25 / 83
二章:二度目の幽世
25:お守り
しおりを挟む
「我に、名を訪ねるとはな!だが、人の子に名乗る名は持ち合わせていなくてな。神や我ら神使にとって名は、真名。気軽に教える事のできるものではないのだ」
そう言いながらも男の表情は柔らかく、気分を害したような雰囲気はない。
「だが……そうだな。通り名を考えておくのも一興か」
楽し気に笑う男は、渉の頭を撫でながら呟く。
「今は教えられぬが、次は楽しみにしているといい」
(また、こんな事があるのは嫌なんだけど……この人とまた会えるのなら……って、いやいやいや。ない方がいいに決まってるって)
次はない方がいいと思いながらも、次があれば男と会える……と、考えた自分の思考を散らす。
(そうだ。お礼言わないと)
このままでは、この前の二の舞になると思った渉は、男の膝からなんとか起き上がり、深く頭を下げた。
「あ、あの……今回もありがとうございました」
「気にすることは無い。我自身の管轄内での助けに応えただけだ。翌日律儀に礼を言いに来た姿に好感を持ったのもあるしな。もし……また何かあれば呼ぶといい」
渉の言葉に嬉しそうに笑う男。
(翌日にお礼言いに来てよかった……)
もし、礼儀を尽くしていなければ助けてもらえなかったかもしれない事が頭に浮かび、渉は少し肝を冷やした。
「動けるようだし、今日は現世に送るくらいにしよう。目を瞑ってもらえるか?」
「……はい」
名残惜しいが、ずっとここに留まるのも良くないのは、渉もわかっている。男に言われるままに渉が目を瞑れば、額に指の先が当たったような感覚がした。
「ではな。渉」
「っ……!」
名前を呼ばれた事に驚き、目を見開くが既に男の姿は消えていた。開けた視界の先に人のいる社務所が映る。
(一瞬で戻って来た……)
目を閉じた僅かな時間で現世に戻って来た事に驚きながらも、今回も無事に戻ってこれた事に安堵する。
(……もう一度、お礼を言ってから帰ろう)
言葉で礼を述べはしたが、礼儀としてお礼参りはしておこうと、渉は立ち上がり拝殿へと向かう。
賽銭を投げ、鈴を鳴らして二礼二拍一礼をして今回の礼を改めて告げた。そして、拝殿を後にしたのだが……渉の視線に社務所の窓口にいくつも並んだお守りが目に入る。
(……せっかくだし買っていこうかな)
この戸夜見に来てからというもの災難続き。いくら神使である男が助けてくれるからと言って、自衛をするのも大事だろう。と、渉の足は、自然と社務所へと進んだ。
「あの、厄除けのお守りってありますか?」
「はい、こちらですよ」
社務所の中にいた巫女に渉が声をかけると、若い女性の巫女は厄除けのお守りを手で示す。
「じゃあ、一つ」
「はい、厄除け守を一体ですね。ありがとうございます」
深緑色のお守りを一つ受け取り、渉は境内を後にした。
(せめて、今月は無事に過ごせますように!)
そんな事を願いながら。
そう言いながらも男の表情は柔らかく、気分を害したような雰囲気はない。
「だが……そうだな。通り名を考えておくのも一興か」
楽し気に笑う男は、渉の頭を撫でながら呟く。
「今は教えられぬが、次は楽しみにしているといい」
(また、こんな事があるのは嫌なんだけど……この人とまた会えるのなら……って、いやいやいや。ない方がいいに決まってるって)
次はない方がいいと思いながらも、次があれば男と会える……と、考えた自分の思考を散らす。
(そうだ。お礼言わないと)
このままでは、この前の二の舞になると思った渉は、男の膝からなんとか起き上がり、深く頭を下げた。
「あ、あの……今回もありがとうございました」
「気にすることは無い。我自身の管轄内での助けに応えただけだ。翌日律儀に礼を言いに来た姿に好感を持ったのもあるしな。もし……また何かあれば呼ぶといい」
渉の言葉に嬉しそうに笑う男。
(翌日にお礼言いに来てよかった……)
もし、礼儀を尽くしていなければ助けてもらえなかったかもしれない事が頭に浮かび、渉は少し肝を冷やした。
「動けるようだし、今日は現世に送るくらいにしよう。目を瞑ってもらえるか?」
「……はい」
名残惜しいが、ずっとここに留まるのも良くないのは、渉もわかっている。男に言われるままに渉が目を瞑れば、額に指の先が当たったような感覚がした。
「ではな。渉」
「っ……!」
名前を呼ばれた事に驚き、目を見開くが既に男の姿は消えていた。開けた視界の先に人のいる社務所が映る。
(一瞬で戻って来た……)
目を閉じた僅かな時間で現世に戻って来た事に驚きながらも、今回も無事に戻ってこれた事に安堵する。
(……もう一度、お礼を言ってから帰ろう)
言葉で礼を述べはしたが、礼儀としてお礼参りはしておこうと、渉は立ち上がり拝殿へと向かう。
賽銭を投げ、鈴を鳴らして二礼二拍一礼をして今回の礼を改めて告げた。そして、拝殿を後にしたのだが……渉の視線に社務所の窓口にいくつも並んだお守りが目に入る。
(……せっかくだし買っていこうかな)
この戸夜見に来てからというもの災難続き。いくら神使である男が助けてくれるからと言って、自衛をするのも大事だろう。と、渉の足は、自然と社務所へと進んだ。
「あの、厄除けのお守りってありますか?」
「はい、こちらですよ」
社務所の中にいた巫女に渉が声をかけると、若い女性の巫女は厄除けのお守りを手で示す。
「じゃあ、一つ」
「はい、厄除け守を一体ですね。ありがとうございます」
深緑色のお守りを一つ受け取り、渉は境内を後にした。
(せめて、今月は無事に過ごせますように!)
そんな事を願いながら。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】
紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※番外編を公開しました(2024.10.21)
生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
【完結】ネクラ実況者、人気配信者に狙われる
ちょんす
BL
自分の居場所がほしくて始めたゲーム実況。けれど、現実は甘くない。再生数は伸びず、コメントもほとんどつかない。いつしか実況は、夢を叶える手段ではなく、自分の無価値さを突きつける“鏡”のようになっていた。
そんなある日、届いた一通のDM。送信者の名前は、俺が心から尊敬している大人気実況者「桐山キリト」。まさかと思いながらも、なりすましだと決めつけて無視しようとした。……でも、その相手は、本物だった。
「一緒にコラボ配信、しない?」
顔も知らない。会ったこともない。でも、画面の向こうから届いた言葉が、少しずつ、俺の心を変えていく。
これは、ネクラ実況者と人気配信者の、すれ違いとまっすぐな好意が交差する、ネット発ラブストーリー。
※プロットや構成をAIに相談しながら制作しています。執筆・仕上げはすべて自分で行っています。
捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~
水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。
死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!?
「こんなところで寝られるか!」
極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く!
ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。
すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……?
「……貴様、私を堕落させる気か」
(※いいえ、ただ快適に寝たいだけです)
殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。
捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
【完結】異世界転移で落ちて来たイケメンからいきなり嫁認定された件
りゆき
BL
俺の部屋の天井から降って来た超絶美形の男。
そいつはいきなり俺の唇を奪った。
その男いわく俺は『運命の相手』なのだと。
いや、意味分からんわ!!
どうやら異世界からやって来たイケメン。
元の世界に戻るには運命の相手と結ばれないといけないらしい。
そんなこと俺には関係ねー!!と、思っていたのに…
平凡サラリーマンだった俺の人生、異世界人への嫁入りに!?
そんなことある!?俺は男ですが!?
イケメンたちとのわちゃわちゃに巻き込まれ、愛やら嫉妬やら友情やら…平凡生活からの一転!?
スパダリ超絶美形×平凡サラリーマンとの嫁入りラブコメ!!
メインの二人以外に、
・腹黒×俺様
・ワンコ×ツンデレインテリ眼鏡
が登場予定。
※R18シーンに印は入れていないのでお気をつけください。
※前半は日本舞台、後半は異世界が舞台になります。
※こちらの作品はムーンライトノベルズにも掲載中。
※完結保証。
※ムーンさん用に一話あたりの文字数が多いため分割して掲載。
初日のみ4話、毎日6話更新します。
本編56話×分割2話+おまけの1話、合計113話。
恋なし、風呂付き、2LDK
蒼衣梅
BL
星座占いワースト一位だった。
面接落ちたっぽい。
彼氏に二股をかけられてた。しかも相手は女。でき婚するんだって。
占い通りワーストワンな一日の終わり。
「恋人のフリをして欲しい」
と、イケメンに攫われた。痴話喧嘩の最中、トイレから颯爽と、さらわれた。
「女ったらしエリート男」と「フラれたばっかの捨てられネコ」が始める偽同棲生活のお話。
ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?
灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。
オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。
ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー
獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。
そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。
だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。
話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。
そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。
みたいな、大学篇と、その後の社会人編。
BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!!
※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました!
※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました!
旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる