23 / 26
決戦 その1
しおりを挟む
俺たちは山の中にある猟師小屋に向かい、そこにクマを
おびき寄せることにした。
小屋には数日そこで暮らせるだけの食料と、外には灯油のポリタンクも
置かれていた。
猟師小屋の窓から見える位置に囮の生肉を置いて監視し、クマが現れたら
一斉に撃つ。
シンプルイズベストだ。
一時間ごとに囮の生肉の見張りを交代しながら、俺たちは猟師小屋で夜を迎えた。
小屋の中央にアウトドア用のランプを置き、下塚は水平二連を、
剛田さんは愛用の三八式を抱えてひたすらクマを待つ。
深夜二時。俺が窓から生肉を見張っていると、
「田島のニイさん」と下塚が小声で声をかけてきた。
「なんだよ」
下塚のほうを振り返ると、下塚は不安そうにこっちを見ていた。
「田島のニイさん、怖くないの?」
「怖いぜ。そりゃあ。でもな、俺は札幌で熊より恐ろしい体験をしたんだ」
「へえ、どんな?」
美香のことを言いかけようとして、やめた。
「なんでもない」と言いながら窓の外に視線を移すと、
無い。
下塚と話していた数分の間に、囮の生肉が奪われている。
「剛田さん、下塚。肉が無くなってる。奴かも」と小声でささやくと、
2人は頷き、無言で銃に弾を込め始めた。
俺も腰のホルスターから拳銃を抜き、弾丸が装てんされているか確認する。
いよいよだ。
五発の実弾がシリンダーに装填されているのを確認し、視線をあげると、
なぜか窓の外の景色が見えなくなっていた。
窓から漏れる明かりで外の景色がみえていたはずだが、
窓に墨汁を塗りたくったように真っ暗で、外が全然見えない。
そのとき突然、バリーン!と窓が割られ、外から毛むくじゃらの腕が伸びてきた。
窓際にいた俺は間一髪のところで身をかわした。
「来たぞ! 奴だ」
あの人食い熊が窓の前に立っていたから、外が見えなかったんだ。
クマは両手と顔を窓から室内に突っ込み、
「グヲオオオオオオ!」と吠えた。ランプの明かりでその恐ろしい顔が
はっきりと浮かび上がった。
おびき寄せることにした。
小屋には数日そこで暮らせるだけの食料と、外には灯油のポリタンクも
置かれていた。
猟師小屋の窓から見える位置に囮の生肉を置いて監視し、クマが現れたら
一斉に撃つ。
シンプルイズベストだ。
一時間ごとに囮の生肉の見張りを交代しながら、俺たちは猟師小屋で夜を迎えた。
小屋の中央にアウトドア用のランプを置き、下塚は水平二連を、
剛田さんは愛用の三八式を抱えてひたすらクマを待つ。
深夜二時。俺が窓から生肉を見張っていると、
「田島のニイさん」と下塚が小声で声をかけてきた。
「なんだよ」
下塚のほうを振り返ると、下塚は不安そうにこっちを見ていた。
「田島のニイさん、怖くないの?」
「怖いぜ。そりゃあ。でもな、俺は札幌で熊より恐ろしい体験をしたんだ」
「へえ、どんな?」
美香のことを言いかけようとして、やめた。
「なんでもない」と言いながら窓の外に視線を移すと、
無い。
下塚と話していた数分の間に、囮の生肉が奪われている。
「剛田さん、下塚。肉が無くなってる。奴かも」と小声でささやくと、
2人は頷き、無言で銃に弾を込め始めた。
俺も腰のホルスターから拳銃を抜き、弾丸が装てんされているか確認する。
いよいよだ。
五発の実弾がシリンダーに装填されているのを確認し、視線をあげると、
なぜか窓の外の景色が見えなくなっていた。
窓から漏れる明かりで外の景色がみえていたはずだが、
窓に墨汁を塗りたくったように真っ暗で、外が全然見えない。
そのとき突然、バリーン!と窓が割られ、外から毛むくじゃらの腕が伸びてきた。
窓際にいた俺は間一髪のところで身をかわした。
「来たぞ! 奴だ」
あの人食い熊が窓の前に立っていたから、外が見えなかったんだ。
クマは両手と顔を窓から室内に突っ込み、
「グヲオオオオオオ!」と吠えた。ランプの明かりでその恐ろしい顔が
はっきりと浮かび上がった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
視える僕らのシェアハウス
橘しづき
ホラー
安藤花音は、ごく普通のOLだった。だが25歳の誕生日を境に、急におかしなものが見え始める。
電車に飛び込んでバラバラになる男性、やせ細った子供の姿、どれもこの世のものではない者たち。家の中にまで入ってくるそれらに、花音は仕事にも行けず追い詰められていた。
ある日、駅のホームで電車を待っていると、霊に引き込まれそうになってしまう。そこを、見知らぬ男性が間一髪で救ってくれる。彼は花音の話を聞いて名刺を一枚手渡す。
『月乃庭 管理人 竜崎奏多』
不思議なルームシェアが、始まる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる