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黒砂糖デニーロ

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第二章

第十話 思惑

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「私はガルス方面軍指揮官のランス・バックス大佐だ。ここでの作戦指揮を執っている。急な召集に応じてもらい、まずは礼を言う」
 霜の降りた白髪を短く刈り上げた男性――ランス大佐は簡潔に述べる。
 叩き上げの軍人といった風貌のランス大佐は、見た目からそこそこ高齢だと思われるが身体は今尚壮健そのものであり、身に纏ったグリュー軍の濃緑色の迷彩服も様になっていた。老いても衰えを感じさせない老兵としての覇気を全身から漲らせていた。厳つい顔には深い皺が刻まれ、彼の生きてきた時間と、兵としての経験の深さを物語っているかのようだ。
「すまないが切迫した状況だ。早速だが現状を説明する」
 ランス大佐は早々に本題に入る。
 最前列には、僕ら以外にも二〇人近い人間が座っていた。服装などを見る限り、いずれもグリュー軍所属ではない。その中には先ほど衝突したアルベルトにケイン君、ヒルダさんの姿もあった。
「今から遡ること三六時間前、突如ガルス都市内に魔属が侵入。都市防衛部隊がすぐさま迎撃に当たるも、魔属の侵攻は類を見ないほど激しく、また侵入経路が全くの不明の完全な奇襲攻撃ということもあり殲滅に失敗。結果、ガルスは……」
 そこで躊躇いがちに言葉を切ったランス大佐。わずかの溜の後、一気に吐き出すように言った。
「占拠された」
 その一言に、その場の全員に戦慄が走った。
 街が滅ぼされることと、占拠されることは事の重大さがかなり異なってくることは誰でも知っていることだ。
「現状戦力では対処できないと判断した都市防衛部隊は、魔属殲滅から市民の都市外退避に目的を変更。大半の市民の避難は完了したが、それでも内部には未だかなりの数の市民が取り残されており、今も各所のシェルターにて救援を待ち続けている」
 副官が正面のディスプレイに都市のマップを表示する。
「我々は北方の魔属領境界線警戒部隊の戦力を借り、殲滅戦を開始。幸いにも、ガルスには五組の勇者ユニットが滞在しており、我々は当初、彼らを中核にして都市の奪還を試みた」
 僕が率直に感じたのは「そんなに多くの勇者がこの都市に?」という疑問であった。
 今や世界規模で見れば勇者の数は増えつつある。ただ、同じ場所に五人もの人数が偶然集うほど多いというわけでもない。
「だが、奪還作戦は失敗。部隊は壊滅的打撃を受け、勇者に至っては生還したのはここにいる彼、勇者ケインだけだ」
 見ると、ヒルダさんだけは俯き、身を震わせていた。 そんな彼女の様子を察し、隣に座るケイン君は彼女の手を握った。
 しかし軍のバックアップを受けた勇者五人がかりで挑んで敗退だけならまだしも、全滅というのはただならぬ事態だ。
 しかし、続くランス大佐の言葉を聞き、納得しざるを得なかった。
「作戦失敗の原因は想定を上回る魔属の増殖以上に、上級種魔属の存在があったことにある」
 その言葉は先程以上に衝撃が走り、不安によるざわめきがさざ波のようにテント内に広がる。
 上級種の存在は中、下級とは一線を画す存在である。
 下位種と違って同一個体は存在せず、分類は意味をなさない。いずれも共通して、非常に強靭な肉体に、高い知性を備えていることだ。
 この知性はそのまま下位魔属の統率力につながる。魔属だけが有する特殊な意思疎通のネットワークを活用し、群体を手足のように使役する。
 本能のままに突っ込んでくる下位種であっても、上級種に統率されると訓練された猟犬が如く動きが見違えるという。五人の勇者が返り討ちにあったというのも無理からぬ話だ。
 そうした個体としての強さもさることながら、そこに都市の占拠が加わるともう一つの特性が大きく関わることになる。
「それはつまり、都市が"ネスト化"の危機があるという意味ですか?」
「その通りだ。下級種の爆発的増加から察するに、すでに奴らは第一段階に差し掛かっている」
 ネスト化――文字通り魔属による支配圏の拡大と環境整備である。
 ネスト化にはいくつか段階を踏み、最終段階を終えた時、その地域は魔属の支配領域、すなわち「魔属領」となるのだ。
 そこでは無尽蔵に魔属が生まれ続け、その領域周辺には魔属が溢れかえる。無論、人間の侵入を許さぬ絶対領域となる。
 一度魔属領化した地域は容易に立ち入ることもできず、奪還は困難を極める。先ほどアルベルトが口にした「ドーン・フォール作戦」の例を挙げるまでもなく、人類の総力を結集しても奪還できる可能性は低いのだ。
 そして、仮に奪還できたとしても尚、問題は残る。有毒物質や環境汚染、放射能や未知の病原体やウィルス――地域によって様相は様々であるが、一度完全に魔属領化した地域は人の生存を許さぬ死の大地と化している。
 人が住める環境に戻すには数十年から百年単位の時間がかかると言われている。そもそも奪還できた例が僅かしかないため、情報は皆無に等しい。
「ここが本格的にネスト化すれば、問題はガルスだけには留まらなくなる。北方の魔属領を刺激し活性化させるような事態になれば、最悪の場合、魔属大戦を誘発してしまう」
 魔属大戦。
 すなわち、人類と魔属との戦争。人類の生き残りをかけた総力戦。一度引き起こればたとえ勝利しても大きな犠牲を払い、そして敗北すれば人類は滅亡する。前対戦においては終結宣言までの一〇年間に人類総人口の三割もの命が失われ、一二の国が滅亡したと言われている。
 この悲劇を繰り返すことだけは、なんとしても防がなければならない。
 魔属は中級種以上になると遠く離れた同族と意思疎通ができると言われている。魔属が群れをなすのはそのネットワークで呼び寄せ合う習性を"共鳴"と呼ばれ、これは規模が大きくなるとより広域から魔属を呼び寄せてしまうのだ。
 ネスト化規模の魔属によって共鳴が起これば、沈静化している北方の魔属領を呼び覚ましてしまうことは容易に想像できる。
 魔属大戦の勃発もけして大げさな話ではないのだ。
 取り残された生存者。強力な上級種魔属。ネスト化の危機。近い位置に魔属領…… 
 迅速な対応が求められる一方で、少しでも対応を誤れば都市と取り残された多くの人命を失うばかりか、世界規模の災害に発展する危険性すらある。今のガルスは大きな危険を孕んだ非常危うい瀬戸際にある。
「事態は一刻の猶予もない切迫した状況である。そのため、勇者機関を通じて近隣にて活動中の諸君ら勇者を急遽招集した次第だ」
「しかし、たったこれだけでネスト化の最中にある上級種とやりあえるのですか?ここは国連の援軍は?」
 勇者の一人がそう投げかけた。
「国連には事態を伝えているが、本格的な援軍はまだ時間がかかるそうだ。ネスト化は時間を置けばそれだけで都市奪還の可能性は激減する。未完成のネスト攻略は時間との戦いだ……とはいえ、ただの力押しでは前回の二の舞だ。今回はこちらにも上級種に対抗する用意がある」
 そう言うと大佐が席の後方に目配せをする。立ち上がり、前へと出たのはヴィルさんだった。
「紹介しておこう。彼はヴィルヘルム・ノートン。クラス:マスターの勇者だ」
 それに最も驚いたのは、僕とアオイだった。
「ヴィル、マスターになったのか!?」
 勇者の中でも最高位であるクラス:マスター。世界でも現役のクラス:マスターは百人前後と聞く。経験と実力を兼ね備えた彼らはたった一人で戦況を覆し得る、まさに人類の切り札だ。
「知っての通り彼はロマリアナの英雄である。実力は確かだ。。勇者チームの指揮と軍との連携は彼に一任し、作戦の中核を担ってもらう」
 それまで絶望的な状況に沈んでいた空気がにわかに活気づく。同じ勇者からしてもクラス:マスターの存在は大きく、それだけで希望なのだ。
「作戦はもう詰めの段階にある。ヴァーミリオン社の協力で物資の供給と部隊の再編成を待って、勇者各位には改めて説明を行う。それまでにコンディションを整え、いつでも動ける状態で待機していて欲しい。説明は以上だ。何か質問は」
 説明を終えた大佐はそう言いながら全体を見回す。
「私からよろしいでしょうか?」
 その声とともにスッと手を上げたのは、最前列に座っていた、いかにも高級そうなスーツに身を包んだ壮年の男性。軍人でも勇者でもなさそうな彼はこの場においては場違いな存在のように思えた。
 ランス大佐は小さくため息を吐き、苦々しい顔を作りながら無言で発言を促す。
「ランス大佐は本気でこのような連中に都市の命運を任せるおつもりですか?」
 背後の勇者たちを睥睨しながら、スーツの男性はそんな事を言い出した。こんな連中、とは勇者の面々に向けられたものだ。
 この紳士の物言いに、勇者たちは困惑気味に首を傾げ、また顔をしかめる。
「なんだよおっさん。誰だか知らねぇが偉そうに。俺らに何か文句でもあるってのか?あぁ?」
 そんな中で真っ先に声を上げたのは、やはりというべきか、アルベルトだった。
 アルベルトは椅子から立ち上がるとその男性に詰め寄ろうとするが、男性の両脇に控えていた、グリュー軍とは異なる軍装の屈強な二人の男が素早く動き、アルベルトの前に立ちはだかった。
「これは失礼、勇者殿。私は国連軍省参事官のマーレ・ホーストと申します。以後お見知りおきを」
 配下の二人を片手を上げて制して下がらせると、鷹揚に頭を下げるマーレ氏。丁寧な言葉とは裏腹に、慇懃無礼な態度は神経を逆撫でする。
「国連のお偉いさんがこんなとこでなにしてやがんだ?」
「今は有事ですから、人類の趨勢を憂う一人の人間として、グリュー軍に協力をさせていただいております」
「協力という割には私兵を使って好き勝手に動いているようだが?」
 ランス大佐がチクリと言葉の刺で刺すと、マーレ氏は大仰なジェスチャーで否定する。
「とんでもない!彼らは私兵などではなく、民間軍事会社「カスパール・ミリタリー・サービス」の優秀な傭兵です。国連軍到着までの間の戦力として、微力ながら都市奪還に協力してくれることでしょう」
 カスパール・ミリタリー・サービス。世界でも有数のPMC民間軍事会社で、規模こそ他の大手PMCには劣るものの、少数精鋭をコンセプトに優秀な人材を揃え、戦地に兵を送り込んでいると聞く。
 多くのPMCは時に国連軍や国軍に雇われる。この場にいること自体は不思議ではないのだが、どうもそういった様子ではない。
「しかし貴殿の命令しか聞かないのなら私兵以外の何ものでもないだろう」
「解釈の違いですね。私は私なりに事の深刻さを理解し、持ちうる手段で事態解決に動いているだけのこと。必要とあらばいつでも協力を惜しみません。私も彼らもここ、ガルスを自分の故郷と同じように考え、全力を尽くす所存ですので」
 終始笑顔を崩さないマーレ氏。しかし、丸メガネの奥で細めた目の奥に、侮蔑の色を覗かせながら「ですが」と続ける。
「ただ頭数だけを揃えた未熟な勇者を作戦の中核に置くことには賛同いたしかねます。軍とは的確な指揮と厳格な規律、そして一分の歪みもない連携をもって最大の力を発揮できます。それを少数、いえ、単騎で戦場を引っ掻き回す勇者など不安要素以外の何物でもありません」
 露骨なまでに敵意をぶつけられ、勇者たちの間に当惑が広がる。勇者に対する感情が必ずしも好意的なものばかりとは限らないとしても、こうまでストレートに敵意を示されることなどそうはない。まして、これほど切迫した状況であってもまったく顧慮する様子も見せないマーレ氏の態度には疑問すら覚える。
「あなたが勇者を嫌っているのはわかりました。我々が未熟なのも事実です。しかし、上級種が確認された以上は勇者の存在は不可欠だと思います。時間もない以上、現行戦力でこの危機を打開しなくてはなりません。ここはどうか、私達を信用して――」
「ランス大佐。私は作戦の再考を提案いたします」
 自分の感情は一切挟まず簡潔かつ現実を見据えたケイン君の言葉はしかし、まるで聞こえないかのように無視して取り合わず、あくまでランス大佐にだけ語りかける。議論をする気など毛頭ないという意志の現れだ。
「貴殿の言わんとする事も理解はできるが、今は時間がない。現行戦力で都市を奪還するにはこれが最適だと判断した。変更は認められない」
 大佐が告げると「そうですか」とマーレ氏は席を立つ。
「そうであればこの作戦、我々の戦力は無いものとお考えください」
「つまり、この作戦に協力しないと?」
「そういうことになりますな。カスパール社は私の指示の下、独自に行動いたします。ちなみに彼らの一切の活動は貴国政府の許可を得ていますのであしからず」
 そう言い残すと、マーレ氏は部下を引き連れてテントを後にしてしまう。
 勇者を連携を乱す存在と批判しながら、自身は独自に行動するという矛盾に本人は気付いているのだろうか?
 彼の残していった言葉と態度に、場は苛立ちと困惑で一時的に騒然となるも、ため息混じりのランス大佐の一言で解散と相成った。

 *

「気に入らねぇな」
 一番最後にテントを出たアルベルトの呟きに、同じ勇者候補の青年、ハリーが振り返る。
「あのマーレって奴のことか?確かにあの物言いは腹立たしいが……」
「そっちじゃねぇ。俺が言いたいのはあのヴィルヘルムとか言う勇者だ」
 意外なことを言い出すアルベルトに、ハリーは驚きと困惑に眉根を寄せる。彼の不満が理解できないハリーは「どういうことだ?」と尋ねる。
「なんで奴の仕切りで、俺たちが下っ端扱いなんだってことだよ」
「何を言っているんだ、お前は」と溜息混じりに口を開いたのは、同じく勇者候補のゲイリー。
「なんでって、彼はクラス:マスターなんだろ?この状況じゃこの上ない適任――」
「よく考えてみろ。確かに成功率は高いかも知れんが、手柄は全てやつのもんになるんだぞ?もうこれ以上昇格はないクラス:マスターの、だ」
 ゲイリーの言葉途中で被せるようにアルベルトは言う。すると「いくらなんでもそれはないだろう」と、言い合いを聞いていたまた別の勇者候補が口を挟む。気付けば他の勇者チームも足を止め、アルベルトの言葉に耳を傾けていた。
「我々とて命をかけて戦うんだ。うまく都市を奪還できれば、機関だって評価してくれるはずさ」
「だーから考えろって言ってんだろ。引率者同伴で得た手柄なんて誰が評価すると思う?」
 そう問われ、彼は沈黙してしまう。アルベルトは首を巡らせ一人ひとりの表情を覗き込むが、誰も反論することはできなかった。
「奴の作戦の小間使いとして扱われた挙げ句、「みんなよくやりました」てな一律の及第点で終わりだ。特に今回はすでに勇者が数人死んでるような大事なんだぞ?それに首を突っ込むにしちゃ、あまりに割に合わねぇと思うだろ?」
「それで、お前はどうしたいんだ?」
 ハリーに問いかけられたアルベルトは、その問いかけを待っていたかのように笑みを浮かべると
「決まってる。奴抜きで、俺達だけで上級種をぶっ潰すんだよ」
 と、言ってのける。しかし、その言葉に返って来たのは冷ややかな失笑であった。
 ただでさえ上級種は強力であり、勇者とて下手に手を出せば返り討ちにあうことは誰でも知っている。しかも、無数の下級、中級種の魔属に守られている。自分たちだけでは対抗できるわけがないと、この場の誰もが思っていた。
 しかしこの反応はアルベルトも予想したものであった。
「おいアンタ。あんた勇者になって何年になる?」
 と、この場で最も年上と思しき勇者に問いかける。急に問いかけられた壮年の勇者候補、ノーマンは多少面食らいながらも「今年で二五年になるが……?」と短く答える。
「クラスは?」
「……アーリーだ」
 その話題には触れられたくないのか、答えた彼の口調は、先ほどに比べて少しトーンダウンしたものであった。
「で、そんな調子でこの先クラスアップのアテはあるのかい?」
 粗野で無遠慮な口調ではあったが、その言葉は彼だけでなくその場にいる全ての勇者候補の胸に突き刺さった。
 今この場にいる勇者は、その全員がハーフ及びアーリクラスのまま長年くすぶり続けている者たちであった。
 この場にいないアオイのように若くしてクラスアップを果たす勇者がいる一方で、いつまでもクラスアップできない勇者も多く存在する。ガーネットやヴィルらを例に出すまでもなく、目の前を才能ある若者たちに先を越され続け、焦りを感じている年輩の勇者も多いのだ。
 そう。例えばこのノーマンのように。
「ちまちました魔属の掃討程度じゃクラスアップなんて望めない。だが、こいつはチャンスだ。ネスト化の危機にある都市を救った英雄ともなれば、機関からの覚えもいい。うまく行けばいきなりクラス:マスターも夢じゃねぇ」
 そこでアルベルトは反応を見るために言葉を切る。
 先ほどまでアルベルトを笑っていた勇者たちが、今は一様に押し黙っていた。先ほどの失笑とは違い全員が迷い、真剣な表情で悩んでいた。
 本来であれば一考すらしないような提案だが、アルベルトの言葉にそれぞれの抱えるコンプレックスや焦燥感が刺激されたこと、そして全員が似たような境遇同士という特殊な状況が、彼らに熟考を促していた。
 そしてそんな短い沈黙の後、流れを決定付ける一言が発せられた。
「その話、乗った」
 最初にそう答えたのは、ノーマンだった。
「俺は待っていたんだ。こういう、逆転の機会を。この惰性のような状況から脱するチャンスをな」
 日々劣等感や焦燥感に苛まれていた彼は、アルベルトの言葉に突き動かされた。
 彼の決意に勇者たちの間にざわめきが広がる中、静かに手が上がり、その場の全員の注目を集めた。
「機関に言われるがままケチな犯罪者か下級魔属を相手にする毎日だった。でも、思い出したよ。俺がなりたかったのは英雄だ。デカイ魔属を叩き、大勢の人間を救って崇められるような英雄にな。アンタの言うとおり、たしかにこれはチャンスだ」
 ノーマンの言葉に背中を押され、ゲイリーが次に参加の意志を表明する。
 こうなると、似たような事情を持つ他の勇者たちが決意するのに時間はかからなかった。やがて彼らに続いて一人、また一人と賛同の意思を示す。最終的には最後まで難色を示したハリーもが首を縦に振り、その場にいた都合一四名の勇者全員がアルベルトの提案に乗る形となった。
「決まりだな。これだけ勇者が揃えば上級種だって楽勝だぜ?」
「ちょっと待て。他の連中に声をかけないのか?」
 ゲイリーが言っているのは、この場にいないアオイとガーネット、ケインのことだ。
「奴らには何も言うな。あのチビ女はヴィルヘルムと知り合い同士らしい。声なんかかけようもんなら筒抜けになる。あのガキや金髪女もあっち側だ」
 できるだけ感情を表に出さないよう、淡々と説明する。アルベルトの言うことは事実であるが、それ以上に先ほどの諍いが尾を引いていたのもまた事実である。彼にすれば手柄を分けるのも、共に戦うこともまっぴらご免だった。
「よし。そうと決まればさっそく行動を起こすぞ。俺達より先にここの軍に動かれたら元も子もないからな」
「しかしどうやって中に入る?都市への入り口は全て軍が封じているが?」
 意気揚々と進みだした背中に投げかけた言葉にアルベルトは、何をつまらない事をと言いたげに気怠く振り向くと、ニヤリと笑みを浮かべる。
「俺たちは天下の勇者様だぞ?
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