仮の番契約

りあやな煮工房

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暁月と架月#2

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〝黙れ。今日からお前は俺の奴隷だ〟
〝奴隷の分際でいい気になるなよ〟
〝神気の無い雑魚神が!〟
〝お前に発情期なんて一生来ないだろうなぁ! 雑魚神だから!〟




「―つ、げつ。―〝架月〟」
「……ッ!!」
 香霧の声で目を覚ました架月は、ぼやける視界で辺りを見渡す。
「架月、大丈夫?ちょっと気を失っていたんだよ。ごめんね、突然びっくりするような事を言って」
(……そうか、ここは香霧様のお部屋……)
 架月は目を擦りながら、のそのそと体を起こす。そして寝台の上に座り直すと、深呼吸をして冷静さを取り戻した。
「いえ、大丈夫です。私の方こそすみませんでした」
「……。相変わらず、切り替えの早さはピカイチだね。―じゃあ、話を続けるよ」
 香霧は煙草を咥えると、火皿に炎を乗せる。ふぅ、と大きく息を吐き出すと、ふわりと甘い蓮の香りが舞う。
「架月に発情期が来た訳だけど、その状態で誰かに会ったりした?」
「いえ、誰とも会っていません。天帝様に書類を出しに行ったのですが、生憎不在だったので」
 香霧の質問に、架月は淡々と答える。
「……そう、天帝が不在で良かったよ。天帝が、架月の変化に気づかないはずがない。間違いなく犯され、孕まされていただろうね」
「……孕む……」
 架月の表情が、一瞬で暗くなった。
「そう。天帝の目的の一つは、利口なお前に自分の子を宿させる事。そのために今まで架月を犯していたのだからね。三千年かかり、ようやくお前に発情期が来た。この好機を天帝が逃すはずがない」
「……っ!」
 架月は俯いて太ももに上に置いた拳をさらに固く握った。
「それはそうと、体の変化や兆候、自覚症状はあった?」
「いえ、特にありませんでした」
「……本当に?」
 香霧は透き通るような紫色の瞳をゆっくりと細めた。
「体の怠さや熱っぽさ、後孔から何かが滴る感覚。そして―」
 架月に向かって手を伸ばした香霧は、彼のへその辺りをトン、と指で軽くつつき、そのまま下に滑らせた。
「腹の奥が疼いて仕方ないんじゃない?」
「―……ッ!!」
 その途端、架月の体に甘い熱が走り抜けた。このまま触れられていたら、射精してしまいそうな程の痺れだった。
「……発情期はね、他人に触れられた所が敏感になって仕方ないんだ。始めての時は特にね。発情期を、たったひとりでやり過ごすのは、かなり労力を使う。そのせいで体調を崩した神を僕は何人も見てる。抗う事の出来ない発情期をひとりでやり過ごす事は、正直架月には無理だと思うし、経験して欲しくない」
「……っ、では、どうすれば……」

 寝台の上に置かれたランプの炎が、ゆらり、と揺れた。


「〝番〟をつくりなさい」
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