29 / 31
十五歳、神子学園入学
二十九話
しおりを挟む
「レオーレ様!ナザール様!それに皆も!行ってきまーす!」
たっぷりと寝て、すっきりと目覚めた朝。
リアンと一緒に馬車に乗った俺を皆が見送ってくれる。
学園で過ごす三年間。長期の休み以外は、寮生活だからやっぱり寂しい。
レオーレ様やナザール様だけでなく、他の神官達にも優しくしてもらった大切な故郷だ。
次に帰ってこられるのは夏季休暇だろう。
馬車が走りだし、五年ぶりに見る大神殿の外観が目に入る。
そして、通りすぎる馬車に気づいた民衆が祈りを捧げたり、頭を下げる様子が見えた。
それを見て、神子であろうと思った時の気持ちを思い出す。
神子として貴族に嫁ぐ事が貴族にも民衆にも望まれている事はわかっている。
でも、貴族に嫁いで血を残し、創造神の加護を長く続けるのが大多数に望まれている神子としての役目だ。
だけど、神子が望まない結婚では、創造神の加護も長くは続かないのではないかと思う。
だから、俺はレオーレ様の元に、大神殿に帰る。
そこで心の許せる神官達に囲まれて、穏やかに暮らすのも一つの道だと思うから。
馬車から民衆を眺めながらそんな事を思う。
俺を乗せた馬車は、大通りを通り抜け、やがて一つの大きな学園へとたどり着いた。
王立フェリシテ学園。俺の記憶にある原作ゲーム『メディウムフェリシテ』の舞台である。
……あ、ヤバイ。胃が痛い……。
代表挨拶怖い……無理、吐きそう……。
「ルカ様?大丈夫ですか?」
「うん……大丈夫。大丈夫……」
「明らかにダメそうですよね」
リアンに心配かけないように大丈夫と言ったけど、バレバレの虚勢だったようだ……。
「代表挨拶、しなきゃ……いけないの緊張して……」
「いつも皆の前でお祈りしていたじゃないですか」
「いつもは皆神官だったから……なんとか……でも、同じ歳の貴族……シオンしかしらないから……」
ギリギリ追加するならレックス。
「それは……うん、仕方ないですね。でも、初めて大神殿に来た時も大丈夫だったんですから大丈夫ですよ!」
そう言ってリアンは励ましてくれるけど、大神殿と学園じゃ決定的な違いがある。
推しが、推しがいるのだ!
小悪魔系美少年で侯爵家令息シオンや正統派美青年で第一王子のレックスだけではない。
銀髪クールビューティで宰相子息のジェレミア、体育会系好青年で騎士団長子息のリッド、高身長メカクレ男子で魔導師団長子息エレノアまでいるのだ。
なんだかんだシオン以外会えずにいた推しがいる。
一度だけ会ったレックスも原作の年齢に達している。
なんなら定期的に会っているシオンが他の推しに囲まれている。
正直、正気でいられる気がしなかった。
神子としての代表挨拶という特大のプレッシャーに推しと会えるという特大のプレッシャー……。
……ホント、耐えられるかわかんないんだ。
「……が、頑張る」
「その調子です!……でも、倒れそうな時は、言ってくださいね」
なんとか絞り出した言葉に、リアンが励ましながらも心配してくれる。
俺も、ホントにそれが心配なんだ……。
シオンには耐性ができて倒れなくなったけど、五人揃っているのを見たら昏睡するかもしれない。
オタクというのは推しを目撃するだけで息の根が止まる生物なのだ。
あ、想像しただけでヤバイ……。
「ルカ様、息が止まってます。深呼吸を、深呼吸をしてください」
推しが勢揃いしているのを想像して呼吸が止まっていたのを、リアンから言われて思い出す。
「ひゅっ……ぅ……リアン、俺……代表挨拶まで持つかな……」
「持たせてください。私は、壇上まで行けないんですから……迎えに来てくださるシオン様に迷惑を書けないように……」
その言葉で、ゲームの学園入学時の導入を思い出す。
神子が降り立った学園。出迎えるのは、攻略対象五人。
そう……今はまだ学園内を走っているが、入学式をする講堂の前で待っている五人。
約束しているのはシオンだけだが……本来のスチルでは、五人の攻略対象がレックスを中心に俺を、主人公を迎えるのだ。
「ひゅっ……」
「息を!息をしてください!」
五人勢揃いの初対面スチルを想像して息が止まり、リアンに肩を揺すられる。
ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ。下手したら倒れるぞ……。
自分の推し耐性の無さに意識が遠退きそうになっていると、走っていた馬車が止まる。
あ、俺……終わったかもしれない。
たっぷりと寝て、すっきりと目覚めた朝。
リアンと一緒に馬車に乗った俺を皆が見送ってくれる。
学園で過ごす三年間。長期の休み以外は、寮生活だからやっぱり寂しい。
レオーレ様やナザール様だけでなく、他の神官達にも優しくしてもらった大切な故郷だ。
次に帰ってこられるのは夏季休暇だろう。
馬車が走りだし、五年ぶりに見る大神殿の外観が目に入る。
そして、通りすぎる馬車に気づいた民衆が祈りを捧げたり、頭を下げる様子が見えた。
それを見て、神子であろうと思った時の気持ちを思い出す。
神子として貴族に嫁ぐ事が貴族にも民衆にも望まれている事はわかっている。
でも、貴族に嫁いで血を残し、創造神の加護を長く続けるのが大多数に望まれている神子としての役目だ。
だけど、神子が望まない結婚では、創造神の加護も長くは続かないのではないかと思う。
だから、俺はレオーレ様の元に、大神殿に帰る。
そこで心の許せる神官達に囲まれて、穏やかに暮らすのも一つの道だと思うから。
馬車から民衆を眺めながらそんな事を思う。
俺を乗せた馬車は、大通りを通り抜け、やがて一つの大きな学園へとたどり着いた。
王立フェリシテ学園。俺の記憶にある原作ゲーム『メディウムフェリシテ』の舞台である。
……あ、ヤバイ。胃が痛い……。
代表挨拶怖い……無理、吐きそう……。
「ルカ様?大丈夫ですか?」
「うん……大丈夫。大丈夫……」
「明らかにダメそうですよね」
リアンに心配かけないように大丈夫と言ったけど、バレバレの虚勢だったようだ……。
「代表挨拶、しなきゃ……いけないの緊張して……」
「いつも皆の前でお祈りしていたじゃないですか」
「いつもは皆神官だったから……なんとか……でも、同じ歳の貴族……シオンしかしらないから……」
ギリギリ追加するならレックス。
「それは……うん、仕方ないですね。でも、初めて大神殿に来た時も大丈夫だったんですから大丈夫ですよ!」
そう言ってリアンは励ましてくれるけど、大神殿と学園じゃ決定的な違いがある。
推しが、推しがいるのだ!
小悪魔系美少年で侯爵家令息シオンや正統派美青年で第一王子のレックスだけではない。
銀髪クールビューティで宰相子息のジェレミア、体育会系好青年で騎士団長子息のリッド、高身長メカクレ男子で魔導師団長子息エレノアまでいるのだ。
なんだかんだシオン以外会えずにいた推しがいる。
一度だけ会ったレックスも原作の年齢に達している。
なんなら定期的に会っているシオンが他の推しに囲まれている。
正直、正気でいられる気がしなかった。
神子としての代表挨拶という特大のプレッシャーに推しと会えるという特大のプレッシャー……。
……ホント、耐えられるかわかんないんだ。
「……が、頑張る」
「その調子です!……でも、倒れそうな時は、言ってくださいね」
なんとか絞り出した言葉に、リアンが励ましながらも心配してくれる。
俺も、ホントにそれが心配なんだ……。
シオンには耐性ができて倒れなくなったけど、五人揃っているのを見たら昏睡するかもしれない。
オタクというのは推しを目撃するだけで息の根が止まる生物なのだ。
あ、想像しただけでヤバイ……。
「ルカ様、息が止まってます。深呼吸を、深呼吸をしてください」
推しが勢揃いしているのを想像して呼吸が止まっていたのを、リアンから言われて思い出す。
「ひゅっ……ぅ……リアン、俺……代表挨拶まで持つかな……」
「持たせてください。私は、壇上まで行けないんですから……迎えに来てくださるシオン様に迷惑を書けないように……」
その言葉で、ゲームの学園入学時の導入を思い出す。
神子が降り立った学園。出迎えるのは、攻略対象五人。
そう……今はまだ学園内を走っているが、入学式をする講堂の前で待っている五人。
約束しているのはシオンだけだが……本来のスチルでは、五人の攻略対象がレックスを中心に俺を、主人公を迎えるのだ。
「ひゅっ……」
「息を!息をしてください!」
五人勢揃いの初対面スチルを想像して息が止まり、リアンに肩を揺すられる。
ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ。下手したら倒れるぞ……。
自分の推し耐性の無さに意識が遠退きそうになっていると、走っていた馬車が止まる。
あ、俺……終わったかもしれない。
49
あなたにおすすめの小説
異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話
深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
────────────
※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000の勇者が攻めてきた!
モト
BL
異世界転生したら弱い悪魔になっていました。でも、異世界転生あるあるのスキル表を見る事が出来た俺は、自分にはとんでもない天性資質が備わっている事を知る。
その天性資質を使って、エルフちゃんと結婚したい。その為に旅に出て、強い魔物を退治していくうちに何故か魔王になってしまった。
魔王城で仕方なく引きこもり生活を送っていると、ある日勇者が攻めてきた。
その勇者のスキルは……え!? 性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000、愛情Max~~!?!?!?!?!?!
ムーンライトノベルズにも投稿しておりすがアルファ版のほうが長編になります。
贖罪公爵長男とのんきな俺
侑希
BL
異世界転生したら子爵家に生まれたけれど自分以外一家全滅という惨事に見舞われたレオン。
貴族生活に恐れ慄いたレオンは自分を死んだことにして平民のリオとして生きることにした。
一方公爵家の長男であるフレドリックは当時流行っていた児童小説の影響で、公爵家に身を寄せていたレオンにひどい言葉をぶつけてしまう。その後すぐにレオンが死んだと知らされたフレドリックは、以降十年、ひたすらそのことを悔いて生活していた。
そして十年後、二人はフレドリックとリオとして再会することになる。
・フレドリック視点は重め、レオン及びリオ視点は軽め
・異世界転生がちょいちょい発生する世界。色々な世界の色々な時代からの転生者の影響で文明が若干ちぐはぐ。
・世界観ふんわり 細かいことは気にしないで読んでください。
・CP固定・ご都合主義・ハピエン
・他サイト掲載予定あり
神様は身バレに気づかない!
みわ
BL
異世界ファンタジーBL
「神様、身バレしてますよ?」
――暇を持て余した神様、現在お忍び異世界生活中。
貴族の令息として“普通”に暮らしているつもりのようですが、
その振る舞い、力、言動、すべてが神様クオリティ。
……気づかれていないと思っているのは、本人だけ。
けれど誰も問いただせません。
もし“正体がバレた”と気づかれたら――
神様は天へ帰ってしまうかもしれないから。
だから今日も皆、知らないふりを続けます。
そんな神様に、突然舞い込む婚約話。
お相手は、聡明で誠実……なのにシオンにだけは甘すぎる第一王子!?
「溺愛王子×お忍び(になってない)神様」
正体バレバレの異世界転生コメディ、ここに開幕!
イケメンチート王子に転生した俺に待ち受けていたのは予想もしない試練でした
和泉臨音
BL
文武両道、容姿端麗な大国の第二皇子に転生したヴェルダードには黒髪黒目の婚約者エルレがいる。黒髪黒目は魔王になりやすいためこの世界では要注意人物として国家で保護する存在だが、元日本人のヴェルダードからすれば黒色など気にならない。努力家で真面目なエルレを幼い頃から純粋に愛しているのだが、最近ではなぜか二人の関係に壁を感じるようになった。
そんなある日、エルレの弟レイリーからエルレの不貞を告げられる。不安を感じたヴェルダードがエルレの屋敷に赴くと、屋敷から火の手があがっており……。
* 金髪青目イケメンチート転生者皇子 × 黒髪黒目平凡の魔力チート伯爵
* 一部流血シーンがあるので苦手な方はご注意ください
拾った異世界の子どもがどタイプ男子に育つなんて聞いてない。
おまめ
BL
召喚に巻き込まれ異世界から来た少年、ハルを成り行きで引き取ることになった男、ソラ。立派に親代わりを務めようとしていたのに、一緒に暮らしていくうちに少年がどタイプ男子になっちゃって困ってます。
✻✻✻
2026/01/10 『1.出会い』を分割し、後半部分を『2.引き取ります。』として公開しました。
(仮)攫われて異世界
エウラ
BL
僕は何もかもがイヤになって夜の海に一人佇んでいた。
今夜は満月。
『ここではないどこかへ行きたいな』
そう呟いたとき、不意に押し寄せた波に足を取られて真っ暗な海に引きずり込まれた。
死を感じたが不思議と怖くはなかった。
『このまま、生まれ変わって誰も自分を知らない世界で生きてみたい』
そう思いながらゆらりゆらり。
そして気が付くと、そこは海辺ではなく鬱蒼と木々の生い茂った深い森の中の湖の畔。
唐突に、何の使命も意味もなく異世界転移してしまった僕は、誰一人知り合いのいない、しがらみのないこの世界で第二の人生を生きていくことになる。
※突発的に書くのでどのくらいで終わるのか未定です。たぶん短いです。
魔法あり、近代科学っぽいモノも存在します。
いろんな種族がいて、男女とも存在し異種婚姻や同性同士の婚姻も普通。同性同士の場合は魔法薬で子供が出来ます。諸々は本文で説明予定。
※R回はだいぶ後の予定です。もしかしたら短編じゃ終わらないかも。→ちょっと終わらないので長編に切り替えます。スミマセン。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる