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第一章 逃走と合流

第22話 村へ(8)

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「あ、あの」

「ん? なんだ?」

 モモの言葉に振り向いた俺の視界を緑の髪がさえぎった。少し伸ばし過ぎたか……そう思いながら、俺は自分の髪を邪魔そうに払いのける。その仕草を見て、モモは少し表情を柔らかくした。

「ふふっ。隊長、今度ちゃんと整えますね」

「ああ、頼む」

 少し空気が和んだように見えた。俺は結ぶものもないのに腕を背中に回すと、髪の毛を束ねるように二度掴んでみる。すると何でだか、少し落ち着いた。
 きっと、転生前のこのくせだったのかもしれない。

「そ、それでですね」

 モモはそう一言発すると、一瞬目をそらす。だが再び顔をあげて、意を決したように俺の顔を真っすぐ見つめた。

「た、隊長とライムは……その……そういう関係なんでしょうか?」

「えっ、そういうって?」

「あ、あの、朝、私と目が合った瞬間にお互い寄せ合っていた体を離しました。つ、つまり」

「へっ?」

 モモはごくんと唾を飲みこむと、俺のよくわかっていない間抜けな返事、それもかまわずに話を続けた。

「つ、つまり、お二人はいけない関係ってやつなのでしょうか?!!!」

 顔を真っ赤にしつつも、俺の目を真剣に見つめて聞いてくるモモ。
 あー、そうか、俺とライムがそうなんじゃないかと思って……って。
 ええっ!!!

「ない、ない、ない、そんなこと無いぞ! ライムのやつが寝ぼけてやっただけだ! むしろ、俺のほうが驚いたくらいだ」

「え、ええと、ほ、本当ですか?」

「本当だ。だいいち、ライムはまだ14歳の子供だぞ、犯罪だ、犯罪」

 俺はとんでもないことを言い出したモモに、大きなリアクションで慌てて否定した。そのようすに、モモはちょっと安心したようにかふっと息を吐く。そしてほっとしたように笑みを浮かべた。
 それと同時に何だか怒りがわいてきたようだ。

「もう、隊長に迷惑かけて……ライムに、後でしっかりと言い聞かせないといけないですね」

 かなりきつい口調ながらも、顔はにやにやと笑みを浮かべているモモ。でも、ライムが少し可哀そうだと俺は思った。

「いや、ライムも寝ぼけてやったことだから許してやれ」

「そ、そうですか?」

「ああ、そんなに怒る事でもないしな」

 その言葉を聞いて何かを思ったのか、モモが急に顔を真っ赤にすると俺に言った。

「ええと、じゃ、私が同じような事をしても大丈夫ですか?」

「えっ!? ……ははは、そうか、大丈夫だ」

 その言葉に一瞬驚いた俺。
 なんだ、冗談か。モモも真面目なだけじゃ無くて、面白いことを言うようになったな。
 そう思い、俺も冗談で返しておいた。
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