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第一章 後悔しない青春

第二話 山崎先生とぼいんぼいん

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「後悔」

 それは文字通り、後から悔いることだ。 
人間生きていれば、多かれ少なかれ抱えているものであり、誰もが1度は思うことだろう。

あの時あれをしておけばよかった。こうしておけばよかった。そう過去に囚われては、今を省みず、未来でまた後悔を抱えることになる。

そんな負の連鎖から抜けられないのは後悔を抱えし人間の性なのかもしれない。その真実に気づいた俺――堂本夏輝どうもとなつきでさえ過去に囚われた人間なのだから。

結局のところ人は後悔からは抜け出せないのだ。人生の選択はギャルゲーのようにやり直しやセーブポイントに戻るようなことは出来ない。だからこそ、何かを選択したとき満足が得られる結果が出ないともう1つの選択肢を選んだ時を想像して後悔する。

要するに、人は我儘な生き物ってわけだ。そんな我儘な感情を納得させるには方法は1つしかない。

簡単なことだ。

「後悔しないように今を全力で生きる」

俺の座右の銘ってやつだな。そんな簡単なことに気づかない馬鹿な人間は沢山いるはずだ。どうにか参考にしt……ってイッテェ!

窓の外をぼんやりと肘をつきながら眺めて、そんなことを考えていた俺の頭に突然衝撃が走った。
あまりの痛さに俺は状況が読み取れず、当たりを見渡す。

そこには見慣れたクラスメイトの顔がこちらに注目しており、ヒソヒソと話す生徒やクスクス笑う生徒もいた。

とりあえず、痛むおでこを撫でる。ポロポロとチョークの粉が落ちてきた。
どうやら、この痛みの原因はチョーク電磁砲レールガンが飛んできたかららしい。

でも居眠りしていた訳じゃないし、飛んでくる理由がないな……
そうか、すっかり授業中ってことを忘れていた。
俺はつまらん授業の時間つぶしに頭の中でつまらん持論を述べていた。だから、ぼーっとしてると判断されてチョークが飛んできたのか……。

「ゴホン――ッ」

頭の中を整理していると大きな咳払いがした。顔を上げると、そこには担任教師の山崎先生が立っていた。

山崎千佳やまざきちか先生 29歳

俺が通う星川高校2年1組の担任だ。貧乳がコンプレックスの山崎先生だが、貧乳なんて気にならないくらい顔は美人だ。
昔本人に言ったら、殺されそうになったっけ?

特技は、チョークを超音速で飛ばすチョーク電磁砲だ。

「え、えーと、授業中ですよね?何故先生がここに?」

俺はなんとなく状況を察しつつも白々しく目の前の先生に問う。

「そうですねぇ。確かに授業です。そんなあなたにこちらからも質問ですが、授業を停止してまであなたの席まで来てあげた理由はわかりますか?」

先生は貧相な胸の前で腕を組み、こちらをギロッと睨む。
美人に睨まれるのは割とサービスだったりするかもしれん。

「窓辺の席で外を眺める俺の横顔にときめいたからですかね?」

「………」

「すみません、わからないです」

ベシッ――

教科書ではたかれた。これ普通に体罰よね?

「つまらないジョークですね。堂本君、放課後職員室に来なさい」

「いや、あっははは……はい…」

完全にやらかしたな。まぁ、貧乳とはいえ放課後に美人教師と2人きりで特別指導が受けられるなら俺の安っぽい放課後タイムを捧げるくらいなんてことない。むしろラッキーだ。

なんて考えていたら、再びチョークが飛んできた。

あれ?心の中まで読まれてるのかな?

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

放課後になった。俺は荷物を簡単にまとめると、職員室へと向かうべく教室を出た。

職員室は3階の2年1組の教室を出て1階まで降りた所にある。特に急ぐ理由は無いがお怒りであろう先生を待たせるのは失礼だと思い、早めに向かう。

それにしても、先生は俺に何をさせるつもりだろうか。
胸を大きくしたいので揉んでほしいなんてことなら大きさが変わるかともかく、毎日揉んであげるのだがそんなサービスがあるわけがない。

我ながらくだらないことを考えるな……

なんて考えていた。考えていたんだが、俺のくだらん妄想は現実になる。

「揉んでください」

「へ?」

「だから、揉んでください」

タラタラと歩k……/いや!めっちゃ急いで職員室に行くとすぐに、山崎先生に「揉んでください」と言われた。

ここに来るほんの数分前に考えていた事は全て俺の勝手な想像なわけで先生がそんなことを頼んでくるはずは無いのだが何かがおかしい。

「先生……本当にいいんですか?ほかの先生方もいらっしゃいますよ?」

「はい?別に大丈夫ですよ。堂本くんが嫌なら場所を変えますが……」

「先生が大丈夫なら、僕は大丈夫です」

クソッ!こんな職員室のど真ん中で育乳しろだと!?
先生としてだけでなく人としてやばいだろ。もしかして人に見られることに興奮する性癖をお持ちなのか?

そんな心の葛藤などお構い無しに、先生は椅子を回転させて俺に背を向ける

「では、お願いします。」

「ちょ、う、後ろからやれってことですか?」

「ん?何か変ですか?」

「い、いえ…別に」

その発言がおかしいですよ、なんて思ってても言えない。

「あんまり、強くしないでくださいね?優しくお願いします」

「は、はい……」

俺は震える腕と、うるさい心臓をどうにか押さえようと努力するが、俺の脳内から発せられる信号に俺の身体が従うわけもなく、どうにもとめられない。

静まってくれ……俺の右手!

あと、数センチ……あと、少し……ほんの少し……

先生の胸板むなもとに触れてるか、触れていないかのギリギリのとこで先生は突然立ち上がった。

「そうだ、いいことを思いつきました」

「う、うぉおおお!びっくりした!どうしたんすか?」

ちっ、あと少しだったのになんだよ

「いいことを思いつきました。本当は凝った肩をみっちり揉んでもらおうと思ったのですが、そんなパシリみたいなことは先生自身も胸が痛みます……」

先生は演技がかった喋り方で、自らの肩を擦りながら言う。

その、肩こってるアピールは胸の重みで…とか言いたいんじゃないでしょうね!?あんた肩こるサイズじゃないですよ?

なんてツッコミたいが俺もそこまでデリカシーのない人間じゃないのでやめておくことにした。

それに、何故か先生の演技がかった口調には胸に関するジョークだけが含まれていたとは思えなかった。
何か他によからぬ事を考えている気がするのだ。あくまで推測だが。

あと、やらせたかったのは育乳じゃなくて、肩もみだったんですね…。いや!わかってましたよ?

「えっと、あなたにはもうすぐ転入してくる子に学校見学のサポート……って言っても学校案内なんですけど頼みたいんです」

先生は変わらず演技がかった話し方で続ける

「ちなみに、2人ですよ?し~か~もぉ~?」

「なんですか、急に変なテンションで」

「変なとはなんですか、変なとは!」 

「それでなんなんですか?」

先生はゴホンと咳払いをひとつしてから、

「女の子です!2人とも♡」

「は?」

女の子ってなんだよ。しかも2人?ふざけんな!俺みたいな冴えない陰キャに学校案内のサポートだぁ?俺と会話続かなすぎて2人とも他校を選ぶぞ。

自分でもわかる。今、俺はすごい嫌そうな顔をしている

「おぉ、想像通り嫌そうな顔をしていますね?まぁいいじゃないですか、学生は勉強&青春ですよ?あーあ、先生も戻りたいなぁー」

「先生だってつい最近まで学生だったじゃないですか。まだまだお若いですよ」

「もう!からかわないでください。それに先生はか、か、彼氏とかいなかったですし」

なるほどな、先生のキャラからして俺のようにカーストが下な訳ではないだろうが友達がいても恋愛はしていない、もしくは上手くいっていなかったのだろう。

だからって押し付けられても困るが。あと、目が笑ってないですよ

「先生、俺は別に青春しに学校来てるわけじゃないですよ」

俺は全力の否定を込めて、声をワントーン落として言った

「あらあら、そんな怖い声を出さないでください。別に青春~のくだりは気にしなくていいですよ。これは私があなたに与えたお仕置です。仕事だけこなしてくれればそれでいいですよ」

先生は俺の肩をポンポンと叩いた。

「それじぁ、よろしく頼みます。」

先生はそれだけいうと、職員室を出ようと歩き出す

「あっ、先生!その学校案内ってのはいつなんですか?」

「詳しくは後日連絡します。先生は楽しみにしてますよ?」

先生は不敵な笑みを浮かべては、職員室をあとにした。
なんなんだろう、見た目は清楚で美人なんだけど、サイコパス感半端ないんだよな。

多分、青春してこなかったのはそれが原因かな。

俺はそんなことを考えながら帰路についた。














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