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第十八話:電流潜り
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千鬼の顔はびっくりするほど青ざめていた。…当然か、他でもない自分の兄貴が行方不明なんかになったら――しかもこんな状況で。
正直言って、生きているかすら疑いたくなる。
「………」
とりあえず落ち着こうと訪れた裏庭。コンクリートに腰を下ろし、らしくもなく背を丸めて荒い呼吸を繰り返す千鬼を見て、状況の深刻さを改めて理解した。
「…飲めよ」
自動販売機で炭酸飲料を買って差し出した。こいつの好みなど知ったことじゃないが、俺なりに滅茶苦茶気遣って選んだ――コーラだ!
「…『こーら』って、あたし知ってるよ。基本的に誰でも飲めるやつ…相手の好みがわからないときとりあえず出すやつじゃん。全然考えてない」
「ええいうるさい!そんなに言うならお前が選べってんだ!てかなんで知ってんだよ!」
千鬼はゆっくりと、震えを押さえながら、コーラの入ったペットボトルを受け取った。が、その蓋を開けることはせずただ手中に納めているだけで、飲もうとはしない。
「……飲まねぇの?」
「…悪ィ…今飲んだら…多分飲み込めねェ」
そう言って千鬼は掌で口元を覆った。その掌の向こうでは、歯がカチカチと鳴っている。
「……――」
少しでも元気づけようと、俺は口を開く。
「…ッ大丈夫だ千鬼、あの無刀だぜ?あいつがそう易々とやられるわけないだろ、…夜にでもなれば、きっと…何でもない顔して帰ってくるさ」
「…………」
…俺の話なんて、聞く余裕無さそうだな……
「ちょっと真里!もっと気の聞いたこと言えないの!?」
「言えるわけねぇだろ俺だってこいつほどではなくても動揺してんだよ!んなこというならお前が言ってみろやぁぁぁあぁぁぁ!」
動揺のせいか、千鬼の――女郎蜘蛛のことが見えない人の前で女郎蜘蛛とでかい声で言い争いをしてしまった…。が、それすらも気づかないのか、もしくは気づいているが構う気力がないのか――千鬼はただただ虚空を睨んでいた。冷や汗を大量にかきながら。
と、ふとした瞬間、千鬼が勢いよく立ち上がる。それにつられて、俺もビクッとしながら少し腰を浮かせた。
「……千鬼?どうした…?」
顔色は相変わらず青い。汗も震えも止まっていないのに、そんな冷静な判断などできないような状態でどこにいこうと言うのか。
「こうしちゃいられねぇ、兄貴を、探してくる」
「はっ…?おいちょっ、待て!」
千鬼は言うが早いか、走り出した。緊張で筋肉がうまく動かないのだろう、その走りはぎこちない。同じく動揺している俺の足でも簡単に追い付けた。腕をがっしり掴んで、下手に動かないように、落ち着くように言い聞かせる。
「千鬼!ダメだ、お前一人で行ったって仕方ないだろ!花依とすぐるには連絡しておいたから、あの二人が来るまで待てよ!」
「待ってられるわけねェだろッ!」
バシッ、と俺の腕が振りほどかれた。くっ、やはり俺の握力程度じゃこいつの腕力には敵わない……
「兄貴は――あのバカ野郎はなァッ」
震える声帯で、不揃いな音量の声で千鬼は話す。いや――叫ぶ。
「あの、バカはッ…俺のために、俺なんかの為に!簡単に命を投げ出す、簡単に、自分を犠牲にするッ――兄貴が死んだとき、俺を守って死んだんだとしたら、俺はッ――」
『千鬼逃げろ!警察はもう呼んだ、だから早くッ――』
『に、兄ちゃんは?兄ちゃ、血、血が、止まらな』
『いいから、はやぐッ…あいつ、まだ息がある……だから、はやく――!』
「―――ッ!!」
千鬼は何か恐ろしいものを思い出したかのようにびくんと震えた。荒れる心を落ち着かせようと下唇を噛んで――うっすらと血が滲むまで。
「……千鬼」
「俺は…行かなくちゃならねェんだよ!兄貴を止められるのは、俺だけなんだから――」
「……ッ、だから待てって!」
再び走り出そうとする千鬼を、今度は前に出て止める。とおせんぼの体勢だ。
「今行ってお前まで行方不明にでもなったら本末転倒だろ!頼む落ち着いてくれ、あいつなら大丈夫だから、千鬼はまず落ち着け!」
「~ッ、大丈夫って、お前にわかることじゃねェだろ!」
俺を押し退けて、千鬼は進もうとする。馬力じゃ敵わないが、今こいつを行かせたら本当にまずい――なんとか止めねぇと――!
「~~ッ…どけッ!」
「うわっ――……」
突き飛ばされて尻餅をついた。痛みに顔を歪めると、それを見て千鬼も一瞬眉間に皺をよせたが、すぐ走り出してしまった。
「――、おい千鬼!」
名前を叫ぶが、止まることはない。完全に理性が死んでいる。
やべぇ、止められねぇッ――
「…女郎蜘蛛、追ってくれ――いやダメだ、やっぱお前は大人しくしてろ!」
「えっ、なんでっ」
「お前が前千鬼を殺しかけたこと忘れてねぇぞ!うっかり殺っちゃいましたじゃすまされねぇからなぁ!?」
だがこのままじゃほんとに――
「真里!千鬼!」
「無事!?」
二つの声が重複して聞こえた。
「…花依!すぐる!」
助かった、あいつらに千鬼を――
いや。
いくらあいつらが強いとはいえ、やっぱり馬力じゃ敵わないだろう。今のあいつじゃ、花依だろうがすぐるだろうが傷つけちまうんじゃ――
…ええい、考えてる暇ねぇぞ!
「花依!すぐる!頼む、千鬼を止めてくれ!」
「はぁッ!?おいどういう――あっ、橘弟!どこ行くんだよ!」
花依たちの横をすり抜けようとした千鬼の腕を、花依が掴む。
「…兄貴を探す」
「…探すって、お前――無理だって危ねぇ…おいこら待て!」
「千鬼、そんなに焦ったら…!」
千鬼は二人の声など耳に入らないという様子で、また走り出した。
――やっぱり、女郎蜘蛛に頼むしかないのか…?いや、でもっ――
「ッチ――待てって言ってんだろ橘弟ォ!」
花依が素早く千鬼を追いかけ、千鬼のすぐ後ろまで追い付くと――
「おらァ!」
強烈な回し蹴りが、千鬼の脇腹にまともに入った。
…どうやら俺の心配は杞憂だったようだ。
「いっっつぅッ――おい花依ッ……」
「うるせぇ!この状況で探しに行くとかバカか!?ちょっとは落ち着け!」
いつもと立場が完全に入れ替わってやがる……
「真里、大丈夫?」
「あ、あぁ大丈夫だ…すぐるは?」
「すぐるは特になにも…あ、あとね、真里…千鬼も、聞いて!」
そう言うと、花依が思い出したように後ろを振り返った。
「あれ、おかしいな…あの人ついてきてないぞ?途中走ったからかな?」
「…あの人?」
理性がだんだん戻ってきた千鬼が問う。
「うんっ、さっき知り合ったんだけど…なんだかすぐるたちの仲間だって言うから、ついてきて貰ったの」
「………それ大丈夫なやつか?騙されてるとかじゃねぇよな…?」
勘弁してくれ頼むから。
一応女郎蜘蛛にも警戒を促しつつ、すぐるの話を聞く。
「その人ね、無刀に頼まれたんだって言ってて…」
「!……兄貴に?」
その瞬間。
――足音が聞こえた。
「!!」
そいつか…?!
無刀の名前が出たからって油断は禁物だ。俺はバットを構え、そいつが変な挙動を見せたらいつでも応戦できるような体勢を取った。
「ッはぁ…ッはぁ…ちょっ、君ら足早すぎ…俺が遅いの…?」
その人物は――
ヘッドフォンを首にさげ、制服の上にパーカーを羽織った――男性。恐らく三年生だろうか?顔は、距離があってはっきりとは見えない。
彼は息を切らしながらこちらにとてとてと走ってきて、膝に手をついて呼吸を整えていた。
「はぁ、はぁ……ふぅ、やっと落ち着いた…」
そう言って彼は顔を上げる。ようやくその顔をはっきりと見られた。
――隈がひどかった。たれ目だが目付きが悪く、姿勢も悪い。ヘッドフォンと相まって、ゲーマーのような風貌だ。
その顔を見て、千鬼が息を飲むのがわかった。
「……ハッカー先輩…?」
…………誰?
* * *
「ったく、あいつ…私に何かあったらって、こんなすぐに何かが起こるとは思わなかったぞコノヤロー。俺の苦労も考えやがれってんだ…ブツブツ」
何かしら悪態をつくそいつは、目付きの悪い瞳をさらにすぼめて虚空を睨んでいる。見るからに怪しい…が、千鬼と知り合いみたいだし、そこまで警戒することもないのか…?
「おい千鬼、この人は…?」
俺は会話が彼に聞こえないようにこそこそと千鬼に話しかける。
「あ、あぁ、この人は――兄貴の数少ない友達だ」
「友達かぁ…、あと一言多い点には目を瞑ってやる」
やはり、多少信用に足る人物なのか…いや、油断は禁物だ。まずは疑ってかかれ、俺。
と、その時、彼が俺の方をギロッと睨んだ。
「ヒッ…、な、何……」
「ん…そっちの茶髪の彼には自己紹介がまだだったな」
……目付き悪いだけかよ…。
「俺はハッカー。三年だ。こんなタイミングで知り合ったから、多分すぐには信用して貰えないと思うが…別に信じて貰わなくて良い。君も不安だろうから」
「……ハッカー…ですか」
「あぁ、勿論偽名だ。好きに呼んでくれ」
「本当の名前とか、名乗りたくもないんだ」
一瞬彼の瞳に、嫌悪と悲しみの色が通りすぎた。
「…そう、すか……じゃあ、ハッカー…先輩」
そう口にすると、彼は――ハッカー先輩は少し表情を緩めた。
「さて。自己紹介もすんだことだし、話を始めようか」
全員の目付きが、変わる。
とくに千鬼の――
「無刀の失踪。それと、俺自身のことについて――少し、話させて貰えないだろうか」
ハッカー先輩が口を開く。
「まず、俺は数日前――五日前だな、その日に無刀に君たちの作戦への協力を求められていた」
五日――、俺達と花依が仲間になった日だ。
「俺は断った。生徒会に歯向かおうなんて、自殺の補助してほしいやつがやるようなことだからな。…君ら命知らずすぎない?」
「っせえな、いいから話の続き!」
「ひ…ご、ごめん」
花依に渇をいれられ怯んだハッカー先輩は、話を再開する。
「でも、無刀に『後方支援』を頼まれたんだ。俺の異能力なら、それぐらいは生徒会の目を掻い潜ってできるから…あぁ、そうだ、俺の異能力について紹介しないとな」
ハッカー先輩は人差し指で自分の頭をトントンと叩いた。
「俺の能力は、自分の意識自体をインターネットに接続するといったものだ。…わかりづらいよな?自分でも説明しにくいんだが…この能力は、一度に大量の機械を操作できたり、通常より容易にハッキングができたり…まぁとにかく、電子の流れているものでならなんでも好き勝手できる力なんだ。使いこなせるようになるまで、かなり時間はかかったけど…」
……さすが最高学年、そこまで異能を使いこなせたら大したものだ。偽名の由来は、恐らくここだろう。
「まぁとにかく…この異能を使えば、生徒会に関わる何かしらの電子機器にハッキングしてどんな邪魔をしようが、逆探知もされない。だから俺が後方支援として君たちのサポートをする役だった」
でも、と先輩は少し顔をしかめた。
「もう一つ頼まれていたのは…もし無刀に何かあったとき、代わりに君たちを守る役目」
きっとこっちが本命だったんだろうね、と先輩は目を閉じ、深いため息をつく。
…それって……
「あいつ、初めから…自分が危険な目に遭うことがわかってたってことじゃ……」
だって、都合が良すぎないか?こんな…いや、でも……
『絶対に誰も死にません』
…あの言葉を信じるなら、無刀は今も生きている。
あぁ、でも、でも――
「真里、落ち着いて」
「ッ…あぁ…」
そうだ、俺が動揺してどうする。
一番心配なのはきっと、千鬼の筈なんだから。
「話を進めるけど…無刀が行方不明とわかった瞬間、俺はこの辺りの監視カメラ――特に学校内と周辺を中心に、カメラのデータをハックして盗み見したんだ。…でも」
先輩が紡いだ言葉に、俺は驚愕する。
「怪しいものは何も写っていなかった。不自然なほどにね」
「………!」
「知ってると思うけど、ウチの学校の防犯施設は完璧だ。防犯カメラに、死角はない」
つまりどういうことか。
「無刀をさらった――大雑把にいって今回の事件を引き起こした奴による情報改竄が施されている。そしてその権限が付与されているのは生徒会・風紀委員・教職員だけだ」
「ならその中に…!」
「犯人がいる…ってことか」
「無論、姿を消す等の能力者という可能性も考えたんだが…学生、教職員のデータを一通り閲覧したけどそんな能力者はいなかった。とするとかなり選択肢はしぼまる。それからもう一つ――」
そう言うと、ハッカー先輩は少し――体を強ばらせた。
何かに気付いたように。
「………っ」
だが軽く頭を振って、考えを打ち消すように目をぎゅっとつぶった。
「…先輩?」
「いや…もう一つ、選択肢をしぼめる情報があって」
まぁ可能性の話なんだけど――と前置きをして始める。
「俺のこの能力は、ハッキングに使う時間が圧倒的に短縮される。だから、無刀がいなくなったと知ってから大体十秒あれば監視カメラの映像データぐらい簡単に盗めるんだ。だがその速さをもってしても、相手の情報改竄に間に合わなかった」
「恐らくそいつは…俺が君たちに協力していることを知っている」
そうでもなければこんなに早急にデータを改竄しようとしないはずだ――
と、ハッカー先輩は少し青ざめながら言った。
それはそうだろう。バレていると言うことは、つまり――
命を狙われるってこと…だもんな。
「これで俺も生徒会にとっての殺人対象だ。本来なら今すぐにでも逃げるべきなんだろうけど…」
ずっと地面に腰掛けていた先輩は、少し曲がった背のまま立ち上がった。
「親友との約束だ。あいつが戻ってくるまで…俺が無刀の代わりにお前らを守る」
あいつみたいに戦闘に特化した能力じゃないけど――と、先輩は自虐的に笑った。
だが司令塔がいなくなった状態だった俺らにとっては、戦闘能力が高かろうが低かろうがどうでもよかったし、めちゃくちゃに頼もしかった。
「ありがとうございます、ハッカー先輩…お世話に、なります」
「うん。お互いにね…あぁそれと、早速なんだけど」
ピッ。
電子音のような音と共に、ハッカー先輩の目がヴンッと蛍光色の青緑に光った。
よく見るとその瞳には、0と1の数字の羅列が幾十にも――
「ん、この目?これは俺の異能発動時特有のもの。結構細かいでしょ?…って、それどころじゃなくて」
すっと、先輩は何かを監視するようにその0と1の目を細めた。
その目は、俺達に見えない何かを捕らえているような――
「…逃げた方がいいよ。生徒会の刺客とおぼしき人物が、現在校舎西棟付近現在位置から約百二十メートルほど離れた地点を徘徊してる」
その言葉を言い終わる前に、俺達は全員駆けだしていた。
その途中、後ろから呼びかける声が聞こえる。…ハッカー先輩だ。
「悪いが君たちのスマホにハックしてトランシーバーをオンにさせて貰った!刺客の動きは監視カメラのライブ映像で俺が見て逐一報告する!俺のことは心配するな!死ぬなよッ!」
それを聞き終えてから、各々全速力で別々の方向に駆けていく。
…無刀が行方不明の今、戦うのは無謀だ。
それどころかアイツ自身を人質なんかにされていては、こちらとしても大人しく首を差し出すしかない。
今は逃げることだけを考えよう。
まだ全員が見える範囲にいるうちに、アイコンタクトをとる。ついでに全員の向かう方向も確認して…
「何かあったらトランシーバーで連絡しろ!すぐ行くから!」
それだけ伝えて、俺は自慢の俊足で体を前へ前へと進めていく。あいつらもそれなりに足は速いみたいだし、すぐるに至っては四次元的な動きが可能なので、簡単に捕まることはないだろう。
それにしても…思ったより登場が早かったな、生徒会の犬かよクソッ!
捕まったら死。
あまりにもリアルすぎる鬼ごっこ――いいや、デスゲームが、ここに開幕した。
正直言って、生きているかすら疑いたくなる。
「………」
とりあえず落ち着こうと訪れた裏庭。コンクリートに腰を下ろし、らしくもなく背を丸めて荒い呼吸を繰り返す千鬼を見て、状況の深刻さを改めて理解した。
「…飲めよ」
自動販売機で炭酸飲料を買って差し出した。こいつの好みなど知ったことじゃないが、俺なりに滅茶苦茶気遣って選んだ――コーラだ!
「…『こーら』って、あたし知ってるよ。基本的に誰でも飲めるやつ…相手の好みがわからないときとりあえず出すやつじゃん。全然考えてない」
「ええいうるさい!そんなに言うならお前が選べってんだ!てかなんで知ってんだよ!」
千鬼はゆっくりと、震えを押さえながら、コーラの入ったペットボトルを受け取った。が、その蓋を開けることはせずただ手中に納めているだけで、飲もうとはしない。
「……飲まねぇの?」
「…悪ィ…今飲んだら…多分飲み込めねェ」
そう言って千鬼は掌で口元を覆った。その掌の向こうでは、歯がカチカチと鳴っている。
「……――」
少しでも元気づけようと、俺は口を開く。
「…ッ大丈夫だ千鬼、あの無刀だぜ?あいつがそう易々とやられるわけないだろ、…夜にでもなれば、きっと…何でもない顔して帰ってくるさ」
「…………」
…俺の話なんて、聞く余裕無さそうだな……
「ちょっと真里!もっと気の聞いたこと言えないの!?」
「言えるわけねぇだろ俺だってこいつほどではなくても動揺してんだよ!んなこというならお前が言ってみろやぁぁぁあぁぁぁ!」
動揺のせいか、千鬼の――女郎蜘蛛のことが見えない人の前で女郎蜘蛛とでかい声で言い争いをしてしまった…。が、それすらも気づかないのか、もしくは気づいているが構う気力がないのか――千鬼はただただ虚空を睨んでいた。冷や汗を大量にかきながら。
と、ふとした瞬間、千鬼が勢いよく立ち上がる。それにつられて、俺もビクッとしながら少し腰を浮かせた。
「……千鬼?どうした…?」
顔色は相変わらず青い。汗も震えも止まっていないのに、そんな冷静な判断などできないような状態でどこにいこうと言うのか。
「こうしちゃいられねぇ、兄貴を、探してくる」
「はっ…?おいちょっ、待て!」
千鬼は言うが早いか、走り出した。緊張で筋肉がうまく動かないのだろう、その走りはぎこちない。同じく動揺している俺の足でも簡単に追い付けた。腕をがっしり掴んで、下手に動かないように、落ち着くように言い聞かせる。
「千鬼!ダメだ、お前一人で行ったって仕方ないだろ!花依とすぐるには連絡しておいたから、あの二人が来るまで待てよ!」
「待ってられるわけねェだろッ!」
バシッ、と俺の腕が振りほどかれた。くっ、やはり俺の握力程度じゃこいつの腕力には敵わない……
「兄貴は――あのバカ野郎はなァッ」
震える声帯で、不揃いな音量の声で千鬼は話す。いや――叫ぶ。
「あの、バカはッ…俺のために、俺なんかの為に!簡単に命を投げ出す、簡単に、自分を犠牲にするッ――兄貴が死んだとき、俺を守って死んだんだとしたら、俺はッ――」
『千鬼逃げろ!警察はもう呼んだ、だから早くッ――』
『に、兄ちゃんは?兄ちゃ、血、血が、止まらな』
『いいから、はやぐッ…あいつ、まだ息がある……だから、はやく――!』
「―――ッ!!」
千鬼は何か恐ろしいものを思い出したかのようにびくんと震えた。荒れる心を落ち着かせようと下唇を噛んで――うっすらと血が滲むまで。
「……千鬼」
「俺は…行かなくちゃならねェんだよ!兄貴を止められるのは、俺だけなんだから――」
「……ッ、だから待てって!」
再び走り出そうとする千鬼を、今度は前に出て止める。とおせんぼの体勢だ。
「今行ってお前まで行方不明にでもなったら本末転倒だろ!頼む落ち着いてくれ、あいつなら大丈夫だから、千鬼はまず落ち着け!」
「~ッ、大丈夫って、お前にわかることじゃねェだろ!」
俺を押し退けて、千鬼は進もうとする。馬力じゃ敵わないが、今こいつを行かせたら本当にまずい――なんとか止めねぇと――!
「~~ッ…どけッ!」
「うわっ――……」
突き飛ばされて尻餅をついた。痛みに顔を歪めると、それを見て千鬼も一瞬眉間に皺をよせたが、すぐ走り出してしまった。
「――、おい千鬼!」
名前を叫ぶが、止まることはない。完全に理性が死んでいる。
やべぇ、止められねぇッ――
「…女郎蜘蛛、追ってくれ――いやダメだ、やっぱお前は大人しくしてろ!」
「えっ、なんでっ」
「お前が前千鬼を殺しかけたこと忘れてねぇぞ!うっかり殺っちゃいましたじゃすまされねぇからなぁ!?」
だがこのままじゃほんとに――
「真里!千鬼!」
「無事!?」
二つの声が重複して聞こえた。
「…花依!すぐる!」
助かった、あいつらに千鬼を――
いや。
いくらあいつらが強いとはいえ、やっぱり馬力じゃ敵わないだろう。今のあいつじゃ、花依だろうがすぐるだろうが傷つけちまうんじゃ――
…ええい、考えてる暇ねぇぞ!
「花依!すぐる!頼む、千鬼を止めてくれ!」
「はぁッ!?おいどういう――あっ、橘弟!どこ行くんだよ!」
花依たちの横をすり抜けようとした千鬼の腕を、花依が掴む。
「…兄貴を探す」
「…探すって、お前――無理だって危ねぇ…おいこら待て!」
「千鬼、そんなに焦ったら…!」
千鬼は二人の声など耳に入らないという様子で、また走り出した。
――やっぱり、女郎蜘蛛に頼むしかないのか…?いや、でもっ――
「ッチ――待てって言ってんだろ橘弟ォ!」
花依が素早く千鬼を追いかけ、千鬼のすぐ後ろまで追い付くと――
「おらァ!」
強烈な回し蹴りが、千鬼の脇腹にまともに入った。
…どうやら俺の心配は杞憂だったようだ。
「いっっつぅッ――おい花依ッ……」
「うるせぇ!この状況で探しに行くとかバカか!?ちょっとは落ち着け!」
いつもと立場が完全に入れ替わってやがる……
「真里、大丈夫?」
「あ、あぁ大丈夫だ…すぐるは?」
「すぐるは特になにも…あ、あとね、真里…千鬼も、聞いて!」
そう言うと、花依が思い出したように後ろを振り返った。
「あれ、おかしいな…あの人ついてきてないぞ?途中走ったからかな?」
「…あの人?」
理性がだんだん戻ってきた千鬼が問う。
「うんっ、さっき知り合ったんだけど…なんだかすぐるたちの仲間だって言うから、ついてきて貰ったの」
「………それ大丈夫なやつか?騙されてるとかじゃねぇよな…?」
勘弁してくれ頼むから。
一応女郎蜘蛛にも警戒を促しつつ、すぐるの話を聞く。
「その人ね、無刀に頼まれたんだって言ってて…」
「!……兄貴に?」
その瞬間。
――足音が聞こえた。
「!!」
そいつか…?!
無刀の名前が出たからって油断は禁物だ。俺はバットを構え、そいつが変な挙動を見せたらいつでも応戦できるような体勢を取った。
「ッはぁ…ッはぁ…ちょっ、君ら足早すぎ…俺が遅いの…?」
その人物は――
ヘッドフォンを首にさげ、制服の上にパーカーを羽織った――男性。恐らく三年生だろうか?顔は、距離があってはっきりとは見えない。
彼は息を切らしながらこちらにとてとてと走ってきて、膝に手をついて呼吸を整えていた。
「はぁ、はぁ……ふぅ、やっと落ち着いた…」
そう言って彼は顔を上げる。ようやくその顔をはっきりと見られた。
――隈がひどかった。たれ目だが目付きが悪く、姿勢も悪い。ヘッドフォンと相まって、ゲーマーのような風貌だ。
その顔を見て、千鬼が息を飲むのがわかった。
「……ハッカー先輩…?」
…………誰?
* * *
「ったく、あいつ…私に何かあったらって、こんなすぐに何かが起こるとは思わなかったぞコノヤロー。俺の苦労も考えやがれってんだ…ブツブツ」
何かしら悪態をつくそいつは、目付きの悪い瞳をさらにすぼめて虚空を睨んでいる。見るからに怪しい…が、千鬼と知り合いみたいだし、そこまで警戒することもないのか…?
「おい千鬼、この人は…?」
俺は会話が彼に聞こえないようにこそこそと千鬼に話しかける。
「あ、あぁ、この人は――兄貴の数少ない友達だ」
「友達かぁ…、あと一言多い点には目を瞑ってやる」
やはり、多少信用に足る人物なのか…いや、油断は禁物だ。まずは疑ってかかれ、俺。
と、その時、彼が俺の方をギロッと睨んだ。
「ヒッ…、な、何……」
「ん…そっちの茶髪の彼には自己紹介がまだだったな」
……目付き悪いだけかよ…。
「俺はハッカー。三年だ。こんなタイミングで知り合ったから、多分すぐには信用して貰えないと思うが…別に信じて貰わなくて良い。君も不安だろうから」
「……ハッカー…ですか」
「あぁ、勿論偽名だ。好きに呼んでくれ」
「本当の名前とか、名乗りたくもないんだ」
一瞬彼の瞳に、嫌悪と悲しみの色が通りすぎた。
「…そう、すか……じゃあ、ハッカー…先輩」
そう口にすると、彼は――ハッカー先輩は少し表情を緩めた。
「さて。自己紹介もすんだことだし、話を始めようか」
全員の目付きが、変わる。
とくに千鬼の――
「無刀の失踪。それと、俺自身のことについて――少し、話させて貰えないだろうか」
ハッカー先輩が口を開く。
「まず、俺は数日前――五日前だな、その日に無刀に君たちの作戦への協力を求められていた」
五日――、俺達と花依が仲間になった日だ。
「俺は断った。生徒会に歯向かおうなんて、自殺の補助してほしいやつがやるようなことだからな。…君ら命知らずすぎない?」
「っせえな、いいから話の続き!」
「ひ…ご、ごめん」
花依に渇をいれられ怯んだハッカー先輩は、話を再開する。
「でも、無刀に『後方支援』を頼まれたんだ。俺の異能力なら、それぐらいは生徒会の目を掻い潜ってできるから…あぁ、そうだ、俺の異能力について紹介しないとな」
ハッカー先輩は人差し指で自分の頭をトントンと叩いた。
「俺の能力は、自分の意識自体をインターネットに接続するといったものだ。…わかりづらいよな?自分でも説明しにくいんだが…この能力は、一度に大量の機械を操作できたり、通常より容易にハッキングができたり…まぁとにかく、電子の流れているものでならなんでも好き勝手できる力なんだ。使いこなせるようになるまで、かなり時間はかかったけど…」
……さすが最高学年、そこまで異能を使いこなせたら大したものだ。偽名の由来は、恐らくここだろう。
「まぁとにかく…この異能を使えば、生徒会に関わる何かしらの電子機器にハッキングしてどんな邪魔をしようが、逆探知もされない。だから俺が後方支援として君たちのサポートをする役だった」
でも、と先輩は少し顔をしかめた。
「もう一つ頼まれていたのは…もし無刀に何かあったとき、代わりに君たちを守る役目」
きっとこっちが本命だったんだろうね、と先輩は目を閉じ、深いため息をつく。
…それって……
「あいつ、初めから…自分が危険な目に遭うことがわかってたってことじゃ……」
だって、都合が良すぎないか?こんな…いや、でも……
『絶対に誰も死にません』
…あの言葉を信じるなら、無刀は今も生きている。
あぁ、でも、でも――
「真里、落ち着いて」
「ッ…あぁ…」
そうだ、俺が動揺してどうする。
一番心配なのはきっと、千鬼の筈なんだから。
「話を進めるけど…無刀が行方不明とわかった瞬間、俺はこの辺りの監視カメラ――特に学校内と周辺を中心に、カメラのデータをハックして盗み見したんだ。…でも」
先輩が紡いだ言葉に、俺は驚愕する。
「怪しいものは何も写っていなかった。不自然なほどにね」
「………!」
「知ってると思うけど、ウチの学校の防犯施設は完璧だ。防犯カメラに、死角はない」
つまりどういうことか。
「無刀をさらった――大雑把にいって今回の事件を引き起こした奴による情報改竄が施されている。そしてその権限が付与されているのは生徒会・風紀委員・教職員だけだ」
「ならその中に…!」
「犯人がいる…ってことか」
「無論、姿を消す等の能力者という可能性も考えたんだが…学生、教職員のデータを一通り閲覧したけどそんな能力者はいなかった。とするとかなり選択肢はしぼまる。それからもう一つ――」
そう言うと、ハッカー先輩は少し――体を強ばらせた。
何かに気付いたように。
「………っ」
だが軽く頭を振って、考えを打ち消すように目をぎゅっとつぶった。
「…先輩?」
「いや…もう一つ、選択肢をしぼめる情報があって」
まぁ可能性の話なんだけど――と前置きをして始める。
「俺のこの能力は、ハッキングに使う時間が圧倒的に短縮される。だから、無刀がいなくなったと知ってから大体十秒あれば監視カメラの映像データぐらい簡単に盗めるんだ。だがその速さをもってしても、相手の情報改竄に間に合わなかった」
「恐らくそいつは…俺が君たちに協力していることを知っている」
そうでもなければこんなに早急にデータを改竄しようとしないはずだ――
と、ハッカー先輩は少し青ざめながら言った。
それはそうだろう。バレていると言うことは、つまり――
命を狙われるってこと…だもんな。
「これで俺も生徒会にとっての殺人対象だ。本来なら今すぐにでも逃げるべきなんだろうけど…」
ずっと地面に腰掛けていた先輩は、少し曲がった背のまま立ち上がった。
「親友との約束だ。あいつが戻ってくるまで…俺が無刀の代わりにお前らを守る」
あいつみたいに戦闘に特化した能力じゃないけど――と、先輩は自虐的に笑った。
だが司令塔がいなくなった状態だった俺らにとっては、戦闘能力が高かろうが低かろうがどうでもよかったし、めちゃくちゃに頼もしかった。
「ありがとうございます、ハッカー先輩…お世話に、なります」
「うん。お互いにね…あぁそれと、早速なんだけど」
ピッ。
電子音のような音と共に、ハッカー先輩の目がヴンッと蛍光色の青緑に光った。
よく見るとその瞳には、0と1の数字の羅列が幾十にも――
「ん、この目?これは俺の異能発動時特有のもの。結構細かいでしょ?…って、それどころじゃなくて」
すっと、先輩は何かを監視するようにその0と1の目を細めた。
その目は、俺達に見えない何かを捕らえているような――
「…逃げた方がいいよ。生徒会の刺客とおぼしき人物が、現在校舎西棟付近現在位置から約百二十メートルほど離れた地点を徘徊してる」
その言葉を言い終わる前に、俺達は全員駆けだしていた。
その途中、後ろから呼びかける声が聞こえる。…ハッカー先輩だ。
「悪いが君たちのスマホにハックしてトランシーバーをオンにさせて貰った!刺客の動きは監視カメラのライブ映像で俺が見て逐一報告する!俺のことは心配するな!死ぬなよッ!」
それを聞き終えてから、各々全速力で別々の方向に駆けていく。
…無刀が行方不明の今、戦うのは無謀だ。
それどころかアイツ自身を人質なんかにされていては、こちらとしても大人しく首を差し出すしかない。
今は逃げることだけを考えよう。
まだ全員が見える範囲にいるうちに、アイコンタクトをとる。ついでに全員の向かう方向も確認して…
「何かあったらトランシーバーで連絡しろ!すぐ行くから!」
それだけ伝えて、俺は自慢の俊足で体を前へ前へと進めていく。あいつらもそれなりに足は速いみたいだし、すぐるに至っては四次元的な動きが可能なので、簡単に捕まることはないだろう。
それにしても…思ったより登場が早かったな、生徒会の犬かよクソッ!
捕まったら死。
あまりにもリアルすぎる鬼ごっこ――いいや、デスゲームが、ここに開幕した。
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