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36ルカーシュ
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ルカーシュは一年以上前に走っていたように、ヴァスコーネス王国へと向かって走った。小さな背負い袋一つを背負って休憩もほとんど取らずに走り続ければ、住んでいた小さな町からは三日ほどで着くと聞いていたが、ルカーシュはたった二日間で走り着いたのだった。
ルカーシュは焦っていた、小さな町には王都の情報はほとんど届かない。星森の宗主という黒豹の噂など聞いたこともなかったし、その番とやらの話も同じであった。
たまに買い物をする商店の店先に大切に飾られる、月間王家新聞でヴァスコーネス王国の王族たちの様子が垣間見られる程度である。そういえば先日見たときには第一王子と婚約者、そしてその家族を模した絵姿が載っていたことを思い出す。
まるで動いている一場面を切り取ったかのような絵姿に感心したのを覚えている。第一王子の婚約者というチビよりも、その横に描かれた姉らしき黒髪の女の美しさが目を惹いた。
雌相手に勃起したことなど一度もないが、この女の顔ならいけるかも知れないと思ったものである。くだらないことを思い出した、と首を何度か振ってルカーシュは邪念を振り払った。
ヴァスコーネス王国へ入国することは難しいことではない、入国門のところで魔法陣に手をかざすだけである。犯罪歴があれば即刻取調室へと連行されるが、普通は魔法陣が光って記録を保存したらそのまま入国が可能である。
ルカーシュは列に並んだ前の人間を真似て魔法陣に手をかざすと、そのまま通って良しと声を掛けられてほっとした。小さな背負い袋には布に包んだ隷属の首輪が入っている。奴隷自体を禁止しているヴァスコーネス王国であるから、こんなものを持っていることがバレれば捕まるだろう。
カシュパルの望みを叶えるためにヴァスコーネス王国へとやって来たルカーシュであったが、特に案があるわけではない。こちらに頼るべき見知った獣人も人間も皆無である。若さゆえ直情的に星森を飛び出してきたが予期せぬ事件に巻き込まれ一年以上も無駄に過ごし、人探しどころか今日の宿すらない無一文の身だ。
金がないならば売るものは一つしかない。ルカーシュは入国の門番たちが休憩しているところへそっと近づき、都会に出たのは初めてで不慣れなのだがここで一番人が集まる場所を見るには、どこへ行けばいいかと尋ねた。
ルカーシュの幼く見える顔を見て頬を緩めた門番たちは、それなら広場がいいとこぞって教えてくれた。
「あの、広場ってどうやって行けば……」
ルカーシュが眉を下げて尋ねれば門番の一人が、これで仕事上がりだからついでにと広場まで案内を買って出た。礼を言って門番に着いて歩いて行こうとすれば、初めての人混みに上手く歩けずあっという間に門番の背中は見えなくなっていた。これはマズいと足を速めようとすると、腕を横から取られた。
「あっ、なんでここに……」
「探したぞ、ルカーシュ」
ルカーシュに首輪をつけていた男が、そこにいた。
「町の外に出たって聞いてな、馬を借りて来た。途中お前の見た目を話せばみんな通ったことを覚えていたよ」
「……離せよ」
「帰ろう、ルカーシュ」
「はな、せ「その手を放してやれ」」
目をやれば先ほど案内を買って出た門番がいた、ルカーシュが付いて来ていないことに気づき戻ってきたのだろう。険しい目で男を睨みつけている、若い男に無理やり絡む中年にでも見えるのだろう。
「違うぞ俺はっ……「たすけてっ」」
「おい、放せ」
「る、ルカーシュっ!「たすけてっ!!」」
門番の手が腰の武器へと掛かる、男は奴隷の首輪を使って奴隷商人をしていたような人間だ。捕まれば不味いと一旦引くことにしたらしい。
「ルカーシュ、俺はこの近くの日和見亭って宿にいる、待ってるからなっ」
ルカーシュはさっさと男に背を向けて、門番の身体の影へと隠れるように腕へと擦り寄った。門番はいくらか耳を赤くしてルカーシュを気遣った。
「知り合いだったか?」
「僕を閉じ込めて一年以上酷いことしてきたから、やっと逃げてきた」
ルカーシュは門番の腕にすがりつき、震えてみせた。自分のことを僕と言って幼さを強調することも忘れていない。
「ひどいこと?」
門番が腕にすがった若者の顔を覗き込もうと顔を近づけてきたところで、ルカーシュは顔を上げ一年でずいぶん伸びた白っぽい髪の間から金瞳を潤ませた上目遣いで門番を見上げた。
「……あなたは僕にひどいことする?……お願い、僕を助けて」
潤んだ金瞳から涙が一粒落ちれば、仕上げは上々である。門番は首元まで真っ赤に染めて持ち前の正義感を燃やしてくれた。腕にすがっていたはずが、いつしか肩を抱かれている。
「俺はヴァスコーネス王国の兵士団に所属している。住まいは寮だが逆に兵士団以外の不審者は立ち入ることができないし、君一人くらいかくまうことはどうってことないさ」
「嬉しい……ありがと」
そのまま兵士団寮へと連れだって行き、簡単な身元調査票に記入をする。ルカーシュは遠くの村からヴァスコーネス王国へと憧れてやって来た人間のふりをした。父親は誰かわからないし母親はとうに死んだが村の好意で育ててもらったと本当のことを話せば、門番は同情的になった。嘘には真実を混ぜ込めば自分の発言で失敗することはない、これも星森で学んだことである。
身体的特徴の確認と身体検査をしなくてはいけないのだが、と門番が申し訳なさそうに言うので構わないと服に手をかけた。すべて脱ぐと門番の顔は真っ赤になり汗が噴き出した。
二日前の夜に男からしつこく愛撫された身体は、色の白さのせいか先ほどまで誰かに身を委ねていたのかと思わせるほど艶やかだった。白っぽい体毛のせいで無毛のように見える身体中に赤い痕をこれでもかと散らされて、男の執着が十分見て取れる。
「これも規則だから耐えてほしいんだが」
「あなたに任せる、何でもして……」
門番からこれから何をするか聞かされても、ルカーシュは動じなかった。門番はそれを男に監禁され解放されたばかりでまだ心が追い付かないのだろうと勝手に察し、手早くすませてやろうと行動に移した。
ルカーシュを四つん這いにさせて、陰茎と陰嚢の間まで素早く確認する。失礼といって陰茎の皮をめくり中に何も隠していないことを調べる。最後に、と門番が空咳をした。
失礼といってルカーシュの尻を左右に広げ、中にとろみ液が入った透明の細い管を入れていく。
「申し訳ないが、身体の中でここが一番ものを隠しやすい場所でね。少し深くまで調べねばならないから不快だろうが耐えてくれ」
「……ん、わかった」
細い管のとろみ液を少しずつ尻の中へ出していき奥まで確認するのである。異物があればとろみ液が反応するようになっている。ルカーシュの細くて白い尻に管を挿しながら、門番は興奮して股間を盛り上げていた。普段は女性を好んでいるつもりである、たまに行く娼館でも相手は女性だ。
だのになぜ、と思ったときルカーシュが振り返った。金瞳と目が合いびくっと肩を震わせれば、尻に挿した管がぐるりと動いた。
「あっ、ん」
視線が絡んだままルカーシュが艶めいた声を上げた。とろみ液は何の反応も示していないが、門番は完全に反応していた。ルカーシュとてピンク色の陰茎がやや上向いているではないか。
透明の管をすっと抜いて片付けると、身元調査票の身体検査欄へ問題なしと記入し記入票を閉じた。手荷物検査を失念しているのだが、今の門番にはそんな些細なことはどうでもよかった。
ルカーシュの身体を大きな布でぐるりとくるむと、服と荷物をまとめてルカーシュごと抱きかかえ、門番は自分の寮の一室へと走った。乱暴に扉を開閉し鍵をかけると、ルカーシュを一人用の硬い寝台へできるだけ丁寧に降ろした。
「いいね?」
とだけ尋ねれば白い顔が笑った。その笑い顔にどこか違和感を覚えながら門番はもう我慢などできなかった。
「そのまま挿れて」
男同士では解さねば入らぬはずだが、と思いつつ我慢のきかない門番は寝台に四つん這いになったルカーシュの尻に手を置いた。左右に割り開き男根をルカーシュの尻の穴にあてがえば先ほどの検査用のとろみ液だろう、ルカーシュの開いた穴からは透明の液が一筋くぽりとこぼれた。
たまらずずんと奥まで一気に突っ込めば、ルカーシュが悲鳴を上げた。
「やあっ、いたいっ……!」
「すっ、すまない、」
さんざん怖い目にあっただろうに痛い目に合わせてしまった。謝った門番に涙を浮かべた顔で、平気だと気丈に答える。
「痛くてもいいから、好きに動いて」
そんなことを言われれば先の気遣いなど一瞬で忘れて、門番は激しく腰を叩きつけた。自分勝手に何度も中で射精し、尻の穴から泡立った精液をまき散らして門番ははっと我に返った。
ルカーシュは尻だけを上げたままとうに気絶していた。服はそこらへと投げ散らかされていたが、小さな背負い袋を胸のところに抱え込んで離さなかったので、門番は顔と背中と下半身だけ清めてやり硬い寝台へ寝かせたルカーシュに、薄布をかけた。
こんなに性行為に夢中になったことなどない、門番はどこか奇妙な気持ちで眠るルカーシュの顔を見つめた。上官に報告すべきだろうかと考えて、嫌味な上官の顔を思い浮かべる。あいつは噂では少年趣味と聞いたから、報告すればルカーシュの身が危ないだろう。
入国検査も問題なく兵士団寮へ入れるための調査票もきちんと記入してあるのだ、日和見亭に滞在しているというあの男の方がよっぽど危険であろう。のちほど日和見亭へ兵士を派遣して確認してもらおうと考えながら門番もルカーシュの隣にどさりと倒れ込み眠った。
目覚めたルカーシュは腰の痛みに呻いた。尻だけ上げた体勢でずっとへたくそにぶっこまれたのである、尻も切れてひりひりと痛い。
(ちくしょー、いてーじゃねぇか。へたくそが)
一年以上荒ぶった男と住んでいたルカーシュの言葉遣いは、非常に乱暴になっていた。しかも長いこと話せなかったため、無口でいる癖がついている。無言で裸のままの腰をさすって痛む尻を指で撫でて確認すれば、門番が目を覚まし平謝りに謝った。
すぐに服を着て部屋を出ていき、戻ったときにはかなり上等の薬草が練り込まれた軟膏を手にしていた。うつ伏せで少し足を開いところへ門番が尻を広げて、尻の穴へと軟膏を塗りこんでいく。薬を塗り終えればルカーシュの身体はまた薄布を掛けられた。
「夕食はここへ運ぶが、まだいくらか時間がある。それまで寝ておいで」
門番が用事があると部屋を出ていき、ルカーシュは背負い袋の中に首輪があるのを手で触れて確認し安堵の息をついた。
まもなく夕食の乗った木の盆を手に門番が戻ってきた。脂っぽい濃い味の量が多い料理である。ルカーシュは礼を言って全て平らげた。
「僕、大きな荷物は全部盗まれちゃって、お金もないから……」
「大丈夫だよ、君のできる仕事はきっとあるし、それまでここにいたらいい」
食べ終えたルカーシュがもじもじと上目遣いで門番を頼る、頼られた門番とて悪い気はしない。
「僕、都会に憧れて出て来たの。色々お話聞かせて?」
「もちろんいいよ、何から知りたい?」
「えっとねー、」
ルカーシュと門番はたくさん話した、いや正確には門番だけが多くを話した。ルカーシュはとても聞き上手で何を話しても感激して何でも知っているんだねと誉めてくれる。門番は酒を飲んだわけでもないのに、気分よく問われるまま全てに答えていった。
とはいっても機密事項を尋ねられたわけではない。都会に獣人はいるの、だとかこの間の月間王家新聞を見たが絵姿にあった黒髪の美人は誰なの、だとか城下街にいれば誰でも知っているような話ばかりだ。
そういえば、と門番が話のついでに伝えておこうと言った。日和見亭へ兵士を向かわせたから、あの男はもう君の前へ現れることはないだろうと聞くと、ルカーシュは震えた。
そんなにあの男が怖かったのかと抱き寄せれば黙って胸へとおさまったルカーシュであったが、その顔はなぜか強張っていた。
二度と会うことがない、と聞いて喜びとは違うものが胸に渦巻いている。ルカーシュはそれに訳のわからない不安、と名前をつけて胸の奥へ仕舞った。
ルカーシュは焦っていた、小さな町には王都の情報はほとんど届かない。星森の宗主という黒豹の噂など聞いたこともなかったし、その番とやらの話も同じであった。
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ヴァスコーネス王国へ入国することは難しいことではない、入国門のところで魔法陣に手をかざすだけである。犯罪歴があれば即刻取調室へと連行されるが、普通は魔法陣が光って記録を保存したらそのまま入国が可能である。
ルカーシュは列に並んだ前の人間を真似て魔法陣に手をかざすと、そのまま通って良しと声を掛けられてほっとした。小さな背負い袋には布に包んだ隷属の首輪が入っている。奴隷自体を禁止しているヴァスコーネス王国であるから、こんなものを持っていることがバレれば捕まるだろう。
カシュパルの望みを叶えるためにヴァスコーネス王国へとやって来たルカーシュであったが、特に案があるわけではない。こちらに頼るべき見知った獣人も人間も皆無である。若さゆえ直情的に星森を飛び出してきたが予期せぬ事件に巻き込まれ一年以上も無駄に過ごし、人探しどころか今日の宿すらない無一文の身だ。
金がないならば売るものは一つしかない。ルカーシュは入国の門番たちが休憩しているところへそっと近づき、都会に出たのは初めてで不慣れなのだがここで一番人が集まる場所を見るには、どこへ行けばいいかと尋ねた。
ルカーシュの幼く見える顔を見て頬を緩めた門番たちは、それなら広場がいいとこぞって教えてくれた。
「あの、広場ってどうやって行けば……」
ルカーシュが眉を下げて尋ねれば門番の一人が、これで仕事上がりだからついでにと広場まで案内を買って出た。礼を言って門番に着いて歩いて行こうとすれば、初めての人混みに上手く歩けずあっという間に門番の背中は見えなくなっていた。これはマズいと足を速めようとすると、腕を横から取られた。
「あっ、なんでここに……」
「探したぞ、ルカーシュ」
ルカーシュに首輪をつけていた男が、そこにいた。
「町の外に出たって聞いてな、馬を借りて来た。途中お前の見た目を話せばみんな通ったことを覚えていたよ」
「……離せよ」
「帰ろう、ルカーシュ」
「はな、せ「その手を放してやれ」」
目をやれば先ほど案内を買って出た門番がいた、ルカーシュが付いて来ていないことに気づき戻ってきたのだろう。険しい目で男を睨みつけている、若い男に無理やり絡む中年にでも見えるのだろう。
「違うぞ俺はっ……「たすけてっ」」
「おい、放せ」
「る、ルカーシュっ!「たすけてっ!!」」
門番の手が腰の武器へと掛かる、男は奴隷の首輪を使って奴隷商人をしていたような人間だ。捕まれば不味いと一旦引くことにしたらしい。
「ルカーシュ、俺はこの近くの日和見亭って宿にいる、待ってるからなっ」
ルカーシュはさっさと男に背を向けて、門番の身体の影へと隠れるように腕へと擦り寄った。門番はいくらか耳を赤くしてルカーシュを気遣った。
「知り合いだったか?」
「僕を閉じ込めて一年以上酷いことしてきたから、やっと逃げてきた」
ルカーシュは門番の腕にすがりつき、震えてみせた。自分のことを僕と言って幼さを強調することも忘れていない。
「ひどいこと?」
門番が腕にすがった若者の顔を覗き込もうと顔を近づけてきたところで、ルカーシュは顔を上げ一年でずいぶん伸びた白っぽい髪の間から金瞳を潤ませた上目遣いで門番を見上げた。
「……あなたは僕にひどいことする?……お願い、僕を助けて」
潤んだ金瞳から涙が一粒落ちれば、仕上げは上々である。門番は首元まで真っ赤に染めて持ち前の正義感を燃やしてくれた。腕にすがっていたはずが、いつしか肩を抱かれている。
「俺はヴァスコーネス王国の兵士団に所属している。住まいは寮だが逆に兵士団以外の不審者は立ち入ることができないし、君一人くらいかくまうことはどうってことないさ」
「嬉しい……ありがと」
そのまま兵士団寮へと連れだって行き、簡単な身元調査票に記入をする。ルカーシュは遠くの村からヴァスコーネス王国へと憧れてやって来た人間のふりをした。父親は誰かわからないし母親はとうに死んだが村の好意で育ててもらったと本当のことを話せば、門番は同情的になった。嘘には真実を混ぜ込めば自分の発言で失敗することはない、これも星森で学んだことである。
身体的特徴の確認と身体検査をしなくてはいけないのだが、と門番が申し訳なさそうに言うので構わないと服に手をかけた。すべて脱ぐと門番の顔は真っ赤になり汗が噴き出した。
二日前の夜に男からしつこく愛撫された身体は、色の白さのせいか先ほどまで誰かに身を委ねていたのかと思わせるほど艶やかだった。白っぽい体毛のせいで無毛のように見える身体中に赤い痕をこれでもかと散らされて、男の執着が十分見て取れる。
「これも規則だから耐えてほしいんだが」
「あなたに任せる、何でもして……」
門番からこれから何をするか聞かされても、ルカーシュは動じなかった。門番はそれを男に監禁され解放されたばかりでまだ心が追い付かないのだろうと勝手に察し、手早くすませてやろうと行動に移した。
ルカーシュを四つん這いにさせて、陰茎と陰嚢の間まで素早く確認する。失礼といって陰茎の皮をめくり中に何も隠していないことを調べる。最後に、と門番が空咳をした。
失礼といってルカーシュの尻を左右に広げ、中にとろみ液が入った透明の細い管を入れていく。
「申し訳ないが、身体の中でここが一番ものを隠しやすい場所でね。少し深くまで調べねばならないから不快だろうが耐えてくれ」
「……ん、わかった」
細い管のとろみ液を少しずつ尻の中へ出していき奥まで確認するのである。異物があればとろみ液が反応するようになっている。ルカーシュの細くて白い尻に管を挿しながら、門番は興奮して股間を盛り上げていた。普段は女性を好んでいるつもりである、たまに行く娼館でも相手は女性だ。
だのになぜ、と思ったときルカーシュが振り返った。金瞳と目が合いびくっと肩を震わせれば、尻に挿した管がぐるりと動いた。
「あっ、ん」
視線が絡んだままルカーシュが艶めいた声を上げた。とろみ液は何の反応も示していないが、門番は完全に反応していた。ルカーシュとてピンク色の陰茎がやや上向いているではないか。
透明の管をすっと抜いて片付けると、身元調査票の身体検査欄へ問題なしと記入し記入票を閉じた。手荷物検査を失念しているのだが、今の門番にはそんな些細なことはどうでもよかった。
ルカーシュの身体を大きな布でぐるりとくるむと、服と荷物をまとめてルカーシュごと抱きかかえ、門番は自分の寮の一室へと走った。乱暴に扉を開閉し鍵をかけると、ルカーシュを一人用の硬い寝台へできるだけ丁寧に降ろした。
「いいね?」
とだけ尋ねれば白い顔が笑った。その笑い顔にどこか違和感を覚えながら門番はもう我慢などできなかった。
「そのまま挿れて」
男同士では解さねば入らぬはずだが、と思いつつ我慢のきかない門番は寝台に四つん這いになったルカーシュの尻に手を置いた。左右に割り開き男根をルカーシュの尻の穴にあてがえば先ほどの検査用のとろみ液だろう、ルカーシュの開いた穴からは透明の液が一筋くぽりとこぼれた。
たまらずずんと奥まで一気に突っ込めば、ルカーシュが悲鳴を上げた。
「やあっ、いたいっ……!」
「すっ、すまない、」
さんざん怖い目にあっただろうに痛い目に合わせてしまった。謝った門番に涙を浮かべた顔で、平気だと気丈に答える。
「痛くてもいいから、好きに動いて」
そんなことを言われれば先の気遣いなど一瞬で忘れて、門番は激しく腰を叩きつけた。自分勝手に何度も中で射精し、尻の穴から泡立った精液をまき散らして門番ははっと我に返った。
ルカーシュは尻だけを上げたままとうに気絶していた。服はそこらへと投げ散らかされていたが、小さな背負い袋を胸のところに抱え込んで離さなかったので、門番は顔と背中と下半身だけ清めてやり硬い寝台へ寝かせたルカーシュに、薄布をかけた。
こんなに性行為に夢中になったことなどない、門番はどこか奇妙な気持ちで眠るルカーシュの顔を見つめた。上官に報告すべきだろうかと考えて、嫌味な上官の顔を思い浮かべる。あいつは噂では少年趣味と聞いたから、報告すればルカーシュの身が危ないだろう。
入国検査も問題なく兵士団寮へ入れるための調査票もきちんと記入してあるのだ、日和見亭に滞在しているというあの男の方がよっぽど危険であろう。のちほど日和見亭へ兵士を派遣して確認してもらおうと考えながら門番もルカーシュの隣にどさりと倒れ込み眠った。
目覚めたルカーシュは腰の痛みに呻いた。尻だけ上げた体勢でずっとへたくそにぶっこまれたのである、尻も切れてひりひりと痛い。
(ちくしょー、いてーじゃねぇか。へたくそが)
一年以上荒ぶった男と住んでいたルカーシュの言葉遣いは、非常に乱暴になっていた。しかも長いこと話せなかったため、無口でいる癖がついている。無言で裸のままの腰をさすって痛む尻を指で撫でて確認すれば、門番が目を覚まし平謝りに謝った。
すぐに服を着て部屋を出ていき、戻ったときにはかなり上等の薬草が練り込まれた軟膏を手にしていた。うつ伏せで少し足を開いところへ門番が尻を広げて、尻の穴へと軟膏を塗りこんでいく。薬を塗り終えればルカーシュの身体はまた薄布を掛けられた。
「夕食はここへ運ぶが、まだいくらか時間がある。それまで寝ておいで」
門番が用事があると部屋を出ていき、ルカーシュは背負い袋の中に首輪があるのを手で触れて確認し安堵の息をついた。
まもなく夕食の乗った木の盆を手に門番が戻ってきた。脂っぽい濃い味の量が多い料理である。ルカーシュは礼を言って全て平らげた。
「僕、大きな荷物は全部盗まれちゃって、お金もないから……」
「大丈夫だよ、君のできる仕事はきっとあるし、それまでここにいたらいい」
食べ終えたルカーシュがもじもじと上目遣いで門番を頼る、頼られた門番とて悪い気はしない。
「僕、都会に憧れて出て来たの。色々お話聞かせて?」
「もちろんいいよ、何から知りたい?」
「えっとねー、」
ルカーシュと門番はたくさん話した、いや正確には門番だけが多くを話した。ルカーシュはとても聞き上手で何を話しても感激して何でも知っているんだねと誉めてくれる。門番は酒を飲んだわけでもないのに、気分よく問われるまま全てに答えていった。
とはいっても機密事項を尋ねられたわけではない。都会に獣人はいるの、だとかこの間の月間王家新聞を見たが絵姿にあった黒髪の美人は誰なの、だとか城下街にいれば誰でも知っているような話ばかりだ。
そういえば、と門番が話のついでに伝えておこうと言った。日和見亭へ兵士を向かわせたから、あの男はもう君の前へ現れることはないだろうと聞くと、ルカーシュは震えた。
そんなにあの男が怖かったのかと抱き寄せれば黙って胸へとおさまったルカーシュであったが、その顔はなぜか強張っていた。
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