転生腐男子、BLゲー主人公となり解釈違いだと叫ぶ。

海野璃音

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神子は大神殿に到着する

七話

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 激動の一日から一夜明けて、俺は村から乗ってきた馬車より上質な馬車で揺られている。

「あともう少しで王都に……大神殿につきますよ」

 俺の正面に座っているレオーレ様が窓の外を眺めていた俺へと声をかけ、微笑む。

 その言葉の通り窓から見える景色には道行く旅人やほかの馬車の姿も増えてきていた。そして、そのどれもがこの馬車を避けるように道を開け、祈るように跪いていく。

「あの……外の人達が跪いているのは……なぜなんでしょう?」
「それはこの馬車が大神殿の上位神官が与えられる紋章を刻んでいるからですね。平民からすれば大神殿の神官というものは、神に仕えながらも民の為に祈り、時に手を差し伸べる存在。貴族と同等か……それ以上に敬われる存在なのです」

 その言葉に、大神殿の神官でこうなら神子である俺相手なら一体どうなってしまうんだろうかと頭をよぎる。

 村では、儀式の後すぐに神殿に入ったし、神官のにーちゃん達からめちゃくちゃ敬われながら世話されたけど、それは神官だから神子を特別視しているのだと思っていたのだ。

 そして、ゲームでは学園が子供の貴族社会といった感じだったから、正直平民生まれの神子というのは扱いが悪かった。だから、平民からもそこまで神子は敬われる存在ではないと思っていた。思っていたのだが……。

 これを見ていると、今までの浮かれた気持ちで神子を務めるのはダメな気がする。

 元々、潜みに潜み、腐男子生活を送っていた事なかれ主義の社畜だった俺。外の景色を見て、俺は神子だから凄い!と、思いあがれるほど図太くはなかったのだと自覚した。

「……レオーレ様。俺は、こうやって敬われるに相応しい神子になれるかな?平民生まれだし……神殿の事も教えの事もほとんど知らないけど」

 窓の外を見つめたまま呟いた俺の言葉にレオーレ様が眼を見開いたのが視界の端に映る。だが、俺は答えを求めるのが怖く、レオーレ様の方を見ることができなかった。

 神子としてその地位に相応しいほどの行いというのは、正直前世の知識をもってしてもわからない。なぜなら、あのゲームは神子の嫁入り先を見つける為の学園恋愛ゲームだから神子としての詳細はほとんど書かれていなかったのだ。

 まあ、貴族に嫁入りすれば数代国が富むのだから、それだけでも役目は果たしているのだろうけど。なんか……自分自身の事になると解釈が違うんだよな。

 昨日は、死にかけてこの世界で生きていく自覚を得た。そして、今日はこの光景を見て神子としての自覚を得たんだと思う。

「……何をもってして敬われるに相応しい神子足れるかというのは、私にもわかりません」

 窓の外を見ながら思い悩んでいると、レオーレ様が口を開き、俺の呟きへの答えを返し始めた。

「ですが、そのように相応しくありたいと思う事がきっとルカ様の思う相応しい神子としての始まりでしょう。一人では迷うこともあると思います。しかし、創造神を筆頭に神々への信仰が正しい導となることでしょう。そして……」

 言葉を溜めるように切ったレオーレ様に視線を向ける。

「私達神官がいます。昨日のような目にあったルカ様からしたら信じられないかもしれませんが、私達は民だけではなく、あなた方神子を支える事が役目。いつでも頼ってください」
「……これからも、レオーレ様に頼ってもいいんですか?」
「もちろん。ルカ様が望むのならいくらでもお申しつけくださって構いません」

 柔らかく微笑むレオーレ様に胸が熱くなった。レオーレ様が支えてくれるのなら、きっと神子として正しくいられると思う。

「ありがとうございます……立派な神子になれるように頑張りますね!」
「ええ……ですが、あまり気を追わないでくださいね。頑張りすぎて疲れてしまいますから」
「はい……でも、頑張るのは得意なので大丈夫だと思います」

 穏やかに苦笑するレオーレ様に少し抑えつつも大丈夫だと答える。前世は社畜、今世は親戚の家で使用人扱い。頑張るのは十八番のようなものだ。

「っと、そろそろ王都の城門にたどり着くころですね。窓からだとあまり見えませんが王都を囲む城壁は圧巻ですよ」

 窓の外に視線を向けたレオーレ様の言葉に俺は馬車の窓から外を覗き込んだ。

「……ん?……っ!」

 道と城壁が垂直に続いているから見づらかったけど、近づくにつれて高く長い城壁が見えてくる。

「スッゲー!めっちゃ高い!」

 高さ的には、三階?四階?くらいの高さだろうけど、その高さの石壁がぐるー----っと、町を囲んでると思うとただただ凄い。前世で高層ビルとかあったけど、それとはまた違う凄さがあるんだよ!言ってしまえば、ファンタジー的なロマンがある!

「っ……ふふっ」

 興奮する俺に正面にいたレオーレ様が口元を隠しながら笑う。その様子に嫌味神官に軽蔑された事を思い出してサッと青ざめた。せっかく仲良くなったのに嫌われてしまったらどうしよう。

「う、あ……す、すみません」
「ああ、謝らないでください。出会ってから大人びいた話し方をしていたので、年相応なところもあるのだと思って……ですが、笑うのは失礼でしたね。申し訳ありませんでした」

 深々と頭を下げるレオーレ様に焦る。そして、あの嫌味神官と重ねてしまった事を反省した。

「い、いえ……!レオーレ様は悪くないです!ただ……村を出る時に、迎えに来た馬車を見て、似たような事を言ったら迎えに来た神官様を怒らせてしまって……」
「……そうでしたか。ワイバーンの襲来の時といい、道中の事といい、あの男は……誠に申し訳ありません」
「謝らないでください!レオーレ様に謝られると落ち着かないんです!」

 そう、落ち着かないのだ。レオーレ様は心から悪いと思っているから何度も謝ってくれるのだと思うのだが、綺麗な人に悪くもないのに謝られるのは本気で心臓に悪い。

「っ……あっ!レオーレ様、城門に入りましたよ!」

 何とか話を変えようと、強引に通りかかった城門について口に出す。青空が見えていた外は、城門に入ってからは石壁に覆われ薄暗くなり、馬車の中にも影が差す。

 そして、城門を通り抜けると再び青空が見え、その下には石畳の道に赤レンガの屋根と白い石壁でできた建物といかにもファンタジー系王都といった街並みが現れたのだった。

「うわぁ~……!」

 あまりにも王道ファンタジーって感じの街並みについに言葉を失う。村もファンタジー的な村だったけど、木の壁に藁?の屋根って感じだったから地味だったんだ。唯一の石造の建物が神殿くらいだったし。

「レオーレ様!大神殿ってどこにあるんですか!?」
「町の中央にありますよ。ここからは馬車の速度も落ちますから……あと十分程度でしょうか」

 この街並みにある大神殿はすっごくいい景色だろうなと思って、レオーレ様に聞いてみたらまさかの答え。スピード落ちた馬車でも十分って広いな王都!俺のいた村は端から端までいっても十分とかだったのに!時計なかったからたぶんだけど!

 話を変えると話題に出した街並みだったけど、見ているだけで楽しくなってくる。神子の自覚は芽生えたけど、こういう事は楽しんでもいいよね?だって、オタクで腐男子なので、ファンタジー大好きなんだ。
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