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飛鳥君編

6話 ギャップって武器だと思うんだよね…!

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「えっと…勇太っ…」

教室の後ろの扉から(前は勇気がなくて無理)勇太を呼んでみる。
小さい声だったからか反応がない。無理だなと思い帰ろうとすると

「兄貴っ待てよっ!」

勇太の声がした。すげぇ…あんなに小さな声でよくわかったな…。

「えっと…勇太。」

「兄貴がおれのクラスにくるなんて調子乗ってんじゃねぇぞ、ボケっナスっ!」

…はい、罵倒いただきました…。
だから誘いたくなかったんだ…てのもあるしあの女子たちの話がバレたらおれはどうなることやら…考えたくないっ。

「えっと…ね。」

とりあえず自分の教室(女たちがいるところ)まで連れて行かないといけない…。

「勇太、今暇?」
「暇じゃねぇよ!寝てたしっ!」
「…眠いことごめんなんだけど──」
「眠くねぇし!」

どっちだよ!!

「おれの教室来ない?」
「…なんで?」
「え?」

なんでときた?え、なにそれ困る。

「なんでって…」
「だって…」
「ボソッ今まで兄貴からおれのクラス来たこと一回もなかったんだぞ!?
いや、あったけど、おれが教科書借りて返さなかったときに取りにくることは、
あったけど…あっちから来たのは初めてでっどういうことだ?
まじっ…今日はほんと、運を使い切った日だっ。神に感謝っ!今日死ねるっ。」

「えっ?なに?、」
「死なねーよ!なにいってんだ、、このクソがっ!」
「お前こそなにいってんだ!?」

弟とはときどき話が通じないときがある…。いや、時々っていうかいつもか…。

「それで…えっと、来てくれる、んですかね?」

そして、弟に敬語になるおれ!いつの間にこんな上下関係ができちまったんだっ!つらいっ!

「兄貴っ…」

弟は、そういうとぷいっと横を向いてしまう。無視かな?

「兄貴が…ボソ教室まで来てくれるの、はじめてだったから…」
「え?」

声が小さくてきこえなかった…
なんていったんだろう…。

「だからっ…なんだよっ!なんで来たんだよ!このクソ兄貴っ!理由をいえっ!」
「え、理由!?」

理由いったら…おれ、絶対殺されるっ

「嫌だよっ、いいからきてっ…」
「待て」
「はい?」
「ちょっと写真とるから、待て」
「なんの写真!?」

などとやりとりをしていると結構時間がかかってしまった。やばいっ…あの女の子たち…怒ってるかもっ



「おせーんだよっ。クソがっ。いつまで待たせるんですか?まじ使えないんですけどww」

「ねぇ!ちょっと呼びにくるだけでしょ?」

はいっ…案の定怒られましたっ…と。
まぁもうおれの役割は終わったし…。いいやっとその場を離れようとしていると…

「クソ、これ、どういうことだ?」

もう兄貴もつけてくれないのか…

「いや…えっーと…うん…。」

上手く説明できない…。

「おいっ…殴るぞ?」

…説明したら殴られるし説明できなかったら殴られる…はい、逃げ道がどこにもありませんね。

「ごめんっ…勇太。」
「っ…。兄貴っ…!」

そういうと勇太はおれの肩をぐっと掴んだっ。痛いっ…!

「兄貴はおれを教室に連れて行った。しかも放課後、多分人がいないだろう教室に…おれを!だからっ…おれはチャンスだって…思ってっ…!」
「…殴るための?」
「ああ?殴るぞ?」
「はいっ…。」

いきなり肩を力強く掴まれおれは殴られるっ…と思い勇太の顔をしっかり見れていなかった。

「兄貴がっ…教室呼んでくれて…おれは嬉しくてっ…いや、ムカついて…!おれはっ…兄貴とっ…!」



「ちょっと~、可愛い女の子を無視しないでよっ~!」

横から女の子たちの声が聞こえてきた。おれは助かったっ…と心がほっとした。

「あ?」

勇太はギロッと女の子たちを睨むとおれの肩を離した。痛かったぁっ!

「…ボソごめん」

勇太が何かいっていたように聞こえたが…おれの耳には何も聞こえず残らなかった。

「ねぇ…勇太ぁっ。」

女の子(さーやだっけ?)はぎゅっと勇太を抱きしめた。ギョッとして女の子たちを見るとにやにやと笑っていた。


「さーや、ずっと前から…勇太のこと好きでっ…!あのねっ…」

といってネチネチと勇太の体に胸を押しつけていた。…うわぁっ…と思ってそして───イライラした。

「勇太ぁ、今日さ、さーや、暇なんだよねっ…ねぇ一緒にっ…」
「は?」

ふと勇太の様子を見ると…さーやをめちゃくちゃ睨んでいた…。
いや、睨んでるどころではないっ!
めっちゃくちゃ怒ってるっ…!やべぇっ…!おれは一人でそわそわしていた。怖いっ!おれはビクビクと二人のやり取りを見ていた。

「さーやぁ勇太と一緒にいたいのっ…」

勇太はその言葉を聞くと…いった。

「…ボソ兄貴を…巻き込むんじゃねぇよ。」
「え?なに?」

さーやはきょとんと、可愛い顔をした。

「おれのことが好きってことでいいんだな?このクソ女がっ。」
「クソ女って…それは酷くない?」
「それを言うために…兄貴を使ったのか?教室まで連れてこいって…いったのか?」
「は?」

勇太はさーやの告白を無視しておれのことをはなしていた。おれもえっ?と思った。

「…さーや、教室までいく勇気なくて…だから」
「兄貴をつかった…か。」

なんでそこに、おれが出てくるんですかね?

「そんなクソな用事のために…クソ兄貴を使いやがって」

これは庇われてるのか?いや微妙なんだけどっ!

「別に…使った訳じゃない。私、恥ずかしくて…!」
「…知るかよっ。」

勇太ははぁっとため息をつくと帰ろうとおれの手を引っ張ってくる。

「ちょっ…まださーや、話し終わってないんだけど!?」 
「てめぇらの話なんかどうでもいい…」

勇太はギロッと睨む。

「待って!ほんとうに私、勇太のこと好きなのっ…!待ってっ」

「え、やだ。」

なんてストレートにいうんだ…。我が弟よ…。

「やだっ!?なにそれ!私が告白してやってんだから止まんなさいよ!」
「…やってるから?何様のつもりなんだよ。」

弟はそういうとめんどくせぇ…と一旦足を止めた。お、素直だなと思いおれも足を止める。

「さーや、あんたなら付き合ってやってもいいと思ってるんだよね~!まぁ顔はいい感じだし?強い男って憧れるっていうか…どう?」
「…どうも何も知るか。話、もういいか?」
「はぁっ~!あんたさ…なんなの!?私が告白してやってんのに…。なに?女に興味ない感じwwホモなのww」


勇太はまたはぁっと息を吐くという。

「興味ねぇな。あんたが無駄に押しつけてる胸もただの脂肪の塊だろ。


…おれは…好きな人にしか興味ねぇ。」


そう─────勇太がいった。一瞬、雰囲気が固まる。そして

「えっ!!?まじ、あんた好きな人いんの!?誰々!?」
「え、誰!?男?それとも貧乳の女とかww」
「えっ~~!?まじで!?」

女の子が一斉に質問にかかる。
勇太はさっきいってしまったことが恥ずかしいのか顔を真っ赤にさせていた。

「えっ!勇太、顔真っ赤なんですけどww」
「どしたの?好きな人のこと考えちゃった系??うわぁ…不良のてっぺんがこんなに純粋とは思わなかったわぁ!」

ギャハギャハと笑う女子たちに勇太はうるせぇ!と叫びおれの手を引っ張ってその場を離れた。

「えっ…勇太っ」
「別にっ…!」
「はっ?」
「赤くなんか、なってねぇ!」
「うん…。」

いや、めっちゃ顔真っ赤なんだけど…。

「くそっ!あの女がっ…!変なこといいやがるからっ…!死ねっ!くそっ…」

そういうとその場に丸まってしまった…。うん…これは…

「ははっ。勇太、お前かわいいな。」
「はぁっ!?」

勇太はぐっと顔を上げておれをみた。

「かわっ!?なにいってんだ、きめぇんだよ!」
「ずっと好きな人がいるのか?」
「えっ…!?」
「そっか。」
「あっ…まぁっ…い、いねぇし!クソ兄貴のくせにっ…!」

勇太は顔真っ赤にさせ、おれに反論しようとしたが頭が働かないらしい。

「っ…はは!」

久しぶりに弟のこんな姿を見た。そのとき、ふと思ったんだ───これが


「ギャップ萌っ…!」


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