人食い熊、襲来!

Mr.ビギニング

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被害者発見 その3

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一歩踏み出すたびに、膝まですっぽりと雪に沈んでしまう。
運動不足のせいで、すでに膝が悲鳴を上げている。
まだ20代なのにもう膝が限界とか、ダサ。がんばれ俺。
真っ白な雪のキャンバスに血の跡は赤黒いシミを伸ばし、木々の間を縫って
さらに森の奥に入って行っていた。
血の跡と一緒に、雪や木の幹に引っ掻いたような人の手形が残っている。
どうやら被害者は、まだ生きていたらしい。
引きずられながらも、雪や木の幹をつかんで逃れようとしていたのだろうか。
ふいに、数時間前に行われていたかもしれない地獄絵図が浮かんでしまう。

流血しながら、巨大なクマに森の奥へ引きずられていく被害者。
残った気力を振り絞って必死に逃れようとするも、クマは被害者を咥えて
離さない。
ずるずると闇の奥に引きずられていく。
「誰か、助けてええええ!」
だが、悲鳴は誰にも届かない・・・・・・

自分で想像しておきながら、自分でゾッとしてしまう。
「あ、ニイさんあそこ!」
と下塚が前方を指さした。血の跡はそこで途切れていた。
周囲に目をやるが、木が乱立しているだけでクマの姿は無い。
慎重に近づくと、雪が掘り返された跡があった。
しゃがみこんで雪をどけると、そこに埋められていたのは、
「肉」だった。肉塊。これが人だったといわれても信じられない。
精肉店に並んでいる牛肉や豚肉と変わらない、「肉」だった。
その肉塊の隙間から、ピンポン玉くらいの白い球体が覗いていた。
俺はなんの抵抗もなく、その球体をつまみあげてみた。
それは人間の眼球だった。
「オエエエエエエ!」
下塚が背後で吐いた。俺も吐き気が込み上げ、たまらず眼球を手離した。
これは人間だ。人間の成れの果てだ。この「肉」は「人」だったのだ。
「オエエエエエエ!」
俺もたまらず木の根元に吐いた。



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