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辺境の村の神子
三話
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「ああ、こんなにも痛々しい姿になってしまって……ワイバーンの目撃情報を報告されたと共に駆けたのに間に合わず申し訳ありません神子様」
馬から降りたその人は土に汚れた俺を抱き上げて、俺の顔を覗き込む。なんで、俺が神子だと気づいたのか聞きたいことはあるが、近距離での超絶美形はめちゃくちゃ眩しかった。
「どこか痛い所はありませんか?」
「かた……っ」
俺の顔についた土を拭いながら超絶美形のお兄さんが聞いてきたので、動きすらしない肩を答える。
「少し見ますね」
「っ!」
「……折れていますね。すぐに治すのでもう少し堪えてください」
俺の肩に少し触れたお兄さんは怪我の状態を把握したのか、俺の肩に手をかざしたまま言葉を紡ぐ。
「我らを慈しみ見守る癒しの神よ、この幼き愛し子の怪我を治したまえ……癒しの息吹よ」
お兄さんの手から温かな光が灯り、肩の痛みが徐々に収まっていく。お兄さんの顔面偏差値に痛みを忘れていたけど、治療されていたら確かに痛かったんだなぁ……。折れてるなら当たり前だけど。
「これでいいでしょう……いかがですか?」
「すごいっ!治ってます!」
光が収まると、今まで動かせなかった腕が動かせるようになっていて驚く。故郷でも魔法を使える人は居たし、神殿でもいくつか見せてもらったけど怪我がひどくなるほど治すってのは難しいと聞いていたからこのお兄さんが凄い人だって言うのがわかる。
ワイバーンを倒した魔法だって見えなかったけど、一撃で消し飛ばしてると考えたら攻撃魔法も回復魔法も一流の人なのだろう。
「それならよかった」
俺の言葉を聞いてお兄さんが圧倒的に整った顔面で微笑む。ぐぅ……イケメン過ぎる……。瞼を閉じれば、焼きついたその姿が浮かぶほどに眩しい。
だが、お兄さんは俺から視線をそらすと、その表情は冷徹といえるほどの無表情へと変わり、馬車の中で震えている迎えに来た嫌味神官へと凍てついた視線を向けた。
「……なぜ、お前はそこにいる。そして、なぜ神子様が外に出ているのだ」
「そ、それは……み、神子様がご自身で出られたのです……!」
お兄さんの言葉にどもりながら答える嫌味神官。いやいや、お前がほっぽりだしたんじゃないか。なに嘘ついてるんだ。って、口を開こうとしたら、俺より先にお兄さんが口を開いた。
「なるほど……その言葉に偽りはないな?」
「ひっ……」
地を這うような声色に神官が息を飲む。
「その言葉が事実か……神に判断してもらうとしよう」
「っ、あ……お、お待ちください!アオレオーレ様っ!」
「裁きの神の加護を持つ者の名のもとに!証人の言葉の審議を求める!偽りを述べたものには罰を!真実を述べたものには許しを!神の審判!」
「あ、あ……あぁあああっ!」
雲一つない空から一筋の雷が馬車へと降り注ぐ。神官からは断末魔のような悲鳴が上がり、その体が馬車の床に崩れ落ちた。
「ひっ……」
ワイバーンすら消し飛ばしたお兄さんだから、嫌味神官が死んだんだと思って悲鳴を漏らす。さすがに、目の前で人が殺されるのを目撃するのは怖かった。
「ああ……申し訳ありません。驚かせてしまいましたね。生きてはいるのでご安心ください。かの者は偽りを述べた事により、その身に相応しい苦痛を味わっているだけですので」
怯える俺にお兄さんが優しく落ち着いた声で語り掛け、俺の目を手で覆う。
「ですが、あなた様に見せるモノでなかったのは事実。今は、馬車の外も凄惨な状態ですし……今しばらくこうさせていただきますね」
お兄さんの言葉に、護衛の存在を思い出す。痛みとワイバーンからの恐怖で頭から抜けていたが、ワイバーンが俺の所に来たと言う事は、護衛達はすでに戦える状態ではないと言う事。そして、僅かに漂っている血の匂いと風の吹く音しか聞こえないゆえに、生きてはいないだろうと言う事が察せられた。
「っ……」
お兄さんが来てくれなければ、俺もそうなっていたのは言うまでもない。改めて湧き上がってきた恐怖に体が震えた。
「大丈夫ですよ神子様。今は私が居ます。何があっても、あなたを守る事を我らが神へと誓いましょう」
お兄さんの手に覆われた闇の中、その落ち着いた優しい声と手から伝わる温もりに安堵する。大神殿にも事情があるかもしれないけど、最初からこの人が来てくれていたら、道中の嫌な思いも怖い思いもしなくて済んだかもしれないと思った。
「アオレオーレ様!神子様はご無事ですか!」
お兄さんの腕に大人しく収まっていると、馬の駆ける音と共に他の人の声が聞こえる。お兄さんの手で見えないが、多分神官か護衛の人だと思う。
「無事だ。代えの馬車は?」
「最寄りの町で待機しております」
「わかった。馬車にいるそれは、連れ帰って牢に放り込んでおけ」
淡々としたお兄さんの言葉。俺への対応との温度差を感じるけど、どっちがお兄さんの素なのだろうか。
「神子様、町まで私の馬で向かいます。しばらくご自身で目をつぶっていただけますか?」
「わかりました」
お兄さん達の会話に聞き耳を立てていたら、そうお願いされたので言われた通りに目をつぶる。護衛の人の死体は見たくないからね。
「馬に乗せますので動かないでください」
馬になんて乗った事がないから、目をつぶったまま乗るのは怖いが抱えなおされて、おそらく鞍の上に乗せられたから大人しくしておく。
「それでは、失礼します」
そう言ってお兄さんも馬に乗ったのか少し揺れるがすぐに抱えなおされて、横向きに座らされた。体の右側をお兄さんの体に持たれさせて、座っている感じ的に創作で見る王子様の前に座ってるお姫様ポジション……。受けちゃんがされてるのはときめくけど、俺がされるのは解釈違いだ……!
とか、内心呻いていたら頭の上からお兄さんの声が降ってくる。
「進みますね。支えていますが、神子様も私につかまってくださると助かります」
「っ……!」
馬が動き出すと目をつぶっているせいか揺れを大きく感じてお兄さんの体へと腕を回ししがみつく。
うわっ、解釈違いだけど、これはドキドキする。乙女になる。さっきまでも抱えられていたけど、お兄さんの胸のあたりに顔があるからお兄さんの鼓動が聞えるのだ。
とくとくとした鼓動は、ただ触れているよりも密着しているっていう感じがする。低身長の受けちゃんが高身長の攻め君に抱きしめられて、○○君の音が聞えるとかときめくのもわかる。俺でなければ……俺でなければ……!
「もう目を開けても大丈夫ですよ」
萌と解釈違いでの葛藤に苦しんでいたら、お兄さんの声と共に頭を撫でられる。優しい手つきで撫でられるのは心地よく、このまま目をつぶっていたいくらいだが、それだと眠ってしまいそうなので瞼を開けるのだった。
馬から降りたその人は土に汚れた俺を抱き上げて、俺の顔を覗き込む。なんで、俺が神子だと気づいたのか聞きたいことはあるが、近距離での超絶美形はめちゃくちゃ眩しかった。
「どこか痛い所はありませんか?」
「かた……っ」
俺の顔についた土を拭いながら超絶美形のお兄さんが聞いてきたので、動きすらしない肩を答える。
「少し見ますね」
「っ!」
「……折れていますね。すぐに治すのでもう少し堪えてください」
俺の肩に少し触れたお兄さんは怪我の状態を把握したのか、俺の肩に手をかざしたまま言葉を紡ぐ。
「我らを慈しみ見守る癒しの神よ、この幼き愛し子の怪我を治したまえ……癒しの息吹よ」
お兄さんの手から温かな光が灯り、肩の痛みが徐々に収まっていく。お兄さんの顔面偏差値に痛みを忘れていたけど、治療されていたら確かに痛かったんだなぁ……。折れてるなら当たり前だけど。
「これでいいでしょう……いかがですか?」
「すごいっ!治ってます!」
光が収まると、今まで動かせなかった腕が動かせるようになっていて驚く。故郷でも魔法を使える人は居たし、神殿でもいくつか見せてもらったけど怪我がひどくなるほど治すってのは難しいと聞いていたからこのお兄さんが凄い人だって言うのがわかる。
ワイバーンを倒した魔法だって見えなかったけど、一撃で消し飛ばしてると考えたら攻撃魔法も回復魔法も一流の人なのだろう。
「それならよかった」
俺の言葉を聞いてお兄さんが圧倒的に整った顔面で微笑む。ぐぅ……イケメン過ぎる……。瞼を閉じれば、焼きついたその姿が浮かぶほどに眩しい。
だが、お兄さんは俺から視線をそらすと、その表情は冷徹といえるほどの無表情へと変わり、馬車の中で震えている迎えに来た嫌味神官へと凍てついた視線を向けた。
「……なぜ、お前はそこにいる。そして、なぜ神子様が外に出ているのだ」
「そ、それは……み、神子様がご自身で出られたのです……!」
お兄さんの言葉にどもりながら答える嫌味神官。いやいや、お前がほっぽりだしたんじゃないか。なに嘘ついてるんだ。って、口を開こうとしたら、俺より先にお兄さんが口を開いた。
「なるほど……その言葉に偽りはないな?」
「ひっ……」
地を這うような声色に神官が息を飲む。
「その言葉が事実か……神に判断してもらうとしよう」
「っ、あ……お、お待ちください!アオレオーレ様っ!」
「裁きの神の加護を持つ者の名のもとに!証人の言葉の審議を求める!偽りを述べたものには罰を!真実を述べたものには許しを!神の審判!」
「あ、あ……あぁあああっ!」
雲一つない空から一筋の雷が馬車へと降り注ぐ。神官からは断末魔のような悲鳴が上がり、その体が馬車の床に崩れ落ちた。
「ひっ……」
ワイバーンすら消し飛ばしたお兄さんだから、嫌味神官が死んだんだと思って悲鳴を漏らす。さすがに、目の前で人が殺されるのを目撃するのは怖かった。
「ああ……申し訳ありません。驚かせてしまいましたね。生きてはいるのでご安心ください。かの者は偽りを述べた事により、その身に相応しい苦痛を味わっているだけですので」
怯える俺にお兄さんが優しく落ち着いた声で語り掛け、俺の目を手で覆う。
「ですが、あなた様に見せるモノでなかったのは事実。今は、馬車の外も凄惨な状態ですし……今しばらくこうさせていただきますね」
お兄さんの言葉に、護衛の存在を思い出す。痛みとワイバーンからの恐怖で頭から抜けていたが、ワイバーンが俺の所に来たと言う事は、護衛達はすでに戦える状態ではないと言う事。そして、僅かに漂っている血の匂いと風の吹く音しか聞こえないゆえに、生きてはいないだろうと言う事が察せられた。
「っ……」
お兄さんが来てくれなければ、俺もそうなっていたのは言うまでもない。改めて湧き上がってきた恐怖に体が震えた。
「大丈夫ですよ神子様。今は私が居ます。何があっても、あなたを守る事を我らが神へと誓いましょう」
お兄さんの手に覆われた闇の中、その落ち着いた優しい声と手から伝わる温もりに安堵する。大神殿にも事情があるかもしれないけど、最初からこの人が来てくれていたら、道中の嫌な思いも怖い思いもしなくて済んだかもしれないと思った。
「アオレオーレ様!神子様はご無事ですか!」
お兄さんの腕に大人しく収まっていると、馬の駆ける音と共に他の人の声が聞こえる。お兄さんの手で見えないが、多分神官か護衛の人だと思う。
「無事だ。代えの馬車は?」
「最寄りの町で待機しております」
「わかった。馬車にいるそれは、連れ帰って牢に放り込んでおけ」
淡々としたお兄さんの言葉。俺への対応との温度差を感じるけど、どっちがお兄さんの素なのだろうか。
「神子様、町まで私の馬で向かいます。しばらくご自身で目をつぶっていただけますか?」
「わかりました」
お兄さん達の会話に聞き耳を立てていたら、そうお願いされたので言われた通りに目をつぶる。護衛の人の死体は見たくないからね。
「馬に乗せますので動かないでください」
馬になんて乗った事がないから、目をつぶったまま乗るのは怖いが抱えなおされて、おそらく鞍の上に乗せられたから大人しくしておく。
「それでは、失礼します」
そう言ってお兄さんも馬に乗ったのか少し揺れるがすぐに抱えなおされて、横向きに座らされた。体の右側をお兄さんの体に持たれさせて、座っている感じ的に創作で見る王子様の前に座ってるお姫様ポジション……。受けちゃんがされてるのはときめくけど、俺がされるのは解釈違いだ……!
とか、内心呻いていたら頭の上からお兄さんの声が降ってくる。
「進みますね。支えていますが、神子様も私につかまってくださると助かります」
「っ……!」
馬が動き出すと目をつぶっているせいか揺れを大きく感じてお兄さんの体へと腕を回ししがみつく。
うわっ、解釈違いだけど、これはドキドキする。乙女になる。さっきまでも抱えられていたけど、お兄さんの胸のあたりに顔があるからお兄さんの鼓動が聞えるのだ。
とくとくとした鼓動は、ただ触れているよりも密着しているっていう感じがする。低身長の受けちゃんが高身長の攻め君に抱きしめられて、○○君の音が聞えるとかときめくのもわかる。俺でなければ……俺でなければ……!
「もう目を開けても大丈夫ですよ」
萌と解釈違いでの葛藤に苦しんでいたら、お兄さんの声と共に頭を撫でられる。優しい手つきで撫でられるのは心地よく、このまま目をつぶっていたいくらいだが、それだと眠ってしまいそうなので瞼を開けるのだった。
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