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第四章
目標撃破。そして……
しおりを挟む横にいたランス大佐は、目の前に広がる光景にただただ唖然としていた。
光が収まり、視界が明瞭になると、そこにナーサリィの姿は消えていた。
あれだけ巨大さを誇ったナーサリィはアオイの放った一撃――純粋なエネルギーとして打ち出した粒子斬撃によって一片の欠片も残さず完全に消滅していた。後には粉雪のように舞い散る粒子の残滓と、大地に穿たれた深い亀裂だけが残った。
「やった……!やったぞ!」
僕は拳を胸の前で強く握りしめ、歓喜に打ち震えた。
絶望的な状況を覆し、目下の最大の危機を排除できた。
ナーサリィと上級種のアンリを失い、統率を失った魔属群。援軍を待つには、十分な戦況だ。
『レンさん、聞こえますか?アーヴィングです』
その時、レシーバーから呼びかける声が。
『そちらでなにか起こりましたか?強烈な光がこちらからでも確認できましたが』
「たった今、魔属群を中枢を撃破しました。ガルス直近の魔属群は壊滅したので、もう大丈夫です」
『そうですか!それはよかった!』
アーヴィングさんは声を上げて喜んだ。スピーカーになっているのか、無線の向こうから大勢の拍手喝采が聞こえてきた。
『それで依頼されていた件ですが……』
緩みかけた気持ちが再び正される。
「何かわかりましたか?」
『彼が例のカスパールの施設から一人で出たのを監視カメラの映像で確認しました。その後の足取りも掴めています』
「一人……?マーレや他の私兵は?」
『突入した軍の部隊によると生存者はなく、全員遺体で発見されたそうです。明らかに人の手で殺されているとも』
(どういうことだ……?)
思考を巡らせるが答えは出ないし、今はその時間も惜しい。ひとまず後回しにする。
「わかりました。それで、彼はどこに向かいましたか?」
『カスパール本社ビルです。以降に出た形跡がありませんので、まだ中にいる可能性が高いです』
「一体、何が目的なんだ……?」
わからない事だらけだが、本人がそこにいるなら直接訊くまでだ。僕は手短に礼を告げて無線を切る。
「ランス大佐。今すぐガルスに出せるヘリはありますか?」
「ガルスにか?クラウン基地に待機中の機があるが……」
「僕は今からガルスに戻らなくてはなりません。僕を乗せてもらえますか?」
「……まだ何かあるんだな?」
僕は深く頷く。説明をしたいところだけど、今その時間も惜しい。
真剣な僕の表情からそれを察してくれた大佐。
「わかった。離陸準備を指示しておく。パイロットに行き先を伝えろ」
「ありがとうございます。それとアオイですが……」
言いながら僕は戦場に目をやる。
地上に舞い戻ったアオイは、脅威となる中級種の掃討にかかっている。統率こそ失っているが、その数と規模は放置できないものだ。
今、彼女を連れ出すわけにはいかない。
「戦況を見てで構いません。もし掃討に目処が立てば……」
「わかっている。折を見て彼女も後から必ず送り届ける」
僕の言わんとすることを汲み取ってランス大佐が言う。
礼を述べて僕はヘリの待つクラウン基地にバギーを走らせる。
全てに決着をつけるために。
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