恋人と四十八手

黒猫と夜

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六手目:抱き地蔵(だきじぞう)

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夜の公園のトイレ。
個室の扉が閉まると同時に、狭い空間は二人の熱気を閉じ込めた。蛍光灯の白い光に照らされ、彩花の頬はわずかに上気し、潤んだ瞳が悠真を真っ直ぐに見つめている。

「……ここなら、大丈夫……」
そう囁く声は小さく、けれど熱を孕んでいた。

悠真は彼女を壁際に追い詰めるように近づき、そっと腰に手を添える。
「彩花……声、抑えられる?」
「……頑張る……でも、悠真が意地悪したら……」
艶やかに笑みを浮かべる彩花の言葉は、半ば自分を甘やかすような挑発にも聞こえた。

二人の唇が触れ合った瞬間、狭い個室に湿った音が響く。
浅い口づけが次第に深まり、舌と舌が絡み合い、甘い吐息が互いの口内に流れ込む。

「んっ……ふぅ……」
彩花の声がこぼれると、悠真はさらに角度を変え、彼女の唇を貪るようについばんだ。

やがて彩花の背を撫でる手はゆっくりと上へと移動し、肩口を経て鎖骨をなぞり、ブラウス越しに柔らかな膨らみに触れる。
「……悠真……そんなとこ……」
「だって……彩花が欲しいって、もう教えてくれてる」

指先で乳房を包み込み、親指で乳首を擦ると、彩花の身体は小さく震えた。
「んっ……やぁ……敏感なの、わかってるでしょ……」

彼女は抗うように言葉を返しながらも、腰は自然と悠真の方へ寄り添っていた。
下腹部が彼の硬さに触れると、布越しにも熱が伝わり、彩花の吐息は乱れる。

悠真はその反応を確かめるように、彼女の首筋に唇を落とす。
「……彩花、いい匂いがする……」
「んっ……そこ、くすぐったいのに……あぁ……」

首筋から鎖骨、デコルテへとキスの軌跡を刻む。
彩花は堪らず彼の頭を抱き寄せ、もっと深く触れて欲しいと無言で訴えた。

「彩花……可愛い……全部、俺に委ねて」
「……うん……悠真に、全部……」

ブラウスのボタンを外すと、薄布の下から形の整った胸がのぞく。
悠真は唇を乳首へと近づけ、舌先で円を描くように弄ぶ。
「ひゃっ……だめ……っ、声……出ちゃう……」
「いい、もっと聞かせて……」

舌が尖って敏感な突起を弾くたび、彩花の背筋は大きく反り返る。
彼女の唇は必死に声を堪えるものの、漏れる吐息は甘く艶めいていた。

胸を口に含み、強弱をつけて吸い上げる。
「んんっ……あぁ……悠真ぁ……それ、気持ちいい……」
彼女の両手は悠真の髪を握り、体の奥から震えが込み上げてくる。

彼の手はさらに腰へと滑り降り、スカートの裾をめくり上げる。指先が太腿をなぞり、下着越しに秘めた部分へ触れると、彩花の身体は大きく跳ねた。
「ひゃっ……そこ……っ……悠真……もう、濡れて……」
「わかってる……だから、もっと欲しいんだろ?」

彩花は頬を真っ赤にしながら、彼の肩に額を預け、細い声で答えた。
「……うん……悠真が欲しい……」

彩花の吐息は次第に熱を帯び、首筋から胸元へと降りていく悠真の唇に、堪らないほどの火照りを感じていた。
しかし、次の瞬間。彼女はふと動きを止め、潤んだ瞳を悠真へ向ける。

「……ねぇ、悠真」
「ん……?」
「今度は……私から、したいの……いい?」

その声は、甘さと同時に意志の強さを帯びていた。
悠真が軽く頷くと、彩花はゆっくりと膝を折り、狭い個室の床に膝をついた。冷たいタイルが膝小僧に当たる感触も、今は気にならない。

視線の高さが下がると、すぐ目の前に悠真の熱く張り詰めた中心があった。布越しにも形がはっきりとわかるほどに存在を主張している。
彩花は震える指先でベルトを外し、ファスナーを下ろした。

「……もう、こんなに……硬くなってる……」
「彩花が……可愛すぎるからだよ」

下着を下ろすと、解放された熱が彩花の頬をかすめた。彼女は一瞬、頬を染めてためらうが、すぐに小さく微笑んだ。

「……いただきます……」

唇をそっと先端に触れさせる。
柔らかいキスのように軽くついばむと、悠真の呼吸が大きく揺れた。
「っ……彩花……」

舌先を伸ばし、雫をすくうようになめ取る。
とろりとした熱が舌の上に広がり、彼女はそのまま亀頭全体を舌で包み込むように転がした。

「んっ……あむ……ん……」
甘い水音が狭い個室にこだまする。

彼女は唇をすぼめてゆっくりと飲み込み、喉の奥へ誘うように深く含んでいく。
「んんっ……ふぅ……っ……」
喉が狭く震える感覚に、悠真の腰がわずかに跳ねる。

「彩花……無理しなくていい……」
「ん……平気……もっと、気持ちよくなって……」

彼女は両手で悠真の太腿を支え、さらに深くくわえ込む。
喉奥で押し込まれるたびに、彼女の瞳が潤み、涙が滲む。
しかし、その瞳には嫌悪の色は一切なく、むしろ愛しさと悦びで満ちていた。

舌で竿の裏筋を舐め上げ、先端を唇で吸い上げる。
「ちゅっ……んっ……れろ……んちゅ……」
湿った音が絶え間なく響き、彩花の唇は艶やかに濡れて光る。

彼女は途中で口を離し、手で根元をしごきながら、先端に軽く息を吹きかけた。
「はぁ……ねぇ悠真……もっと欲しい?」
「……あぁ……彩花、気持ちよすぎる……」

微笑んだ彩花は再び亀頭を咥え込み、今度は一定のリズムで上下に動かす。
そのたびに頬が引き込まれ、喉が震え、唾液が糸を引いて垂れ落ちる。

「んっ……んんっ……ふぁ……っ……んちゅ……」
耳に届く彼女の淫靡な音に、悠真の理性は削られていく。

悠真は堪らず彩花の髪を撫で、指を絡めて後頭部を支えた。
「彩花……そんなにされたら……すぐに……」
「んっ……ふふ……まだダメ……これからだから……」

彩花は口を離し、唇を舐めてから囁いた。
「……いっぱい我慢して……私の中に……お願いね」

その言葉に悠真の全身は震え、熱を抑え込むように深く息を吐いた。
彼女は愛おしげに彼を見上げ、濡れた唇をもう一度重ねる。

次の瞬間――二人の身体は、抱き地蔵の体勢へと移り始めていく。

彩花が潤んだ唇を名残惜しそうに離すと、細い糸が光を帯びて二人の間に揺れた。
彼女は口元を指で拭いながら、恥じらいと悦びが入り混じった表情で悠真を見上げる。

「……もう、我慢できないでしょ?」
「……彩花こそ」
互いに囁き合いながら、再び身体を引き寄せる。

悠真は便座に深く腰を下ろし、両腕を広げて彼女を招いた。
彩花はゆっくりと立ち上がり、スカートの裾を軽く持ち上げながら悠真の膝へ跨がる。
狭い個室の中で二人の距離はさらに密着し、胸と胸、唇と唇がまた重なった。

「んっ……ふぅ……悠真……」
熱い吐息を漏らしながら、彩花は片手を下へと伸ばす。震える指先で彼の硬さを包み、ゆっくりと自分の入口へ導いていった。

「……入れるね……」
「来て……彩花……」

腰を少し浮かせ、慎重に角度を合わせる。
濡れそぼった花弁が彼の先端を受け入れ、じわりと押し広げられていく感覚に、彩花は目を細めて小さな声を漏らした。

「んっ……あぁ……ゆっくり……でも……奥まで……」

悠真は彼女の腰を両手で支え、無理をさせないように少しずつ押し下ろす。
狭い空間に、熱と湿った水音が響き始める。

「……入ってきてる……悠真のが……全部……」
「彩花……すごく、熱い……」

根元まで受け入れた瞬間、彩花は全身を小さく震わせ、悠真の肩に額を預けた。
「んっ……はぁ……やっと……一つになれた……」
「俺も……彩花とこうしてると……本当に繋がったって思える」

二人はそのまま動かず、しばらく密着したまま互いの鼓動を確かめ合う。
個室の外に誰かが来るかもしれないという緊張感が、さらに背徳的な熱をあおった。

「……声、抑えなきゃね」
「でも……無理かもしれない……悠真がこんなに深いから……」

彼女の声は震えていたが、甘い悦びに満ちていた。

彩花が深く悠真を受け入れ、二人が重なり合った瞬間、狭い個室は甘美な熱で満たされていた。
悠真は彼女の腰をしっかりと抱き、下から突き上げるようにゆっくりと動き始める。

「んっ……はぁ……悠真……奥まで……届いてる……」
耳元に囁かれる甘い声が胸を震わせる。
悠真は彼女の背中を撫で、さらに強く抱き寄せながら腰を押し上げた。

ぬめるような音が静かな空間に漏れる。
その瞬間――

ガチャリ、と個室の外でドアが開く音がした。
二人は同時に息を呑む。

「……おい、さっきの試合どうだった?」
「いやー、延長戦までもつれてさ……」

二人組の男たちの会話が、わずか隔てた壁の向こうで響く。
彩花の肩がびくりと震え、唇を悠真の胸に押し当てて声を必死に殺す。

「っ……悠真……声……出ちゃう……」
「大丈夫……俺が塞いでやる」

悠真は彼女を抱きしめ、動きを緩めるどころか、むしろわざと深く突き上げた。
「んんっ……っ……あぁ……!」
抑えきれない声が洩れそうになるのを、彩花は必死に彼の肩に噛みつくように堪える。

外では水道の音と笑い声が続いている。
すぐ隣に人がいる状況で、二人の身体は密着し、互いの体液が混じり合って音を立てる。
その背徳感が、彩花の奥をさらに締めつけていく。

「彩花……すごく、きつくなってる……」
「だって……こんな状況で……悠真に突かれたら……もう……っ」

悠真は彼女の腰を強く抱え、リズムを乱さずに突き上げる。
膣奥にぶつかるたびに、彩花の瞳は潤み、全身が震える。

「……んっ……やぁ……声……抑えなきゃ……でも……気持ちよすぎるの……」
「我慢して……でも感じて……俺の中で乱れてる彩花を、全部見せて」

会話の余韻が外から遠ざかり、やがてトイレの扉が閉まった。
二人だけの世界が戻ってきた瞬間、彩花は堪えていた声を小さく漏らす。

「んぁっ……悠真……もう……だめ……っ……!」
「俺も……彩花……もっと強く……」

ピストンの速度が増し、個室の壁に二人の体が打ち付けられるたび、鈍い衝撃音が響く。
緊張と解放が入り混じる背徳感の中、二人の熱はさらに高まっていった。

外の足音が遠ざかり、個室の中に再び二人だけの熱が満ちた。
安堵と興奮が入り混じったその瞬間、悠真は彩花の腰を抱え直し、深く深く突き上げる。

「んっ……あぁ……悠真……っ、もっと……」
甘く震える声が、抑えきれずに漏れた。
彼女は必死に声を抑えようと悠真の首に顔を埋めるが、下腹部から込み上げてくる波に全身が支配されてしまう。

悠真もまた、彼女の奥の締まりと熱に耐えきれず、息を荒く吐きながら低く唸る。
「彩花……もう限界だ……一緒に……っ」
「うん……一緒に……イきたい……」

彼は腰をさらに速く突き上げ、彩花の奥を叩きつけるように攻め立てる。
水音が響き、二人の体温が絡み合い、境目がわからなくなる。

「やぁっ……だめ……悠真……もう……イク……っ……!」
「俺も……彩花……っ……!」

最後のひと突きで、二人の身体はぴたりと重なり、同時に頂点へと弾け飛んだ。

「――っイク……っ!」
「彩花ぁ……っ!」

小さな個室に、抑えきれない二人の声と震える吐息が溢れる。
彩花の身体は悠真の腕の中で痙攣し、甘く蕩けた声をこぼす。
悠真も彼女の奥で熱を解き放ちながら、彼女を強く抱き締め続けた。

やがて波が引いたあと、二人は互いの額を重ね、肩で荒い息を整える。
「……彩花……最高だった……」
「ん……私も……悠真と一緒に……イけて……嬉しい……」

外の世界から切り離されたような静寂の中、二人の心臓の鼓動だけが重なって響いていた。
彩花は微笑み、悠真の頬にそっとキスを落とす。
「……やっぱり悠真と一緒だと、幸せすぎて怖いくらい……」
「俺もだ……彩花……これからも、ずっと一緒に……」

狭い個室で交わされたその誓いは、夜の静けさに溶け込み、二人の余韻をさらに深く甘く包み込んでいった。

互いの熱が収まりきらぬまま、二人はしばらく抱き合い、荒い息を重ねていた。
彩花は悠真の胸に頬を寄せ、鼓動を確かめるように耳を当てる。
「……すごく早いね、悠真の心臓……私と一緒だ」
「彩花のせいだよ……あんなに感じてくれたから」

二人は照れ笑いを交わしながら、まだ震えが残る身体を互いに撫で合う。
汗ばんだ髪を整えてやりながら、悠真は彼女の額に柔らかな口づけを落とした。

「大丈夫? 足、痺れてない?」
「ん……ちょっと震えてるけど、悠真が支えてくれてるから平気」
彼女は微笑んで、悠真の首に腕を回す。

しばしの沈黙。個室の外は静まり返り、まるで世界に二人だけが取り残されたかのようだった。
彩花は小さな声で囁く。
「……さっき、外に人がいたのに……止められなかったね」
「背徳感ってやつかな……でも俺は、彩花と一つになれるなら、どんな場所でも構わない」
その真っ直ぐな言葉に、彩花は頬を赤らめ、彼の胸に顔を埋める。

やがて二人は少しずつ体を離し、身なりを整え始めた。
彩花はスカートを直し、髪を軽くまとめ直す。悠真はシャツの襟を整えながら、彼女の表情を盗み見る。
「……ね、乱れてない?」
「いや、むしろ……すごく綺麗。さっきよりも艶っぽいくらい」
「もう……からかわないで」

小さな笑い声が、まだ甘い余韻の残る空間に響く。

最後に二人はもう一度、密やかに唇を重ね合った。
「彩花……ありがとう。大事にする」
「私こそ……悠真がいてくれるから、こんなに幸せなんだよ」

手を取り合い、扉をそっと開ける。
夜の静けさと冷たい空気が頬を撫で、先ほどまでの熱との対比がより鮮明に二人の心に残った。

彩花と悠真は互いに微笑み合いながら、寄り添うように歩き出す。
その背中には、さっきまでの背徳と熱を分かち合った二人だけの秘密が、深く甘く刻まれていた。
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