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1章.終わりは時に始まりを意味する
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暗い暗い闇の底
光なんて少しも届かないような空間
ここに来てどれほどの時がたっただろう
ほんの一瞬だった気もするし、永遠に近い時を過ごした気もする
だってここには何もないから
光も、音も、匂いも、時間の流れすら置き去りにして
私は、ただこの暗闇に身を預けていた
全てが終わってからずっと
ああ、ここは随分と息がしやすい
何もないから、何も始まらず
何もしないを許される場所
可能ならば永遠にここで微睡んでいたい
「おーい」
と思っていたのだが、ここにきて初めての音を聞いた
できることならこのまま聞かなかったことにできないだろうか
「聞こえないんですか?
おかしいな、そんなはずないのに」
どうやら私に用向きらしい
これでは、無視もできまい
「聞こえてますよ」
「あ、よかった
ながーい間、待っているのに全然出てこないですもん
また、何かのトラブルかと思いました」
出てこないとはこの暗闇からだろうか
やはり時間の感覚がないだけで随分と長い間ここにいたらしい
「ほら、あなたもここから出たいでしょう?
早く上がってきてください」
「…出ないとダメでしょうか」
その言葉に声の主は、随分と驚いた様子だった
相変わらずの暗闇で、顔とかは見えないからなんとなくだけど
「出たくないのですか?
ここから
この無の空間から?
光はなく、希望はなく
ただひたすら暗闇の中で自身の心を削る光景を見せつけられるだけのここから?」
見たくないもの
なるほど、ここに来てから考えようともしていないのに時たま脳裏に記憶がちらつくことがあったが、それはこの空間の仕様だったらしい
「常人であればたちまち心が砕け
ここから這い出ようとして、次第にそれすら諦めるのが常なのですが」
そうは、言われても
私にとってはここは理想的な場所で
ずっといたいとすら思っていて
この人の言う心を削る光景だって
他の人が何を見るのかは知らないが
それは、私にとって
「いつも見ているものと変わりませんから」
変わらない
何も、何ひとつ
私にとってはここで見せられた光景も
現実も大して変わらない
ならば誰もいない何もいないここでずっと
「本気、なのですね
いや、でも本当の本当に出たくないのですか
少しも?
ちっともですか?」
「はい」
なんなら永住したい
「それは…それは何と言いますか
あなたの意志が固いところ大変言い難いのですが、出てきて頂かないと困ってしまいます」
困って、困ってしまうのか
それはなんともこちらとしても困ってしまう
「ああ、そうだ
現状の把握ができていないのでしょう
説明を聞けばきっとすぐにでも出てきたくなりますよ」
そうだろうか
今の所、ここを愛しのマイホームとすら思っているのに
「こほん、それでは少し時を遡りましてあなたが死んだときから
そう、あなたの記憶にもあるかと思いますが強い光を見たでしょう
その時、あなたは死んだのです
ここは、死後に訪れる
現世で汚れた魂の穢れを濯ぐ為の場所です
本来ならば大きな罪を犯した魂のみを招き、己の咎を自覚し、改め暗闇を抜け出せば通常の魂と同様に次の生を授ける
のですが、少々手違いと言いますか
ミスと言いますか
とにかく想定外の出来事により
本来、ここに来るべきではない魂
つまり、罪なきあなたをここに送ることになってしまい
すぐに、出てこられるように道も作った筈なのに一向に出てきませんでしたので
心配になりこうして探しに来たのです
さあ、これで怖いことはないでしょう?
ここを出ればすぐに新しい生を始められます」
うん、やはり
最後まで聞いていたがここを出たいとは思えない
あの日終わっていたのは想定通りだし
新しい生というのもまったく嬉しくない
ばかりか、それは私の最も忌避する行為だ
生きるということは、始めるということだ
また、あの重苦しい日々を
息苦しい日々を
「いえ、ここにいたいです」
「何故なのですか
何か不満でも」
何故、それを言う必要はあるのだろうか
どうせ理解されることはないのに
「あなたは、ここから出るには自ら暗闇を抜ける必要があると言いました
先程から、無理やり連れて行こうする様子もありません
私が出ようと思わなければ、ここからは出られないのではないですか」
「いや、それはその」
代わりに、言い訳をこぼす
これは、悪いことだ
相手を困らせている
先程、そう言っていたのに
吐き気がする
気持ち悪い
ああ、やはり私はあってはいけないものだと改めて自覚する
このまま、この闇に溶けて消えてしまえと思うけれど
けれど、どうやらそれではこの声の主が困ってしまうらしい
今も言葉にならない声をもごもごとこぼしている
「私はここから出たいとは思いません
けれど、君は困ると言いました
手違いとも
その理由が納得のいくものであれば私も従いましょう」
せめてもの、悪足掻き
理由によってはやっぱりここにいても問題なしにならないかと思ったのだが
より言い淀んでいる
「っう、その…
はぁ、仕方がありません
洗いざらい、白状しましょう
ええ、あなたの言う通り
本来、無の空間から既に浄化された魂が自ら出ることを拒んでも無理に引っ張り出すことはありません
それも、懺悔のひとつと時を待ちます
それをせず、わざわざ私が出向いたのは先程言った様に、あなたはここに来る筈ですらなかった魂だから
その原因なのですが
あなたの死因にありまして
ええ、そのとても言い難く」
何やら、そこに躊躇う理由があるらしい
死因…そういえば死ぬ前に見たあの光
恐らく、あれだと思うのだが
そう言えば、いったいあれは何だったのか
「はい、全てを話さずともここまで聞けば皆同じことを考えます
あの光は、なんだったのか
あれは、人類が堕落し、これ以上ない程の行き詰まりを見せた際に、神が放つ試練がひとつ『暗き光』です
ほら、聞いたことありませんか
いつだったか、大雨の大洪水により人類の殆どがリセットされた
その一種ですね
あの光によりあの世界に住む全ての人類が蒸発しました」
堕落…
そこまで、だったろうか
人類てやつは
「そう、あの世界の人類は神が手を下される程に堕落などしていなかった
滅ぼす予定もなかった
では何故、あの光が放たれたのか
…結論から申し上げますと、私のうっかりでして」
いや、終わったとは思ったけれど
世界ごと終わっていたとは
もしや、あれ程言い淀んでいたのは
「どなたの過失でもなく僕のせい…ですね
僕、これでも神に遣えるそれなりに偉い天使でして
あの光を行使する権利を授かっていたのです
年々しなければならないことが増え手一杯、他の天使にはやっかみを受けてストレスが溜まっているところに大量の書類に紛れ、あの世界の人類を滅ぼす書面にサインを」
してしまったと
なんという、典型的な業務過多
日本のブラック企業を垣間見た時と同じ気分だ
ミス、ひとつで人類が滅んでいては笑えないが
「完全なる僕のミスです
例え、この件でさらにあの性悪天使に何か言われようと受け入れる所存です
ええ、はい」
いや、そのストレスと原因のひとつにはただならぬ私怨を感じるが
「と、そう言うことでして
罪人として滅ぼされたあの世界の人類はこの無の空間に放り込まれました
とは言え、手違いですからこちらで道を作り早々にここから出て頂いたのです
こんなところに居たがるのはあなたくらいでしたからね、自ら這い出てくれました」
なんともまあ、確か80億はいたと思うのだが
ただでさえ、ブラックぽいのに
ああ、だから私もこれまで放置されていたのか
「あなたの様に現状に疑問を覚える方もおりました
致し方なく同じ説明をしたのですが
まあ、皆様それはもうご立腹でして
理想の環境への転生や加護を与えることで納得して頂きやっとあなた以外の全員が新しい生へと旅立ちました
ああ、もちろん全てをお話していない方にも同様の対応をしていますよ
不公平はいけませんから」
時間の感覚がわからなかったがどうやら思ってる以上の長居をしていたらしい
「神より早急に滅ぼした全ての人類を転生させろとの命を受けまた
本来まだ生きている筈の魂ですから当然です
そしてあなたが、最後のひとり
しかしそのひとりが一向に無の空間から出てこないのでこうして僕が出向いたのです
どうでしょう、ご納得頂けたでしょうか
…できませんよね
ここに連れてこられたのも、出てきて欲しいのもこちらの都合です
で、ですが先程言った通りご要望があれば可能な限りお応えします
どうでしょう、受け入れて頂けないでしょうか?」
「いや、それはいりません」
私には、不要なものだ
「っう、そうですか
あの、ですが、どうしても嫌でしょうか」
ああ、どうやら誤解させてしまったらしい
確かに、私はここから出たくない
叶うことならば永遠に
だけど
「いえ、君の願いには従います」
「そうですよね、嫌で…
え!!出てきてくださるのですか
な、なぜ、あれ程嫌がられていたのに」
うん、嫌だ
また、あの息苦しさのなか生きていかなければならないのかと思うと吐き気がする程だが
だが、
「君が困ってしまうのでしょう」
なら仕方がない
嫌々ながら
渋々とその現実を受け入れよう
気付けば、がちゃりと扉の開く音
眼前には先程いた場所とは似ても似つかない真っ白な空間
後ろには閉まった扉がひとつ
本当に私の意思ひとつで直ぐにでも出られる状態だったらしい
「…本当に出てきた」
呆然とした声に振り向くと
この空間にそっくりな真っ白な青年がひとり
髪も目も肌も、そして背中から生える羽根も白くないところを見つける方が難しいくらい
とってもお手入れが大変そう
「で、ではなく本当によろしかったのですか
理由にしても、あなたが気にすることではない筈です
僕が困ったところで、いえむしろこの状況は僕のせいですから嫌がらせしてやろうと思ってもおかしくないのですよ」
「確かに、君の行いは悪いことです」
大勢のひとが当たり前に迎える筈だった明日を失った
それは、新しい次を貰ったところで取り戻せるものではない
失われたものには掛け替えのない何かがあった筈だから
それでも
「それでも、私にとっては救いでした」
きっと誰にも理解されることはない
理解するべきでもない
あの空間が、あの暗闇が私には何より心安らげる場所だった
それが一時の儚い夢だとしても
また、あの息苦しさのなかで生きていかなければならないとしても
「だから、他の誰が君を恨んでも
私は、君に感謝を伝えます
今日この日終わる夢だとしても、私に光をくれてありがとう」
そんな、恩人とも言える彼を困らせたくはない
それだけで、理由は充分なのだ
「え、あ、いや、でも
僕は悪いことをして
お礼なんか言われるようなことではなくて
たくさん、たくさん怒られて
やることが、手一杯で皆さんを送り出すのにこなに時間もかかって
それでまた、嫌味を言われても仕方がなくて」
ああ、彼が泣きそうだ
やなり、碌でもないな、私は
恩人にすらこうして悲しい顔をさせてしまう
けれど、今はそんなことよりも
「例えそうだったとしても
私は、嬉しかったんです
安心してください
大勢の死を前提にしてこんなことを言ってしまう最低な私に神裁きを下したんです
あながち、君の行動は間違っていなかったのかもしれませんよ」
「なん、ですかそれ
もう、ほんとに、何でそんなこと」
耐えるような顔のあとポロリと涙が溢れた
その後は決壊した様に、大雨の様に泣いたのだった
光なんて少しも届かないような空間
ここに来てどれほどの時がたっただろう
ほんの一瞬だった気もするし、永遠に近い時を過ごした気もする
だってここには何もないから
光も、音も、匂いも、時間の流れすら置き去りにして
私は、ただこの暗闇に身を預けていた
全てが終わってからずっと
ああ、ここは随分と息がしやすい
何もないから、何も始まらず
何もしないを許される場所
可能ならば永遠にここで微睡んでいたい
「おーい」
と思っていたのだが、ここにきて初めての音を聞いた
できることならこのまま聞かなかったことにできないだろうか
「聞こえないんですか?
おかしいな、そんなはずないのに」
どうやら私に用向きらしい
これでは、無視もできまい
「聞こえてますよ」
「あ、よかった
ながーい間、待っているのに全然出てこないですもん
また、何かのトラブルかと思いました」
出てこないとはこの暗闇からだろうか
やはり時間の感覚がないだけで随分と長い間ここにいたらしい
「ほら、あなたもここから出たいでしょう?
早く上がってきてください」
「…出ないとダメでしょうか」
その言葉に声の主は、随分と驚いた様子だった
相変わらずの暗闇で、顔とかは見えないからなんとなくだけど
「出たくないのですか?
ここから
この無の空間から?
光はなく、希望はなく
ただひたすら暗闇の中で自身の心を削る光景を見せつけられるだけのここから?」
見たくないもの
なるほど、ここに来てから考えようともしていないのに時たま脳裏に記憶がちらつくことがあったが、それはこの空間の仕様だったらしい
「常人であればたちまち心が砕け
ここから這い出ようとして、次第にそれすら諦めるのが常なのですが」
そうは、言われても
私にとってはここは理想的な場所で
ずっといたいとすら思っていて
この人の言う心を削る光景だって
他の人が何を見るのかは知らないが
それは、私にとって
「いつも見ているものと変わりませんから」
変わらない
何も、何ひとつ
私にとってはここで見せられた光景も
現実も大して変わらない
ならば誰もいない何もいないここでずっと
「本気、なのですね
いや、でも本当の本当に出たくないのですか
少しも?
ちっともですか?」
「はい」
なんなら永住したい
「それは…それは何と言いますか
あなたの意志が固いところ大変言い難いのですが、出てきて頂かないと困ってしまいます」
困って、困ってしまうのか
それはなんともこちらとしても困ってしまう
「ああ、そうだ
現状の把握ができていないのでしょう
説明を聞けばきっとすぐにでも出てきたくなりますよ」
そうだろうか
今の所、ここを愛しのマイホームとすら思っているのに
「こほん、それでは少し時を遡りましてあなたが死んだときから
そう、あなたの記憶にもあるかと思いますが強い光を見たでしょう
その時、あなたは死んだのです
ここは、死後に訪れる
現世で汚れた魂の穢れを濯ぐ為の場所です
本来ならば大きな罪を犯した魂のみを招き、己の咎を自覚し、改め暗闇を抜け出せば通常の魂と同様に次の生を授ける
のですが、少々手違いと言いますか
ミスと言いますか
とにかく想定外の出来事により
本来、ここに来るべきではない魂
つまり、罪なきあなたをここに送ることになってしまい
すぐに、出てこられるように道も作った筈なのに一向に出てきませんでしたので
心配になりこうして探しに来たのです
さあ、これで怖いことはないでしょう?
ここを出ればすぐに新しい生を始められます」
うん、やはり
最後まで聞いていたがここを出たいとは思えない
あの日終わっていたのは想定通りだし
新しい生というのもまったく嬉しくない
ばかりか、それは私の最も忌避する行為だ
生きるということは、始めるということだ
また、あの重苦しい日々を
息苦しい日々を
「いえ、ここにいたいです」
「何故なのですか
何か不満でも」
何故、それを言う必要はあるのだろうか
どうせ理解されることはないのに
「あなたは、ここから出るには自ら暗闇を抜ける必要があると言いました
先程から、無理やり連れて行こうする様子もありません
私が出ようと思わなければ、ここからは出られないのではないですか」
「いや、それはその」
代わりに、言い訳をこぼす
これは、悪いことだ
相手を困らせている
先程、そう言っていたのに
吐き気がする
気持ち悪い
ああ、やはり私はあってはいけないものだと改めて自覚する
このまま、この闇に溶けて消えてしまえと思うけれど
けれど、どうやらそれではこの声の主が困ってしまうらしい
今も言葉にならない声をもごもごとこぼしている
「私はここから出たいとは思いません
けれど、君は困ると言いました
手違いとも
その理由が納得のいくものであれば私も従いましょう」
せめてもの、悪足掻き
理由によってはやっぱりここにいても問題なしにならないかと思ったのだが
より言い淀んでいる
「っう、その…
はぁ、仕方がありません
洗いざらい、白状しましょう
ええ、あなたの言う通り
本来、無の空間から既に浄化された魂が自ら出ることを拒んでも無理に引っ張り出すことはありません
それも、懺悔のひとつと時を待ちます
それをせず、わざわざ私が出向いたのは先程言った様に、あなたはここに来る筈ですらなかった魂だから
その原因なのですが
あなたの死因にありまして
ええ、そのとても言い難く」
何やら、そこに躊躇う理由があるらしい
死因…そういえば死ぬ前に見たあの光
恐らく、あれだと思うのだが
そう言えば、いったいあれは何だったのか
「はい、全てを話さずともここまで聞けば皆同じことを考えます
あの光は、なんだったのか
あれは、人類が堕落し、これ以上ない程の行き詰まりを見せた際に、神が放つ試練がひとつ『暗き光』です
ほら、聞いたことありませんか
いつだったか、大雨の大洪水により人類の殆どがリセットされた
その一種ですね
あの光によりあの世界に住む全ての人類が蒸発しました」
堕落…
そこまで、だったろうか
人類てやつは
「そう、あの世界の人類は神が手を下される程に堕落などしていなかった
滅ぼす予定もなかった
では何故、あの光が放たれたのか
…結論から申し上げますと、私のうっかりでして」
いや、終わったとは思ったけれど
世界ごと終わっていたとは
もしや、あれ程言い淀んでいたのは
「どなたの過失でもなく僕のせい…ですね
僕、これでも神に遣えるそれなりに偉い天使でして
あの光を行使する権利を授かっていたのです
年々しなければならないことが増え手一杯、他の天使にはやっかみを受けてストレスが溜まっているところに大量の書類に紛れ、あの世界の人類を滅ぼす書面にサインを」
してしまったと
なんという、典型的な業務過多
日本のブラック企業を垣間見た時と同じ気分だ
ミス、ひとつで人類が滅んでいては笑えないが
「完全なる僕のミスです
例え、この件でさらにあの性悪天使に何か言われようと受け入れる所存です
ええ、はい」
いや、そのストレスと原因のひとつにはただならぬ私怨を感じるが
「と、そう言うことでして
罪人として滅ぼされたあの世界の人類はこの無の空間に放り込まれました
とは言え、手違いですからこちらで道を作り早々にここから出て頂いたのです
こんなところに居たがるのはあなたくらいでしたからね、自ら這い出てくれました」
なんともまあ、確か80億はいたと思うのだが
ただでさえ、ブラックぽいのに
ああ、だから私もこれまで放置されていたのか
「あなたの様に現状に疑問を覚える方もおりました
致し方なく同じ説明をしたのですが
まあ、皆様それはもうご立腹でして
理想の環境への転生や加護を与えることで納得して頂きやっとあなた以外の全員が新しい生へと旅立ちました
ああ、もちろん全てをお話していない方にも同様の対応をしていますよ
不公平はいけませんから」
時間の感覚がわからなかったがどうやら思ってる以上の長居をしていたらしい
「神より早急に滅ぼした全ての人類を転生させろとの命を受けまた
本来まだ生きている筈の魂ですから当然です
そしてあなたが、最後のひとり
しかしそのひとりが一向に無の空間から出てこないのでこうして僕が出向いたのです
どうでしょう、ご納得頂けたでしょうか
…できませんよね
ここに連れてこられたのも、出てきて欲しいのもこちらの都合です
で、ですが先程言った通りご要望があれば可能な限りお応えします
どうでしょう、受け入れて頂けないでしょうか?」
「いや、それはいりません」
私には、不要なものだ
「っう、そうですか
あの、ですが、どうしても嫌でしょうか」
ああ、どうやら誤解させてしまったらしい
確かに、私はここから出たくない
叶うことならば永遠に
だけど
「いえ、君の願いには従います」
「そうですよね、嫌で…
え!!出てきてくださるのですか
な、なぜ、あれ程嫌がられていたのに」
うん、嫌だ
また、あの息苦しさのなか生きていかなければならないのかと思うと吐き気がする程だが
だが、
「君が困ってしまうのでしょう」
なら仕方がない
嫌々ながら
渋々とその現実を受け入れよう
気付けば、がちゃりと扉の開く音
眼前には先程いた場所とは似ても似つかない真っ白な空間
後ろには閉まった扉がひとつ
本当に私の意思ひとつで直ぐにでも出られる状態だったらしい
「…本当に出てきた」
呆然とした声に振り向くと
この空間にそっくりな真っ白な青年がひとり
髪も目も肌も、そして背中から生える羽根も白くないところを見つける方が難しいくらい
とってもお手入れが大変そう
「で、ではなく本当によろしかったのですか
理由にしても、あなたが気にすることではない筈です
僕が困ったところで、いえむしろこの状況は僕のせいですから嫌がらせしてやろうと思ってもおかしくないのですよ」
「確かに、君の行いは悪いことです」
大勢のひとが当たり前に迎える筈だった明日を失った
それは、新しい次を貰ったところで取り戻せるものではない
失われたものには掛け替えのない何かがあった筈だから
それでも
「それでも、私にとっては救いでした」
きっと誰にも理解されることはない
理解するべきでもない
あの空間が、あの暗闇が私には何より心安らげる場所だった
それが一時の儚い夢だとしても
また、あの息苦しさのなかで生きていかなければならないとしても
「だから、他の誰が君を恨んでも
私は、君に感謝を伝えます
今日この日終わる夢だとしても、私に光をくれてありがとう」
そんな、恩人とも言える彼を困らせたくはない
それだけで、理由は充分なのだ
「え、あ、いや、でも
僕は悪いことをして
お礼なんか言われるようなことではなくて
たくさん、たくさん怒られて
やることが、手一杯で皆さんを送り出すのにこなに時間もかかって
それでまた、嫌味を言われても仕方がなくて」
ああ、彼が泣きそうだ
やなり、碌でもないな、私は
恩人にすらこうして悲しい顔をさせてしまう
けれど、今はそんなことよりも
「例えそうだったとしても
私は、嬉しかったんです
安心してください
大勢の死を前提にしてこんなことを言ってしまう最低な私に神裁きを下したんです
あながち、君の行動は間違っていなかったのかもしれませんよ」
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