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標高三千メートル級の山頂。
朝日が眩しく照らす岩場で、二人の王子は身動きも取れずに倒れ伏していた。
「……アニエス、もう……もう一歩も動けん……。腹が減って、視界がセピア色だ……」
セドリックが、震える指で地面を掻きながら呟く。
隣のギルベルトも、自慢の金髪を振り乱して荒い息を吐いていた。
「同感だ……。朝活という名の『垂直登山』に、朝食抜きのメニューは……あまりにも過酷すぎるよ……」
そんな二人を、アニエスは山頂に咲く高山植物を愛でながら、涼しい顔で振り返った。
「まあ! お二人とも、なんて情熱的なお姿でしょう! 大地と一体化して、地球の鼓動を感じていらっしゃるのね。素晴らしい感性ですわ!」
「……違う。ただの、極限状態だ……。アニエス……何か、食べ物を……」
セドリックの切実な訴えに、アニエスは「ハッ」と手を合わせた。
「そうでしたわ! 一生懸命遊んだ後には、栄養補給が必要でしたわね。皆様、安心してくださいませ。私、公爵令嬢の嗜みとして、とっておきの『ポータブル・エナジー・コア』を用意して参りましたの!」
アニエスは、どこからともなく大きな風呂敷包みを取り出した。
その中から出てきたのは、真っ白な米が詰まった巨大な桶と、真っ黒な海苔、そして謎の赤い塊だった。
「アニエス……それは、料理か? まさか今からここで、何かを作るというのか?」
ギルベルトが不安げに尋ねると、アニエスは力強く頷き、袖をまくり上げた。
「ええ! これぞ、私が独自に開発した『友情の特大おにぎり・サバイバルエディション』ですわ! さあ、私の華麗なハンド・パフォーミングをご覧くださいませ!」
アニエスは桶の中の米を豪快に両手で掴むと、恐ろしい速度で捏ね始めた。
「ハイッ! まずは米さんたちに『団結の精神』を教え込みますわ。ギュッギュッ! お隣同士、仲良く密着してくださいね! これぞまさに、多国籍軍の連携強化訓練ですわ!」
「……おにぎりを握る音じゃないぞ、今の。まるで粘土を叩きつけているような音がするが……」
セドリックが戦慄する中、アニエスの手の中で、米の塊がどんどん巨大化していく。
通常の十倍はあろうかという、もはや凶器に近いサイズの三角形が形成された。
「仕上げに、この『情熱のレッド・ダイヤモンド』……つまり、激辛の梅干しを丸ごと三粒、中央に埋め込みますわ! そして、この漆黒の『遮光カーテン(海苔)』で優しく包めば……」
アニエスは、完成した巨大な塊を、誇らしげに掲げた。
「完成ですわ! アニエス特製『友情のピラミッド・パワーストーン』! これ一つで、三日は眠らずに踊り続けられる計算ですわよ!」
「……三日も踊りたくない。だが、食べないという選択肢はないな……」
ギルベルトが覚悟を決めて、岩のように重いおにぎりを受け取った。
セドリックも、アニエスの期待に満ちた瞳に負け、震える手でその塊にかじりついた。
「……っ!? こ、これは……」
「どうかしら? お口の中で、米さんたちが『自由への讃歌』を合唱していませんこと?」
「……いや。……米が、恐ろしく高密度だ。噛むたびに顎が鍛えられる……。だが……」
セドリックは、その異常なまでの重みと、暴力的なまでの梅干しの酸味に、逆に目が覚めるのを感じた。
「……うまい。なんだか分からないが、力が……、無理やり底上げされるような感覚だ……!」
「僕もだ。……この海苔の塩気、今の僕らの体に染み渡るよ。アニエス……君は料理の才能まで『爆発』しているんだね」
ギルベルトが涙を流しながら完食すると、アニエスは「まあ!」と頬を抑えて喜んだ。
「嬉しいわ! お二人の胃袋が、私の愛(という名の質量)をしっかり受け止めてくださったのね。さあ、元気が出たところで、次はあちらの崖から『翼を広げる滑空訓練(ただの飛び降り)』へ向かいましょうか!」
「「……おにぎりを、消化させてくれ!!」」
山頂に響く王子たちの絶叫。
アニエスはそれを「喜びの凱歌」と受け取り、早くも次の「おもてなし」を求めて走り出すのだった。
彼女が握ったのはおにぎりではなく、王子たちの運命そのものだったのかもしれない。
朝日が眩しく照らす岩場で、二人の王子は身動きも取れずに倒れ伏していた。
「……アニエス、もう……もう一歩も動けん……。腹が減って、視界がセピア色だ……」
セドリックが、震える指で地面を掻きながら呟く。
隣のギルベルトも、自慢の金髪を振り乱して荒い息を吐いていた。
「同感だ……。朝活という名の『垂直登山』に、朝食抜きのメニューは……あまりにも過酷すぎるよ……」
そんな二人を、アニエスは山頂に咲く高山植物を愛でながら、涼しい顔で振り返った。
「まあ! お二人とも、なんて情熱的なお姿でしょう! 大地と一体化して、地球の鼓動を感じていらっしゃるのね。素晴らしい感性ですわ!」
「……違う。ただの、極限状態だ……。アニエス……何か、食べ物を……」
セドリックの切実な訴えに、アニエスは「ハッ」と手を合わせた。
「そうでしたわ! 一生懸命遊んだ後には、栄養補給が必要でしたわね。皆様、安心してくださいませ。私、公爵令嬢の嗜みとして、とっておきの『ポータブル・エナジー・コア』を用意して参りましたの!」
アニエスは、どこからともなく大きな風呂敷包みを取り出した。
その中から出てきたのは、真っ白な米が詰まった巨大な桶と、真っ黒な海苔、そして謎の赤い塊だった。
「アニエス……それは、料理か? まさか今からここで、何かを作るというのか?」
ギルベルトが不安げに尋ねると、アニエスは力強く頷き、袖をまくり上げた。
「ええ! これぞ、私が独自に開発した『友情の特大おにぎり・サバイバルエディション』ですわ! さあ、私の華麗なハンド・パフォーミングをご覧くださいませ!」
アニエスは桶の中の米を豪快に両手で掴むと、恐ろしい速度で捏ね始めた。
「ハイッ! まずは米さんたちに『団結の精神』を教え込みますわ。ギュッギュッ! お隣同士、仲良く密着してくださいね! これぞまさに、多国籍軍の連携強化訓練ですわ!」
「……おにぎりを握る音じゃないぞ、今の。まるで粘土を叩きつけているような音がするが……」
セドリックが戦慄する中、アニエスの手の中で、米の塊がどんどん巨大化していく。
通常の十倍はあろうかという、もはや凶器に近いサイズの三角形が形成された。
「仕上げに、この『情熱のレッド・ダイヤモンド』……つまり、激辛の梅干しを丸ごと三粒、中央に埋め込みますわ! そして、この漆黒の『遮光カーテン(海苔)』で優しく包めば……」
アニエスは、完成した巨大な塊を、誇らしげに掲げた。
「完成ですわ! アニエス特製『友情のピラミッド・パワーストーン』! これ一つで、三日は眠らずに踊り続けられる計算ですわよ!」
「……三日も踊りたくない。だが、食べないという選択肢はないな……」
ギルベルトが覚悟を決めて、岩のように重いおにぎりを受け取った。
セドリックも、アニエスの期待に満ちた瞳に負け、震える手でその塊にかじりついた。
「……っ!? こ、これは……」
「どうかしら? お口の中で、米さんたちが『自由への讃歌』を合唱していませんこと?」
「……いや。……米が、恐ろしく高密度だ。噛むたびに顎が鍛えられる……。だが……」
セドリックは、その異常なまでの重みと、暴力的なまでの梅干しの酸味に、逆に目が覚めるのを感じた。
「……うまい。なんだか分からないが、力が……、無理やり底上げされるような感覚だ……!」
「僕もだ。……この海苔の塩気、今の僕らの体に染み渡るよ。アニエス……君は料理の才能まで『爆発』しているんだね」
ギルベルトが涙を流しながら完食すると、アニエスは「まあ!」と頬を抑えて喜んだ。
「嬉しいわ! お二人の胃袋が、私の愛(という名の質量)をしっかり受け止めてくださったのね。さあ、元気が出たところで、次はあちらの崖から『翼を広げる滑空訓練(ただの飛び降り)』へ向かいましょうか!」
「「……おにぎりを、消化させてくれ!!」」
山頂に響く王子たちの絶叫。
アニエスはそれを「喜びの凱歌」と受け取り、早くも次の「おもてなし」を求めて走り出すのだった。
彼女が握ったのはおにぎりではなく、王子たちの運命そのものだったのかもしれない。
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