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ついに、この日がやって参りました。
鏡の中に映るのは、純白のシルクに身を包んだ私。
このドレス、見た目こそ可憐ですが、実は裏地に特殊な防弾繊維を編み込み、ブーケの中には即座に展開可能な小型の盾が仕込まれています。
「……お嬢様。最後にもう一度だけ聞きますが。そのベール、引くと催涙ガスが出る仕組みになっていますよね?」
アンが、私の背後でヘッドドレスを固定しながら、無表情に尋ねてきました。
「あら、アン。これはあくまで、感動で涙が止まらない参列者の皆様に、言い訳の機会を与えるための配慮よ」
「……お嬢様が幸せそうで、何よりです」
アンの深い溜息を背に、私は父であるブラッディ公爵の待つ、聖堂の入り口へと向かいました。
しかし、そこで私を待っていたのは、エスコートのために差し出された腕……ではなく。
巨大な戦斧(バトルアクス)を肩に担ぎ、全身から「娘は渡さん」という魔力(オーラ)を噴出させている父の姿でした。
「お父様? ……あのお、本日のドレスコードは正装であって、武装ではないはずですけれど?」
「ノワールよ。……お前が選んだ男、カイン・ナイトレイ。……あやつが本当にお前の『重さ』を受け止めきれるのか、この父が最後にテストしてやらねば気が済まん!」
父の瞳は、かつてないほどギラギラと輝いていました。
……そう。私のこの「極端な愛」の源流は、間違いなくこの父にあるのです。
「お父様。カイン卿なら、今、祭壇の前で私を待っていらっしゃいますわ。……というか、既にその斧を片手で受け止める準備をされているようですけれど」
祭壇の方を見ると、カイン卿が静かに剣を抜き……放ちました。
……鞘を、ではなく、闘気を。
「……閣下。……ノワールは、既に私の魂の一部です。……邪魔をされるなら、義父上(予定)であっても容赦はしません」
「……っ! いい面構えだ、カイン! ……だが、我が娘の愛は、ただの『一途』ではない! ……それは、時に国を滅ぼし、時に歴史を塗り替える『絶対的な質量』だ! ……貴様にその覚悟があるか!」
父が斧を振り上げ、バージンロードの上で凄まじい風圧が巻き起こりました。
……あらあら。結婚式場で大規模破壊魔法のようなやり取りが始まってしまいましたわ。
参列者席では、セドリック殿下がガタガタと震えながら、ルルネさんの影に隠れています。
「あ、あああ……。……ノワールの親父が出てきた! ……あいつ、昔、私がノワールを泣かせた時(※実際は私が勝手に感動して泣いただけですが)、私の部屋に生首(の模型)を送り込んできた恐怖の親父なんだぞ!」
「殿下、静かにしてください。……あのお二人の闘気のぶつかり合い、お姉様の結婚式に相応しい『重厚な余興』ではありませんか!」
ルルネさんは興奮気味に、手元のカメラ(魔導具)で激写を繰り返しています。
「……カイン卿! ……お父様! ……二人とも、そこまでにしてくださいな。……ケーキカットの前に、聖堂をカットしてしまっては元も子もありませんわ!」
私は、父とカイン卿の間に割り込みました。……そして、ドレスの裾を少しだけ持ち上げ、地面を軽く踏み抜きました。
ドォォォン! という衝撃波が走り、二人の闘気を物理的に散らしました。
「……お父様。……私の愛は、カイン卿という『最強の器』を見つけたのです。……これ以上、彼を試すというなら、私が相手になりますわよ?」
「……。……。ノ、ノワール……。……お前、今の踏み込み……。……父を、瞬時に無力化できる位置を取ったな?」
「……たしなみですわ、お父様」
父は、ガクリと斧を下ろし、涙を流して笑い始めました。
「……ははは! ……完敗だ! ……これほどまでに『重く』、そして『強く』育った娘を、私が縛り付けられるはずもなかったか……!」
父は斧をアンに預けると、私の前に右腕を差し出しました。
「……カイン。……娘を、頼む。……万が一、お前が彼女を泣かせることがあれば……その時は、ブラッディ公爵家の全戦力をもって、貴様の毛根一つ残さず根絶やしにするからな」
「……望むところです、閣下。……そのような隙は、一瞬たりとも見せません」
カイン卿が私の手を取り、父から引き継ぐように力強く握りしめました。
バージンロードを歩く私の背後では、アンが手際よく父の斧を隠し、騎士たちが感動のあまり「ノワール様! 我らが師匠!」と叫びながら涙を流しています。
一方、セドリック殿下は。
「……なあ、ルルネ。……あの二人が誓いのキスをしたら、衝撃波で王宮の窓ガラスが全部割れるんじゃないか?」
「その時は、殿下が全部磨き直せばよろしいじゃないですか。……お姉様の愛の輝きを、特等席で見守りましょう」
誓いの言葉を述べるカイン卿の瞳には、私のすべてを受け入れるという、深くて重い「覚悟」が宿っていました。
「……ノワール。……一生、君の重すぎる視線の中にいたい。……私を、君の愛で閉じ込めてくれ」
「……ええ、カイン卿。……一生、貴方の影から離れませんわ」
二人の唇が重なった瞬間、聖堂の鐘が、かつてないほど重厚な音を響かせました。
……あ。……本当に窓ガラスが数枚割れたようですけれど。
それもまた、私たちの新しい門出を祝う「愛の爆発」として、許容範囲内ですわね。
鏡の中に映るのは、純白のシルクに身を包んだ私。
このドレス、見た目こそ可憐ですが、実は裏地に特殊な防弾繊維を編み込み、ブーケの中には即座に展開可能な小型の盾が仕込まれています。
「……お嬢様。最後にもう一度だけ聞きますが。そのベール、引くと催涙ガスが出る仕組みになっていますよね?」
アンが、私の背後でヘッドドレスを固定しながら、無表情に尋ねてきました。
「あら、アン。これはあくまで、感動で涙が止まらない参列者の皆様に、言い訳の機会を与えるための配慮よ」
「……お嬢様が幸せそうで、何よりです」
アンの深い溜息を背に、私は父であるブラッディ公爵の待つ、聖堂の入り口へと向かいました。
しかし、そこで私を待っていたのは、エスコートのために差し出された腕……ではなく。
巨大な戦斧(バトルアクス)を肩に担ぎ、全身から「娘は渡さん」という魔力(オーラ)を噴出させている父の姿でした。
「お父様? ……あのお、本日のドレスコードは正装であって、武装ではないはずですけれど?」
「ノワールよ。……お前が選んだ男、カイン・ナイトレイ。……あやつが本当にお前の『重さ』を受け止めきれるのか、この父が最後にテストしてやらねば気が済まん!」
父の瞳は、かつてないほどギラギラと輝いていました。
……そう。私のこの「極端な愛」の源流は、間違いなくこの父にあるのです。
「お父様。カイン卿なら、今、祭壇の前で私を待っていらっしゃいますわ。……というか、既にその斧を片手で受け止める準備をされているようですけれど」
祭壇の方を見ると、カイン卿が静かに剣を抜き……放ちました。
……鞘を、ではなく、闘気を。
「……閣下。……ノワールは、既に私の魂の一部です。……邪魔をされるなら、義父上(予定)であっても容赦はしません」
「……っ! いい面構えだ、カイン! ……だが、我が娘の愛は、ただの『一途』ではない! ……それは、時に国を滅ぼし、時に歴史を塗り替える『絶対的な質量』だ! ……貴様にその覚悟があるか!」
父が斧を振り上げ、バージンロードの上で凄まじい風圧が巻き起こりました。
……あらあら。結婚式場で大規模破壊魔法のようなやり取りが始まってしまいましたわ。
参列者席では、セドリック殿下がガタガタと震えながら、ルルネさんの影に隠れています。
「あ、あああ……。……ノワールの親父が出てきた! ……あいつ、昔、私がノワールを泣かせた時(※実際は私が勝手に感動して泣いただけですが)、私の部屋に生首(の模型)を送り込んできた恐怖の親父なんだぞ!」
「殿下、静かにしてください。……あのお二人の闘気のぶつかり合い、お姉様の結婚式に相応しい『重厚な余興』ではありませんか!」
ルルネさんは興奮気味に、手元のカメラ(魔導具)で激写を繰り返しています。
「……カイン卿! ……お父様! ……二人とも、そこまでにしてくださいな。……ケーキカットの前に、聖堂をカットしてしまっては元も子もありませんわ!」
私は、父とカイン卿の間に割り込みました。……そして、ドレスの裾を少しだけ持ち上げ、地面を軽く踏み抜きました。
ドォォォン! という衝撃波が走り、二人の闘気を物理的に散らしました。
「……お父様。……私の愛は、カイン卿という『最強の器』を見つけたのです。……これ以上、彼を試すというなら、私が相手になりますわよ?」
「……。……。ノ、ノワール……。……お前、今の踏み込み……。……父を、瞬時に無力化できる位置を取ったな?」
「……たしなみですわ、お父様」
父は、ガクリと斧を下ろし、涙を流して笑い始めました。
「……ははは! ……完敗だ! ……これほどまでに『重く』、そして『強く』育った娘を、私が縛り付けられるはずもなかったか……!」
父は斧をアンに預けると、私の前に右腕を差し出しました。
「……カイン。……娘を、頼む。……万が一、お前が彼女を泣かせることがあれば……その時は、ブラッディ公爵家の全戦力をもって、貴様の毛根一つ残さず根絶やしにするからな」
「……望むところです、閣下。……そのような隙は、一瞬たりとも見せません」
カイン卿が私の手を取り、父から引き継ぐように力強く握りしめました。
バージンロードを歩く私の背後では、アンが手際よく父の斧を隠し、騎士たちが感動のあまり「ノワール様! 我らが師匠!」と叫びながら涙を流しています。
一方、セドリック殿下は。
「……なあ、ルルネ。……あの二人が誓いのキスをしたら、衝撃波で王宮の窓ガラスが全部割れるんじゃないか?」
「その時は、殿下が全部磨き直せばよろしいじゃないですか。……お姉様の愛の輝きを、特等席で見守りましょう」
誓いの言葉を述べるカイン卿の瞳には、私のすべてを受け入れるという、深くて重い「覚悟」が宿っていました。
「……ノワール。……一生、君の重すぎる視線の中にいたい。……私を、君の愛で閉じ込めてくれ」
「……ええ、カイン卿。……一生、貴方の影から離れませんわ」
二人の唇が重なった瞬間、聖堂の鐘が、かつてないほど重厚な音を響かせました。
……あ。……本当に窓ガラスが数枚割れたようですけれど。
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