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「……失礼します。ヴォルグ辺境伯閣下。商工ギルドのトマスと申します」
屋敷の応接室に通されたのは、丸々とした体型の初老の男だった。
彼は鼻にハンカチを押し当て、怯えたような、それでいて好奇心に満ちた目で室内を見回している。
「本日は、その……街の住民から『領主の館から異界の匂いがする』との通報がありまして。もしや魔薬の実験でも失敗されたのかと……」
「人聞きが悪いぞ、トマス」
ギルバートはソファに深々と腰掛け、不機嫌そうに腕を組んだ。
「これは料理の匂いだ。魔薬実験ではない」
「り、料理……? これがですか?」
トマスは信じられないといった顔で鼻をひくつかせた。
確かに、スパイスと獣脂が混じり合った濃厚な香りは、質素な食事が基本の辺境では未知の体験だろう。
「ええ、お料理ですわ! ちょうどよかった、トマスさんにも召し上がっていただきましょう!」
タイミングよく(悪く)、ワゴンを押してメリアナが入室してきた。
ワゴンには湯気を立てるスープ皿と、こんがり焼けたパンが乗っている。
「こちら、新作の『スノーラビットのクリームシチュー ~香草と焦がしバターのハーモニー~』です。どうぞ!」
「は、はあ……」
トマスは困惑しながらも、領主の手前、断るわけにもいかない。
彼はスプーンを手に取り、恐る恐る白いスープを口に運んだ。
「……む?」
トマスの目が丸くなった。
「……むむむッ!?」
次の瞬間、彼のスプーンの動きが加速した。
「な、なんだこれは! 濃厚なのにくどくない! ミルクの甘みと、ピリッとした辛みが絶妙に絡み合っている!」
「ふふん、隠し味に『ファイア・ペッパー』を少々入れていますからね」
「なんと! あの激辛で有名なペッパーを!? これほどまろやかに使いこなすとは……!」
トマスはあっという間に完食し、皿についたソースまでパンで拭って食べた。
そして、恍惚の表情でため息をつく。
「……いやはや、驚きました。王都の高級店でも、これほどの味には出会えませんぞ。一体どこの名シェフを雇われたのですか?」
「私です」
メリアナがエプロンの裾をつまんで一礼した。
「改めまして。メリアナ・ベルトルと申します。以後、お見知り置きを」
「ベ、ベルトル……? まさか、昨日王都から来られたという、あの噂の……?」
トマスはギョッとして後ずさった。
商人のネットワークは早い。「毒殺未遂の悪役令嬢が追放されてきた」という噂は、すでに街にも届いていたのだ。
「ええ、その悪役令嬢です。趣味は料理、特技は美味しいものの発掘です」
メリアナはニッコリと笑った。その笑顔に裏表がない(食欲しかない)ことを察したのか、トマスの警戒心が少しだけ解ける。
「それで、トマスさん。今日は商談も兼ねてお話ししたいことがありまして」
「商談、ですか?」
商人の顔に戻り、トマスが身を乗り出した。
「ええ。この辺境は素晴らしい食材の宝庫ですが、決定的に足りないものがあります。それは『調味料』です」
メリアナは真剣な眼差しで訴えた。
「塩、小麦粉、バター、そして各種スパイス……。これらが不足していては、せっかくの魔物肉もポテンシャルを発揮できません。そこで、貴方の商会から定期的に仕入れたいのです」
「なるほど……。しかし、メリアナ様」
トマスは申し訳なさそうに頭をかいた。
「ご存知の通り、ここは北の果て。輸送コストがかかるため、調味料はどうしても高価になります。特にスパイス類は、南からの輸入品ですから、金の粒と同じくらいの値段でして……」
辺境伯領の財政が豊かではないことを、彼は知っているのだ。
ギルバートが眉をひそめた。
「……予算なら私がなんとかする。騎士たちの士気に関わる問題だ」
「いえ、閣下。無理な出費はいけません」
メリアナはピシャリと言った。
「お金がないなら、作ればいいんです。もしくは、現地調達すればいいんです」
「は? 現地調達? スパイスをか?」
トマスが首を傾げる。
「はい。トマスさん、ちょっと失礼して……」
メリアナは突然、トマスの足元にかがみ込んだ。
「ちょ、メリアナ様!?」
彼女はトマスのブーツの底にへばりついていた泥と、そこに混じっていた緑色の草を指差した。
「これ。来る途中で踏んできましたわね?」
「ええ、まあ。街道沿いに生えている雑草ですが……車輪に絡まって厄介なんですよ。臭いもキツイですし」
「臭い? いいえ、これは『香り』です」
メリアナはその雑草をむしり取り、ハンカチで泥を拭うと、鼻に近づけて深呼吸した。
「ああ……素晴らしい。これは『シルバー・タイム』の変種、『フロスト・タイム』ですわ!」
「フロスト……タイム? ただの『猫いらず草』ではなく?」
「猫いらず草なんて酷い名前! 猫が避けるのは香りが強いからよ。これ、乾燥させて粉末にすれば、肉の臭み消しに最強の効果を発揮する高級ハーブになりますのよ!」
「はあ!?」
トマスが素っ頓狂な声を上げた。
「こ、これが? そこら中に生えていて、農家が駆除に困っているこの草が?」
「ええ。王都の市場なら、小瓶一つで銀貨五枚はしますわね」
「ぎ、銀貨五枚!!?」
トマスの目が「$マーク」になった(ように見えた)。
そこら辺の雑草が、いきなり札束に見え始めたのだ。
「さらに、あそこの窓の外に見える赤い実をつけた低木。あれは『北国サンショウ』です。ピリリとした辛みは、煮込み料理のアクセントに最適。それから、川沿いに生えている葦(あし)のような植物、あれの根っこは甘味が強くて砂糖の代わりになります」
メリアナは窓の外を指差しながら、次々と「宝の地図」を読み上げていく。
「信じられない……。我々は今まで、宝の山をゴミだと思って踏みつけていたのか……」
トマスは震える手で、ブーツについた『フロスト・タイム』を握りしめた。
「トマスさん。取引をしましょう」
メリアナは商人の顔つきで微笑んだ。
「私が、この辺境に自生する『使える植物』のリストと、その加工方法(レシピ)をお教えします。その代わり……」
「その代わり?」
「塩や小麦粉などの基礎調味料を、卸値で……いいえ、原価ギリギリで提供してくださいな。それと、私が指定した調理器具の取り寄せもお願いしたいです」
トマスは頭の中で高速そろばんを弾いた。
この令嬢の知識があれば、捨てていた雑草が商品になる。王都へ輸出すれば莫大な利益が出る。
それに比べて、塩や小麦粉の割引など安いものだ。
「……乗りました!!」
トマスはガバッと立ち上がり、メリアナの手を握った。
「いやあ、素晴らしい! 貴女様は料理の天才であるだけでなく、商売の天才でもあらせられる!」
「あら、私はただ、美味しいご飯を安く作りたいだけですわ」
「ハハハ! ご謙遜を! いやはや、ヴォルグ辺境伯領の未来は明るい!」
二人はガッチリと握手を交わした。
その様子を眺めていたギルバートは、呆気にとられていた。
(……私が長年頭を悩ませていた特産品不足と財政難が、雑草一つで解決しただと?)
彼は知らなかったのだ。
「好きこそ物の上手なれ」という言葉が、時として国家予算レベルの力を発揮することを。
「あ、そうだわトマスさん」
メリアナが思い出したように言った。
「ついでに、街の市場で売れ残ったクズ野菜や、解体で捨ててしまう内臓類があったら、それも持ってきてください。安く買い取りますから」
「へ? そんなゴミをどうするんです?」
「ふふふ。ゴミなんてありません。全ては『出汁(だし)』になるのです」
メリアナの背後に、後光ならぬ「食欲のオーラ」が見えた気がして、トマスは再び背筋を伸ばした。
「承知いたしました! 明日から毎日、新鮮な食材と調味料をお届けします!」
「ええ、楽しみにしていますわ!」
商談は成立した。
トマスが帰った後、ギルバートはメリアナに向き直った。
「……礼を言う、メリアナ。君のおかげで、領の経済も潤いそうだ」
「お礼なんていりませんわ。それより閣下、明日の夕食のリクエストはありますか?」
メリアナはレシピノートを広げた。
「トマスさんが早速、塩とワインを置いていってくれましたから、何か凝ったものが作れますよ」
「……そうだな」
ギルバートは少し考え、そして珍しく微かに笑った。
「君が最初に作った、あの角煮が食べたい。……あれは、その、悪くなかった」
それは、不器用な彼なりの「大好物だ」という告白だった。
「ふふ、分かりました! では、明日は『特製角煮・改』ですね! ハーブを効かせて、さらに美味しく仕上げます!」
メリアナは嬉しそうに厨房へと走っていった。
ギルバートはその後ろ姿を見送りながら、自分の胸の奥が温かくなるのを感じていた。
それはきっと、美味しい食事への期待だけではない……かもしれない。
一方、屋敷の外では。
騎士たちが「雑草刈り」という名の「ハーブ収穫任務」に勤しんでいた。
「おい! これはフロスト・タイムか!?」
「違う、ただの枯れ草だ!」
「メリアナ様が言ってた『北国サンショウ』を見つけたぞ! これで飯が美味くなる!」
「うおおおお! 草をむしれ! 全ては夕飯のために!」
精強な騎士団が、目を血走らせて草むしりをする光景。
それは平和なのか狂気なのか、誰にもわからなかった。
ただ一つ確かなのは、ヴォルグ辺境伯領の食卓が、劇的に豊かになりつつあるということだけだった。
屋敷の応接室に通されたのは、丸々とした体型の初老の男だった。
彼は鼻にハンカチを押し当て、怯えたような、それでいて好奇心に満ちた目で室内を見回している。
「本日は、その……街の住民から『領主の館から異界の匂いがする』との通報がありまして。もしや魔薬の実験でも失敗されたのかと……」
「人聞きが悪いぞ、トマス」
ギルバートはソファに深々と腰掛け、不機嫌そうに腕を組んだ。
「これは料理の匂いだ。魔薬実験ではない」
「り、料理……? これがですか?」
トマスは信じられないといった顔で鼻をひくつかせた。
確かに、スパイスと獣脂が混じり合った濃厚な香りは、質素な食事が基本の辺境では未知の体験だろう。
「ええ、お料理ですわ! ちょうどよかった、トマスさんにも召し上がっていただきましょう!」
タイミングよく(悪く)、ワゴンを押してメリアナが入室してきた。
ワゴンには湯気を立てるスープ皿と、こんがり焼けたパンが乗っている。
「こちら、新作の『スノーラビットのクリームシチュー ~香草と焦がしバターのハーモニー~』です。どうぞ!」
「は、はあ……」
トマスは困惑しながらも、領主の手前、断るわけにもいかない。
彼はスプーンを手に取り、恐る恐る白いスープを口に運んだ。
「……む?」
トマスの目が丸くなった。
「……むむむッ!?」
次の瞬間、彼のスプーンの動きが加速した。
「な、なんだこれは! 濃厚なのにくどくない! ミルクの甘みと、ピリッとした辛みが絶妙に絡み合っている!」
「ふふん、隠し味に『ファイア・ペッパー』を少々入れていますからね」
「なんと! あの激辛で有名なペッパーを!? これほどまろやかに使いこなすとは……!」
トマスはあっという間に完食し、皿についたソースまでパンで拭って食べた。
そして、恍惚の表情でため息をつく。
「……いやはや、驚きました。王都の高級店でも、これほどの味には出会えませんぞ。一体どこの名シェフを雇われたのですか?」
「私です」
メリアナがエプロンの裾をつまんで一礼した。
「改めまして。メリアナ・ベルトルと申します。以後、お見知り置きを」
「ベ、ベルトル……? まさか、昨日王都から来られたという、あの噂の……?」
トマスはギョッとして後ずさった。
商人のネットワークは早い。「毒殺未遂の悪役令嬢が追放されてきた」という噂は、すでに街にも届いていたのだ。
「ええ、その悪役令嬢です。趣味は料理、特技は美味しいものの発掘です」
メリアナはニッコリと笑った。その笑顔に裏表がない(食欲しかない)ことを察したのか、トマスの警戒心が少しだけ解ける。
「それで、トマスさん。今日は商談も兼ねてお話ししたいことがありまして」
「商談、ですか?」
商人の顔に戻り、トマスが身を乗り出した。
「ええ。この辺境は素晴らしい食材の宝庫ですが、決定的に足りないものがあります。それは『調味料』です」
メリアナは真剣な眼差しで訴えた。
「塩、小麦粉、バター、そして各種スパイス……。これらが不足していては、せっかくの魔物肉もポテンシャルを発揮できません。そこで、貴方の商会から定期的に仕入れたいのです」
「なるほど……。しかし、メリアナ様」
トマスは申し訳なさそうに頭をかいた。
「ご存知の通り、ここは北の果て。輸送コストがかかるため、調味料はどうしても高価になります。特にスパイス類は、南からの輸入品ですから、金の粒と同じくらいの値段でして……」
辺境伯領の財政が豊かではないことを、彼は知っているのだ。
ギルバートが眉をひそめた。
「……予算なら私がなんとかする。騎士たちの士気に関わる問題だ」
「いえ、閣下。無理な出費はいけません」
メリアナはピシャリと言った。
「お金がないなら、作ればいいんです。もしくは、現地調達すればいいんです」
「は? 現地調達? スパイスをか?」
トマスが首を傾げる。
「はい。トマスさん、ちょっと失礼して……」
メリアナは突然、トマスの足元にかがみ込んだ。
「ちょ、メリアナ様!?」
彼女はトマスのブーツの底にへばりついていた泥と、そこに混じっていた緑色の草を指差した。
「これ。来る途中で踏んできましたわね?」
「ええ、まあ。街道沿いに生えている雑草ですが……車輪に絡まって厄介なんですよ。臭いもキツイですし」
「臭い? いいえ、これは『香り』です」
メリアナはその雑草をむしり取り、ハンカチで泥を拭うと、鼻に近づけて深呼吸した。
「ああ……素晴らしい。これは『シルバー・タイム』の変種、『フロスト・タイム』ですわ!」
「フロスト……タイム? ただの『猫いらず草』ではなく?」
「猫いらず草なんて酷い名前! 猫が避けるのは香りが強いからよ。これ、乾燥させて粉末にすれば、肉の臭み消しに最強の効果を発揮する高級ハーブになりますのよ!」
「はあ!?」
トマスが素っ頓狂な声を上げた。
「こ、これが? そこら中に生えていて、農家が駆除に困っているこの草が?」
「ええ。王都の市場なら、小瓶一つで銀貨五枚はしますわね」
「ぎ、銀貨五枚!!?」
トマスの目が「$マーク」になった(ように見えた)。
そこら辺の雑草が、いきなり札束に見え始めたのだ。
「さらに、あそこの窓の外に見える赤い実をつけた低木。あれは『北国サンショウ』です。ピリリとした辛みは、煮込み料理のアクセントに最適。それから、川沿いに生えている葦(あし)のような植物、あれの根っこは甘味が強くて砂糖の代わりになります」
メリアナは窓の外を指差しながら、次々と「宝の地図」を読み上げていく。
「信じられない……。我々は今まで、宝の山をゴミだと思って踏みつけていたのか……」
トマスは震える手で、ブーツについた『フロスト・タイム』を握りしめた。
「トマスさん。取引をしましょう」
メリアナは商人の顔つきで微笑んだ。
「私が、この辺境に自生する『使える植物』のリストと、その加工方法(レシピ)をお教えします。その代わり……」
「その代わり?」
「塩や小麦粉などの基礎調味料を、卸値で……いいえ、原価ギリギリで提供してくださいな。それと、私が指定した調理器具の取り寄せもお願いしたいです」
トマスは頭の中で高速そろばんを弾いた。
この令嬢の知識があれば、捨てていた雑草が商品になる。王都へ輸出すれば莫大な利益が出る。
それに比べて、塩や小麦粉の割引など安いものだ。
「……乗りました!!」
トマスはガバッと立ち上がり、メリアナの手を握った。
「いやあ、素晴らしい! 貴女様は料理の天才であるだけでなく、商売の天才でもあらせられる!」
「あら、私はただ、美味しいご飯を安く作りたいだけですわ」
「ハハハ! ご謙遜を! いやはや、ヴォルグ辺境伯領の未来は明るい!」
二人はガッチリと握手を交わした。
その様子を眺めていたギルバートは、呆気にとられていた。
(……私が長年頭を悩ませていた特産品不足と財政難が、雑草一つで解決しただと?)
彼は知らなかったのだ。
「好きこそ物の上手なれ」という言葉が、時として国家予算レベルの力を発揮することを。
「あ、そうだわトマスさん」
メリアナが思い出したように言った。
「ついでに、街の市場で売れ残ったクズ野菜や、解体で捨ててしまう内臓類があったら、それも持ってきてください。安く買い取りますから」
「へ? そんなゴミをどうするんです?」
「ふふふ。ゴミなんてありません。全ては『出汁(だし)』になるのです」
メリアナの背後に、後光ならぬ「食欲のオーラ」が見えた気がして、トマスは再び背筋を伸ばした。
「承知いたしました! 明日から毎日、新鮮な食材と調味料をお届けします!」
「ええ、楽しみにしていますわ!」
商談は成立した。
トマスが帰った後、ギルバートはメリアナに向き直った。
「……礼を言う、メリアナ。君のおかげで、領の経済も潤いそうだ」
「お礼なんていりませんわ。それより閣下、明日の夕食のリクエストはありますか?」
メリアナはレシピノートを広げた。
「トマスさんが早速、塩とワインを置いていってくれましたから、何か凝ったものが作れますよ」
「……そうだな」
ギルバートは少し考え、そして珍しく微かに笑った。
「君が最初に作った、あの角煮が食べたい。……あれは、その、悪くなかった」
それは、不器用な彼なりの「大好物だ」という告白だった。
「ふふ、分かりました! では、明日は『特製角煮・改』ですね! ハーブを効かせて、さらに美味しく仕上げます!」
メリアナは嬉しそうに厨房へと走っていった。
ギルバートはその後ろ姿を見送りながら、自分の胸の奥が温かくなるのを感じていた。
それはきっと、美味しい食事への期待だけではない……かもしれない。
一方、屋敷の外では。
騎士たちが「雑草刈り」という名の「ハーブ収穫任務」に勤しんでいた。
「おい! これはフロスト・タイムか!?」
「違う、ただの枯れ草だ!」
「メリアナ様が言ってた『北国サンショウ』を見つけたぞ! これで飯が美味くなる!」
「うおおおお! 草をむしれ! 全ては夕飯のために!」
精強な騎士団が、目を血走らせて草むしりをする光景。
それは平和なのか狂気なのか、誰にもわからなかった。
ただ一つ確かなのは、ヴォルグ辺境伯領の食卓が、劇的に豊かになりつつあるということだけだった。
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