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第一章 後悔しない青春

第一話 堂本夏輝とプロローグ

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ライトノベル好きの男子諸君に聞きたい。



ラノベ主人公は羨ましいと思うか?



アニメやラノベが大好きな俺は、過去何百冊と言う量の作品を手にしてきた。だが、俺は全くそうは思わない。



ラノベ主人公ってのはいつでも美少女達に振り回され、やれやれとため息をついてはたまに出るデレのために体を張って奮闘するものだ。



ここで断っておくと、俺は俺自身がラノベ主人公だと思ってる痛いやつでは断じてない。

だが、気持ちは痛いくらいにわかる。断言しよう、ラノベ主人公なんてのはあまりにも理不尽で、可哀想な生き物なんだ。



いいか?これから俺は何度も美少女達にドキッときたりうっかりときめいたりすると思うが、それは彼女らの見た目が可愛いと思うだけで苦労を考えるとどうこうなろうなんて気はさっぱり起こらない。いや、マジで。



それでも、俺の青春奮闘劇を見届けてくれる強者だけ続きを見て欲しいと思う。



手始めにこれから始まる俺の物語に名前タイトルを付けようと思う。



そうだな……



「後悔のない俺の青春奮闘ラブコメを君と。」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~





またかぁ…



学校が終わり、家に帰宅するとそこは地獄絵図だった。



鍵をかけたはずの自室の扉は何者かによってこじ開けられ、2人の侵入者が俺の部屋を占拠していた。



1人はベッドの上。もう1人はデスクだ。



「あっおかえり!おにi……バカ兄」



部屋の光景を見て、呆然と立ち尽くす俺にいち早く気づいたのはベッドを占拠中の我が妹の堂本雪紀どうもとゆきだった。



雪紀は俺のベッドの上で無防備に寝転がりながらライトノベルをぺらぺらとめくっては、ポテトチップスに手を伸ばす。

なんという体たらく。



正直寝転がるのはいいし、散らかすのはまぁ許すんだけど、年頃の女の子なんだから、ぱ、パンツくらいは隠してもらってもいいですかね?



そんな侵入者1号の妹は置いておいて、問題は侵入者2号のほうだ。



侵入者二号は、俺の妹の同級生で俺の幼なじみの妹――柏葉まふゆかしわばまふゆ



こいつはなんで、俺の部屋で俺のパソコンを勝手に使っているんだ?そして、どうやって解除した?





俺はヘッドホン(俺の私物)をつけて何やらパソコンに向かい合ってる侵入者2号の背後をとる。

ここまで接近しているのにも関わらずまふゆは全く気づかない。



よし、まずは俺のパソコンで何をしているのかを覗いてみるとしよう



俺はまふゆの背後からパソコンを覗き込んだ。

そこに映し出されていたのは見慣れたゲームの画面だった。



―Love×sister―



昔流行った、美少女18禁ゲームだ。でその攻略対象は妹。様々なキャラのお兄ちゃんになり妹との仲を育んでいく純愛ラブストーリ。ちなみに俺の私物。



吹き出しには



「お兄ちゃん、今晩も部屋に行ってもいいよね……?」



なんてセリフが書かれている。

確かこの後は、妹とのアレなシーンが……



そして、画面は暗くなっていき、そこで俺は我に帰った。



「って、おい!!なにをやっとんじゃぁああ!」



俺は大きな怒声をあげながら、まふゆのヘッドホンをぶんどって、勢いよくパソコンをシャットダウンした。



「――ッ!」



ガチの方で気づいていなかったのか、ヘッドホンを取られたまふゆが驚く表情を浮かべた、と思いきや俺の顔を見るとすぐに何かを企むニヤケヅラに変わった。



「あー、帰ってたんですねぇ。お邪魔してます!夏輝せーんぱい!じゃなくて……お兄ちゃんって呼んだ方がよかったですかー?」



まふゆはなんも悪びれることなく、挑発的な表情で笑う。

その姿はまさに小悪魔。あざとさ100パーセントだ。



「くっ、別に呼ばんでいい!てか、俺の私物を勝手にあさるんじゃありません。」



「とか言ってますけどぉー、お兄ちゃんって呼ばれて、せんぱいのお顔真っ赤ですよぉー?本当は嬉しいんじゃないですか?」



まふゆはまたもニヤリとした不敵な笑みを浮かべながら言う。

こいつ、完全に俺の反応を楽しんでやがるな  

ちなみに、嬉しいなんて微塵も思ってない。本当に思ってなんかないんだからねっ!



「あ……あーはいはい、もう俺のデスク周りはいじっちゃだめです」



そう言うと、俺は侵入者1号&2号の腕を掴み強引に部屋から追い出す。

こいつらに部屋をいじらせる訳にはいかない。いやまじで俺の社会的地位が、人権がなくなる。



妹に、「もう話しかけないでくれる?」ってドン引きな表情で言われたらお兄ちゃん立ち直れないよ……。





2人を部屋から追い出した俺は勢いよく、扉を閉めて鍵をかけた。



部屋の外からは「ばか」だの「変態!」だの聞こえたが、そんなものは気にならない。いや、ほんとに気にしてない。ガチで気にしてない。



……あとでちょっとだけ泣こう。







ていうか、これで分かったろ?俺がラノベ主人公を羨ましいと思わない理由。



可愛い子に囲まれても、このザマだ。毎日毎日、振り回されては人権を剥奪されてしまうブラックな職業なんですよ? 



特にまふゆ!お前が引っ越して来てから、俺の日常は狂ったと言っても過言じゃない。



そう言えば、いつだっけかなまふゆが引っ越してきたのは。



確か3ヶ月前くらいか……俺は3ヶ月前を思い出すのだった。

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