お飾り婿の嫁入り 血の繋がらない息子のために婿入り先の悪事を暴露したら、王様に溺愛されました

海野璃音

文字の大きさ
39 / 114
一部番外編

他視点3-2:王としての覚悟[シュロム視点]

しおりを挟む
 ディロスとアグノスが悪用されない為に、忠誠の誓いのような王家の秘術を用いる事もできるが……それが発動した時二人に訪れるのは死だ。

 王族の姫や貴族の令嬢達が攫われた際、自身の尊厳を守る為の毒に近い物しかないので俺の望む効果のあるものではなかった。

 どうにか魔法や魔道具の類で身を守るものも考えねばならないが……まずは、立場か。

 ディロスに与えられるのは今の側妃の立場が最高のものだが、アグノスは違う。

 現状ディロスの連れ子という立場ではあるが、王族を表す特徴を持っているがゆえにディロスの血を引いていない事はすでに知られている。

 グラオザーム侯爵の夫であったディロスの連れ子と言う事はグラオザーム侯爵の子である事に間違いはなく、恋多き侯爵が産み落とした子となれば当てはまる愛人はイリスィオしかいない。

 事実、すでにその噂は貴族間に広まっているし、ディロスの側妃入りの為に俺が意図して広めたようなものだ。

 だが騒動の後、改めて調査した結果、イリスィオが今回の事に関与していた事が発覚している。

 紛失していた魔道具以外にも離宮群の見取り図。王家の隠し通路を記した地図。水門の警備体制についての記述。それらを記した文字は王宮に残されたイリスィオの筆跡と同一のもので、それらすべてはイリスィオが関係を持っていた令嬢達の家から新たに発見された。

 イリスィオも、グラオザーム侯爵も、派手に遊んでいるように見えて、その大部分は反乱の為の行動だったというわけだ。

 イリスィオには暗部もつけていたが……流石に耳元でささやかれる睦言や恋文に潜められた独自の暗号にまで気づくのは至難の業だとしか言いようがない。

 俺の前では、愚弟としか言いようがない女好きで仕事のできない男だった癖に……爪を隠してここまでしてやられたのが腹立たしくて仕方がないな。

 生まれを恨むことなく、正しく生きていれば王弟として十分な地位につけたものをと思いつつも、あれが王家を恨むのも仕方がないという気持ちもわからなくはない。

 互いに母が違うというだけで、政敵のように扱われていたし、幼少期の交友などなかった。あれがどのような環境にいたかはわからないが……俺の予備として扱われていたあいつが、母親である側妃やその親族、父王にどのように扱われていたのか、母上やエリーに守られていた俺には想像もつかないほどに酷い環境にいた可能性だってあるのだから。

 そんな事を考えながら、ため息を吐き、思考をアグノスの事へと戻す。

 最初はその存在を疎ましく思ったアグノスだが、今ではもう一人の息子のように思っている。

 自身の立場を理解するにはまだ幼く、今はまだすべてを伝える事は出来ないが……それでもイデアルやティグレと変わらぬ愛情を注げたらいいと考えていた。

 それで、俺の罪が許されるとは思わないがな。

 アグノスが成長し、どのような選択を下すか。それは予想もできない。

 それでも、十を迎えて正式にお披露目することになったら正式に俺の養子として迎えようと思っている。

 王位継承権を与える事はできないが……王族として、正式に王子と名乗れるようになれば、その立場も安定したものになるはずだ。

 ……万が一にでもイリスィオと同じ道を辿るとしたら、その時は俺がその首を落とす覚悟を決めなければならないのだが……ディロスにも、子供達にも恨まれる事だろうな。
しおりを挟む
感想 104

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

【完結】悪役令嬢モノのバカ王子に転生してしまったんだが、なぜかヒーローがイチャラブを求めてくる

路地裏乃猫
BL
ひょんなことから悪役令嬢モノと思しき異世界に転生した〝俺〟。それも、よりにもよって破滅が確定した〝バカ王子〟にだと?説明しよう。ここで言うバカ王子とは、いわゆる悪役令嬢モノで冒頭から理不尽な婚約破棄を主人公に告げ、最後はざまぁ要素によって何やかんやと破滅させられる例のアンポンタンのことであり――とにかく、俺はこの異世界でそのバカ王子として生き延びにゃならんのだ。つーわけで、脱☆バカ王子!を目指し、真っ当な王子としての道を歩き始めた俺だが、そんな俺になぜか、この世界ではヒロインとイチャコラをキメるはずのヒーローがぐいぐい迫ってくる!一方、俺の命を狙う謎の暗殺集団!果たして俺は、この破滅ルート満載の世界で生き延びることができるのか? いや、その前に……何だって悪役令嬢モノの世界でバカ王子の俺がヒーローに惚れられてんだ? 2025年10月に全面改稿を行ないました。 2025年10月28日・BLランキング35位ありがとうございます。 2025年10月29日・BLランキング27位ありがとうございます。 2025年10月30日・BLランキング15位ありがとうございます。 2025年11月1日 ・BLランキング13位ありがとうございます。

なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?

詩河とんぼ
BL
 前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?

悪役神官の俺が騎士団長に囚われるまで

二三@冷酷公爵発売中
BL
国教会の主教であるイヴォンは、ここが前世のBLゲームの世界だと気づいた。ゲームの内容は、浄化の力を持つ主人公が騎士団と共に国を旅し、魔物討伐をしながら攻略対象者と愛を深めていくというもの。自分は悪役神官であり、主人公が誰とも結ばれないノーマルルートを辿る場合に限り、破滅の道を逃れられる。そのためイヴォンは旅に同行し、主人公の恋路の邪魔を画策をする。以前からイヴォンを嫌っている団長も攻略対象者であり、気が進まないものの団長とも関わっていくうちに…。

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  ゆるゆ
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 透夜×ロロァのお話です。 本編完結、『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけを更新するかもです。 『悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?』のカイの師匠も 『悪役令息の伴侶(予定)に転生しました』のトマの師匠も、このお話の主人公、透夜です!(笑) 大陸中に、かっこいー激つよ従僕たちを輸出して、悪役令息たちをたすける透夜(笑) 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

【完結】悪役令息の役目は終わりました

谷絵 ちぐり
BL
悪役令息の役目は終わりました。 断罪された令息のその後のお話。 ※全四話+後日談

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。