美少女エルフ隊長へ転生した俺は、無能な指揮官に愛想がついたので軍隊を抜けました ~可愛い部下たちとスキル【ダンジョン管理】で生きのびます~

二野宮伊織

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第一章 逃走と合流

第28話 ラフランとアレー(3)

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 彼らはそのアジトの手前にある分岐で立ち止まると、二、三度振り返ってすぐに歩を進める。
 俺たちはその様子を見つからないように木陰でうかがっていた。そして男たちが離れていくのを見届けると、ラフランがこっちへ視線を移す。

「ぷっ、もっと手前で確認しないと意味ないですよね」

 そう言うと、ラフランは小馬鹿にしたように笑みを浮かべた。

「こらっ、ちゃんと見ておけ」

「あっ、はい」

 ラフランが余計なことを言っている間に、男たちは建物の中へと向かって行く。
 俺たちは再び振り返った彼らに見つからないように、身を潜めると彼らが次々と中に入って行った。

「あれって、山小屋ですね」

「ああ、放置されたやつを勝手に使ってんだな」

「どのくらいいますかね」

「うーん、あの建物だといても5、6人だろ」

 俺がそう言うとこっちをじっと見るラフラン。

「なんだ?」

「うーん、どうするのかなって」

「バカ、少し自分で考えろ」

 ラフランの頭を少し小突く。しかし、実は俺もどうしようかと悩んでいた。
 彼女は頭を押さえながら少し不満げな顔をこっちに向ける。しかしすぐに向きを変えると、じっと山小屋を見つめるラフラン。
 しばらくすると二人、さっきまでとは違う男たちが小屋から出ていくのが見えた。

「あいつら、小屋の裏手に入って行きますね」

 ラフランが男たちの行く先を目で追うと、少し腰を浮かせる。

「ああ、そうだな」

「僕、ちょっと見てきます」

「あっ、待て」

 俺は慌てて止めようとした。だが、ラフランは振り返ると、大丈夫と言わんばかりに拳をこっちに突き出してウィンクしてみせる。そして、その黄色い三つ編みをぷらんと揺らすと、とっととスタスタと行ってしまった。
 本当に勝手なやつである。

「まあ、自分から進んで動くのは悪い事ではないか」

 会社で働いていた時、何も言わずに自分勝手に動くやつ、指示されるまで何もしないやつ、そんなやつの尻ぬぐいばかりしてきた俺。少し適当でも考えて行動するラフランに少し関心もしていた。

 ☆

 しばらく小屋を観察していた俺は、後ろから聞こえた「隊長」と言う声に振り返る。
 そこには得意げな顔で近づいてくるラフランがいた。

「早かったな」

 俺の言葉に笑みを見せると、すぐ横に並んで一緒に小屋を見つめる。

「何かありました?」

「いや、特に出入りもなかったしな」

 そう、ラフランが偵察に行ってから戻ってくるまで、小屋に誰も出入りした様子はなかった。

「そうですか……あれ? 隊長、髪に蜘蛛がついてますよ」

「えっ、ああ、えっ……!」

 俺の後頭部を指差すラフランに、ちょっとパニックになる俺。小さいころから蜘蛛は嫌いだった。

「もう、騒ぐと見つかっちゃいますよ。もう取りましたから、ほらっ」

 そう言って、手のひらに乗せた小さな蜘蛛を見せるラフラン。

「ひえっ」

 震えあがる俺。

「もう、本当に蜘蛛が苦手なんですね……僕、平気ですよ……」

 そんなことをいいながら、蜘蛛を逃がしてやるラフラン。

「もう、俺は蜘蛛が苦手なんだよ」

 俺は小さいころから蜘蛛が大嫌いだった。幼稚園のころにいじめっ子に蜘蛛をつけられて虐められていたからかもしれない。
 ああ、少し涙が出てきた。

「なあ、もうついてないか」

 今にも泣きそうな俺の言葉に、「ちょっとこっちできて、立ってください」と小屋から見えない位置まで一緒に移動する。そして、彼女はその青い瞳で、上から下まで見渡すと言った。

「大丈夫です。もう、ついてません」

 俺はその言葉に安心して胸をなでおろす。
 そんな俺を見て「ぷっ」と笑うラフラン。

「隊長、可愛いですね」

「もう、本当に苦手なんだよ」

 そう言って半べそかいている俺を見つめ、にやにやといたずらっぽく笑うラフランだった。
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