助けてお狐様!~大学デビューと共に幽世の戸を越えました~

海野璃音

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二章:二度目の幽世

25:お守り

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「我に、名を訪ねるとはな!だが、人の子に名乗る名は持ち合わせていなくてな。神や我ら神使にとって名は、真名。気軽に教える事のできるものではないのだ」

 そう言いながらも男の表情は柔らかく、気分を害したような雰囲気はない。

「だが……そうだな。通り名を考えておくのも一興か」

 楽し気に笑う男は、渉の頭を撫でながら呟く。

「今は教えられぬが、次は楽しみにしているといい」
(また、こんな事があるのは嫌なんだけど……この人とまた会えるのなら……って、いやいやいや。ない方がいいに決まってるって)

 次はない方がいいと思いながらも、次があれば男と会える……と、考えた自分の思考を散らす。

(そうだ。お礼言わないと)

 このままでは、この前の二の舞になると思った渉は、男の膝からなんとか起き上がり、深く頭を下げた。

「あ、あの……今回もありがとうございました」
「気にすることは無い。我自身の管轄内での助けに応えただけだ。翌日律儀に礼を言いに来た姿に好感を持ったのもあるしな。もし……また何かあれば呼ぶといい」

 渉の言葉に嬉しそうに笑う男。

(翌日にお礼言いに来てよかった……)

 もし、礼儀を尽くしていなければ助けてもらえなかったかもしれない事が頭に浮かび、渉は少し肝を冷やした。

「動けるようだし、今日は現世に送るくらいにしよう。目を瞑ってもらえるか?」
「……はい」

 名残惜しいが、ずっとここに留まるのも良くないのは、渉もわかっている。男に言われるままに渉が目を瞑れば、額に指の先が当たったような感覚がした。

「ではな。渉」
「っ……!」

 名前を呼ばれた事に驚き、目を見開くが既に男の姿は消えていた。開けた視界の先に人のいる社務所が映る。

(一瞬で戻って来た……)

 目を閉じた僅かな時間で現世に戻って来た事に驚きながらも、今回も無事に戻ってこれた事に安堵する。

(……もう一度、お礼を言ってから帰ろう)

 言葉で礼を述べはしたが、礼儀としてお礼参りはしておこうと、渉は立ち上がり拝殿へと向かう。

 賽銭を投げ、鈴を鳴らして二礼二拍一礼をして今回の礼を改めて告げた。そして、拝殿を後にしたのだが……渉の視線に社務所の窓口にいくつも並んだお守りが目に入る。

(……せっかくだし買っていこうかな)

 この戸夜見に来てからというもの災難続き。いくら神使である男が助けてくれるからと言って、自衛をするのも大事だろう。と、渉の足は、自然と社務所へと進んだ。

「あの、厄除けのお守りってありますか?」
「はい、こちらですよ」

 社務所の中にいた巫女に渉が声をかけると、若い女性の巫女は厄除けのお守りを手で示す。

「じゃあ、一つ」
「はい、厄除け守を一体ですね。ありがとうございます」

 深緑色のお守りを一つ受け取り、渉は境内を後にした。

(せめて、今月は無事に過ごせますように!)

 そんな事を願いながら。
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