美少女エルフ隊長へ転生した俺は、無能な指揮官に愛想がついたので軍隊を抜けました ~可愛い部下たちとスキル【ダンジョン管理】で生きのびます~

二野宮伊織

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第一章 逃走と合流

第21話 村へ(7)

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 ハッチからでてくると、モモは俺のところへと小走りで駆けてくる。

「隊長、ゴブリンはどうでした?」

「ああ、元気だったぞ」

「そうですか」

 モモは俺の顔を覗きこみつつも、いつもより元気なさげに言った。何かあったのだろうか。

「どうした?」

「ええと、何がですか?」

 モモは俺に問いに少し戸惑ったように目を開くと、こっちを向いて聞き返す。

「なんか元気なさそうだな」

「えっ、あっ、なんでもないです。すみません」

 そう言って謝るモモ。少し動揺しているようだ。

「そうか、それならいいんだけどな」

 俺がそう言うとモモはくるっと後ろを向いて、その短く切った赤い髪を見せた。
 そして数歩歩いたところで、もう一度こっちへと振り返ったかと思うとちょこんと一礼する。
 そして俺の顔をしばらく見つめると、ラフランたちのところへと再び小走りに駆けていった。

 ☆

「よし、出発だ」

「はい!」

 俺の掛け声に、三人は元気よく返事をする。
 エリーの生まれ故郷の隣村は、二手に別れて逃げた俺たちの落ち合い場所だ。
 あの命がけの逃走の中で咄嗟とっさに思いついた村である。

「確か、クボ村だったか」

「はい」

 先頭を行く、モモが返事をする。
 日本人だった俺には妙にしっくりくる名前。それで覚えていたのも、そこに決めた理由のひとつだ。

「副隊長たち、無事だといいですね」

 後ろからライムが、少し心配ぎみに言う。

「大丈夫だろ。エリーだからな」

 彼女ならこのくらいなんでもないだろう。転生してからの半年間、共にやってきたが俺よりも判断力や統率力など、すべてで俺を上回っている。それに中身が30歳の俺なんかよりずっと彼女のほうが考え方も大人だ。
 正直、俺じゃ無くて彼女が隊長でいいと思う。

「それよりも目印、頼んだぞ」

「はい!」

 ライムの今までで一番大きな声に、ラフランが咄嗟とっさに口をふさぐと言った。

「し、静かに……まだ、近くに敵がいないとも限らないからな」

「は、はい。そうですね、すみません」

 ささやくような声でライムはそう返事をすると、立ち止まり目印を木に刻む。
 終わるとすぐに俺たちの方へと駆けてきて、列の一番後ろへとついた。

 ☆

 やっぱり一度通った道は、歩くのも速い。
 昨日引き返した場所を越えた俺たちは、その先で小川を見つけ休憩とした。
 森の中でひたすら同じ方向に進む時にある水場は、貴重だからである。

「先輩、このキノコって食べられましたっけ?」

「あっ、ああ。食べられるぞ」

 ライムが持ってきた色が激しいキノコを、チラリとみるとそう答えるモモ。
 やっぱり少し様子がおかしいと感じた俺は、モモに呼びだした。

「モモ、こっちこい」

「は……はい」

 そう少し困惑気味に顔を伏ると、返事をするモモ。俺は彼女を連れ出す事にした。

「先輩、どうしたんですかね?」

「さあ。なんか変なもんでも食って、腹でも調子悪いんじゃないのか」

 俺たちを不安そうな顔で見つめるライム。彼女がラフランに聞くと、そう返事が返ってくる。
 そんな声を背に、俺たちはしばらく川に沿って上流へと歩いていった。
 そして二人が見えなくなったころを見計らって、俺はモモのほうへと振り返える。

「ええと、た、隊長。何ですか?」

 急に振り向いた俺に、モモはその大きな瞳でじっと見つめて言った。

「モモ、なんか変だぞ」

「そ、そんなこと無いです」

「あるだろ。なんか様子がいつも違うからな」

「そ、そう……ですか」

 そう言って、俺と目を合わせないモモ。
 なんかあるのは分かっている。だが、本人が言いたくないのなら仕方ない。聞いてやっても解決できない事のほうが多いしな、と俺は思った。

「そうか、何も無いんならいいんだ」

 俺はそう言って、その場を去ろうとする。
 すると、モモは何か意を決したように言った。
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