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一章:迷い込んだのは人ならざる物の住む世界
5:金色の神使
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「もう大丈夫だぞ」
そう言って渉の前に経つ人影。その言葉の通りその人影の向こうにいたはずの黒い靄《もや》の姿は消えていた。
あまりにもあっけない幕引き。一瞬にして終わった危機に渉はあっけにとられながら、振り返った人物の顔へと視線を向ける。
渉の視線に映ったのは輝かんばかりの美貌……赤い瞳を狐のような笑みで歪めながら、頭の上についている黄色い耳をぴくぴくと揺らす美丈夫の姿だった。
「っ⁉」
予想だにしていなかった美貌に渉は言葉を失う。巫女服の救世主が男であった事は健全な男子大学生である渉からすればわずかに残念な事だったが、それでも男の渉が見惚れるほどに……狐耳と尻尾と言う事すら似合っていると思うほどに美しい男だったのだ。
「お、おきつね……さま?」
その特徴と稲荷神社という場所から、頭に浮かんだ言葉を戸惑いながらも呟けば、男は頷く。
「さよう。我は、この社を任された稲荷神の神使。主《ぬし》の助けを求める声にて、参上つかまさり候」
笑みも耳も尻尾もまさに狐!といった風貌の男は、耳や尻尾と同じ色をした長い腰まで伸びた金髪を揺らしながら笑う。
古い口調で落ち着いた声であるにもかかわらず、その笑みや口ぶりはやはり親しみを覚える程度には軽い。黒い靄《もや》に追われ続けて、緊張し続けていた渉が人ではない男に警戒心を解き、力が抜けるほどに男の雰囲気は軽かった。
「あ、ありがとうございます」
頭を庇うように交差させていた両手を力なく降ろし、呆然としたまま渉は男へと感謝の言葉を述べる。
「うむ」
渉の感謝の言葉に気を良くしたような男は、にんまりと狐のように笑った。その笑みを見て渉は、本当に助かったのだという実感が込み上げ、その頬を涙が濡らす。
「どうした?怖かったのか?」
「っ、ひっ……だ、大学の、ところから……ずっと、逃げてて……」
「ふむ、あそこからか……随分と頑張って逃げてきたのだな」
涙を拭う事も出来ない渉の話を聞きながら、男は渉へと視線を合わせるように屈み、白い小袖の袖で渉の涙を拭う。その手は、子供をなだめるような優しい手つきで、渉の目からはいっそう涙があふれた。
そう言って渉の前に経つ人影。その言葉の通りその人影の向こうにいたはずの黒い靄《もや》の姿は消えていた。
あまりにもあっけない幕引き。一瞬にして終わった危機に渉はあっけにとられながら、振り返った人物の顔へと視線を向ける。
渉の視線に映ったのは輝かんばかりの美貌……赤い瞳を狐のような笑みで歪めながら、頭の上についている黄色い耳をぴくぴくと揺らす美丈夫の姿だった。
「っ⁉」
予想だにしていなかった美貌に渉は言葉を失う。巫女服の救世主が男であった事は健全な男子大学生である渉からすればわずかに残念な事だったが、それでも男の渉が見惚れるほどに……狐耳と尻尾と言う事すら似合っていると思うほどに美しい男だったのだ。
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その特徴と稲荷神社という場所から、頭に浮かんだ言葉を戸惑いながらも呟けば、男は頷く。
「さよう。我は、この社を任された稲荷神の神使。主《ぬし》の助けを求める声にて、参上つかまさり候」
笑みも耳も尻尾もまさに狐!といった風貌の男は、耳や尻尾と同じ色をした長い腰まで伸びた金髪を揺らしながら笑う。
古い口調で落ち着いた声であるにもかかわらず、その笑みや口ぶりはやはり親しみを覚える程度には軽い。黒い靄《もや》に追われ続けて、緊張し続けていた渉が人ではない男に警戒心を解き、力が抜けるほどに男の雰囲気は軽かった。
「あ、ありがとうございます」
頭を庇うように交差させていた両手を力なく降ろし、呆然としたまま渉は男へと感謝の言葉を述べる。
「うむ」
渉の感謝の言葉に気を良くしたような男は、にんまりと狐のように笑った。その笑みを見て渉は、本当に助かったのだという実感が込み上げ、その頬を涙が濡らす。
「どうした?怖かったのか?」
「っ、ひっ……だ、大学の、ところから……ずっと、逃げてて……」
「ふむ、あそこからか……随分と頑張って逃げてきたのだな」
涙を拭う事も出来ない渉の話を聞きながら、男は渉へと視線を合わせるように屈み、白い小袖の袖で渉の涙を拭う。その手は、子供をなだめるような優しい手つきで、渉の目からはいっそう涙があふれた。
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