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五章:恋心と葛藤と
56:帰宅許可
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二人の間に沈黙が流れる。その静寂を終わらせたのは、計測終了を知らせる体温計の高い音だった。
「どう?熱下がってる?」
「えっと……平熱みたいです」
体温計の音に戻ってきた養護教諭に渉が体温計を確認してから差し出す。養護教諭は、差し出されたを受け取り、覗き込んだ。
「少し高めだけどこれくらいなら大丈夫そうね」
返された体温計を自分の目でも確認した養護教諭は、これならもう大丈夫そうだと頷く。
「気分が悪くなければ帰っても良いけど、一人で帰れそうかしら?」
「は……」
「我が、送り届けるから大丈夫だ」
養護教諭の言葉に頷こうとした渉の言葉を遮るように穂が答えた。
「あら、なら安心ね。稲鍵君、今日はくれぐれも無理はしない事」
穂の言葉に養護教諭は笑みを浮かべ、渉へと注意を告げていく。
「水分だけじゃなく、塩分やミネラルもしっかりとってね」
「わかりました」
「よろしい」
頷いた渉に養護教諭は、頷くと穂へと視線を向ける。
「それじゃあ、狐野君よろしくおねがいするわね」
「任された」
そう言って養護教諭は、穂へと渉を託し、離れていった。
「さて、帰るとしようか。お主の荷物は、侑士が持ってきてある。着替えもな」
「あ……マジで?後で、礼言っとかなきゃ……」
「そうしておけ。あやつも心配していたからな」
サイドテーブルのしたから出てきた荷物に渉が呟くと穂が頷く。
「どうする、着替えるか」
「ん。作業服汗臭いし」
渉が保健室で休んでいる間に汗まみれだった作業服は乾いていたが、それでも汗臭さが消えているわけではない。着替える事ができるのなら着替えたかった。
「わかった。出ておこう」
荷物をサイドテーブルに置いた穂は、渉へと着替えを渡し、立ち上がると閉めたカーテンの裏に消える。
その心遣いをありがたく思いながら渉は、作業服を脱いだ。
(インナーも着替えよ……)
作業服の下に着ていたタンクトップも汗まみれなのは同じで、渉は予備のタンクトップに着替え、上から私服へと着替える。
「穂、おまたせ」
着替えた服をビニール袋に入れ、リュックへと詰め込む。リュックを手に渉はカーテンを開いて外で待っていた穂へと声をかけた。
「ああ、いこうか」
着替えた渉に穂は、柔らかな笑みを浮かべ、渉を迎える。
いつもなら綺麗な顔だと思う渉だったが、恋心を自覚したゆえにドキリと心臓が跳ね、同時に罪悪感が広がった。
二人は、養護教諭に見送られながら保健室を後にし、キャンパス内を歩く。
渉は、穂となにを話せばいいのかわからないまま、それを誤魔化すようにスマートフォンを取り出し、侑士や同級生、ゼミとサークルのグループチャットに体調が回復した事を報告していった。
「どう?熱下がってる?」
「えっと……平熱みたいです」
体温計の音に戻ってきた養護教諭に渉が体温計を確認してから差し出す。養護教諭は、差し出されたを受け取り、覗き込んだ。
「少し高めだけどこれくらいなら大丈夫そうね」
返された体温計を自分の目でも確認した養護教諭は、これならもう大丈夫そうだと頷く。
「気分が悪くなければ帰っても良いけど、一人で帰れそうかしら?」
「は……」
「我が、送り届けるから大丈夫だ」
養護教諭の言葉に頷こうとした渉の言葉を遮るように穂が答えた。
「あら、なら安心ね。稲鍵君、今日はくれぐれも無理はしない事」
穂の言葉に養護教諭は笑みを浮かべ、渉へと注意を告げていく。
「水分だけじゃなく、塩分やミネラルもしっかりとってね」
「わかりました」
「よろしい」
頷いた渉に養護教諭は、頷くと穂へと視線を向ける。
「それじゃあ、狐野君よろしくおねがいするわね」
「任された」
そう言って養護教諭は、穂へと渉を託し、離れていった。
「さて、帰るとしようか。お主の荷物は、侑士が持ってきてある。着替えもな」
「あ……マジで?後で、礼言っとかなきゃ……」
「そうしておけ。あやつも心配していたからな」
サイドテーブルのしたから出てきた荷物に渉が呟くと穂が頷く。
「どうする、着替えるか」
「ん。作業服汗臭いし」
渉が保健室で休んでいる間に汗まみれだった作業服は乾いていたが、それでも汗臭さが消えているわけではない。着替える事ができるのなら着替えたかった。
「わかった。出ておこう」
荷物をサイドテーブルに置いた穂は、渉へと着替えを渡し、立ち上がると閉めたカーテンの裏に消える。
その心遣いをありがたく思いながら渉は、作業服を脱いだ。
(インナーも着替えよ……)
作業服の下に着ていたタンクトップも汗まみれなのは同じで、渉は予備のタンクトップに着替え、上から私服へと着替える。
「穂、おまたせ」
着替えた服をビニール袋に入れ、リュックへと詰め込む。リュックを手に渉はカーテンを開いて外で待っていた穂へと声をかけた。
「ああ、いこうか」
着替えた渉に穂は、柔らかな笑みを浮かべ、渉を迎える。
いつもなら綺麗な顔だと思う渉だったが、恋心を自覚したゆえにドキリと心臓が跳ね、同時に罪悪感が広がった。
二人は、養護教諭に見送られながら保健室を後にし、キャンパス内を歩く。
渉は、穂となにを話せばいいのかわからないまま、それを誤魔化すようにスマートフォンを取り出し、侑士や同級生、ゼミとサークルのグループチャットに体調が回復した事を報告していった。
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