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神子の大神殿での日々

二十一話

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 春になり、また俺の同年代への対人耐性を試すということで、シオンが呼ばれる事になった。

 さんざん手紙で話したのだ。今度こそ、今度こそ大丈夫!前回のような醜態は晒さない!

 そう思っていた俺の前に、金髪碧眼の美少年が立っている。

 シオンだけって!シオンだけって言ってたのに!!

 隣に立つシオンより、ハッキリとした目鼻立ちの彼は、さすがメインヒーローと言った容貌……。

 そう!初めましての彼は、この国の第一王子!いずれは立太子してこの国の王になるであろう方!

 そして、国的には俺を嫁がせたいナンバーワン!!レックス王子である!!

 なんで!?なんで来たの!?推しと推しが……推しカプが来た……!?

 次来るのは、ジェレミアだと踏んでいたのに!?ラスボス、ラスボスが来た!?

 シオンを迎える為に、扉がノックされたと同時に立ち上がっていた俺。あまりの衝撃でよろめきそうになる。

 推しカプ、推しカプが存在している。並んでいる。尊い……。そして、俺の命の危機。

 混乱する俺を余所ににこやかに笑うレックス。

 あぁああああっ!正統派王子スマイルぅうううう!!

「あなたが神子であるルカだね。私はレックス。よろしく頼む」
「は、い……私がルカ……です。よろしくお願いします。」

 王子だと名乗らないのは、俺に気を使わせないためか……は、わからないけど、王子と名乗っていない俺がレックスを王子だと認識しているわけにはいかない。

 なんとか取り繕うとするけど、たぶん無理です。これ、早めに限界迎えます……!

 俺が倒れないか様子を伺っているリアン。そして、同席してくれているレオーレ様。

 部屋の、部屋の顔面偏差値が高い……高すぎる!俺含めて!

「シオンから話は聞いているよ。面白い子だとね」
「え……ぁ……はい、そうです。シオン、様とは文通で、仲良くしてもらってます……」

 ガッチガチの俺に、ニコニコなレックス王子。それにちょっと不満そうなシオン。

 考えたら、俺の存在で婚約を白紙にされた相手と俺との繋ぎになるってなんと言うなんと言う残酷な事を……。

「……レックス様。そろそろ止めてやった方がいいと思います」

 シオンがレックスに声をかけたお陰でレックスの視線が俺から外れる。あ……俺、息忘れてた。

 視線がそれたことによって、息が出きると気づいた俺だったけど……。

「おや……私がルカばかり見ているから焼きもちかなシオン?」

 なんて、面白そうに笑ったレックスにトドメを刺される。

 いや、だってさ。シオン相手に柔らかく笑うんだぜ?これはもう、惚の字でしょう。

 推しカプは、俺の思い過ごしではなく存在していた。

 人生に悔い無し……。

 瞼が自然と落ち、体から力が抜ける。あんなもの見たら耐えられるわけがないって。

「って、遅かったぁああああ!」
「ルカ様ぁああああっ!」

 シオンとリアンの叫び声を聞きながら、俺は意識を手放した。





 なにやら、人の存在を感じて目を開ける。

「あ、起きた」

 目の前には、小悪魔系美少年。ここが天国かとまた目を閉じた。

「こら、起きろ!現実逃避するんじゃない!」

 俺を起こすように体を揺らすシオン。なんだか、朝起こしに来る幼馴染みシチュを感じる。……解釈違いだから起きよう。

「起きます起きます。揺らさないでシオン……」

 のそのそと起き出せば、視界に映るのは、シオンの後ろで笑っているレックスとこちらを見ているレオーレ様。

 すぅ……。

「寝るなあああああ!」

 起き上がったのにまた横になった俺に、シオンが叫ぶ。いや、無理だよ無理。金髪碧眼の正統派王子様と超絶美形がダブルで並んでたら直視なんてできないよ。

 レックスがいるのに寝てるとか不敬にも程があるけど、無理だよぉ……。

 だって、輝いてるんだもの。俺、浄化されちゃう。俺が神子なのに……。

「シオンは、ルカと本当に仲がいいね」

 閉じられた視界の中、楽しそうに笑うレックスの声が聞こえる。恐れ多い恐れ多いよ。だって、文通で相手してもらってるだけだもん。

 ちょっと、友達には慣れたかなと思うけど。

「いえ……その、なんかほっとけないんです。会うのは二回目ですけど……手紙でもどこか抜けてるし……」
「え、そうなの……?」

 思わず、目を開けて尋ねれば、呆れたような視線が向けられる。あ……その視線すっごくご褒美です。

「そうだよ。僕のオススメのお菓子を食べすぎて、世話係に怒られたとか報告してくるじゃないか。もう……子供って歳じゃないのに」

 肩を竦めるシオン。いや、だって美味しいし……。というか、レオーレ様やレックスにそれを聞かれたのがちょっと恥ずかしい。

「へぇ……清廉潔白な神子だと伝わっていたから、そう言うところがあるとは予想外だ。可愛らしいじゃないか」

 うう……推しに、この国の王子に俺の恥ずかしいところを知られてしまった……いや、まだマシか。腐男子……この世界的には、他人の色恋で妄想するような人間だと知られるよりはずっといい。

「レックス様。シオン様。そろそろお時間です」
「おや、そんな時間か」

 レオーレ様が声をかけた事により、俺は面会時間いっぱい気を失っていた事を知る。

 や、やってしまった……。前よりはマシだけど……確実にやらかしてしまった……!

「も、申し訳ありません……!」
「謝らなくて大丈夫だよ。今日は私も突然訪れたしね。君に心労をかけたのはこちらの方だ」

 起き上がって、謝る俺にレックスは、笑みを浮かべて首を振る。

「また機会があれば、話せると嬉しい」

 ぐ……すっごいいい人だ。これぞ、正統派王子……。

 とりあえず、見送りはしようと寝かされていたソファーから立ち上がる。……今度は、ベッドも用意してもらおうかな。たぶん、どう頑張っても倒れそうだし……。

「それでは、ルカ、レオーレ。今日はありがとう」

 微笑むレックスに堪えていると、その隣にいたシオンが俺の手を掴んだ。

「次は、もうちょっと話せるように頑張れよ」

 ちょっとふてくされた表情で俺を見つめるシオン。そういえば、手紙では今度はちゃんと話せるように頑張ると伝えていたんだっけ……レックスで全部吹っ飛んだけど。

「う、うん……頑張る!」

 俺の答えにシオンは満足そうに笑って、レックスと帰って行った。

 そして、俺はシオンの満面の笑みにキャパオーバーして、熱を出したのだった。
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