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「いいですか、皆様。結婚式とは、単なる愛の誓いの場ではありません」
公爵邸の大会議室。
私は集められた使用人、プランナー、そして呆れ顔のジェラルドの前で、指揮棒(指示棒)を振るった。
ホワイトボードには、巨大な文字でこう書かれている。
『目標:挙式費用ゼロ、純利益金貨一万枚』
「これは『ビジネス』です。それも、王族や大貴族を一堂に集められる、千載一遇の集金イベントなのです!」
バンッ!
とボードを叩く。
「通常、結婚式は赤字になります。衣装代、食事代、会場装飾……湯水のようにお金が消えます。ですが、それは『消費』と捉えるからです。これを『投資』と『回収』の場に変える。それが今回のミッションです!」
「……キャンディ」
最前列で腕組みをしていたジェラルドが、重い口を開いた。
「君の熱意は分かった。だが、純利益一万枚というのはどういう計算だ? ご祝儀を含めても、そこまではいかないだろう」
「甘いです、ジェラルド様。ご祝儀だけに頼るビジネスモデルは崩壊しました」
私はニヤリと笑い、次のフリップをめくった。
『改革案1:ネーミングライツ(命名権)の導入』
「ネーミング……?」
「はい。結婚式の各スポットに、企業の名前を冠します。例えば……」
私は図面を指した。
「『株式会社アイゼン・商会・プレゼンツ・誓いのキス』」
「『シビレ苺ジャム協賛・ケーキ入刀』」
「『○○建設提供・バージンロード』」
シーン……。
会議室が静まり返る。
「……待て。誓いのキスに企業名がつくのか?」
「つきます。神父様が『では、株式会社アイゼン・商会の提供により、誓いの口づけを』とアナウンスします。これで広告収入、金貨五百枚です」
「却下だ!!」
ジェラルドが叫んだ。
「神聖な誓いが台無しだ! バージンロードもだ! 俺たちは広告の上を歩くのか!?」
「絨毯にロゴをプリントするだけですよ? 歩けば踏むので、ある意味『踏み絵』的な背徳感も味わえます」
「味わいたくない! 却下! 全部却下だ!」
「ちぇっ。……では、次の案です」
私はめげずに次のフリップを出した。
『改革案2:新郎新婦・歩く広告塔計画』
「会場の装飾がダメなら、私たち自身が広告になればいいのです」
私はマダム・セシルに発注予定のデザイン画を見せた。
「私のウェディングドレスの、この長いトレーン(裾)。ここ、無駄に広いですよね?」
「……優雅さの象徴だが」
「ここを『広告スペース』として切り売りします。一口金貨十枚で、領内の商店のロゴを刺繍します。『肉屋のトム』とか『パン屋のミミ』とか」
「俺の妻のドレスが、商店街の幟(のぼり)みたいになるのか!?」
「地域密着型で好感度が上がりますよ? さらに、ジェラルド様のタキシードの背中にも、『広告募集中』のゼッケンを……」
「絶対に着ないぞ! 俺はF1カーじゃない!」
ジェラルドが頭を抱えて机に突っ伏した。
「頼む……普通にしてくれ……普通の、幸せな結婚式でいいんだ……金なら俺が出すと言っているだろう……」
「ジェラルド様。出すのは簡単ですが、稼ぐのは知恵が必要です。私はあなたの財布を守りたいのです」
「守らなくていいから、俺のメンタルと世間体を守ってくれ!」
◇
結局、広告計画は「引出物のクッキーに小さくロゴを入れる」程度に縮小された。
しかし、私は諦めない。
コストカットと収益化の道は、まだ残されている。
数日後。
衣装合わせの日。
「キャンディ様! お待ちしておりましたわ!」
デザイナーのマダム・セシルが、目を輝かせて迎えてくれた。
前回の「ポケット付き夜会ドレス」での成功以来、彼女は私の熱狂的な信奉者(兼ビジネスパートナー)になっていた。
「今回のウェディングドレスも、最高傑作をご用意しました! テーマは『可変と多機能』です!」
カーテンが開く。
そこに現れたのは、純白のドレス……一見すると、王道のプリンセスラインだ。
「素敵……! でもマダム、機能性は?」
「ふふふ。ご覧ください」
マダムがドレスの腰部分にあるフックを外した。
バサッ。
ふんわりとしたスカート部分が取り外され、動きやすいマーメイドラインに早変わりした。
「なんと! お色直し不要の2WAY仕様!」
「さらに! このボレロを羽織れば、露出を抑えた清楚な教会式スタイルに! 脱げば夜のパーティースタイルに!」
「素晴らしい! 一着で三粒美味しい! これでお色直し用のドレス代(金貨五十枚)が浮きます!」
私はマダムの手を取り、熱く握手した。
「さらに、例の『アレ』も実装済みですわ」
マダムがウインクする。
「アレですね?」
私はスカートのドレープに手を差し込んだ。
あった。
隠しポケットだ。しかも今回は容量が倍増している。
「ブーケトス用の予備ブーケ、祝電の束、そして非常食の乾パンまで収納可能です!」
「完璧ですマダム! これぞ『戦う花嫁』の戦闘服!」
試着室の外で待っていたジェラルドが、着替え終わった私を見て、ほう、と息を漏らした。
「……綺麗だ、キャンディ」
彼は素直に賞賛してくれた。
中身がハイテク・節約仕様だとは気づいていないようだ。
「ありがとうございます。このドレス、実はレンタルではなく買い取りにしました」
「気に入ったのか? それならよかった」
「はい。式が終わったら、リメイクしてカーテンにします。シルクの最高級カーテンが手に入ります」
「……思い出のドレスをカーテンにする花嫁は、歴史上君だけだろうな」
ジェラルドは苦笑したが、止めることはしなかった。
彼も学習している。「実利を兼ねた再利用」なら、私の機嫌が良いことを知っているからだ。
◇
そして、招待状の発送作業。
「アンナ、切手代をケチるわよ。領内の招待客には、『シビレ苺ジャム』の配送便に相乗りさせて届けるの」
「はいはい。便乗配送ですね」
「それと、返信ハガキに『ご祝儀の予定額』を記入する欄を作って」
「それは失礼すぎます! 却下です!」
アンナに取り上げられた。
仕方なく、私は別の作戦に出た。
「では、座席表の工夫ね。高額納税者(ご祝儀を弾んでくれそうな大貴族)を上座に。食い意地の張った貧乏貴族(ロナルド殿下など)は、ビュッフェから一番遠い末席に配置して」
「ロナルド殿下、来るんですか?」
「招待状は送ったわ。会費制(金貨十枚)でね。来ないと思うけど、もし来たら入場料だけ取って追い返すわ」
準備は着々と(?)進んでいった。
料理のランク(松竹梅)、引き出物の選定(原価率計算)、演出のプランニング。
私は毎日、電卓を片手に屋敷中を走り回っていた。
ジェラルドも、最初は呆れていたが、最近では面白がって協力してくれるようになった。
「キャンディ。キャンドルサービスの代わりに、俺が剣でシャンパンボトルの首を飛ばす『サベラージュ』をやるのはどうだ? キャンドル代が浮くし、盛り上がるぞ」
「採用です! シャンパンは領内産のスパークリングワイン(安価)を使いましょう!」
「余興の楽団だが、俺がピアノを弾こうか? プロを雇うより安上がりだ」
「ジェラルド様がピアノを!? それは……いいえ、それは別料金を取りましょう! 『新郎による愛の演奏会』、チケット追加販売です!」
「……結局、金を取るのか」
二人の息はピッタリだ。
公爵邸は、まるで文化祭前夜のような熱気に包まれていた。
そして、式の前夜。
「……いよいよ明日ですね」
執務室で最終チェックを終えた私は、窓の外を見上げた。
「ああ。長いようで短かったな」
ジェラルドが私の肩を抱く。
「明日の天気は晴れだ。絶好の結婚式日和……そして、集金日和だな」
「ふふっ。分かっていらっしゃる」
私は彼を見上げ、悪戯っぽく笑った。
「覚悟してくださいね、ジェラルド様。明日は、私が世界で一番『稼ぐ』花嫁になってみせますから」
「お手柔らかに頼むよ。……世界で一番『美しい』花嫁さん」
彼は優しくキスを落とした。
明日は決戦の日。
私の人生最大のプロジェクト、「アイゼンハルト公爵家結婚披露宴(兼・大規模収益事業)」が幕を開ける。
(目標、利益一万枚! 一歩も引かないわよ!)
私はドレスのポケットに忍ばせる電卓を磨きながら、静かに闘志を燃やすのだった。
公爵邸の大会議室。
私は集められた使用人、プランナー、そして呆れ顔のジェラルドの前で、指揮棒(指示棒)を振るった。
ホワイトボードには、巨大な文字でこう書かれている。
『目標:挙式費用ゼロ、純利益金貨一万枚』
「これは『ビジネス』です。それも、王族や大貴族を一堂に集められる、千載一遇の集金イベントなのです!」
バンッ!
とボードを叩く。
「通常、結婚式は赤字になります。衣装代、食事代、会場装飾……湯水のようにお金が消えます。ですが、それは『消費』と捉えるからです。これを『投資』と『回収』の場に変える。それが今回のミッションです!」
「……キャンディ」
最前列で腕組みをしていたジェラルドが、重い口を開いた。
「君の熱意は分かった。だが、純利益一万枚というのはどういう計算だ? ご祝儀を含めても、そこまではいかないだろう」
「甘いです、ジェラルド様。ご祝儀だけに頼るビジネスモデルは崩壊しました」
私はニヤリと笑い、次のフリップをめくった。
『改革案1:ネーミングライツ(命名権)の導入』
「ネーミング……?」
「はい。結婚式の各スポットに、企業の名前を冠します。例えば……」
私は図面を指した。
「『株式会社アイゼン・商会・プレゼンツ・誓いのキス』」
「『シビレ苺ジャム協賛・ケーキ入刀』」
「『○○建設提供・バージンロード』」
シーン……。
会議室が静まり返る。
「……待て。誓いのキスに企業名がつくのか?」
「つきます。神父様が『では、株式会社アイゼン・商会の提供により、誓いの口づけを』とアナウンスします。これで広告収入、金貨五百枚です」
「却下だ!!」
ジェラルドが叫んだ。
「神聖な誓いが台無しだ! バージンロードもだ! 俺たちは広告の上を歩くのか!?」
「絨毯にロゴをプリントするだけですよ? 歩けば踏むので、ある意味『踏み絵』的な背徳感も味わえます」
「味わいたくない! 却下! 全部却下だ!」
「ちぇっ。……では、次の案です」
私はめげずに次のフリップを出した。
『改革案2:新郎新婦・歩く広告塔計画』
「会場の装飾がダメなら、私たち自身が広告になればいいのです」
私はマダム・セシルに発注予定のデザイン画を見せた。
「私のウェディングドレスの、この長いトレーン(裾)。ここ、無駄に広いですよね?」
「……優雅さの象徴だが」
「ここを『広告スペース』として切り売りします。一口金貨十枚で、領内の商店のロゴを刺繍します。『肉屋のトム』とか『パン屋のミミ』とか」
「俺の妻のドレスが、商店街の幟(のぼり)みたいになるのか!?」
「地域密着型で好感度が上がりますよ? さらに、ジェラルド様のタキシードの背中にも、『広告募集中』のゼッケンを……」
「絶対に着ないぞ! 俺はF1カーじゃない!」
ジェラルドが頭を抱えて机に突っ伏した。
「頼む……普通にしてくれ……普通の、幸せな結婚式でいいんだ……金なら俺が出すと言っているだろう……」
「ジェラルド様。出すのは簡単ですが、稼ぐのは知恵が必要です。私はあなたの財布を守りたいのです」
「守らなくていいから、俺のメンタルと世間体を守ってくれ!」
◇
結局、広告計画は「引出物のクッキーに小さくロゴを入れる」程度に縮小された。
しかし、私は諦めない。
コストカットと収益化の道は、まだ残されている。
数日後。
衣装合わせの日。
「キャンディ様! お待ちしておりましたわ!」
デザイナーのマダム・セシルが、目を輝かせて迎えてくれた。
前回の「ポケット付き夜会ドレス」での成功以来、彼女は私の熱狂的な信奉者(兼ビジネスパートナー)になっていた。
「今回のウェディングドレスも、最高傑作をご用意しました! テーマは『可変と多機能』です!」
カーテンが開く。
そこに現れたのは、純白のドレス……一見すると、王道のプリンセスラインだ。
「素敵……! でもマダム、機能性は?」
「ふふふ。ご覧ください」
マダムがドレスの腰部分にあるフックを外した。
バサッ。
ふんわりとしたスカート部分が取り外され、動きやすいマーメイドラインに早変わりした。
「なんと! お色直し不要の2WAY仕様!」
「さらに! このボレロを羽織れば、露出を抑えた清楚な教会式スタイルに! 脱げば夜のパーティースタイルに!」
「素晴らしい! 一着で三粒美味しい! これでお色直し用のドレス代(金貨五十枚)が浮きます!」
私はマダムの手を取り、熱く握手した。
「さらに、例の『アレ』も実装済みですわ」
マダムがウインクする。
「アレですね?」
私はスカートのドレープに手を差し込んだ。
あった。
隠しポケットだ。しかも今回は容量が倍増している。
「ブーケトス用の予備ブーケ、祝電の束、そして非常食の乾パンまで収納可能です!」
「完璧ですマダム! これぞ『戦う花嫁』の戦闘服!」
試着室の外で待っていたジェラルドが、着替え終わった私を見て、ほう、と息を漏らした。
「……綺麗だ、キャンディ」
彼は素直に賞賛してくれた。
中身がハイテク・節約仕様だとは気づいていないようだ。
「ありがとうございます。このドレス、実はレンタルではなく買い取りにしました」
「気に入ったのか? それならよかった」
「はい。式が終わったら、リメイクしてカーテンにします。シルクの最高級カーテンが手に入ります」
「……思い出のドレスをカーテンにする花嫁は、歴史上君だけだろうな」
ジェラルドは苦笑したが、止めることはしなかった。
彼も学習している。「実利を兼ねた再利用」なら、私の機嫌が良いことを知っているからだ。
◇
そして、招待状の発送作業。
「アンナ、切手代をケチるわよ。領内の招待客には、『シビレ苺ジャム』の配送便に相乗りさせて届けるの」
「はいはい。便乗配送ですね」
「それと、返信ハガキに『ご祝儀の予定額』を記入する欄を作って」
「それは失礼すぎます! 却下です!」
アンナに取り上げられた。
仕方なく、私は別の作戦に出た。
「では、座席表の工夫ね。高額納税者(ご祝儀を弾んでくれそうな大貴族)を上座に。食い意地の張った貧乏貴族(ロナルド殿下など)は、ビュッフェから一番遠い末席に配置して」
「ロナルド殿下、来るんですか?」
「招待状は送ったわ。会費制(金貨十枚)でね。来ないと思うけど、もし来たら入場料だけ取って追い返すわ」
準備は着々と(?)進んでいった。
料理のランク(松竹梅)、引き出物の選定(原価率計算)、演出のプランニング。
私は毎日、電卓を片手に屋敷中を走り回っていた。
ジェラルドも、最初は呆れていたが、最近では面白がって協力してくれるようになった。
「キャンディ。キャンドルサービスの代わりに、俺が剣でシャンパンボトルの首を飛ばす『サベラージュ』をやるのはどうだ? キャンドル代が浮くし、盛り上がるぞ」
「採用です! シャンパンは領内産のスパークリングワイン(安価)を使いましょう!」
「余興の楽団だが、俺がピアノを弾こうか? プロを雇うより安上がりだ」
「ジェラルド様がピアノを!? それは……いいえ、それは別料金を取りましょう! 『新郎による愛の演奏会』、チケット追加販売です!」
「……結局、金を取るのか」
二人の息はピッタリだ。
公爵邸は、まるで文化祭前夜のような熱気に包まれていた。
そして、式の前夜。
「……いよいよ明日ですね」
執務室で最終チェックを終えた私は、窓の外を見上げた。
「ああ。長いようで短かったな」
ジェラルドが私の肩を抱く。
「明日の天気は晴れだ。絶好の結婚式日和……そして、集金日和だな」
「ふふっ。分かっていらっしゃる」
私は彼を見上げ、悪戯っぽく笑った。
「覚悟してくださいね、ジェラルド様。明日は、私が世界で一番『稼ぐ』花嫁になってみせますから」
「お手柔らかに頼むよ。……世界で一番『美しい』花嫁さん」
彼は優しくキスを落とした。
明日は決戦の日。
私の人生最大のプロジェクト、「アイゼンハルト公爵家結婚披露宴(兼・大規模収益事業)」が幕を開ける。
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