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神子の大神殿での日々

二十七話

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 レオーレ様に触れてもらえなくなって数ヶ月が過ぎた。

 シオンとの仲は、相変わらず共犯者な友人を保っているけど、何も知らない周りからはやはり、婚約者候補筆頭として扱われている感じはする。

 ナザール様とのお茶会の際にも、シオンの事が話題にあがるくらいには。

「最近、シオン様とはいかがですか?」
「仲良くしてもらってます。ただ、まだマナーについて注意される事も多いですけど……」
「シオン様は、貴族社会の子息の中でも身分の高い方ですからね。我々のように神に仕えるべく、貴族社会から離れた者に比べたら、望むレベルが高いのでしょう」

 叱られている事を思い出しながら苦笑する俺に、ナザール様はそう告げる。

 シオンの身分が高いのは当然だけど、それ以上に幼い頃から王太子の婚約者として王太子妃教育や王妃教育を浮けていたのが厳しさの原因だとは思う。

 それと、俺が神殿に戻るとしても、生まれのせいで貴族に舐められないように、神子として完璧を目指させたいってのもあるんだろう。

 未だに授業はレオーレ様がしてくれるけど、その成果をシオンに見せて、より細かく直されているって感じだ。

 褒めてくれる時は褒めてくれるけど……作法に関してはホント厳しいんだ……。

 毎回ちょっと凹むけど、シオンの持ってきてくれるお土産で回復する俺はチョロいと思う。

「……誰を選ぶかは、ルカ様次第ではありますが……シオン様との関係は、大切にすると良いでしょう。きっと、貴方を助けてくれるはずですから」

 シオンの話をしていると、ナザール様がそんな事を話す。

 その言葉は、シオンを選ばない可能性も含めたものだったので少し驚いた。

 でも、今シオンと仲良くても、学園に行ったらその関係も変わるかもしれない。

 その事を含めた言葉なのだろう。

「はい。シオンは友達ですから」

 ナザール様の言葉にそれだけ答えて、しばらくまた別の事を話してからお茶会を終えた。

 ナザール様の部屋を後にし、俺はリアンを連れて、神殿の廊下を歩く。

 廊下の外にある庭は、青々とした木々が枝を伸ばし、爽やかな風に揺れていた。

「リアン。少し庭に出ていい?」
「ええ、構いませんよ」

 この後特に予定は入っていないはずだから、少し散策しようとリアンに声をかけてから、廊下から庭へと降りる。

 庭は砂利と芝生で覆われていて、生け垣や低木で飾られている。春であれば花に覆われているが、今の季節は緑が眩しい。

 木々の揺れる音を聞いていると、俺の側に椅子とテーブルが用意されていた。

「ありがとうリアン」
「いえ」

 リアンが手配した椅子に座って、風と木々の音を楽しんでいると、廊下を他の神官と一緒に歩いていたレオーレ様と目が合った。

 目の合ったレオーレ様は、柔らかく笑みを浮かべ、軽く手を振ってくれる。

 それが嬉しくて俺も笑みを浮かべて手を振り返した。

 引き締まった顔で仕事をしているのに、俺を見ると笑みを浮かべてくれる姿が尊い。

 節度は保たれているけど……レオーレ様はなんだかんだ俺に優しい。

 それが寂しくないかと言われたら寂しいんだけど。

「休憩中ですか?」
「うん……なんだか風が気持ち良さそうだと思って」
「確かに……今日は風が心地よいですね」

 神官達と別れて庭まで降りてきたレオーレ様が俺の言葉に頷き、ざわめく木々へと視線を向けた。

「……レオーレ様も休憩されませんか?」

 最近、部屋でのお茶会を断られる事もあるが、一目のある庭ならまだ一緒に過ごしてくれるんじゃないか?なんて、思ってレオーレ様を誘ってみる。

 チラリと視線を向ければ、レオーレ様は少し悩んでから笑みを浮かべた。

「少し時間に余裕があるのでご一緒させていただきます」
「ホントに!リアン!椅子お願い!あとお茶用意してもらってもいい!?二人分!」
「かしこまりました」

 レオーレ様の椅子をお願いするとすぐに用意され、お茶もほどなく運ばれてくる。

「外で飲むお茶というのも良いものですね」
「はい!」

 俺としては、レオーレ様とお茶が出きるってだけでも凄く嬉しいんだけど。

「レオーレ様。今日は、何をされてたんですか?」
「今日は、王宮から呼ばれていくつかの真偽を判別したのと……近々、また騎士団の討伐に加わる事になったのでその日程の相談に行っていました」

 大神殿から出る事も増えてきたレオーレ様は、毎日忙しそうだ。

 でも、俺が来るまでに比べるとそれでも減っているというのだから働きすぎだと思う。

 社畜だ社畜。俺の前世もどっこいどっこいだけど。

 そんな感じで久しぶりのレオーレ様とのお茶会を堪能してたら腹がちゃぷちゃぷになった。

 ナザール様のところでも、お茶したしな……。

 でも、久しぶりに満たされたので些細な事だった。
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