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第六話:あたしとアタシ
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「……」
先程出て来た女性は、俺をそっちのけで煙管を吸いながら周囲をうろうろと徘徊している。まるで俺が見えていないかのようだ。
「……ふうん…随分とマア変わっちまったもんだねェ…確かにしばらく出てこなかったがここまでとは…」
いや。説明してくれよ。
こちとら一度にいろんなことが起こりすぎて脳がパニック起こしすぎて一周回って落ち着き払ってる状態なんだからよ。
「あのー、ちょっと…」
「あァ?」
ひいいいいいぃぃぃ!!
さっきまでの女郎蜘蛛と違いすぎて…でもなんだか同じに思えて…ひいいいいい!!
「あ、貴女はなんなんですか。女郎蜘蛛は、女郎さんとか言ってたけど…」
「……あァ…そうだよ。女郎蜘蛛の上の部分をとって女郎さ。…でも本当の名前じゃないしねェ…好きに呼べばいいさ」
……好きにって…姐さんとか呼んだら怒るかな…
『わかりました!ではこれから姐さんと呼ばせていただきます!宜しくお願いします!』
『は???』
(死亡ルート)
…多分女郎さん以外で呼んだら殺されるな…本人がそんな怒ってなくてもとにかく圧がすげえからなこの人…俺の精神が持たねえ。
「で?この体…女郎蜘蛛が化け物だっていう証明のためにアタシは呼ばれたんだろう?どう、納得した?」
「えぁっ…いや、正直まだこんがらがってると言うか…もう人外なのはわかったから他の説明してくれって感じです…」
こいつら謎が多すぎるんだよ、俺の思考回路もう限界だって泣いてるよ。
女性は――女郎さん、は呆れたように頭を振って煙管をふかした。
え、俺殺されんのかな?
「はあ…ったく、あのくそガキは何の説明もしてないのかい?呆れたね。…まあそれでも逃げ出さないアンタは――やっぱり…」
一人でぶつぶつ呟く癖は女郎蜘蛛と一緒だ。
「…分かったよ。どうせあのくそガキじゃあロクな説明も出来ないだろう?アタシが説明してやる、聞きたいことは何でも聞きな」
「はっ…はい」
…………。
俺よりイケメンだなこの人。
俺はおずおずと、聞きたかったこと言いたかったことを口にだした。
「…あの…ずっと聞きたかったけど聞き辛かったこと聞いていいですか」
「なんだい」
「……女郎蜘蛛…蜘蛛なんですよね?」
俺はそっと女郎さんの背中に目をやった。
「何で足六本しかないんすか」
多分誰もが「ん???」ってなったところであろう。蜘蛛は昆虫類じゃないんだぜ!これでまた一つ賢くなったな!
「……アンタ、それアタシに聞いて正解だよ。絶対あのくそガキの前でそれについて触れるんじゃないよ」
「…やっぱなんかあるんですね」
女郎蜘蛛であるという言葉を信じるのなら、どう考えてもあれはおかしい。
最初は人間の足も含めて八本だと言うことかと思ったが…
うかつに聞けないことだった。混乱していても分かるくらいに。
「あれはねェ、封印されちまったのさ。聞いてないかい?『真咲』って奴の話をさ」
『真咲?真咲!待って、違うの、あたし――ごめんなさい、ごめん、真咲!!』
『すまない、すまない、●●――もう二度とこんな悲劇は起こしちゃいけないんだ、分かってくれ●●、すまない、すまない――』
「……あの子の足は――蜘蛛の足の残りの二本は、『力』が強すぎた。それこそやろうと思えば世界を壊せるくらいのね。――だから封印された。その封印を解けるのは…」
アンタ達、蓮田谷家の人間のみらしいよ――
そう言って女郎さんは俺をまっすぐに見つめた。
まるで値踏みをするように――
「…ま、アンタみたいな馬の骨じゃだめか」
「はあーーーー!?!?」
なんだよそれ!どんな根拠があって言ってんだよ!?てめえマジぶっ飛ばすぞ!とか言ったら俺がぶっ飛ばされる!黙ってよう!
「で?聞きたいことは終わりかい」
「あっ!待ってください待って!まだまだありますよ聞きたいこと!」
俺はわたわたと腕をつかんで女郎さんを引き留める。
…やっぱり体温がない。でもつかめる。触れられるし聞こえるし、見える。
「……正直に言いましょう。何が分からないのか何が聞きたいのか分からないんです」
「……フウン…無理もないさ。ここまでのことが一気に起こって冷静な方がおかしいんだから」
ん?意外と優しいぞこの人?ツンデレかな?
女郎さんは再び煙管をふかした。そのまま自然な動作で手近な岩に腰掛け、ロングブーツで隠された長い足を組む。
「いいさ、話せることは話そう。アンタが何を聞きたいかは、当たり前だけど分かってあげられないからねェ、アンタにとって見当外れなことをしゃべるかもしれないが、その辺はちゃんと頭に入れといておくれよ」
…どうやら長期戦になりそうだ。
俺は女郎さんの向かいにある岩に腰掛ける。
これを聞いたらもう戻れない。
傾き始めた日を横目に、俺は覚悟を決めた。
どこから話そうか、ひょっとしたらあの子が触れられたくない部分もあるかもしれないから、多少削る部分があるかもね。悪いが了承してくれよ。
……まず、アタシとあの子の関係からかねェ。
アタシは俗に言うところの化け物――というよりは異能力そのものだ。
アタシは、あの子の異能力なんだよ。
……異能力はとある寄生虫から与えられることは知ってるかい?
言い換えればその『虫』は、異能力そのものなんだ。
つまりどういうことかって?…実は分かってんじゃないのかい?
そう、アタシは『虫』さ。
この子の体に住み着いた寄生虫。
基本的に『虫』には自我がない。だがアタシみたいに極々稀に自我がある『虫』が生まれることがあったんだよ。
多分、アタシみたいなのは願いの量や質が他と違ったり偏ったりして――ああ、悪い、こっちの話だ、忘れてくれ。
まあ、結論から言うとアタシみたいな『虫』――自我のある『虫』は、その分『力』が強かったんだ。
だからほら、こうやってアンタともしゃべれてるし、住み着いた宿主の体を媒介にしてしか出来ないが自分の姿をあらわすことも出来る。
……本当は、化け物はアタシ一人なんだけどねェ…あの子は自分も化け物だと思い込んでる。
決して間違ってはいないさ。あの子は化け物、アタシも化け物。でももっと深いところまで行けば、あの子は化け物なんかじゃ――
悪い、脱線しちまったね。
この話は一旦やめようか、変なことをポロポロ口走っちまいそうだしね。
…じゃあ、『虫』は異能力の内容をどうやって決めるか分かるかい?
生まれつき決まってる訳じゃあないんだよ。…何、知ってるって?話しが早くて助かるねェ全く。なァ、不法侵入者で泥棒の真里クン?
悪い悪い、まァ自分の目標のために何でも出来るのはいいことさ。ただやり過ぎないようにね。
…『虫』は宿主の願いを叶える。
簡単に言うと、『虫』は願いを住処とするから宿主の願いにあった体の構成にならなくちゃならない。
そうして、その願いに沿った異能力を与えるのさ。
というよりは、与えたくなくても与えちまうっていう形になるんだけどねェ。
それにもまた、一つの膨大で貪欲で悲痛な願いが――いや、何でもない。いやだね、年をとると何でもペラペラしゃべっちまう。
もう何歳になるのかって?女性に年を聞いちゃあいけないよ。アンタモテないだろ。
…この子はアタシに、「真咲の願いの成就」を願った。
その日から、この子は化け物になった。
…今はまだ詳しくは教えられないさ。どうしても知りたいっていうならあの子の口から直接聞きな。
アタシみたいな部外者が、勝手にしゃべっていいことじゃないんだ。
まあ、その願いを叶えるために、アタシはこの子にヒトの願いを叶える力と永遠の命を与えた。
だからこの子は永遠に生き続ける。たとえ地球が爆散しようと、死ぬに死ねない。
…この子がアンタに懐いてるのは、やっぱり真咲に似てるからなんだろうねえ。
……もう、やめた方がいいっていったのにさ。子供は大人の話なんて聞きやしない。
一つ、忠告だ。
この後アタシが戻って、再びあの子と話すことになって。
それでアンタは、多分あの子に勧誘を受けると思う。
…それを受けるか受けないかはアンタ次第さ。でもやめといた方がいい。
え?まだ内容も知らないのに無茶言うなって?…アタシはずっと見てきたからねェ。
たくさん死んだんだよ。たくさん失敗したんだよ。…たくさん、殺しちまったんだよ。
絶対に死なないという自信があるかは知らないが、先なんて何も分からないんだから。
もうこれ以上、この子を人間離れさせないでおくれ。もうこれ以上、この子の前に死体の山を積むのは――
…だから、まだその内容を知らないのに勝手に話を進めるなって?
悪かったよ。でもアタシは、この子が呼んでくれなきゃ出てこれない存在なんだよ。だから今のうちに言っておかなきゃいけないんだ。
…どうだい?これで聞きたいことは全部聞けたかい?
……どうしてあの子は――女郎蜘蛛は真咲をそんなに贔屓するのかって?
簡単だよ。惚れた相手のためなら、男女に関係なく何でも出来ちまうモンだろう?
「……まだ、聞きたいことは沢山ある。でも、やっぱり今は俺の考えがまとまらねえ。それにきっと、今聞いてもそれはまだ知っちゃいけねえことのような気がする。だから――」
「『もう十分』、かい?」
俺は無言でうなずく。
「そうかい…じゃあ、アタシは行くよ。またいつか」
そう言って女郎さんは岩から立ち上がり、最後にもう一度煙管をふかした。
「…忠告、心に留めておきます」
「そうかい、ありがとね。…最後に一つだけ、いいかい?」
そう言うと女郎さんは、にやりと笑って――
「この子を見たとき、悲鳴を上げて逃げ出さないでくれてありがとう。この子が化け物だと知っても、態度を変えないでくれてありがとう。この子に願いを叶えると言われたとき、まっすぐに向き合ってくれてありがとう。……やっぱりアンタは、真咲の子孫だよ。ひょっとしたらアンタなら――」
女郎さんは目を閉じた。そうしてまたふっと笑って、
「いや、アンタみたいな馬の骨じゃだめか」
「二度目!!!!!!」
煙管から出ている煙が、女郎さんを包む。
「とにかく、ありがとう。でも、だからって無理して付き合わないであげていいんだよ。もう若い奴が死ぬのを見るのは――何も成し遂げられずに死ぬのを見るのは、ごめんだからね」
大人びた女郎さんの顔立ちが、一瞬だけ幼く見えた。
ザアッと、女郎さんの体が吹き消されるようになくなっていく。
「……あ」
後には先程の小さい少女の方の女郎蜘蛛が、ちょこんとたっていただけだった。
「真里、どう?あたしが化け物だって、これで信じてくれるかな」
「………ああ……」
『多分あの子に勧誘を受けると思う』
……どういうことなんだ?
なんかの組織…に属してるようには見えねえ。一体――
「ふふん、真里、最初から正直に化け物だって信じてればよかったのに~」
うりうりー、と女郎蜘蛛が絡んでくる。
「うるせーな、てかだったら俺の願いを叶えてくれよ、できんだろ?」
「えー、でも異能力を与えるのだけは絶対にいや…あっ」
女郎蜘蛛はふと思いついたように顔をあげ、無駄に輝いた目をしてこちらを見てきた。
「分かった!真里、今から真里んちいこう!」
「……………は?」
なんで?
先程出て来た女性は、俺をそっちのけで煙管を吸いながら周囲をうろうろと徘徊している。まるで俺が見えていないかのようだ。
「……ふうん…随分とマア変わっちまったもんだねェ…確かにしばらく出てこなかったがここまでとは…」
いや。説明してくれよ。
こちとら一度にいろんなことが起こりすぎて脳がパニック起こしすぎて一周回って落ち着き払ってる状態なんだからよ。
「あのー、ちょっと…」
「あァ?」
ひいいいいいぃぃぃ!!
さっきまでの女郎蜘蛛と違いすぎて…でもなんだか同じに思えて…ひいいいいい!!
「あ、貴女はなんなんですか。女郎蜘蛛は、女郎さんとか言ってたけど…」
「……あァ…そうだよ。女郎蜘蛛の上の部分をとって女郎さ。…でも本当の名前じゃないしねェ…好きに呼べばいいさ」
……好きにって…姐さんとか呼んだら怒るかな…
『わかりました!ではこれから姐さんと呼ばせていただきます!宜しくお願いします!』
『は???』
(死亡ルート)
…多分女郎さん以外で呼んだら殺されるな…本人がそんな怒ってなくてもとにかく圧がすげえからなこの人…俺の精神が持たねえ。
「で?この体…女郎蜘蛛が化け物だっていう証明のためにアタシは呼ばれたんだろう?どう、納得した?」
「えぁっ…いや、正直まだこんがらがってると言うか…もう人外なのはわかったから他の説明してくれって感じです…」
こいつら謎が多すぎるんだよ、俺の思考回路もう限界だって泣いてるよ。
女性は――女郎さん、は呆れたように頭を振って煙管をふかした。
え、俺殺されんのかな?
「はあ…ったく、あのくそガキは何の説明もしてないのかい?呆れたね。…まあそれでも逃げ出さないアンタは――やっぱり…」
一人でぶつぶつ呟く癖は女郎蜘蛛と一緒だ。
「…分かったよ。どうせあのくそガキじゃあロクな説明も出来ないだろう?アタシが説明してやる、聞きたいことは何でも聞きな」
「はっ…はい」
…………。
俺よりイケメンだなこの人。
俺はおずおずと、聞きたかったこと言いたかったことを口にだした。
「…あの…ずっと聞きたかったけど聞き辛かったこと聞いていいですか」
「なんだい」
「……女郎蜘蛛…蜘蛛なんですよね?」
俺はそっと女郎さんの背中に目をやった。
「何で足六本しかないんすか」
多分誰もが「ん???」ってなったところであろう。蜘蛛は昆虫類じゃないんだぜ!これでまた一つ賢くなったな!
「……アンタ、それアタシに聞いて正解だよ。絶対あのくそガキの前でそれについて触れるんじゃないよ」
「…やっぱなんかあるんですね」
女郎蜘蛛であるという言葉を信じるのなら、どう考えてもあれはおかしい。
最初は人間の足も含めて八本だと言うことかと思ったが…
うかつに聞けないことだった。混乱していても分かるくらいに。
「あれはねェ、封印されちまったのさ。聞いてないかい?『真咲』って奴の話をさ」
『真咲?真咲!待って、違うの、あたし――ごめんなさい、ごめん、真咲!!』
『すまない、すまない、●●――もう二度とこんな悲劇は起こしちゃいけないんだ、分かってくれ●●、すまない、すまない――』
「……あの子の足は――蜘蛛の足の残りの二本は、『力』が強すぎた。それこそやろうと思えば世界を壊せるくらいのね。――だから封印された。その封印を解けるのは…」
アンタ達、蓮田谷家の人間のみらしいよ――
そう言って女郎さんは俺をまっすぐに見つめた。
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「…ま、アンタみたいな馬の骨じゃだめか」
「はあーーーー!?!?」
なんだよそれ!どんな根拠があって言ってんだよ!?てめえマジぶっ飛ばすぞ!とか言ったら俺がぶっ飛ばされる!黙ってよう!
「で?聞きたいことは終わりかい」
「あっ!待ってください待って!まだまだありますよ聞きたいこと!」
俺はわたわたと腕をつかんで女郎さんを引き留める。
…やっぱり体温がない。でもつかめる。触れられるし聞こえるし、見える。
「……正直に言いましょう。何が分からないのか何が聞きたいのか分からないんです」
「……フウン…無理もないさ。ここまでのことが一気に起こって冷静な方がおかしいんだから」
ん?意外と優しいぞこの人?ツンデレかな?
女郎さんは再び煙管をふかした。そのまま自然な動作で手近な岩に腰掛け、ロングブーツで隠された長い足を組む。
「いいさ、話せることは話そう。アンタが何を聞きたいかは、当たり前だけど分かってあげられないからねェ、アンタにとって見当外れなことをしゃべるかもしれないが、その辺はちゃんと頭に入れといておくれよ」
…どうやら長期戦になりそうだ。
俺は女郎さんの向かいにある岩に腰掛ける。
これを聞いたらもう戻れない。
傾き始めた日を横目に、俺は覚悟を決めた。
どこから話そうか、ひょっとしたらあの子が触れられたくない部分もあるかもしれないから、多少削る部分があるかもね。悪いが了承してくれよ。
……まず、アタシとあの子の関係からかねェ。
アタシは俗に言うところの化け物――というよりは異能力そのものだ。
アタシは、あの子の異能力なんだよ。
……異能力はとある寄生虫から与えられることは知ってるかい?
言い換えればその『虫』は、異能力そのものなんだ。
つまりどういうことかって?…実は分かってんじゃないのかい?
そう、アタシは『虫』さ。
この子の体に住み着いた寄生虫。
基本的に『虫』には自我がない。だがアタシみたいに極々稀に自我がある『虫』が生まれることがあったんだよ。
多分、アタシみたいなのは願いの量や質が他と違ったり偏ったりして――ああ、悪い、こっちの話だ、忘れてくれ。
まあ、結論から言うとアタシみたいな『虫』――自我のある『虫』は、その分『力』が強かったんだ。
だからほら、こうやってアンタともしゃべれてるし、住み着いた宿主の体を媒介にしてしか出来ないが自分の姿をあらわすことも出来る。
……本当は、化け物はアタシ一人なんだけどねェ…あの子は自分も化け物だと思い込んでる。
決して間違ってはいないさ。あの子は化け物、アタシも化け物。でももっと深いところまで行けば、あの子は化け物なんかじゃ――
悪い、脱線しちまったね。
この話は一旦やめようか、変なことをポロポロ口走っちまいそうだしね。
…じゃあ、『虫』は異能力の内容をどうやって決めるか分かるかい?
生まれつき決まってる訳じゃあないんだよ。…何、知ってるって?話しが早くて助かるねェ全く。なァ、不法侵入者で泥棒の真里クン?
悪い悪い、まァ自分の目標のために何でも出来るのはいいことさ。ただやり過ぎないようにね。
…『虫』は宿主の願いを叶える。
簡単に言うと、『虫』は願いを住処とするから宿主の願いにあった体の構成にならなくちゃならない。
そうして、その願いに沿った異能力を与えるのさ。
というよりは、与えたくなくても与えちまうっていう形になるんだけどねェ。
それにもまた、一つの膨大で貪欲で悲痛な願いが――いや、何でもない。いやだね、年をとると何でもペラペラしゃべっちまう。
もう何歳になるのかって?女性に年を聞いちゃあいけないよ。アンタモテないだろ。
…この子はアタシに、「真咲の願いの成就」を願った。
その日から、この子は化け物になった。
…今はまだ詳しくは教えられないさ。どうしても知りたいっていうならあの子の口から直接聞きな。
アタシみたいな部外者が、勝手にしゃべっていいことじゃないんだ。
まあ、その願いを叶えるために、アタシはこの子にヒトの願いを叶える力と永遠の命を与えた。
だからこの子は永遠に生き続ける。たとえ地球が爆散しようと、死ぬに死ねない。
…この子がアンタに懐いてるのは、やっぱり真咲に似てるからなんだろうねえ。
……もう、やめた方がいいっていったのにさ。子供は大人の話なんて聞きやしない。
一つ、忠告だ。
この後アタシが戻って、再びあの子と話すことになって。
それでアンタは、多分あの子に勧誘を受けると思う。
…それを受けるか受けないかはアンタ次第さ。でもやめといた方がいい。
え?まだ内容も知らないのに無茶言うなって?…アタシはずっと見てきたからねェ。
たくさん死んだんだよ。たくさん失敗したんだよ。…たくさん、殺しちまったんだよ。
絶対に死なないという自信があるかは知らないが、先なんて何も分からないんだから。
もうこれ以上、この子を人間離れさせないでおくれ。もうこれ以上、この子の前に死体の山を積むのは――
…だから、まだその内容を知らないのに勝手に話を進めるなって?
悪かったよ。でもアタシは、この子が呼んでくれなきゃ出てこれない存在なんだよ。だから今のうちに言っておかなきゃいけないんだ。
…どうだい?これで聞きたいことは全部聞けたかい?
……どうしてあの子は――女郎蜘蛛は真咲をそんなに贔屓するのかって?
簡単だよ。惚れた相手のためなら、男女に関係なく何でも出来ちまうモンだろう?
「……まだ、聞きたいことは沢山ある。でも、やっぱり今は俺の考えがまとまらねえ。それにきっと、今聞いてもそれはまだ知っちゃいけねえことのような気がする。だから――」
「『もう十分』、かい?」
俺は無言でうなずく。
「そうかい…じゃあ、アタシは行くよ。またいつか」
そう言って女郎さんは岩から立ち上がり、最後にもう一度煙管をふかした。
「…忠告、心に留めておきます」
「そうかい、ありがとね。…最後に一つだけ、いいかい?」
そう言うと女郎さんは、にやりと笑って――
「この子を見たとき、悲鳴を上げて逃げ出さないでくれてありがとう。この子が化け物だと知っても、態度を変えないでくれてありがとう。この子に願いを叶えると言われたとき、まっすぐに向き合ってくれてありがとう。……やっぱりアンタは、真咲の子孫だよ。ひょっとしたらアンタなら――」
女郎さんは目を閉じた。そうしてまたふっと笑って、
「いや、アンタみたいな馬の骨じゃだめか」
「二度目!!!!!!」
煙管から出ている煙が、女郎さんを包む。
「とにかく、ありがとう。でも、だからって無理して付き合わないであげていいんだよ。もう若い奴が死ぬのを見るのは――何も成し遂げられずに死ぬのを見るのは、ごめんだからね」
大人びた女郎さんの顔立ちが、一瞬だけ幼く見えた。
ザアッと、女郎さんの体が吹き消されるようになくなっていく。
「……あ」
後には先程の小さい少女の方の女郎蜘蛛が、ちょこんとたっていただけだった。
「真里、どう?あたしが化け物だって、これで信じてくれるかな」
「………ああ……」
『多分あの子に勧誘を受けると思う』
……どういうことなんだ?
なんかの組織…に属してるようには見えねえ。一体――
「ふふん、真里、最初から正直に化け物だって信じてればよかったのに~」
うりうりー、と女郎蜘蛛が絡んでくる。
「うるせーな、てかだったら俺の願いを叶えてくれよ、できんだろ?」
「えー、でも異能力を与えるのだけは絶対にいや…あっ」
女郎蜘蛛はふと思いついたように顔をあげ、無駄に輝いた目をしてこちらを見てきた。
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