメッ!!」
「まだ何も言ってないのに……」
「だってエッチな事するってバランセの顔に書いてあるから。今日は我慢して大人しく寝よ。明日ギルドへの報告が終わったらたっぷりしようね」
「はい……」
リンゼになだめられて、俺は大人しく床に就いた。
――翌朝。
出発の準備も終わり、二人で部屋を出ようとしたところで、ドアをノックする音が聞こえた。俺がドアを開けると、カナローネさんが立っていた。
「もしよければ。朝食をご一緒しませんか?」
「いいですよ」
カナローネさんは俺とリンゼの恰好を見ると「あの、学食に行くので、出来れば制服に着替えて頂けないでしょうか?」と頼む。
「あ、はい」
特に断る理由もないので、俺とリンゼは制服に着替えてカナローネさんについて行く。案内されたのはどっかのホテルのレストランかと思えるような素敵なところだった。
なんともセレブな雰囲気の学食で優雅に朝食をとる。カナローネさんは紅茶を飲む所作でさえエレガントだ。
「バランセさんは、この学園に興味はありませんか? ここでは最高の設備と最高の教員によって魔法やスキルの習得をすることができます。バランセさんなら特待生として卒業までの学費も免除できますよ」
女子校に入ってJKに混じって生活とは、なんとも魅力的な提案だが、それではリンゼと一晩中エッチできないよな……。
「すいません。私には冒険者の方が性に合っていると思いますので……」
俺が断ると、カナローネさんは「そうですか」と、とても残念そうな顔をしていた。
朝食を終えると、馬車が迎えに来たようなので学園の正門まで来た。カナローネさんも、わざわざ見送りに来てくれた。
俺が馬車に乗り込もうとしたところで、カナローネさんは俺の手を握る。
「バランセさん、本当にありがとございました」
カナローネさんは礼を言い終わっても、熱っぽく俺の目を見つめ手を放してくれない。
「あの……カナローネさん?」
「カナローネさんなんてよそよそしくしないで! ローネと呼んで♡」
俺がその勢いに押されて「ロ、ローネ?」と口走ると、彼女はうっとりとした表情で、グイっと俺に顔を寄せる。
「はい、バランセ。何でしょう?」
「えーっと、ごきげんよう」
「あなたはもうこの学園の生徒会の一人です。いつでもここに帰ってきてください。いいですね?」
「は、はぁ。アリガトウゴザイマス」
両手でがっちり俺の手を握るローネ。美少女にグイグイ来られると、戸惑ってしまうが悪い気はしない。むしろすごく嬉しいのだが、君みたいな可愛い子に手を握られて、顔を近づけられると、エロい気分になってしまうだろ?
「そろそろ出発しないと」
「ご、ごめんなさい! 私ったらつい……」
ローネは慌てて手を放した。解放された俺は馬車に乗り込む。俺が席に座ると馬車は走り出し、エリューモ学園から離れて行った。
* * *
――冒険者ギルドに向かう馬車内にて。
リンゼは何故か不貞腐れている。
「いいなーバランセはモテモテで。ローネって美人だし、あーゆー子、バランセは好きだよねー」
「うん、好き」
「うぬぬぬ……。でもあの子、きっとおちんちん無いよ」
「そりゃ女の子だから、大体の子は無いと思うけど……」
「ね! だから、バランセは私がいればいいでしょ! なんたって男の子と女の子の両方を自在に使い分けられるんだから!」
リンゼは「ふふん」と得意げに胸を張る。「ね!」と力強くわれるまでもなく、リンゼのチートスキルの素晴らしさはもちろん良く分かっているよ。
「そうだね。おちんちんも使えるリンゼが、私にとって一番だよ」
「あー、なんかその言い方だと、おちんちんさえあれば誰でもいいみたいな言い方だー」
「そんなことないって。私は可愛いリンゼの事が大好きだよ」
その後、冒険者ギルドに到着するまでの間、俺はリンゼのぼやきを聞きつつ、ご機嫌をとるのだった。
しかし、楽しい時間は過ぎるのも早く、時計を見るともう8時を回っている。頃合いか。
「そろそろ行ってくるよ。レミリナはリンゼを守っていて。犯人を捕まえたらここに戻ってくるね」
「気をつけてください。くれぐれも無理をしないように」
「平気だって。昼間感じたプレッシャーからは、どう見てもゴブリンヴァラーより弱かったし」
「バランセなら大丈夫だとは思うけど、油断しないでね」
心配そうな顔のリンゼに、俺はハグしてから部屋を出た。
俺は外に出ると寮から離れるように歩いた。中庭に通りがかったところで、月明かりに照らされた人影が見えた。距離は15mくらいだろうか? 細身で長身な男が口元を緩ませて俺に歩み寄って来た。
隠密系のスキルで姿を隠さずに、堂々と俺の正面に立つとは油断しているな?
「お嬢さん、夜道の一人歩きは危ないですよ」
イヤらしい笑みを浮かべるオッサン。この悪意に満ちた嫌な感じ……、こいつが犯人で間違いないな。
さっさと制圧するか。俺は指先を男に向けてビームライフルを撃とうとした。すると『ゼロ』の予測で、こいつが蒸発するのが見えた。殺さない方向でって話だから、ビーライフルは無しだな。ではビームサーベル……やはり蒸発するか。ならバルカンは? 肉片になって飛び散るのが見える。バルカンより弱い兵装ってなんかあったっけ……? ダメだ思いつかない。
俺が思わず「どうしよう?」と口にすると、男は嬉しそうに顔を歪める。
「ひっひっ、お嬢さん……、心配しなくていいですよ。私は紳士なので、楽しませてもらえたら殺しはしませんから。私のモノは硬くて太くて長いので、きっと貴女を満足させられますよ」
硬くて、太くて、長いの!? そんなので突かれたらどうなっちゃうんだろ? 一瞬俺の下腹部がジンと熱くなったが、このオッサンの気持ち悪い表情を見てすぐに我に返った。うん、無理だ、無いわー。
それにしても、おめでたい奴だ。こっちは殺さず無力化する方法が思いつかないだけで、お前にヤられる心配など微塵もしていないのに。
腕を組んでどう対処するか考える俺に、じりじりと近寄ってくる男。すると背後から女の子の凛々しい声がした。
「あなたの悪事もそこまでです!」
声の方向を見ると、月を背景に生徒会長カナローネさんがカッコよく立っていた。
「この学園の生徒を辱めた罪。この私が許しません!」
カナローネさん剣を抜いて男に斬りかかる。男は短剣でそれを受け後ろに跳んだ。
「やれやれ、私に勝てると思っているのですか?」
「あなたこそ、この私に勝てるとでも?」
カナローネさんは凛々しく男を睨みつけると、細身の剣を両手で持って下段に構える。
「光の華に抱かれて眠れ。光華旋舞刃!」
おぉぉぉ! 何それカッコいい! さすがナーロッパの女学園の生徒会長! 実は手練れだったのか!
カナローネさんが剣を振りぬくと、光の斬撃がいくつも男に襲いかかる。男はそれを短剣で弾きながら回避行動をとるが、捌ききれずに何本か喰らっていた。
コレ、俺の出番いらんくないか? しかし、男の顔はまだ余裕がある。
「その若さでこれ程とは……。ならば私もスキルをお見せしましょうかねぇ。『陰隠』」
お、姿が消えたな。でも奴から滲み出ている嫌な感じは全く変わってないから、そこにいるのは丸わかりだ。俺的には全く無意味に思える。
ところが男はカナローネさんに真っ正面から近寄って行き、正眼で剣を構える彼女を蹴り飛ばした。
カナローネさんは受け身を取って立ち上がり、焦った顔で辺りを見渡している。
「そ、そんな……! 姿だけじゃなく気配までも完全に消えた!?」
今まで特に気にしていなかったけど、そもそも気配ってなんだ? 生物由来の息遣いとか体温とかか? あるいは殺気とか闘気みたいなものを感知できるんだろうか? 良く分からんが、俺には奴の悪意みたいなのがはっきり感じられるので、姿が見えているのとほぼ変わらないんだが……。これも『ニュータイプ』のおかげなのだろうか?
と、落ち着いている場合じゃないな。短剣を構えた男は、息を殺してカナローネさんの背後に回り、今にも彼女の背中に短剣を突き刺しそうだ。
俺はカナローネさんの背後から迫る男に、バーニアを併用してダッシュで近づいた。
そしてグーで殴ろうとしたところで、『ゼロ』の予測により男が挽肉になるのが見えた。えー、殴っただけで死ぬの? 弱すぎるだろこいつ。いや、俺のレベル93ってのが強すぎるのかもしれんな。
男とカナローネさんの間に立ったところで、頭の中でそれらがよぎって、俺の動きが止まる。そこへ男は短剣で俺の腹部を突いた。
ギィィン。金属を硬いものにぶつける音が響き、短剣の刃が折れた。
ふふん、効かぬわっ! 『ガノタ系魔法』で『PS装甲』を有効にしておいたからな。可愛い制服に穴があいてしまったのはイラつくが、俺の肌はかすり傷一つしていない。
「カナローネさん、大丈夫?」
「え、ええ。貴女こそ短剣が体に……?」
「平気、平気! それよりもこいつ押さえつけておくから、縛り上げてくれない?」
男は姿を消したまま俺に取り押さえられて、じたばたしている。 男が必死になって藻掻いている感じが伝わってくるが、俺の細腕はビクともしない。やはりレベル差なんだろうな……。
「あのさぁ、カナローネさんが縛りずらいだろうからスキルを解除してよ。でないと動けないように腕と足を折るよ?」
男はじたばたするのをやめて、姿を現した。
カナローネさんは、少しの間呆然としていたがすぐに気を取り直すと、マジックバッグからロープを取り出して男を縛り上げる。そうこうしているうちに、リンゼとレミリナが駆け付ける。
「バランセ! 大丈夫!?」
息を切らして駆け寄ってくるリンゼに、俺は笑顔でなんともないことを伝える。レミリナは、俺に取り押さえられている、ロープにグルグル巻きにされた男を見て目を丸くしていた。
「大きな音が聞こえたので来てみれば、既に犯人を捕まえていたとは! さすがは『銀の彗星』ですね」
その二つ名、ちょっと恥ずかしいんですけど。俺が頭をポリポリ描いていると、レミリナはマジックバッグから枷を取り出した。そして、俺に取り押さえられている男の両手と両足に取り付ける。
「これは魔力とスキルの使用を制限する魔道具の枷です。今からこの男は騎士団に連行します。バランセ、リンゼ、カナローネ、協力に感謝します。冒険者ギルドには依頼完了報告をしておくので、明日報酬を受け取りに行ってください」
遅れて駆け付けた警備員さんたちが男を担ぎ上げ、それと一緒にレミリナは去って行った。
「バランセ、切られたの?」
リンゼに言われて、下を見るとブレザーとシャツが切られており、ブラが見えていた。
「私の魔法で防いだから、服はこんなだけど肌は傷ついてないよ」
「ならいいけど……」
「新しい制服を渡しますね」
カナローネさんはマジックバッグからブレザーとシャツを取り出して、俺に差し出した。任務も完了したので、この制服を着ることはもうないとは思うが、せっかくなので貰っておくか。
「リンゼ、今からどうする? 任務も終わったし、ここから出て適当な宿に泊まる?」
すると、カナローネさんが割り込んできた。
「今夜はここの寮に泊まって行ってください! 明日の朝には冒険者ギルドに向かう馬車を手配しますので!」
なんかちょっと必死な感じがするのはなぜだ? 無理に断るのも悪い気がするので泊めてもらうか。
「ならお世話になります」
「では、私たちは失礼します」
俺とリンゼはカナローネさんに軽く頭を下げて、その場を離れた。
* * *
満月の明かりに照らされた庭園に、一人残された生徒会長カナローネ。その表情は恍惚としていた。
「あぁ……、あの凛々しいお姿……『銀の彗星』バランセさん。なんて素敵な方……」
カナローネは先ほどの騒動で乱れた服を直すこともなく、わが身を抱いて体をよじり、熱い吐息を洩らしていた。
* * *
俺とリンゼは、待機していた寮の一室に戻ってきた。
「ねー、リンゼー」
「ダメッ!!」
「まだ何も言ってないのに……」
「だってエッチな事するってバランセの顔に書いてあるから。今日は我慢して大人しく寝よ。明日ギルドへの報告が終わったらたっぷりしようね」
「はい……」
リンゼになだめられて、俺は大人しく床に就いた。
――翌朝。
出発の準備も終わり、二人で部屋を出ようとしたところで、ドアをノックする音が聞こえた。俺がドアを開けると、カナローネさんが立っていた。
「もしよければ。朝食をご一緒しませんか?」
「いいですよ」
カナローネさんは俺とリンゼの恰好を見ると「あの、学食に行くので、出来れば制服に着替えて頂けないでしょうか?」と頼む。
「あ、はい」
特に断る理由もないので、俺とリンゼは制服に着替えてカナローネさんについて行く。案内されたのはどっかのホテルのレストランかと思えるような素敵なところだった。
なんともセレブな雰囲気の学食で優雅に朝食をとる。カナローネさんは紅茶を飲む所作でさえエレガントだ。
「バランセさんは、この学園に興味はありませんか? ここでは最高の設備と最高の教員によって魔法やスキルの習得をすることができます。バランセさんなら特待生として卒業までの学費も免除できますよ」
女子校に入ってJKに混じって生活とは、なんとも魅力的な提案だが、それではリンゼと一晩中エッチできないよな……。
「すいません。私には冒険者の方が性に合っていると思いますので……」
俺が断ると、カナローネさんは「そうですか」と、とても残念そうな顔をしていた。
朝食を終えると、馬車が迎えに来たようなので学園の正門まで来た。カナローネさんも、わざわざ見送りに来てくれた。
俺が馬車に乗り込もうとしたところで、カナローネさんは俺の手を握る。
「バランセさん、本当にありがとございました」
カナローネさんは礼を言い終わっても、熱っぽく俺の目を見つめ手を放してくれない。
「あの……カナローネさん?」
「カナローネさんなんてよそよそしくしないで! ローネと呼んで♡」
俺がその勢いに押されて「ロ、ローネ?」と口走ると、彼女はうっとりとした表情で、グイっと俺に顔を寄せる。
「はい、バランセ。何でしょう?」
「えーっと、ごきげんよう」
「あなたはもうこの学園の生徒会の一人です。いつでもここに帰ってきてください。いいですね?」
「は、はぁ。アリガトウゴザイマス」
両手でがっちり俺の手を握るローネ。美少女にグイグイ来られると、戸惑ってしまうが悪い気はしない。むしろすごく嬉しいのだが、君みたいな可愛い子に手を握られて、顔を近づけられると、エロい気分になってしまうだろ?
「そろそろ出発しないと」
「ご、ごめんなさい! 私ったらつい……」
ローネは慌てて手を放した。解放された俺は馬車に乗り込む。俺が席に座ると馬車は走り出し、エリューモ学園から離れて行った。
* * *
――冒険者ギルドに向かう馬車内にて。
リンゼは何故か不貞腐れている。
「いいなーバランセはモテモテで。ローネって美人だし、あーゆー子、バランセは好きだよねー」
「うん、好き」
「うぬぬぬ……。でもあの子、きっとおちんちん無いよ」
「そりゃ女の子だから、大体の子は無いと思うけど……」
「ね! だから、バランセは私がいればいいでしょ! なんたって男の子と女の子の両方を自在に使い分けられるんだから!」
リンゼは「ふふん」と得意げに胸を張る。「ね!」と力強くわれるまでもなく、リンゼのチートスキルの素晴らしさはもちろん良く分かっているよ。
「そうだね。おちんちんも使えるリンゼが、私にとって一番だよ」
「あー、なんかその言い方だと、おちんちんさえあれば誰でもいいみたいな言い方だー」
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お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
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