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番外編
夢の中で4
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『チチ!』
ジル姫の周りを、小鳥が元気に飛び回っていました。
「ふふ、今日はやけに元気ね?」
『チチッチチッ』
元気に飛び回る小鳥に、ジル姫は自然と笑みをこぼします。
騎士ライトが呪いを解く方法を探しに旅に出て、一年近く経っていました。
ジル姫は今、山奥でひっそりと騎士ライトの帰りを待っているのです。
「いい季節になったわね」
ジル姫がそうつぶやき、辺り一面に広がる、見事なまでの色とりどりの花畑を見渡していると。
「……ジル姫。ただいま戻りました」
懐かしい、愛しい人の……騎士ライトの声が聞こえました。
ついに、帰ってきたのです。
「……ライト様……!」
ジル姫が振り返ると、目に映るのは、こちらに歩み寄る騎士ライトの姿。
無事、戻ってきてくれたのです。
……どんなに、この日がくるのを夢見たことでしょう。
嬉しくてたまらなくて、無我夢中で駆け寄ります。
そして、
「……会いたかった……ジル姫……」
「私も……私も会いたかったです……」
二人は強く、抱きしめ合いました……が。
ジル姫は、騎士ライトの顔を見上げ、少し戸惑った表情を見せました。
なぜなら、
「……?
あなたは……ライト様だけど……少し違うわ……」
確かに目の前にいるのは、優しい笑みを浮かべている騎士ライトのはず。
なのに、なぜこんな違和感を感じるのでしょうか。
ハッと、ジル姫は思い出します。
騎士ライトと初めて出会った日のことを。
「私……あなたに初めて会った時の事を、覚えています」
騎士ライトと瓜二つの、青年のことを。
「そうか」
青年は少し嬉しそうに笑みを浮かべました。
そして、あの日と同じように、ジル姫の頬を両手で優しく包み込みます。
『呪いは解けるし、必ず、幸せになる。だから、なんも心配すんな』
そう話した青年のことが、ずっと、ずっと気になっていました。
なぜ、彼はジル姫の事情を知っているのでしょう。
なぜ、騎士ライトと全く同じ瞳で、愛おしそうに見つめるのでしょう。
なぜ……こんなにも、ジル姫の胸は高鳴るのでしょう。
「あなたは……誰?」
「ジル。
あんたの手で、オレにコレを飲ませてほしい」
「……えっ?」
見慣れぬ薬のようなものを握らされ、ジル姫は混乱してしまいます。
一体彼は、何を言っているのでしょうか。
「ど、どうしてそんな事を??」
「そのあとは、ライトの血を一滴でもいいから口にしろ」
「ちょっと待って、」
「そうすれば、呪いは解ける。あんたは、何百年も苦しまなくてすむ。
……ライトと、幸せになれる」
「ッ、」
そう話す青年の瞳は、とても、とても優しいものでした。
嘘を言っていないのだと、ジル姫には分かりました。
「あなたは……誰なの?」
その問いに、青年はジル姫の手を優しく包み込むように握りしめながら答えます。
「オレは、シェイド」
「シェイド……」
その名前は、異国の言葉で、"影"。
そして騎士ライトの名前は……。
「あなたはもしかして……」
シェイドが、ジル姫の手の甲に唇を落とします。
まるで、初めて騎士ライトと出会った時のように。
そして、
「またな。
あんたが生まれ変わったら、また会える」
そうポツリと口にして。
シェイドは、ジル姫の手のひらを広げると
薬のようなものを、口にしました。
***
シェイドがジル姫に手渡した薬のようなものは、魔女からもらった窒死量の毒物です。
遠のく意識の中……
シェイドは、不思議な感覚を覚えます。
ゆらり。
ゆらり。
まるで、夢の中にいるような……ふわふわとした感覚です。
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